絵を描くことが好きな人はもちろん、アニメやゲームなどが好きな人にとってもキャラクターデザイナーは憧れの職業といえるでしょう。キャラクターを生み出すのは楽しいですし、そのキャラクターが多くの人から愛されたときの喜びは大きなものです。キャラクターデザイナーを志す人の多くが「絵を描くことが好き」「キャラクターが好き」「ゲーム・アニメが好き」といった思いを抱いています。
とはいえ、キャラクターデザイナーは競争が激しく、人気商売でもあるため、厳しいことが多いのも現実です。また、キャラクターデザイナーの仕事はクライアントがいてはじめて成り立つため、自分好みのキャラクターばかりを生み出せるわけではありません。
本記事では、キャラクターデザイナーの概要を押さえた上で、キャラクターデザイナーについてなり方、年収事情、必要なスキル、働く方法などを見ていきましょう。
目次
1.キャラクターデザイナーとは
キャラクターデザイナーとはゲーム、アニメ作品などに登場するキャラクター、玩具や文具などにプリントされるキャラクターなどをデザインする仕事です。
キャラクターの種類はさまざまで人物や動物だけでなく、架空の完全オリジナルのキャラクターを生み出すこともあります。
また、キャラクターデザイナーは完全オリジナルのキャラクターを生み出すこともあれば、原作の世界観やクライアントの細やかな要望をベースにキャラクターをデザインすることもあります。
自分でキャラクターをイチから生み出す際は目新しく、多くの人から愛されるのはどのようなキャラクターなのか考える苦労があります。一方、原作の世界観やクライアントの要望に従ってキャラクターを生み出すときは、作品や商品の背景などを細かく理解することからはじめる必要があります。
キャラクターデザイナーにも数々の苦労はあるものの、自分がデザインしたキャラクターが世に出たときに感じる喜びは大きなものです。
2.キャラクターデザイナーの仕事内容
キャラクターデザイナーの主な仕事はキャラクターを生み出すことですが、その過程においてさまざまな仕事があります。
キャラクターデザイナーの仕事内容として、主に以下の5つが挙げられます。
クライアントやディレクターにヒアリング
デザイン案の作成
下絵の作成
色付け
最終チェック
それぞれ確認していきましょう。
クライアントやディレクターにヒアリング
キャラクターをデザインする際はクライアントやディレクターにヒアリングを行います。
キャラクターの用途、キャラクターを生み出す目的などによって、デザインするキャラクターは大きく異なります。例えば、女性向けブランドのPR用のキャラクターであれば、かわいらしいキャラクターが一般的に好まれるでしょう。
また、キャラクターを生み出す前にイメージやコンセプトなどを関係者と共有しておくことが大切です。クライアントがいる以上、ほとんどの仕事において完全に自己流で仕上げるわけにはいきません。
クライアントやディレクターとは納期やスケジュールなどについても話し合っておきます。
デザイン案の作成
ヒアリングで得た情報に基づき、キャラクターをデザインしていきます。
案件によって異なるものの、クライアントやアートディレクターのチェックがフェーズごとに入ります。
スケッチでラフデザインをいくつか作成したらアートディレクターやクライアントにチェックしてもらい、イメージに合うものを選んでもらいます。了承が得られるデザインがない場合は再度ラフデザインを作成します。
下絵の作成
ラフデザインが決まったら本番用の下絵を作成します。下絵の完成後、クライアントやアートディレクターから確認を受け、修正などを行います。
色付け
下絵に着色を行います。
色付け完了後にクライアントやアートディレクターのチェックを受けます。問題がなければ完成です。
3.キャラクターデザイナーのなり方
キャラクターデザイナーになりたい人の多くが、どうすればキャラクターデザイナーとしてデビューできるのか疑問を抱いています。憧れを抱きやすい職業であるものの、そのなり方は一般的にあまり知られていません。
キャラクターデザイナーのなり方として、主に以下の3つの方法が挙げられます。
大学・専門学校で学ぶ
資格を取得する
独学で学び、仕事を獲得する
それぞれ確認していきましょう。
大学・専門学校で学ぶ
キャラクターデザイナーとして働く上で学歴は必要ありません。キャラクターデザイナーは学歴よりもスキルや創造力、オリジナリティ、描写力などが重視されるためです。
とはいえ、大学・専門学校に進学することで、キャラクターデザイナーの仕事に必要なスキルを網羅的に学べるだけでなく、就職活動においてアピールポイントの1つになるのも事実です。
