近年、年齢を問わずフリーランスという働き方を選択する人が増えています。フリーランスとは公的機関や企業などの組織に属さず、自身のスキルで収入を得る人たちのことをいいます。
フリーランスとして働ける職業は多々ありますが、その中でもWeb系の職業とフリーランスは相性がよいといわれています。Web系の職業の多くが自宅で働けたり、自身のペースで作業を行ったりするため、フリーランスという働き方に合っているのです。
また、IT社会といわれる現代社会においてWeb系の職業のニーズは高まっています。また、IT人材が国内全体で不足していることからも、フリーランスや副業を希望する会社員を対象にした求人も増えています。
本記事では、Web系フリーランスの概要を押さえた上で、Web系フリーランスの職種と必要なスキル、未経験からフリーランスになる方法、案件を獲得する方法などを解説します。
目次
1.Web系フリーランスとは
フリーランスと一口で言っても、フリーランスといわれる人たちが従事している業務は多岐にわたっています。美容師やカメラマン、講師、翻訳家、配達員などにもフリーランスは存在します。
フリーランスの中でももっとも多いのがWeb系の業務に従事している人たちです。フリーランス協会による「フリーランス白書2024」では「主な収入源となっている職種」についての調査結果が明らかになっています。
「クリエイティブ・ Web・フォト系」が 25.1%、「エンジニア・技術 開発系」が18.0%、「出版・メディア系」が8.9%となっており、フリーランスの半数程度がWeb系に従事していることがうかがえます。
Web系フリーランスの具体的な職業として、主に以下が挙げられます。
Webデザイナー
エンジニア
Webクリエイター
Webライター
グラフィック・デザイナー
動画制作者
いずれの職業もWebを主な活動領域とし、パソコンを使って仕事を行います。
2.Web系フリーランスの職種と必要なスキル
Web系フリーランスといっても職種によって求められるスキルが異なるため、必要なスキルは一概には言えません。
ここでは、以下の6つの職業における必要なスキルを解説します。
Webデザイナー
エンジニア
Webクリエイター
グラフィック・デザイナー
Webライター
動画編集者
それぞれ確認していきましょう。
Webデザイナーと必要なスキル
WebデザイナーとはWebサイトのデザインを主に担当する職業です。スマートフォンやタブレットが普及している昨今、多くの企業が自社サイトを設けています。
自社サイトを制作してほしいと考える企業は多いため、Webデザイナーは近年において安定した需要があります。
Webサイトのレイアウトやフォントを選定し、見た目にも美しく、ユーザーの関心を惹き付けるサイトに仕上げます。
また、ユーザーの立場になって操作性を高めるなど、使いやすさにも気を配ることが求められます。さらに、Webデザイナーはコーディングを手掛けることも多いです。
Webデザイナーに必要なスキル
デザインに関する知識・技術全般
コーディングスキル
エンジニアと必要なスキル
エンジニアとはITに関する技術者で、コンピュータやサーバー、ネットワークなどを専門に扱います。ただし、エンジニアと一口でいっても扱う領域は細分化されており、それぞれ異なります。
例えば、システムエンジニアはシステム開発における上流工程を主に担います。システムの提案や設計、開発、テストまでのすべての工程に携わります。
また、近年において需要が高まっているクラウドエンジニアは、インターネット上にデータを保存し、活用するクラウドの技術を扱います。
その他にも、企業のセキュリティを守るセキュリティエンジニアなどもあります。
エンジニアと呼ばれる人たちがすべて共通するスキルをもっているわけではなく、エンジニアとしての基礎知識にプラスして、それぞれが専門分野をもっているイメージです。
エンジニアに必要なスキル
プログラミング言語スキル
開発実務経験
Webクリエイターと必要なスキル
Webクリエイターとはクライアントから依頼されたWebサイトを構築する仕事です。この職業とWebデザイナーは混同されがちですが、異なるものです。
Webデザイナーはエンジニア寄りであるのに対して、Webクリエーターはコーディネーター寄りです。
Webクリエイターはサイトが利益を生み出せるように考案も行います。
例えば、SEO対策を行って検索一覧における上位表示をねらったり、広告収入を得られるようにリンクを設置したりします。さらには、集客方法を考えて、アクセス数が伸びるように施策することもあります。
