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消費税の確定申告とは?課税対象や申告手続き、計算方法などわかりやすく解説

公開日:2024/10/25最終更新日:2024/10/25

フリーランスや法人がビジネスを運営する際、課税売上高が一定の金額を超えると「課税事業者」として消費税の申告と納付が義務付けられます。課税事業者になるということは単に商品の販売やサービスの提供を行っているだけでなく、消費税に関する法的な責任を果たさなければならないことを意味します。


具体的には課税事業者として認定されると所得税や法人税の確定申告とは別に、消費税の確定申告も行う必要があります。これは事業運営において非常に重要なポイントであり、消費税の取り扱いについて理解を深めることが求められます。


私たちは普段消費者として商品を購入する際に支払う消費税には比較的慣れているかもしれませんが、事業者としてこの消費税を申告・納付する際に「どのような手続きが必要になるのか」「納める消費税の額はどの程度になるのか」といった点について、戸惑いを感じる方が多いのが実情です。事業者として消費税の理解は非常に重要です。


そこでこの記事では、消費税の確定申告が必要となる条件について詳しく解説します。具体的には課税売上高の基準や、課税事業者として認定されるための条件などについて触れます。次に消費税の確定申告を行う際の手続きの流れについて説明し、必要な書類や注意点をまとめます。


さらに、消費税の納付額の計算方法についても詳細に述べていきます。事業者は自社の売上に対する消費税をどのように計算し、どのように仕訳を行うかを理解することが不可欠です。この計算には売上高や仕入高に基づく税率の適用や控除対象となる仕入れにかかる消費税の取り扱いなど、複雑な要素が絡んでいます。


また2023年10月から施行されたインボイス制度についても触れます。この新制度は消費税の適正な納付を促進するためのもので、事業者にとって重要な影響を与える可能性があります。インボイス制度の概要や事業者がこの制度にどのように対応していくべきか、そして消費税の申告・納付における具体的な実務についても詳しく説明します。


消費税に関する知識は事業運営において欠かせないものであり、正確な申告と納付を行うためにはしっかりとした理解と準備が必要です。消費税の申告が求められる条件・手続き・計算方法・インボイス制度の影響を十分に理解することで、事業者としての責任を果たしスムーズな経営を実現していきましょう。


1.消費税とは

消費税は、商品やサービスの消費に対して広く公平に課せられる間接税です。この税金は消費者が負担し、実際に納付を行うのは事業者であるという特徴があります。


現在の消費税率は令和元年10月1日から導入された軽減税率制度に基づき、標準税率が10%・軽減税率が8%の複数の税率が設定されています。なお標準税率のうち2.2%、軽減税率の内の1.76%は地方消費税率に該当します。


軽減税率の対象には酒類や外食を除いた飲食料品の譲渡や定期購読契約が結ばれた週2回以上発行される新聞の譲渡などが含まれます。

消費税の課税対象となる取引

消費税の課税対象となる取引は、国内において事業者が事業として対価を得る形で行う資産の譲渡や特定仕入れや保税地域からの外国貨物の引き取り(輸入取引)と定義されています。以下に例を示します。

事業者が事業として行う取引

・商店を経営し、商品を販売した

・運送サービスを提供し、対価を受け取った


対価を得て行う取引

・事務所を貸し出し、家賃を受け取った

・エアコン工事を行い、対価を受け取った


資産の譲渡等

・事業で使用していた設備を売却した

・著作権を保有していた無形財産を譲渡した


特定仕入れ ※事業者のみ該当

・国外事業者から受けたインターネットを通じた広告配信

・外国人スポーツ選手から受けた競技等の役務提供に対して報酬や賞金を支払った


外国貨物の引取り

・保税地域から引き取る外国貨物(輸入)

このように国内において事業者が行う対価の発生する取引は、基本的に消費税の課税対象です。また、特定仕入れや外国貨物の引き取り(輸入)も課税対象となりますので、消費税法に従い納税を行いましょう。

