「独立系SIerに転職したい」「独立系SIerから案件を受注したい」とお考えであれば、まずはSIerを含めたビジネスモデルの理解を深めて、ご自身の考え方とマッチするか把握することが大切です。
エンジニアとしての1つの働き方であり、その他の道とはどのように異なるかを理解しつつ、キャリア形成の材料にすることをおすすめします。
本記事では、独立系SIerの基本的な知識や他SIerとの違い、主な業務内容を紹介します。また、優良企業のランキングやホワイト企業の特徴、メリット・デメリットを分析し、「避けるべき」と言われる理由や選択する際の重要なポイントについても説明していきます。
目次
1.独立系SIerとは?
独立系SIerとは、親会社を持たず、特定のブランドやメーカーとの関連会社や子会社という関係性もない、完全に独立したSIerを指します。SIerはシステム開発部門やIT関連の部門や部署を切り離し、子会社や関連会社として運用していくこともあり、売り上げのほとんどは親会社に依存するのが一般的です。
そうしたSIerの場合は営業をして案件を受注する必要はないものの、親会社からの制約が強く、技術的にも顧客層的にも広がりを見せることはありません。
独立系SIerの場合は親会社の制約や影響がないため、システム開発を希望とするクライアント案件をどんどん受注していくことができます。また、技術的な制約もなく、クライアントのニーズに合わせて新しい技術の導入や細かな要望なども叶えていくことができるため、顧客との信頼関係や継続的な契約なども結びつけていけるのも強みの一つと言えるでしょう。
2.独立系SIerと他SIerとの違い
次に独立系SIerと他SIerとの違いについて解説します。
メーカー系SIerとの違い
メーカー系SIerは親会社の製品やサービス及び技術を基軸としたシステム開発・保守・運用を行います。製品やサービスを顧客の環境に合わせてカスタマイズするような業務はあるものの、ゼロベースでのシステム開発ではなく、製品やサービスの導入を提案し、導入をサポートし、保守契約を結ぶことで継続的かつ安定的な売り上げを確保するのが一般的です。
独立系SIerとの違いは、独立系SIerの場合は親会社の製品やサービス、もしくは特定の技術に縛られることなく、顧客のニーズに合わせてシステム開発が行える点です。また、顧客がすでに利用しているシステムの改善や新しいシステムへの変更なども柔軟に行えるため、業界や業種、または特定の分野の企業や組織などの垣根なく、幅広い層が潜在的な顧客層になるのも違いと言えるでしょう。
ユーザー系SIerとの違い
ユーザー系SIerは親会社のシステム開発や保守運用を担うSIerです。親会社から切り離されたシステム開発部門の子会社や関連会社であり、ほとんどは親会社の業務を行うのが一般的です。
独立系SIerとの違いは、プロジェクトや案件の獲得とその売り上げ、技術的な方向性を親会社に依存してしまうことにあります。独立系SIerの場合は技術的な制約もなく、新規顧客獲得を行うのも自由であるため、技術的にも顧客層の拡大的にも大きくリードできるのが強みです。
安定的にプロジェクトや案件が途切れることなく、安定的に売り上げを得ることができます。その反面、親会社の経営状況に影響されやすく、新規顧客獲得などを行う立場ではないため、新しい収益の源を作っていくようなことが難しく、不安定な時期を迎えることも考えられるでしょう。
SESとの違い
SESはクライアント先にエンジニアを派遣する仕組みであり、エンジニアの技術力を提供するビジネスモデルです。SIer全般との違いとしては、成果物の完成が求められることはなく、エンジニアの技術力を用いて働いた時間に対して報酬が支払われることと言えます。
また、SIerの場合は請負契約であるのが一般的ですが、SESの場合は準委任契約であり、指揮命令系統もクライアント先にある点も違いと言えるでしょう。
独立系SIerの場合はエンジニアの働いた時間ではなく、成果物に対して報酬が支払われること、指揮命令系統は独立系SIer側にあることが違いと言えます。エンジニアとして働く立場の場合、様々なプロジェクトへの参画や大手有名企業で働ける可能性がある点については似ていると考えても良いでしょう。
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3.独立系SIerの主な仕事内容
この章では独立系SIerの主な仕事内容について解説します。
人材確保
人材の確保は独立系SIerとして存続するために最も重要な仕事と言えます。客先への常駐や本社での人材管理、全体のプロジェクトの把握と調整、新規顧客獲得のための技術リソースの確保などの事業活動をしていくためには何よりも人が必要であるのが理由です。
そのため、独立系SIerとして、顧客がクライアント側からの評価、すなわち顧客満足度の向上とともに、従業員満足度の向上に注力している必要があります。簡単に言えば待遇や環境などをしっかりと整備し、離職率を下げて、定着率を上げる必要があるのです。
独立系SIerの年収や待遇が良いこと、それに伴い売り上げも増えていくことがポジティブな循環となるのも独立系SIerの強みと言えます。
案件受注
案件受注は人材確保とともに独立系SIerとして重要な仕事の一つです。そのため、案件を受注するための営業力、マーケティング力、ブランディングなど、営業や広報の分野にも精通している必要があります。そのため、エンジニアとしてだけでなく、エンジニアの知識やスキルのある方が営業職や広報担当者としての仕事を行う場合もあるでしょう。
特に独立系SIerの場合は業界や業種問わず、幅広い分野の潜在的な顧客層から案件を受注できる可能性が高く、その分、顧客の要望やヒアリングに対する時間や労力は必要になります。営業職においても技術的な知見がなければ対応が難しくなるため、営業力と技術力のある人材も必要とされているでしょう。
プロジェクト管理