大学でキャラクターデザインについて学びたい人は美術系の大学やデザイン学科などがおすすめです。4年間にわたって美術やデザインについて広く、深く学べます。さらに、在学中にデザインの練習、制作活動も行えます。誰もが知る美大であれば、自身のブランディングにも役立つでしょう。
また、専門学校ではキャラクターデザイナーや美術について実践的に学べます。キャラクターデザインを主に学べる学科・コースだけでなく、アニメや漫画について学べる学科・コースも視野に入れることをおすすめします。
資格を取得する
キャラクターデザイナーとして働く上で必須の資格はありませんが、働く上で必要なスキルを学びながら資格を取得するのがおすすめです。
資格を保有していればキャラクターデザイナーとしての適正や即戦力になれることを採用面接などで客観的に証明できます。
キャラクターデザイナーとして働きたい人にはサーティファイのソフトウェア活用能力認定委員会が主催する「Illustratorクリエイター能力認定試験」と「Photoshopクリエイター能力試験」がおすすめです。これらの資格を保有していると、Illustratorを使ったグラフィックの制作能力、Photoshopを使ったデザインの表現能力があることを証明できます。
その他にも、色彩検定、CGクリエイター検定はキャラクターデザイナーにおすすめできます。これらの資格取得に向けて学ぶことで、キャラクターデザイナーとしての創作力やスキルも高められます。
独学で学び、仕事を獲得する
自分で学び、案件を獲得すれば、キャラクターデザイナーを名乗ることができます。
キャラクターデザイナーのなり方や仕事のノウハウはインターネット上で多く公開されている他、テキストで学ぶことも可能です。
知識やスキルを取得した後、キャラクターデザイナーとして案件を受注し、納品できれば、キャラクターデザイナーとして世間一般にも認められるでしょう。
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4.キャラクターデザイナーの年収事情
会社員のキャラクターデザイナーの年収は300万円から500万円程度といわれています。キャラクターは数多く存在し、日々新しいものが生み出されるため、生み出したキャラクターが爆発的にヒットをする可能性は低いのが現実です。
「令和5年分民間給与実態統計調査」では、正社員の平均年収は530万円と算出されており、多くのキャラクターデザイナーは一般的な会社員と同等の給与を得て、生活しています。
また、キャラクターデザイナーはフリーランスとして働く方法もあります。参考までに、フリーランスエンジニア・ITフリーランスの案件・求人・仕事をまとめて検索できるフリーランスボードによると、フリーランスのキャラクターデザイナーの平均単価は68.9万円です。なお、最高単価は90万円となっています(2025年1月時点)。
キャラクターデザイナーの最高年収は分かりかねるものの、人気キャラクターを生み出したり、フリーランスとして多くの仕事を獲得したりすれば年収1,000万円以上と高い年収を期待できます。
その一方、他のクリエイティブワークにもいえることですが、キャラクターデザイナーとして才能が認められるまではアシスタントとして低い給与で働いたり、低単価の案件を受注したりしなければならないこともあります。
5.キャラクターデザイナーが高収入を得る方法
キャラクターデザイナーとして働く人であれば、誰もが今よりも年収をアップさせたいと思っているはずです。
キャラクターデザイナーが高収入を得る方法として、以下の3つが挙げられます。
大手制作会社に就職する
上位職にキャリアアップする
フリーランスになる
それぞれ確認していきましょう。
大手制作会社に就職する
いずれの職業にもいえることですが、中小規模の企業よりも大手企業の方が従業員の年収が高い傾向にあります。大手企業は経営が安定しているため従業員の給与水準が高く、かつ福利厚生が充実しています。
キャラクターデザイナーの場合、大手制作会社に在籍していると大手企業からの依頼や規模が大きいプロジェクトに携わりやすくなります。これらの仕事は予算も潤沢であるため、関係者に支払われる報酬も高い傾向にあります。
上位職にキャリアアップする
キャラクターデザイナーとしてキャリアアップすることで年収を上げられます。キャラクターデザイナーからアートディレクター、クリエイティブディレクターなどマネジメント職を目指すのも手です。
これらの職はデザインだけでなく、プロジェクトメンバーを指揮したり、関係者と交渉したりと仕事内容は多岐にわたります。キャラクターデザインだけをしたい人には不向きかもしれませんが、年収アップを見込めるだけでなく、社会人としての経験値も高められます。
