フリーランスエンジニアとして、会社に所属せず個人事業主として働く人も近年増えています。フリーランスという働き方には独自の魅力・メリットがあるため、人によってはより良い仕事環境を構築できる可能性があるでしょう。
一方で、フリーランスエンジニアになる際には、その現実と向き合う必要があります。フリーランスエンジニアには厳しい面もあり、現実的に「自分がフリーランスとして働いていけるのか?」ということをきちんと考えなければなりません。フリーランスエンジニアになってから後悔しないためにも、まずどのような現実と直面することになるのか、事前に把握しておくのが重要です。
本記事では、フリーランスエンジニアの現実と現状、メリット・デメリットや向いている人の特徴などについて解説します。これからフリーランスエンジニアを目指す人は、ぜひ参考にしてください。
目次
1.フリーランスエンジニアの現実
フリーランスエンジニアになるには、現実的な要素と向き合う必要があります。以下では、フリーランスエンジニアの現実について解説します。
フリーランスエンジニアはきつい?
フリーランスエンジニアとして働くことを、「きつい」と感じる人もいます。「フリーランスは自由で働きやすい」というイメージを持たれることもありますが、必ずしも「楽な働き方」ではない点には注意すべきでしょう。
ときにはさばききれない量の仕事に追われて徹夜になったり、修正が重なって予想以上の労働時間になったりすることもあるでしょう。クライアントとトラブルになるケースもあり、その場合には自分の力で問題を解決しなければなりません。
そういった現実の問題が重なって、「フリーランスエンジニアはきつい」と感じることもあるでしょう。実際にフリーランスエンジニアを経験した結果、「フリーランスはやめとけ」という結論に至った人もいます。SNSや2ch(現在の5ch)のようなネット掲示板でも、フリーランスエンジニアの現実問題の辛さに直面している声を聞けます。
もちろん、すべてのフリーランスエンジニアがきつい・辛い思いをしているわけではありません。なかには会社員時代よりも、充実した気持ちで働けている人もいるでしょう。しかし、現実的な問題に悩んでしまう可能性があることは、フリーランスエンジニアになる前に知っておくべきだと言えます。
フリーランスエンジニアは飽和状態なのか?
フリーランスエンジニアの人数は増加傾向にあり、現在も多くの人が個人事業主という形で仕事をしています。
フリーランスエンジニアの人数は増加していますが、以下データをみるとそれ以上の速度で市場が成長しているため、人材が飽和状態となって仕事にあぶれる危険は少ないと言えるでしょう。
INSTANTROOM株式会社の「ITフリーランス人材及びITフリーランスエージェントの市場調査(2024年版)」によると、フリーランスエージェント業界における2023年の市場規模は、2,063億円と算出されています。
2022年には1,445億円だったため、前年比142.8%と大きく成長していることがわかります。フリーランスエージェント市場は2027年に、4,000億円を突破することが予測されています。あわせて国内IT人材の約1/3が、ITフリーランス人材によって占められると予測されている点にも注目です。
フリーランスエンジニアの年収事情
フリーランス求人・案件を取り扱っている「フリーランスボード」によると、フリーランスエンジニアの平均年収は約851万円(月額単価70.9万円より算出)です。国税庁の「令和5年分 民間給与実態統計調査」では正社員の平均年収が530万円となっているため、フリーランスエンジニアの方が高年収であることがわかります。
その一方で、年収が上がらずに悩んでいるフリーランスがいるのも現実です。
「データで見る日本のフリーランス」を参考にすると、 前職を退職した経験のあるIT系フリーランスの現在の平均年収は393万円となっています。前職と比較して56万円下がっている結果であるため、フリーランスとなっても収入が伸び悩む方が多いようです。
また、こちらのデータではフリーランス関連の職務歴が約8.4年とのことです。
令和5年賃金構造基本統計調査のデータでは、情報通信業における労働者の平均勤続年数が12.2年であるため、年収が低いことがフリーランス歴の短さの要因の1つである可能性があります。
フリーランスエンジニアとして働ける寿命は?
