「早期退職の理由を言いづらい」「早期退職はあまり良くないのだろうか」とお悩みではありませんか。
日本は職業選択の自由があり、昨今では転職もごく当たり前になってきたのに、やはりご自身のこととなると悩まれることもあるでしょう。まずは早期退職がどのようなものかを理解し、不安や悩みを解消しながら、新しいキャリアに向けて前向きになることが大切です。
今回は早期退職の理由で悩んだ時に知っておくべき7つのポイントについてお話しします。
目次
1.まずは早期退職と早期離職の違いを知る
早期退職の理由を考えていると、感情的でネガティブな気持ちになってしまいがちです。まずは論理的かつ理性的に考えられるようにするためにも、早期退職と早期離職の違いを知ることから始めましょう。
早期退職と早期離職は異なる意味合いではあるものの、現在においては曖昧になっているため、情報収集をする際は混同しないように注意しましょう。
早期退職とは
そもそも退職とは、本来は引退に近い用語として用いられてきました。例えば、定年退職される方が「職を退く」といったような形で用いられてきたと言えます。
そして早期退職とは、定年退職の期日を迎える前に、仕事を退職するという意味合いであり、60歳や65歳より手前で退くことが本来の定義だったと言えるでしょう。
現代においては、様々な理由で「早期退職制度」を実施する企業が少しずつ増えており、40代から50代、企業が定めた年齢の方が退職制度を利用することで、退職金の優遇や子会社への転向が促されるといった仕組みが出てきました。
早期離職とは
離職という言葉は「職を離れる」という意味であり、仕事を辞めることを意味するだけでなく、一時的に仕事を離れる時にも離職と表現するのが一般的です。例えば、出産や育児に伴う休暇も離職と言えますし、病気や怪我などで入院する時も離職という言葉を使うでしょう。
そして早期離職とは、新卒が3年程度以内に離職してしまうことを指す用語として用いられてきました。昨今においては、「就職してもすぐに離職してしまう」といったようなイメージでも用いられることがあります。
2.厚生労働省のデータから見る離職理由ランキング
次に早期退職について、「令和5年雇用動向調査結果の概況」に掲載されている離職理由(早期退職とは限らない)をランキング形式で参考にしてみましょう。
転職入職者が前職を辞めた理由:男性
職場の人間関係が好ましくなかった:9.1%
給料等収入が少なかった:8.2%
労働時間、休日等の労働条件が悪かった:8.1%
仕事の内容に興味を持てなかった:7.4%
会社の将来が不安だった:5.2%
上記は男性の前職を辞めた理由ランキングの上位5位です。会社都合や出向、定年や契約などは含まれない順序となります。個人ごとの細かな状況は大きく異なる可能性はあるものの、男性の場合はおおよそこれらに収束するということです。
転職入職者が前職を辞めた理由:女性
職場の人間関係が好ましくなかった:13.0%
労働時間、休日等の労働条件が悪かった:11.1%
給料等収入が少なかった:7.1%
能力・個性・資格を活かせなかった:5.4%
仕事の内容に興味を持てなかった:5.0%
上記は女性の前職を辞めた理由のランキング上位5位です。男性と同様に会社都合や出向、定年や契約などは含まれない順序となります。結婚や出産・育児という理由が上位に入ってくると推測したものの、男性と同じような順位となっていることから、性別による差はほとんどないということです。
また、女性は男性と比較して「人間関係」「労働環境」を理由として回答する人の割合が多いです。このことから女性の方がより会社の居心地を重視していることがわかります。
誰もがそう変わらない離職理由であると理解する
離職理由については、人間関係と労働条件及び労働環境に収束されることが分かりました。また、人間関係が好ましくないという項目には、一言では表せないような個別の理由があることも考えられるため、複雑な状況や環境に遭遇してしまう人は一定数存在するということです。
これらのデータから読み解いていただきたいのは、離職する理由は誰もがそう変わらないということ、相性の合わない環境に遭遇してしまうことは誰にでもあり得ることと言えます。そして環境を変えることはごく自然なことだとポジティブに考えて、少しずつ行動に移していこうと、ゆっくりと考えてみてください。
3.早期退職理由別の対処法
早期退職の理由で悩む場合、その理由で仕事を辞めても良いのか、伝えても良いのかで悩んでしまいがちです。まずは早期退職の理由を客観的に分析するために、自分自身のことを棚卸ししてみましょう。
早期退職の理由がポジティブの場合
早期退職の理由がポジティブな場合、例えば理想に近い職場だったものの、さらに良い職場を目指したい、スキルアップに繋がると思ったがもっとスキルアップできるような環境で働きたいなど、退職を告げる時も採用や転職先で聞かれた時もそのまま答えることができます。