プロジェクト管理やチームの統率経験がある人はさまざまな業界でニーズがあるため、キャリアを将来的に大きくチェンジしたい人にもおすすめです。
フリーランスになる
フリーランスのキャラクターデザイナーは自分で仕事を選んだり、クライアントと単価を交渉したりできます。また、複数の仕事を掛け持ちすることもできるため、自分の努力次第で収入を短期間で大幅にアップすることも可能です。
人気のあるキャラクターデザイナー、実績や高いスキルがあるキャラクターデザイナーは高額な案件を請け負えます。会社と折半することもないため、会社員時代よりも年収が大幅に増えます。
ただし、フリーランスとして働く場合、営業活動や事務、経理などは自分で行う必要があります。
6.キャラクターデザイナーとして働く方法
キャラクターデザイナーは多様な働き方ができる仕事なので、自分のライフスタイルや希望する年収に応じて仕事を探せます。
キャラクターデザイナーの仕事の見つけ方として、主に以下の2つが挙げられます。
クラウドソーシングの利用
企業に入社する
それぞれ確認していきましょう。
クラウドソーシングの利用
キャラクターデザイナーの仕事に副業、もしくはフリーランスとして従事したい人にはクラウドソーシングサイトの活用がおすすめです。
とあるクラウドソーシングサイトには企業のPRキャラクターのデザインの求人や、グッズにプリントするキャラクターデザインの求人、女性向けタイトルのキャラクターイラストの求人などがあります。
クラウドソーシングサイト上の求人の多くが完全在宅、かつ単発で働けます。本業と両立したい人や趣味として働きたい人にもおすすめです。
企業に入社する
キャラクターデザイナーとして働く方法として、企業への入社もあります。例えばWebデザイン会社、玩具メーカー、デザイン事務所、アニメ・ゲーム会社などはキャラクターデザイナーの主な勤務先です。募集は限られているものの、正社員として入社できれば、安定的な収入を得られます。
近年、国内外におけるアニメブームの影響もあり、アニメ関連グッズのデザインの仕事は人材が求められています。また、企業や市町村広告用のキャラクターデザインも需要があります。
7.キャラクターデザイナーに向いている人の特徴
キャラクターデザイナーとして働きたい人の中には、自分がキャラクターデザイナーに向いているのか悩んでいる人もいるのではないでしょうか。
キャラクターデザイナーに向いている人の特徴として、主に以下の5つが挙げられます。
絵を描くのが好き
創造力がある
アニメ・ゲームのファン
黙々と作業するのが得意
プレゼンテーション能力がある
コミュニケーション能力がある
最新トレンドに敏感
それぞれ確認していきましょう。
絵を描くのが好き
キャラクターデザイナーとしてもっとも大切なことは絵を描くのが好きという気持ちです。
キャラクターデザイナーは絵を描く時間が長いため好きであれば楽しく、充実した日々を過ごせます。しかし、そうでなければきついと感じるでしょう。
キャラクターデザイナーはデッサンやCGなどを使いデザインをしていきますが、自分が思い描いているイメージをどのようにかたちにしていくかが大切なポイントになります。
独自の世界観をもっていて、その世界観に多くの人が共感すれば、人気も増大します。
創造力がある
キャラクターデザイナーは絵が人よりもうまいだけでは活躍できません。
キャラクターデザイナーにとって一定以上の絵のスキルがあることは前提となるため、アピールポイントにならないこともあります。
オリジナリティあふれるキャラクターを生み出せるか、多くの人のニーズや好みを汲み取ったキャラクターを生み出せるかが成功する上で重要なポイントです。
これまでにない斬新なキャラクターを生み出すことができれば、多くの人からおもしろがられてヒットすることもあります。
アニメ・ゲームのファン
キャラクターデザイナーにとってアニメ関連の会社やゲーム関連の会社は主な就職先の1つとなります。
ゲーム・アニメが好きな人であれば自分に身近な業界で働けるため、やりがいや喜びは大きなものでしょう。また、自分もアニメ・ゲームのファンであれば、アニメの視聴者やゲームのプレイヤーの気持ちを理解しやすいため、ファンのニーズを仕事に反映できる可能性も高いです。
黙々と作業するのが得意
キャラクターデザイナーは周囲とのコミュニケーションも大切ですが、黙々と作業に没頭する時間は他の職業と比べて長いといえます。
ラフデザインでは繰り返し書き直しを行うなど忍耐が求められることもありますし、清書ではキャラクターの顔立ちや衣装などを精密に描き込まなければなりません。