フリーランスエンジニアには定年がないため、いつまでも働き続けられます。しかし、現実問題として体力や健康問題を考慮すると、一般的な定年と同程度の年齢までがフリーランスエンジニアとしての寿命になるでしょう。
フリーランスエンジニアの寿命については、「35歳定年説」というものがあります。これはフリーランスエンジニアとして働くための体力や気力、新しいスキルを習得する難易度などを考慮した結果、35歳までしか働けないという考え方です。
しかし、実際に35歳を過ぎて働いているフリーランスエンジニアは多く、フリーランス協会の「フリーランス白書2024」を参考にすると、約90%の人が30代以上でフリーランスとして働いているという結果になっています。そのため「35歳定年説」は古い考えであり、現実的にフリーランスエンジニアとして長期的に働き続けることは可能だと言えます。
2.フリーランスエンジニアは楽しい?として働く魅力やメリット
フリーランスエンジニアとして働くことには、多くのメリットを得られる可能性があります。以下では、フリーランスエンジニアが働く際にどのようなメリットがあるのか解説します。
実力次第で収入を増やせる
フリーランスエンジニアは、実力次第で収入を増やせる点が1つのメリットです。エンジニアとして特別なスキルや得意な領域を持っていれば、高単価の案件・求人で採用される可能性が高まります。継続して高単価の仕事を確保できれば、収入の大幅な上昇にも期待できます。
先に紹介した通り、フリーランスエンジニアになって収入がアップした人は多いです。現在の収入に不満がある人は、フリーランスエンジニアになって年収アップを目指すのも1つの方法となるでしょう。
仕事量を調整しやすい
フリーランスエンジニアは基本的に、自分の裁量で仕事量を調整できます。余裕のあるときには多くの仕事を入れて、高収入を得ることも可能です。逆にプライベートを重視したい場合には、仕事の量を抑えて自分の時間を確保することもできます。ある程度自由に仕事の時間と量を調節できる点は、フリーランスエンジニアになるメリットだと言えるでしょう。
働く場所や時間が自由
フリーランスエンジニアは、働く場所や時間を自由に選べるのもメリットです。フルリモートの案件・求人も多いため、完全在宅で仕事をすることも可能です。
毎日の通勤が必要なくなれば、その分スキルアップの勉強やプライベートの楽しみに時間を費やせます。在宅勤務が自分に合っていると思える場合には、フリーランスエンジニアとしてフルリモートで働くのも1つの方法です。
案件・求人次第では、働く時間も自由になります。成果主義の仕事であれば、昼夜問わず自分の働きたいタイミングで作業が可能です。「夜の方がやる気が出る」「早朝のうちに仕事を片付けたい」といった、自分のニーズに合わせた働き方を実現できるでしょう。
人間関係で悩むことが少ない
フリーランスエンジニアは1つの会社・組織に縛られることがないため、人間関係に悩むことが比較的少ない点もメリットです。ある程度割り切って仕事の関係性を築けるため、上手く立ち回ればストレスを抑えながら働けるでしょう。
一方で、フリーランスエンジニアでも周囲との人間関係は重要です。仮に契約期間が短い案件だとしても、良好な関係を築けないと仕事に支障が出る可能性もあります。自身の評判にも関わり、その後の仕事に悪影響となるケースも懸念されるため、「人間関係を大切にする」という仕事の基本は忘れないようにしましょう。
関連記事
フリーランスの年収とは?エンジニアの平均年収や会社員との比較、税金なども解説!
フリーランス・個人事業主の年収別手取りシミュレーションなど|かかる税金も詳しく解説!
3.フリーランスエンジニアが注意すべきデメリット
フリーランスエンジニアとして働く場合、さまざまなデメリットを現実として受け入れる必要もあります。以下では、フリーランスエンジニアの働き方におけるデメリットについて解説します。
収入が安定しない
フリーランスエンジニアは、収入が不安定になりやすい現実があります。必ずしも高単価の案件・求人を確保できるとは限らず、場合によっては仕事が途絶えがちになる可能性もあるでしょう。計画的に案件・求人に応募したり、スキルアップを続けて高単価の仕事に採用されやすくしたりと、対策が必要になります。
収入が安定しない期間が続くと、メンタルに負担が重くのしかかるケースもあります。せっかく仕事を獲得できても、心が不安定だと作業に支障が出る可能性があるため、普段からメンタルケアを考慮した生活することもポイントです。
孤独を感じやすい
フリーランスエンジニアは仕事を1人で行うことも多いため、孤独を感じやすいです。特にフルリモートで働く場合、人と接触する機会が激減することから、孤独感に悩まされるリスクが高まります。
孤独はストレスの原因になり、仕事の継続にも影響する可能性がある要素です。そのためフリーランスエンジニアとして働く際には、積極的に周囲と交流したり、外に出て仕事以外の人間関係を構築したりして、孤独を忘れるための対策を行うのも重要です。
会社からの支援を受けられない
基本的にフリーランスエンジニアは、会社からの支援を受けられません。例えば会社員が利用できる福利厚生を、同じように使用することはできない点はデメリットです。トラブルの際にも自分自身で解決しなければならないため、ときには精神的な負担が大きくなる可能性もあるでしょう。
フリーランスエンジニアとして働く際には、フリーランス向けの福利厚生を使うのがおすすめです。
フリーランスが加入できる保険や支援制度があるため、事前に詳細を確認しておくと良いでしょう。
関連記事
年収1000万円のフリーランスの割合は?フリーランスの年収UPの方法や支払う税金など解説
フリーランスに適した損害賠償保険とは?保険でリスクから自分を守る方法
4.実力不足のフリーランスエンジニアを待つ末路とは?