Webクリエイターに必要なスキル
SEOに関する知識
マーケティング・プロモーション
グラフィック・デザイナーと必要なスキル
かつて、グラフィック・デザイナーは印刷媒体をメインに活動する人が多くいましたが、Webの普及によりWebに特化したグラフィック・デザイナーも近年増えています。
フリーランスのグラフィック・デザイナーはロゴやアイキャッチ画像、バナーなどといったWebのアクセントとなるパーツを主に作成します。
また、Webデザイナーと協力して、Webページのデザインを行うこともあります。
また、最近はSNSの普及により、アイコンにオリジナルのイラストを使用したいと考える人も増えています。
SNS用のアイコンの制作を積極的に引き受けているグラフィック・デザイナーもいます。
グラフィック・デザイナーに必要なスキル
Illustrator
Photoshop
Webライターと必要なスキル
WebライターとはWeb上に掲載される文章を作成する仕事です。ブログやニュース、オウンドメディア、企業広告など執筆媒体は多岐にわたります。
節約術やおすすめの洋服を紹介するような記事から医療や金融について解説する専門的な記事までさまざまです。募集テーマは多岐にわたるため、自身の経験や趣味などを活かせる仕事も見つかるはずです。
Webライターに必要なスキル
最低限のPCスキル
SEOに関する知識
日本語力
動画編集者と必要なスキル
YouTubeの普及により、多くの人が動画を制作したいと考えています。このため、動画を制作できる人は現代において高いニーズがあります。
動画編集を行うには基礎スキルといわれるものがあります。カットやテロップ挿入、効果音の挿入、サムネイルの作成は不可欠なスキルです。
また、依頼者の多くが動画を多くの人に視聴してもらい、利益につなげたいと考えているので、セールススキルやマーケティングスキルがあると重宝されます。
動画編集者に必要なスキル
動画編集を行うための基礎スキル
セールススキル
マーケティングスキル
3.未経験からWeb系フリーランスになれるの?
結論を先に述べると、未経験からWeb系フリーランスになることは可能です。
ただし、自力で仕事をやり遂げられる程度のスキルを保有していることが前提です。
例えば、フリーランスのエンジニアとして働きたい場合、実務経験を問わない求人も少なからずあります。
しかし、会社員と違い、フリーランスは引き受けた業務を独力で仕上げなければならないため、クライアントにやり方を聞きながら案件を仕上げるというのは難しいと思われます。引き受けた仕事は納期までに自分の力で完成させなければなりません。
また、未経験の人が案件を獲得できたとしても、低単価の案件であったり、好条件を期待できないことが多いです。最初のうちは報酬を時給換算すると悲しくなることもあると思いますが、実績を積むにつれて生産性も向上し報酬も上がるでしょう。
フリーランスとしてはやくから成果を出したい人は、自身がこれまでに携わってきた領域や、専門分野を選択することをおすすめします。
4.Web系フリーランスが案件を獲得する方法
フリーランスに転身したばかりの人やこれからフリーランスとして働きたいと考えている人の中には、仕事をどのように獲得すればいいのか分からない人も多いのではないでしょうか。
Web系フリーランスの案件の獲得方法として、主に以下の5つが挙げられます。
フリーランスエージェントの活用
クラウドソーシングの活用
SNSの活用
過去の取引先
Web系フリーランススクールに入会
それぞれ確認していきましょう。
フリーランスエージェントの活用
フリーランスとして案件を効率よく獲得したい人にはエージェントの活用がおすすめです。
エージェントによって扱っている職種は異なるので、自身が従事している職業を扱っているエージェントに相談してみてください。
また、「リモート案件」や「高単価案件」を多数扱うエージェントもあります。これらの案件に採用されるにはスキルや実績がある程度必要になりますが、自分では出会えないような好待遇の案件にエージェント経由で出会えることもあります。
クラウドソーシングの活用
クラウドソーシングを活用して仕事を探すこともできます。代表的なサービスとして、ランサーズやクラウドワークスが挙げられます。
クラウドソーシングで募集が行われている仕事であれば、完全在宅が基本になります。また、面談や面接がない案件も多いため、自分のぺースで働きたい人や副業としてWeb系の仕事に従事したい人にもおすすめです。