キャラクターデザイナーには長時間にわたって集中し、キャラクターを仕上げていかなければならない時期もあります。
黙々と作業するのが得意でない人、長時間にわたって集中するのが苦手な人は、慣れるまでは大変に思うかもしれません。
プレゼンテーション能力がある
キャラクターデザイナーに対してキャラクターを黙々と描くイメージを抱いている人もいますが、周囲とのコミュニケーションは日常的に発生します。
また、自分のキャラクターや自分が生み出す予定のキャラクターのコンセプトを関係者に納得させられる力も求められます。コンセプトづくりの段階ではプレゼンテーションを行ったり、関係者会議で方針を説明したりする機会もあります。キャラクターに関することはもちろん、自分の考えや思いを分かりやすく伝える力も求められます。
コミュニケーション能力がある
キャラクターデザイナーは絵がうまく、想像力がゆたかなだけでは難しいでしょう。キャラクターデザイナーの仕事はクライアントがいてはじめて成り立つ仕事ですので、周囲とコミュニケーションをとる機会は多々あります。
自分の意見をしっかり伝えて、キャラクターのアイデアを納得してもらうことが必要なシーンもあります。また、クライアントの要望を汲み取ることで、より良いキャラクターデザインになることもあります。
進捗状況や自身の体調によっては、スケジュール調整の交渉などを行うこともあります。
最新トレンドに敏感
人気キャラクターを生み出すにはその時代のトレンドやゲームのトレンドを意識することが不可欠です。トレンドが意識されていないキャラクターがヒットすることはありますが、各時代ごとの人気キャラクターを細部まで見てみると類似点に気づくこともあります。
例えば、どの時代も愛らしさを醸し出す大きな瞳や、親しみを感じさせる柔らかなフォルムといった共通点があります。これらの共通点は人々がキャラクターに求める安心感や魅力を端的に表しており、結果として爆発的なヒットにつながる一因となっています。
また、ゲームのキャラクターをデザインする場合、ゲーム業界のトレンドと最新のテクノロジーを押さえておく必要があります。例えば、近年は3Dモデリング技術が進化しています。これにより、ゲームのキャラクターにもリアルな表現が求められています。新しいツールを活用し、時代の進化に合ったキャラクターを生み出す力が求められます。
8.キャラクターデザイナーの将来性
キャラクターデザイナーの将来性はあるといえます。ゲームやアニメなどは今後も人気の安定した継続が見込まれますし、エンターテインメントが存在する限りキャラクターデザイナーのニーズはあると一般的に考えられます。
しかし、すべてのキャラクターデザイナーが安定した収入を稼ぎ続けられるわけではありません。キャラクターデザイナーは昔から人気の仕事で、競争率が激しかったものの、SNSの普及で競争はさらに激しくなりました。
例えば、プロだけでなく、一般人がSNSにイラストやキャラクターを何気なく投稿し、大ブームになることもあります。こうした場合、描き手の学歴などは求められませんので、美大や美術系の専門学校で学んだ経験がない人も、人気キャラクターデザイナーとして力を増していくことになります。
キャラクターデザイナーとして長く活躍するには創造力やオリジナリティを育みながらも、3DやVRなどの新しい技術を取得したり、消費者のニーズを汲み取ったりすることが求められます。
近年、AIの進歩はキャラクターデザイナーの領域にも大きな影響を及ぼしています。自動着色や構図の提案など、これまで手間と時間がかかっていた作業を短時間で行える環境が整いつつあります。
その一方、技術を使いこなすスキルや、AIには生み出せない独自のアイデアがますます重要視されています。特にAIには得意な作業と不得手な分野が存在し、どのように協働するかがクリエイターの腕の見せどころともいえます。
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9.まとめ
キャラクターデザイナーの多くが自分の好きなことを仕事にしています。恵まれた職業のように思えるものの、人気が出るまでに時間を要する人も多く、かつ同業者間で収入格差があります。また、キャラクターデザイナーとして高い年収を稼げるのは限られた人たちだけです。
キャラクターデザイナーとして安定的な収入を長期的に得たい人は正社員になるのも一つの手です。また、デザイナーとしてスキルアップしたり、周囲のニーズをうまく汲み取ったりすることで多くの依頼が入るはずです。
本記事が皆様にとって少しでもお役に立てますと幸いです。