消費税が非課税となる取引

消費税の性格や社会政策上の配慮により、非課税となる取引も存在します。主な非課税取引について以下にまとめます。

土地の譲渡および貸付け

・借地権など土地に関する権利の譲渡

※1ヶ月未満の土地貸付や駐車場等の利用は、非課税取引には該当しません。


有価証券等の譲渡

・国債や株式などの有価証券や抵当証券の譲渡

※株式や出資の形態によるゴルフ会員権の譲渡は非課税取引にはなりません。


支払手段の譲渡

・硬貨や小切手の譲渡

※収集品として譲渡する場合は非課税取引に該当しません。

・暗号資産や電子決済手段の譲渡


預貯金の利子および保険料を対価とする役務の提供等

・預貯金や貸付金の利子、保険料等


郵便切手類や印紙の譲渡

・日本郵便株式会社などによる郵便切手類の譲渡

・地方公共団体による証紙の譲渡


物品切手等の譲渡

・商品券やプリペイドカードの譲渡


国等が行う一定の事務に係る役務の提供

・登記や免許等に関する法令に基づく手数料


外国為替業務に係る役務の提供

・海外送金に伴う手数料等


社会保険医療の給付等

・医療労災保険・自賠責保険の対象となる医療等

※美容整形や市販薬の購入は非課税取引には該当しません。


介護保険サービスの提供

・保険給付対象の居宅や施設サービス等

※サービス利用者の選択による特別な居室提供や送迎の対価は非課税取引にはなりません。


社会福祉事業等によるサービスの提供等

・第一種・第二種社会福祉事業や更生保護事業によるサービスの提供


助産

・医師や助産師による助産サービスの提供


火葬・埋葬

・火葬料や埋葬料を対価とする役務の提供

一定の身体障害者用物品の譲渡・貸付け等

・身体障害者用物品の譲渡、貸付け、製作請負、修理等


学校教育

・一定の要件を満たす学校の授業料や入学金等


教科用図書の譲渡

・教科書の譲渡


住宅の貸付け

・居住用賃貸物件の貸付サービスの提供

※1ヶ月未満の貸付けは非課税取引には該当しません。

これらの取引が主な非課税対象となります。課税対象かどうか不明な取引がある場合は、税理士に相談することをおすすめします。

2.消費税の確定申告は消費税の課税事業者によって実施される

消費税は、商品やサービスを購入(消費)する際に発生する税金です。消費者は、買い物をするときに10%または軽減税率の8%の消費税を商品代金に上乗せして支払います。しかしこの支払いによって消費者が消費税を申告や納付をしているわけではありません。


消費税の確定申告を行うのは、消費者から消費税を受け取った事業者です。消費税は間接税であり、実際に税金を負担するのは消費者ですが納税者は事業者です。事業者は商品やサービスを販売する際に消費者から預かった消費税を、消費者の代わりに税務署に確定申告する義務があります。


一方で事業者も仕入れの際に消費税を支払っているため、事業者は消費者から預かった消費税額から自らの事業活動で支払った消費税額を差し引いて確定申告を行います。このように消費税の確定申告を行う事業者を「課税事業者」と呼びます。


なお消費税は国税である消費税と地方税である地方消費税の合計額です。申告や納付の際には、国税と地方税をまとめて税務署に確定申告します。

消費税の確定申告が義務付けられている人

消費税の確定申告義務がある事業者は「課税事業者」、申告義務が免除されている事業者は「免税事業者」と呼ばれます。課税事業者となる条件は、「基準期間」や「特定期間」における課税売上高が1,000万円を超えた場合です。


基準期間や特定期間は個人事業主と法人で異なります。個人事業主の場合には事業年度は1月1日から12月31日までと固定されていますが、法人は自由に事業年度を設定できるためです。基本的には「2年前の課税売上高が1,000万円を超えた場合に消費税の確定申告が必要」と覚えておくと良いでしょう。


また課税売上高が1,000万円以下の免税事業者であっても、「消費税課税事業者選択届出書」を税務署に提出することで自主的に課税事業者になることが可能です。

個人事業主における基準期間と特定期間

  • 基準期間:2年前の1月1日から12月31日まで

  • 特定期間:前年の1月1日から6月30日まで

法人における基準期間と特定期間

  • 基準期間:2期前の事業年度

  • 特定期間:前期の事業年度開始日から6か月間

消費税の申告義務がない人

前述の基準期間の課税売上高、そして特定期間の課税売上高または給与等支払額の合計額が1,000万円以下の場合には消費税の確定申告義務が免除される免税事業者となります。


開業初年度の個人事業主や設立初年度の法人は、前々年や前年の売上がないため基本的に免税事業者となります。ただし資本金が1,000万円以上の法人を設立した場合や特定新規設立法人に該当する場合は、売上に関係なく設立年度から課税事業者として扱われるため注意が必要です。