自分自身の気持ち的にもポジティブな状態で転職やキャリアチェンジを行えることから、あまりネガティブに考えすぎずに進めていくと良いでしょう。また、早期退職の理由がポジティブの場合ですと、前職に戻れるチャンスも得られるため、周囲とのコミュニケーションを良好に保ちながら次に進むということを意識してみてください。
早期退職の理由が自分(内側)でネガティブな場合
早期退職の理由を考えた時に、自分自身の内側のネガティブな理由なこともあるでしょう。その場合においてもまずは受け止めることから始めてみてください。特に自分が理由の場合はネガティブに考えてしまいがちですし、自分が悪いと落ち込んでしまうこともあるでしょう。
まずは早期退職の理由を考えている時点で内容にかかわらず、環境が自分に合っていないことを認識することが大切です。その上で本当に自分が理由であったとしても、客観的に受け止め改善するために退職をし、次の職場に行くというポジティブな気持ちに切り替えていきましょう。
早期退職の理由が会社(外側)でネガティブな場合
早期退職の理由が自分ではなく、会社や環境などが外側でネガティブなこともあるでしょう。その場合は一旦冷静になり、仕事をしながらゆっくりと転職活動を進めていくことから始めてみてください。注意したいのは、悩んでいるのに時間だけが過ぎてしまうことです。
会社や環境がネガティブなことで退職したい場合、まずそのままでは改善されることはありません。そのため、退職し環境自体を変えてしまう必要があるとポジティブに考える必要があります。
なかなか次が見つからないということで悩むこともあるかもしれませんが、「環境を変えなければ次に進めない」と気持ちを切り替えて、じっくりと転職活動を進めていきましょう。
4.早期退職の理由がパワハラで悩んでいる場合
早期退職の理由がパワハラで悩んでいる場合、悩むよりも後腐れなく退職してしまった方が良い場合もありますが、パワハラは社会問題でもあるため、いくつかの取り組みができることも知っておきましょう。
社内相談窓口の活用する
パワハラの状況や程度にはよるものの、パワハラで悩んでいる場合は社内や組織内に相談できる窓口があれば先に相談することから始めてみましょう。ただし、精神的にやり取りをするのが難しいと考えた場合は、無理に相談する必要はありません。
特にパワハラ以外の部分の環境が気に入っている場合、もしくはその職業で仕事をしたくて一生懸命努力をしてきた場合など、簡単に手放すのが悔しい場合もあるでしょう。企業や組織の規模にはよりますが、相談することで改善できる可能性があるということも覚えておいてください。
労働基準監督署など公的機関に相談する
社内や組織内の窓口では相談できないと悩んだ場合は、労働基準監督署など公的機関に相談することも検討してみましょう。この場合においても、精神的に無理な場合は相談せず、転職に向けて前向きに時間を費やしていくことをおすすめします。
また、相談することで改善につながる可能性はある反面、やり取り自体がストレスになってしまったり、結果として自分自身が疲れてしまったりするということもあらかじめ留意しておいてください。ただし、今の仕事が気に入っているような場合においては、ある程度の覚悟を持って話を進めていくことも視野に入れておきましょう。
悪質な場合は弁護士への相談も視野に
パワハラが理由で、さらに悪質な場合は弁護士への相談も視野に入れましょう。ただし、その他の方法と同様に時間が必要になりますし、相談するための費用も発生してしまいます。
精神的な疲れだけでなく、金銭的な消費を伴うことを考えると、転職に時間やお金のコストを費やした方が良いとも考えておきましょう。
早期退職の理由がパワハラの場合に共通するのは、自分の外側の要因で退職を決意している点です。そのため、対抗していくという方法もありますが、外側、すなわち他人を変えることはできない、同じく環境を変えることはできないと捉えて、自分自身が働く場所をチェンジした方が全てを一掃できると考えてみても良いでしょう。
5.早期退職の理由が体調不良で悩んでいる場合
早期退職の理由が体調不良で悩んでいる場合、体や心の体調がすぐれないまま働き続けていたり、転職活動する意欲や時間がなかったりすることで長引いてしまうこともあります。まずはどのようにすべきかを整理し、次にどう進めばいいかを考えられるようにしましょう。
心身の回復を最優先にする
早期退職の理由が体調不良で悩んでいる場合は、まずはご自身の心身の回復を最優先にすることが大切です。具体的な原因が分かっているのであれば、直属の上司や周囲に相談してみても良いでしょう。
ただし、体調不良の原因とは別で、相談できないような環境であれば無理に相談する必要はありません。