フリーランスエンジニアは実力が重要視される世界であるため、スキル不足の人は現実に打ちのめされる可能性があります。以下では、実力不足のフリーランスエンジニアの末路について解説します。
単価の安い仕事しか受けられない
エンジニアとして知識・技術が不足していると、単価の安い仕事しか受けられない状況が続く可能性があります。単価が安いと労働時間に対して得られる報酬が少なくなるため、生活に不満を感じやすくなるでしょう。報酬が少なすぎると、そもそもフリーランスエンジニアとしての生活を成り立たせるのが困難となる懸念もあります。
フリーランスエンジニアになるのなら、単価を上げられるようにスキルアップを進めつつ、ポートフォリオや実績を作ってクライアントにアピールするのが重要です。
仕事へのモチベーションが上がらない
フリーランスエンジニアとして実力不足のままだと、仕事へのモチベーションも上がりにくくなります。モチベーションが低い状態では、仕事のクオリティも低下する可能性もあります。低クオリティが評価につながって単価が上がらなくなるという負のループに陥るケースも懸念されることから、スキルアップや実績作りによる対策は欠かせないものとなるでしょう。
周囲との差に焦って不安になることも
フリーランスエンジニアとして働いている人は多いため、どうしても周囲と比較するケースも増えやすいです。周囲とスキルや経験で差が出ると、焦ったり不安になったりとメンタル面に悪影響がでます。
フリーランスエンジニアを続ける自信が喪失する可能性もあるため、周囲と比較して落ち込むのではなく、周囲のレベルを参考に自身の成長目標を決めるのがポイントです。
関連記事
フリーランスが病気になったらどうする?個人事業主向けおすすめの保険や病気で働けない期間の生活費保障など解説
5.フリーランスエンジニアで後悔しない!向いている人の特徴
フリーランスエンジニアという働き方には、向いている人と向いていない人がいます。自分がどちらに当てはまるのか、以下で紹介する特徴を参考にチェックしてみてください。
自己管理ができる人
自己管理が得意な人ほど、フリーランスエンジニアとして働くことに向いています。フリーランスエンジニアは自身でスケジュールを構築し、仕事の時間や方法を決める必要があります。
そのため自己管理能力が低いと、休みの時間がなくなって疲弊したり、仕事が重なって対応しきれなくなる可能性があるでしょう。
しっかりと休みを取りつつ、生活に必要な収入を確保し続ける管理能力を身につけることは、フリーランスエンジニアとして働き続けるための基本です。
トレンドや情報収集が得意な人
フリーランスエンジニアは、新しい知識・技術を学び続ける必要がある職業です。そのため普段から技術トレンドや最新の情報を収集している人ほど、フリーランスエンジニアに向いていると言えます。
情報収集を怠ると、知らぬ間にスキル面で周囲に置いていかれる可能性があります。SNSや情報誌などをチェックし、「知ること」を日常化するのもフリーランスエンジニアとして働くためのポイントです。
フリーランスエンジニアの仕事で役立つ知識・技術は、海外から発信されるケースが多いです。そのためある程度の英語力があると、情報収集がしやすくなるメリットがあるでしょう。
積極的に動ける人
フリーランスエンジニアには、積極性が求められます。ただ待っているだけでは良い案件・求人を得られないため、自分から動いて仕事を獲得するための営業力を身につけることも必要です。
フリーランスエンジニアとして働く場合、一般的にエージェントや案件・求人の検索サービスなどを活用することになります。
いずれのサービスも自分から積極的に使用しなければ恩恵を得られないので、フリーランスエンジニアを目指すのなら「自ら動くこと」を意識するようにしましょう。
人脈を構築するコミュニケーション能力がある人
フリーランスエンジニアにとって、人脈は非常に重要なものです。人脈が広いと案件・求人を紹介してもらえたり、新しい人とのつながりから学びを得たりできます。孤独感への対応策としても人間関係の構築は有効となるため、フリーランスエンジニアとして働くのなら、コミュニケーション能力の向上に力を入れるのもポイントです。
コニュニケーション能力とはただ「上手に話ができる」力ではなく、人間関係を良好に保つためのスキルです。相手の気持ちを理解して最適な言動を積極的に発信したり、周囲の利益になることを率先して行ったりすることも、コミュニケーション能力の一環になります。コミュニケーション能力を高める際には、視野を広く持って周囲を意識することも1つの方法です。
関連記事
IT業界の今後を予測|最新トレンドから今後の成長分野までわかりやすく解説
6.まとめ
フリーランスエンジニアになるのなら、現実的な問題を事前に把握し、対策を考える必要があります。フリーランスエンジニアになるために特別な資格などはありませんが、きちんと準備ができていない状態で独立しても、辛い現実に直面することになるでしょう。
まずはフリーランスエンジニアの現実としっかり向き合って、独立に向けた具体的な準備を進めるのがポイントです。
フリーランスエンジニアを目指すのなら、実際にどのような案件・求人があるのか事前に確認しておくことも重要です。「フリーランスボード」では、フリーランスエンジニア向けの案件・求人を数多く紹介しています。職種やスキルごとに検索も可能なので、この機会に自分が対応できる案件・求人の内容をぜひチェックしてみてください。
本記事が皆様にとって少しでもお役に立てますと幸いです。