3.消費税の計算方法

確定申告における消費税の計算方法には、「一般課税」と「簡易課税」の2つの種類があります。どちらの方法を選ぶかによって納める消費税の額が異なるため、それぞれの違いを十分に理解しておくことが重要です。

一般課税の計算

一般課税とは、課税売上げにかかる消費税額から仕入れや経費で支払った消費税額(仕入税額控除)を差し引いて計算する方法です。一般課税は「本則課税」や「原則課税」と呼ばれることもあります。

一般課税における消費税額の計算式

課税売上げにかかる消費税額から、仕入れなどで支払った消費税額を差し引いたものが納付する消費税額となります。


課税売上げにかかる消費税額と課税仕入れ等に係る消費税額は、それぞれ10%と8%(軽減税率)の税率ごとに区分して計算します。また取引の中に非課税取引が含まれている場合には、それを除いて計算しなければなりません。

簡易課税の計算

簡易課税とは課税売上高に対して業種ごとに設定された「みなし仕入率」を掛け、その金額を仕入れにかかる消費税額として算出する方法です。

簡易課税における消費税額の計算式

課税売上高にかかる消費税額から(課税売上高にかかる消費税額×みなし仕入率)を差し引いた金額が納付する消費税額となります。


簡易課税制度を利用できるのは、基準期間(個人事業者の場合は前々年、法人の場合は前々事業年度)の課税売上高が5,000万円以下の課税事業者に限られます。さらにこの制度を利用するには適用を希望する課税期間の開始日の前日までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を税務署に提出する必要があります。


例えば個人事業主の事業年度が1月1日から12月31日までの場合で翌年から簡易課税制度を利用したい場合は、その年の12月31日までに届出書を提出することが求められます。基準期間の課税売上高が5,000万円以下であっても事前に届出を行わないと簡易課税制度を適用することはできないため、注意が必要です。

【インボイス制度による軽減措置】2割特例

2割特例とは基準期間および特定期間の課税売上高がそれぞれ1,000万円以下で、2023年10月1日以降に初めて課税事業者となった場合に適用される軽減措置です。この条件を満たしていれば手続きは不要ですが、確定申告の際には2割特例を適用したことを明記する必要があります。


消費税額を2割特例で計算する際は、以下の計算式を使用します。

消費税額 = 課税売上高に基づく消費税額 - (課税売上高に基づく消費税額 × 80%)

2割特例を利用することで、原則課税方式や簡易課税方式に比べて納税の負担を軽減できる可能性があります。インボイス制度に対応するために課税事業者になった方は、この特例を忘れずに活用しましょう。


なお特例の適用期間は個人事業主と法人では異なる点に留意してください。


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4.税抜方式と税込方式における経理の違いと申告手続き

消費税の会計処理には、「税抜経理方式」と「税込経理方式」の2つの方法があります。免税事業者は税込経理方式しか使用できませんが、課税事業者はどちらかを選択することが可能です。


税抜経理方式では、消費税と商品やサービスの本体価格(売上高や仕入高など)を分けて処理します。この方法では取引ごとに消費税を計算する必要があるものの、消費税の納付額を事前に予測しやすくなります。


一方税込経理方式では、消費税を本体価格に含めて処理します。この方法だと取引ごとに消費税を計算する手間が省けますが、期中に消費税の納付額を把握しにくいという欠点があります。


どちらの方式を選択しても、最終的に納付する消費税額に違いはありません。手作業だと煩雑になりがちな消費税の計算も、消費税申告機能付きの会計ソフトを使えば手間を大幅に軽減できます。


5,000円(税抜)の商品を買掛金で仕入れて、10,000円(税抜)の商品を現金で販売(消費税は10%)した場合についてそれぞれの方式における仕訳例を確認してみましょう。