また、状況によっては傷病手当金などの受給なども視野に入ってくることから、医療機関や担当のお医者さんに相談して、診断書などを作ってもらうことなども重要と言えます。特に職場環境に不満はないものの、自分自身の体調が優れないことが続いて迷惑をかけているようなポジティブな気持ちの場合において、まずは直して復帰するという道筋があるということも知っておいてください。
心理的なものであっても医療機関へ受診する
早期退職の理由が体調不良、そして心理的なものであってもまずは医療機関に行きましょう。例えば、職場の環境によるストレスで心理的な病気が発生しているような場合において、診断書をもらうことで傷病手当金などの受給が視野に入ってきます。
また、同じく状況によっては退職することで、労災保険などがスムーズに支給されることも調べておくべきです。心理的な病気だから必ずもらえるといったような類ではありませんし、何よりも退職しなければもらえないというものですので、少しだけ調べて勢いで退職してしまうようなことはないよう注意してください。
自分自身の働く意思をしっかりと見極める
早期退職の理由が体調不良の場合、体調不良を理由として現在の環境から離れたいと考えていることもあるでしょう。そのため、体調不良が理由なのか、嘘ではないが体調不良を理由に退職したいのか明確にすることが重要です。
現在の職場を離れることが自分にとって本当に良い結果になるのか、体調さえ治れば働きたいのか、体調が治っても働きたくないのかを明確にすることで、次の段階に進むことができますし、心や体の回復に合わせて少しずつ就職活動をしていくことができるようになるでしょう。
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6.面接や転職後の早期退職の理由の伝え方
早期退職の理由について自己分析や状況ごとの対応をある程度把握し、自分自身の次の段階が見えてくるようになったら、面接や転職後の早期退職の理由の伝え方を考える段階です。前提としてどんな理由であれ、早期退職が必ずしもネガティブではない、むしろ自分の未来にとってポジティブであると考えることから始めましょう。
退職理由を伝える法的義務はない
まずは早期退職の理由を伝えることに弱気にならないようにするためにも、前提として退職理由を伝える法的な義務はないということを知っておきましょう。
難しいのが、法的な義務はなくても採用する側は退職理由を知りたいという点です。必ずしも退職理由を伝えないことが採用の可否に影響するとは限らないものの、面接や採用の段階で誠実に答えてもらえないというのは良い印象にならない可能性が否めません。
そのため、早期退職の理由の内容に関わらず、弱気にならないことから始めるべきです。むしろ、転職というタイミングで弱気になってしまうのは、面接時の態度にも現れてしまうということも理解しておきましょう。
早期退職理由で嘘をつくのは自分にとってマイナス
退職理由を伝える法的な義務はないものの、採用する側のことを考えると伝えるべきだということ、弱気であるべきではないことが理解できたら、次は早期退職理由で嘘をつくのは自分にとってマイナスであることを理解してください。
例えば採用時に退職理由で嘘をつき、そして無事に就職した後に周囲の人に聞かれたタイミングで嘘をつくとなると、自分自身にずっとストレスがかかった状態になってしまいます。結果的に自分自身が働きにくい環境を作り出してしまうということを忘れず、早期退職理由で嘘をつかないことが重要だと考えるようにしましょう。
ネガティブな内容も伝え方次第だと知る
早期退職の理由で悩んでいる場合、正直に答えてしまったら採用されないのではないか、もしくは転職後も働きにくいのではないかと考えてしまうこともあるでしょう。
しかし、実際には退職や転職の理由はほとんど5つぐらいの要素に収束されることを考えると、あまり悩みすぎても働くことへの障壁にしかならないと知っておいてください。
早期退職の理由がご自身でネガティブな内容だと思っていても、伝え方次第であるということも理解すべきです。
職場の人間関係が好ましくなかった
給料等収入が少なかった
労働時間、休日等の労働条件が悪かった
仕事の内容に興味を持てなかった
会社の将来が不安だった
例えば上記は男性転職入職者が前職を辞めた理由上位5位ですが、これらはアンケートの項目で選ばれた順位になります。どの項目も採用する側からすれば、同じような条件が自社に当てはまってしまうと早期退職されてしまうのではないかと考えられてしまうことは当然です。
よりコミュニケーションが円滑な環境で働きたい
スキルアップと共に給与のアップを目指したい
ライフワークバランスを考えて仕事を頑張りたい
自社の商品やサービスが好きで貢献したい
より成長力の強い企業で働きたい
上記は男性転職入職者が前職を辞めた理由をポジティブに言い換えた文章です。とても前向きに見えますし、何よりも嘘をついているわけではありません。むしろ、ネガティブな理由でやめてしまったと考える方が不自然であると言えるでしょう。