SNSの活用
近年、SNSで案件を受注しているフリーランスも多くいます。X(旧:Twitter)やInstagramにもWeb系のフリーランスを対象にした求人は多くあります。
特に、Xには多くの案件の募集があり、完全在宅の仕事も多いです。
ただし、SNSを活用した案件探しには注意も必要です。
SNS上の求人の中にはWeb系フリーランスであっても実態が見えてこない怪しい求人も稀にあるようです。こうした案件に応募すると、未払いなどのトラブルが生じることもあります。
過去の取引先に相談
フリーランスとして独立した人の多くが前職の人脈を大切にしています。フリーランス協会の「フリーランス白書2024」によると、「最も収入が得られる仕事の獲得経路」として「過去・ 現在の取引先」が32.7%と最多でした。
また、同調査において「直近1年間で仕事獲得に繋がったことのあるもの」のうち「人脈(知人の紹介含む)」が61.6%と最多で、「過去・現在の取引先」が58.9%と続きました。
メディアでは20代や30代といった若い年代のフリーランスが多く取り上げられていますが、実態としてはフリーランスの多くがミドル層です。
こうした実情を踏まえると、前職の人脈を活かし、仕事を獲得している人が多いということも納得できます。
未経験からフリーランスになった人にとってはビジネスにおける人脈を活かすのは難しいかもしれません。
しかし、友人や知人に自身の状況を話すことで、仕事につながることも期待できるでしょう。
Web系フリーランススクールに入会
未経験のフリーランスが仕事を受注しにくい大きな理由として、実績のなさが挙げられます。数々の求人に応募しても実務経験や実績がないことを理由に案件を受けられないケースは少なくありません。
Web系フリーランススクールの中には実績つくりのサポートを行っているスクールもあります。実績が1~2つあるだけでも案件獲得の可能性が大きくアップするので、案件を受注できない人はスクール入会を検討してみてもよいかもしれません。
5.フリーランスの年収事情
フリーランス協会による「フリーランス白書2024」では、フリーランスの年収に関する調査結果が公表されています。同調査によると、年収200~400万円未満が26.8%ともっとも多くの回答を集めました。
次いで、200万円未満(17.9%)、400万円未満(15.8%)となっています。また、年収1000万円以上の人は9.7%と全体の1割程度です。
エンジニアにおける年収を正社員とフリーランスで比較してみましょう。
2023年の賃金構造基本統計調査では正社員エンジニアの平均年収は684万円です。
フリーランスボード上での月額単価は71.5万円となっており、年収換算するとおおよそ858万円となります。
ただし、フリーランスと一括りにしても労働時間や働き方は人によって大きく異なります。例えば、介護や子育てをしながらフリーランスとして収入を得ている人は年収がそう高くならないケースが多いと思います。
一方、正社員と同等以上の時間を仕事に充てているフリーランスであれば、ある程度の年収を見込めるでしょう。
また、Web系フリーランスの中でも、エンジニアなど専門性が高い業務に従事している人、センスのよいWebデザイナーなどは高単価で仕事を受けられることも多く、1時間あたりの単価も高くなります。
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6.まとめ
IT社会といわれる昨今、Web系の求人は多くあります。Web系の職業とフリーランスの相性はよく、フリーランスとしてWeb系の業務に従事している人は多いです。
フリーランスとしてWeb系の業務に従事する場合、時間や場所にとらわれずに働けます。また、案件を期間内に完成させればよいという契約の求人も多いため、育児や介護との両立のしやすさもメリットです。
Web系のフリーランスといってもさまざまな職業があり、それぞれの職業によって向き不向きがあれば求められるスキルも異なります。例えば、エンジニアやWebデザイナーとしてフリーランスで働く場合はスキルや知識を取得するのにある程度時間やお金がかかるでしょう。
一方、Webライターであれば日本語の文章を書くことができ、Web環境が整っていれば業務をはじめられるような求人もあります。
Web系フリーランスとして活動したい人は自分の興味や関心を見据えた上で、ご自身に合った職種を選択してください。
本記事が皆様にとって少しでもお役に立てますと幸いです。