税抜経理方式

税抜経理方式では決算時に仮払消費税と仮受消費税を相殺し、納付すべき消費税額を「仮払消費税等」として処理します。

仕入時の仕訳

借方

借方金額

貸方

貸方金額

仕入

仮払消費税等

5,000円

500円

買掛金

5,500円

売上時の仕訳

借方

借方金額

貸方

貸方金額

現金

11,000円

売上

仮受消費税等

10,000円

1,000円

決算時の仕訳

借方

借方金額

貸方

貸方金額

仮受消費税等

1,000円

仮払消費税等

未払消費税等

500円

500円

税込経理方式

税込経理方式では期中は消費税を売上や仕入に含めて処理し、決算時には「租税公課」として計上します。

仕入時の仕訳

借方

借方金額

貸方

貸方金額

仕入

5,500円

買掛金

5,500円

売上時の仕訳

借方

借方金額

貸方

貸方金額

現金

11,000円

売上

11,000円

決算時の仕訳

借方

借方金額

貸方

貸方金額

租税公課

500円

未払消費税等

500円

5.消費税の確定申告を行う方法

消費税の課税事業者に該当する場合は所管の税務署に確定申告書などを提出し、消費税の申告および納付を行う必要があります。消費税の確定申告の締切は個人事業主の場合は適用事業年度の翌年の3月31日まで、法人の場合は事業年度終了日(決算期末)から2ヶ月以内となっています。


確定申告に必要な書類は一般課税と簡易課税の選択や、課税期間中に適用される税率(10%や軽減税率8%など)が複数あるかどうかによって異なります。必要な書類をしっかりと確認し、締切に間に合うように申告準備を進めることが重要です。

消費税の確定申告書類の記入手順

確定申告書を作成する際は、以下の手順に従って行います。一般課税と簡易課税のいずれの場合でも、正確な数値を計算して記入することが重要です。

1.課税標準額と消費税額の計算

課税標準額とは消費税を算出するために税率を掛ける対象となる金額のことで、1,000円未満の部分は切り捨てられます。この課税標準額に消費税率を掛けることで、課税売上高にかかる消費税の金額を算出します。

2. 控除対象仕入税額などの計算

仕入れや経費に関連する消費税額を算出します。ただし税金・非課税取引など消費税が適用されない項目は計算から除外する必要があります。簡易課税を選択している場合は、課税売上高に対する消費税額に「みなし仕入率」を掛けて求めます。

3. 納付税額(還付税額)の計算

「課税標準額」「消費税額」「控除対象仕入税額」を用いて、消費税の納付額(還付額)を算出します。

4. 計算した金額を消費税の確定申告書に記入する

上述の1~3で計算した金額を、消費税の確定申告書の該当する欄に記入します。

6.消費税の確定申告を行う際の留意点

消費税の確定申告を行う際には、いくつかの留意事項があります。ここでは、消費税の確定申告における注意点について説明します。

不適切な申告を行うと附帯税が課せられる

消費税の申告や納付を期限内に行わなかったり、申告内容に誤りがあったりすると、次のような附帯税が発生する可能性があります。

無申告加算税

確定申告を行う義務があるにもかかわらず無申告であることが税務調査などによって明らかになった場合などには、無申告加算税が課せられます。

  • 税務署からの事前通知がある前に自主的に期限後申告を行った場合

    税務署からの調査の事前通知を受ける前に自発的に期限後申告を行うと未納の税金に加えて、その5%に相当する無申告加算税が課されます。

  • 税務署からの事前通知後に期限後申告を行った場合(調査による決定を予測する前の期限後申告)

    (1) 調査の事前通知後に期限後申告をした場合(調査による決定を予測する前の期限後申告)には、未納税金に加えて10%の無申告加算税が課されます。令和6年1月1日以降に法定申告期限を迎えるもの(令和5年分以降)については、50万円までの部分は10%・50万円超300万円までの部分は15%・300万円超の部分には25%の無申告加算税がかかります。

    (2) また令和6年1月1日以降に法定申告期限を迎えるもの(令和5年分以降)で前年および前々年に無申告加算税や重加算税が課された場合または課されるべきと判断された場合、10%が加算されます。

  • 調査後に期限後申告を行った場合(調査の結果を予測した期限後申告)

    (1) 調査を受けた後に期限後申告を行うか税務署から申告納税額の決定を受けた場合、未納税金に加えて15%の無申告加算税が課されます。令和6年1月1日以降の申告期限に関しては、50万円までの部分は15%・50万円超300万円までの部分には20%・300万円超の部分には30%が加算されます。

    (2) さらに申告期限の5年前からの間に所得税に関して無申告加算税や重加算税が課された場合、10%の加算税が追加されます。

  • 令和6年1月1日以降に法定申告期限を迎えるものについて

    税務署の調査において帳簿の提示を求められた際に提出を行わなかった場合や売上金額の記載が本来あるべき額の半分未満であった場合、未納税金に対して10%の無申告加算税が加算されます。また売上金額の記載が3分の2未満であった場合は、5%が加算されます。