早期退職の理由で悩んでる状況も同じであり、ネガティブに考えれば状況は改善しにくいですが、ポジティブに考えていくことで、状況が良くなっていくと考えることが大切です。
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7.50代以降で早期退職制度を検討する場合の注意点
大手有名企業やメーカー及びブランドにおいても、早期退職制度が実施されることもあり、ご自身が対象となることもあるでしょう。しかし、何らかの優遇措置はあるとしても、安易に飛びついてしまうことでリスクがあるのも知っておくべきです。
実際に50代以降で早期退職制度を検討する段階で注意すべきことをいくつかご紹介します。
退職後のキャリア形成が明確でないと大変な思いをする
50代以降で早期退職制度を検討する場合の注意点として、退職後のキャリア形成が明確でないと大変な思いをすることが挙げられます。特に長年同じ企業に勤めていた方の場合、例えば子会社への移行や同じような業界への転職が約束されていれば別ですが、退職金としてある程度まとまった金額をあてにして早期退職制度を利用してしまうと「早期退職しなければよかった」という結果になりかねません。
そのため、退職後に仕事が明確に定まっていない場合は早期退職制度に飛びつくのは避けましょう。また、長年働いていると退職自体が解放のようなイメージになってしまい、まるでどんなことでもできるような過度な期待を抱いてしまうこともありえます。
退職をすることで人生が急激に変化するということはありえません。次が決まっていなければ、単に仕事と収入を失ってしまうだけのことだということをまずは理解しておきましょう。
採用する側の目線に立って自分を客観視する
早期退職制度を利用して、退職後に少しゆっくりした後、転職活動をしたいと考えることもあるでしょう。その場合は採用する側の目線に立って自分を客観視することから始めてみてください。今までの実務経験や実績、キャリア、知識、スキルがあったとしても年齢的に50代以降となれば、定年までに働ける期間はあまり長くありません。
企業や組織の体質にはよるものの、賃金を支払うのであれば若い世代に支払いたいと考えるかもしれませんし、同じような状況でさらに良い条件の人材がいればそちらを採用するのが常でしょう。
もちろん、早期退職制度を利用される方の市場価値にもよる部分はありますが、まずは自分の棚卸しを行うこと、自分自身が経営者であれば、自分自身を雇いたいかという目線を持つことが大切です。
その上で転職活動を行うために重要なのは、今までのキャリアでの知識やスキルはあるものの、あくまでも新卒と同様に初心に帰ること、自分が新人として採用されるのだという意識を持って面接と転職後の仕事に注力していくことをおすすめします。
「早期退職制度を利用した」という理由の優位性
早期退職をした理由が「早期退職制度を利用した」である場合、もしかしたら利用された方は何らかの優位性を感じている可能性があるかもしれません。しかし、面接や転職後に得意げに語ってしまうのはあまり得策とは言えないでしょう。
採用する側からすれば、同じような制度があればまた利用して退職してしまうのではないか、同じ職場で働く方も同様のことを考えるかもしれません。そのため、早期退職制度を利用したこと自体は事実であっても、前述したように伝え方次第で変わるということも再度理解しておいてください。
例えば、長年勤めて得たノウハウやナレッジを新しい環境で役立てたい、もしくはマネジメントなどの能力を異なる環境でも十分に生かして新しい環境で成長したいという言い方をすることで、単に早期退職制度を利用して退職した人なんだというネガティブなイメージから、ポジティブなイメージにすることができるようになるでしょう。
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8.まとめ
今回は早期退職の理由で悩んだ時に知っておくべき7つのポイントについてお話しました。
早期退職の理由で悩んでいる時点で、その理由の内容に関わらず、現在の職場がご自身に合っていない可能性は十分に考えられます。ミスマッチしている状況で働き続けるのは心身の負担にもなりますし、我慢している時間が成長やキャリア形成を遅らせる要因にもなってしまうのです。
まずは早期退職が自分の人生を良くするきっかけであると理解し、後ろ向きで不安になってしまうような感情的ではなく、前向きで論理的かつ理性的に一つ一つの手続きを進めていくようにしましょう。職場環境が変わることで、新しい日々が手に入ると考えること、もし次も早期退職になったとしても、切り替えながら前向きに自分にあった職場を見つけられるように頑張ってみてください。
最後までお読みいただきありがとうございました。
本記事が皆様にとって少しでもお役に立てますと幸いです。