過少申告加算税

実際の納税額よりも少ない金額で確定申告を行った場合に適用される加算税です。税務署からの調査の事前通知前に修正申告を行った場合には、課税されることはありません。ただし、税務署からの調査の事前通知の後に修正申告した場合や税務署から申告納税額の更正を受けた場合は過少申告加算税がかかります。

延滞税

申告や納税が期限を過ぎてしまった場合、その遅れた日数に応じて延滞税が加算されることになります。

重加算税

仮装隠蔽など特に悪質なケースと判断された場合、重加算税が適用されます。

一定額以上の消費税を申告すると中間申告が必要

前の課税期間に申告した消費税額が一定の金額を上回ると、次の課税期間には通常の確定申告に加えて「中間申告」を行う必要があります。中間申告とは、概算で算出した消費税額の一部を前もって申告・納付する手続きです。


中間申告が必要となるのは、基本的に前の課税期間で確定した消費税額が48万円を超えた場合です。中間申告の頻度は確定消費税額に基づいて、年に1回から最大で11回まで決定されています。

7.インボイス制度導入が消費税の確定申告に与える影響

2023年10月1日より、「インボイス制度(適格請求書等保存方式)」が導入されました。インボイス(適格請求書)は売り手が買い手に正確な消費税額などを伝えるために、適用税率や税額を明示することが義務付けられた請求書を指します。


この制度では売り手である事業者は、取引先から要求された場合にインボイスを提供しなければなりません。さらに買い手が仕入れにかかる消費税を控除するためには、基本的に売り手から発行されたインボイスを保存することが必要です。


インボイスを発行できるのは、税務署に適格請求書発行事業者として登録申請を行った課税事業者のみです。したがって免税事業者である個人事業主や法人がこのインボイス制度に適応するためには、課税売上高に関係なく自らインボイス発行事業者の登録を受けた上で消費税の確定申告を行う必要があります。

8.消費税の還付申告

消費税の納税義務がある課税事業者が消費税を過剰に支払った場合や仕入税額控除が不十分な場合には、確定申告を通じて還付を受けることができます。還付申告は、消費税の確定申告と一緒に還付申告に関する明細書を提出することで行えます。


消費税の還付申告が可能なケースは以下の通りです。

  • 前々年(基準期間)の課税売上高が1,000万円を超える個人事業者(課税事業者)

  • 前々事業年度(基準期間)の課税売上高が1,000万円を超える法人

  • 課税事業者としての選択をした人

  • 適格請求書発行事業者(課税事業者)の登録を受けた人

  • 基準期間がない法人のうち、その事業年度の開始時に資本金または出資の金額が1,000万円以上の法人等

なお消費税の還付申告を受けるには、原則課税方式で納税額を計算していることが条件です。


簡易課税方式を利用している場合は還付を受けることができません。これは簡易課税方式や2割特例がみなし仕入率を用いて納税額を計算するため、正確な還付金額を算出できないと考えられているためです。


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9.まとめ

消費税の納税義務がある課税事業者は法令に基づき定められた期限内に納税額を算出し、確定申告を行う義務があります。この申告プロセスは適切な税額を納付するために非常に重要であり、事業者は自身の売上や仕入れに関連する詳細なデータをもとに正確な計算を行わなければなりません。消費税の確定申告に必要な書類は原則課税・簡易課税・2割特例の課税方式によって異なるため、それぞれの方式に応じた準備が求められます。


2023年10月1日以降に新たに課税事業者となった場合は、インボイス制度に対応するために2割特例を活用することが特に推奨されています。この特例を利用することで課税事業者としての負担を軽減しつつ、インボイス制度に適応することが可能になります。


消費税の申告には慎重さが求められます。申告する税額に誤りがあったり申告期限を過ぎてしまった場合には、延滞税や加算税が課せられる可能性があります。これらのペナルティは事業者にとって大きな負担となるため、計画的かつ余裕を持った準備が非常に重要です。適切な書類を準備し正確な計算を行うことで納税義務を果たしつつ、余計な費用を発生させないようにすることが求められます。


確定申告を行う際には必要書類の整備だけでなく、専門的な知識を持った税理士や会計士に相談することも有効です。彼らの助けを借りることで申告の手続きをスムーズに進め、複雑な税制を適切に理解する手助けとなります。


事業者としての義務を果たしつつ将来的なトラブルを回避するためにも、確実な準備を心がけましょう。


本記事が皆様にとって少しでもお役に立てますと幸いです。

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