プロジェクト管理は受注した案件に対し、独立系SIerがプロジェクトリーダーの立ち位置で、客先に常駐するエンジニアとクライアントも含めて全体のプロジェクト管理を行うことを指します。独立系SIerの場合は請負契約であるため、クライアント先でエンジニアは指示を受けることはありません。
システムの開発や運用に伴う業務や作業の指示は独立系SIerが行うということです。そのため、本社や本部でプロジェクトを管理するエンジニアやプロジェクトマネージャーという立ち位置のキャリアも独立系SIerの求人で募集されることも考えられます。独立系SIerと言っても客先に常駐するだけではないということもしっかりと覚えておきましょう。
システム開発
独立系SIerとして独自の製品やサービス、もしくはパッケージなどを提供している場合はシステム開発の分野にも大きくリソースを割いています。この場合は自社の製品を提案しながら、細かなカスタマイズをしていくことで顧客の要望に応えていくスタイルと言えるでしょう。
ただし、メーカー系SIerのように親会社の製品に制約されることはないため、自社製品の提案だけに縛られないという点は理解しておく必要はあります。
また、自社製品を顧客のニーズに合わせてカスタマイズしていく中で、新しい機能や新しいサービスが創出されることもあり、自社の製品及びパッケージが実務の現場で必要とされる機能を備え、幅広い顧客のニーズに応えられる製品に仕上がっていくことも期待できるようになるでしょう。
顧客対応
顧客対応も独立系SIerの重要な仕事の一つと言えます。新規顧客獲得だけでなく、継続顧客の維持が売上の安定につながるのが理由です。また、継続顧客は保守・運用などの業務によって、双方がビジネスパートナーとして長く付き合っていける可能性が高く、技術的なアップデートの材料にもなるためとても大事な仕事と言えます。
また、潜在的な顧客層から新規顧客獲得をするためのマーケティング、リードの獲得、認知拡大や興味関心の育成なども重要であるため、独立系SIerはほとんど一般企業と変わらないような職種が必要です。
そのため、エンジニアとしてだけでなく、技術的な知識を持った営業職、もしくはバックオフィス系の業務担当を目指して転職候補とするのも視野に入れてみても良いでしょう。
4.独立系SIerの優良ホワイト企業ランキング
この章では独立系SIerの優良ホワイト企業ランキングについて解説します。
【年収別】独立系SIer優良ホワイト企業ランキング
順位 | 企業名 | 平均年収 |
---|---|---|
1位 | オービック | 1006万円 |
2位 | 都築電気 | 866万円 |
3位 | 大塚商会 | 857万円 |
4位 | BIPROGY | 816万円 |
5位 | ネットワンシステムズ | 766万円 |
6位 | TIS | 752万円 |
7位 | ラック | 654万円 |
8位 | 富士ソフト | 620万円 |
9位 | シーイーシー | 615万円 |
10位 | DTS | 601万円 |
参考元:https://nenshu-master.com/rankings/si-ses-salary-ranking/
上記が年収別の独立系SIer優良ホワイト企業ランキングです。
およそですが600万から1000万前後が年収のレンジになっていることが分かります。就職した場合においてはご自身の職種や役割、スキルセットや実務経験などで年収が異なることはあらかじめ留意しておいてください。
【売上別】独立系SIer優良ホワイト企業ランキング
順位 | 企業名 | 売上高 |
---|---|---|
1位 | 大塚商会 | 7676億円 |
2位 | TIS | 2381億円 |
3位 | BIPROGY | 2023億円 |
4位 | 富士ソフト | 1923億円 |
5位 | ネットワンシステムズ | 1605億円 |
6位 | オービック | 933億円 |
7位 | 都築電気 | 826億円 |
8位 | ラック | 408億円 |
9位 | アイネス | 369億円 |
10位 | シーイーシー | 367億円 |
参考元:https://nenshu-master.com/rankings/si-ses-net-sales-ranking/
上記が売上別の独立系SIer優良ホワイト企業ランキングです。
最低でも3桁億円以上の売上高となっていることから、独立系SIerは右肩上がりで売り上げや利益を作っていけるビジネスモデルであることがわかります。
また、ランキングに掲載されない企業は危ない?と考えてしまいがちですが、平均年収、売上高、離職率、定着率、有給休暇の取得率など、開示されている情報を見た上で、求人に応募するかを判断することが大切です。
5.独立系SIerの優良ホワイト企業の特徴
この章では独立系SIerの優良ホワイト企業の特徴について解説します。
元請け・プライム案件比率が高い
独立系SIerの優良ホワイト企業の特徴として、元請け・プライム案件比率が高いことが挙げられます。プライム案件比率とは直接顧客と契約している比率のことであり、高ければ高いほど元請けの案件が多いということです。
元請けの案件が多いということは、多重下請け構造にありがちな中間での搾取を避けることが可能であるため、企業に入ってくる売り上げがそのまま得られるということでもあります。結果として従業員に対する報酬も確保しやすくなるため、年収のアップが期待できるようになるでしょう。
自社製品・サービスを持っている
独立系SIerの優良ホワイト企業の特徴として、自社製品・サービスを持っていることが挙げられます。例えば、事業活動におけるDXの推進や効率化及び最適化、自動化の製品などを顧客のニーズに合わせてカスタマイズしていくことで、システム開発における時間的なコストを大幅に削減できるため、強いアドバンテージになるということです。
客先に常駐するエンジニアとしても、顧客のニーズに応えつつも、パッケージ化された製品の導入およびカスタマイズであるためスムーズに仕事がしやすいのも特徴と言えます。スムーズに仕事がしやすいということは、離職率も低くなりますし、定着率の安定によってさらに働きやすい環境になっていくということです。
平均年収が高水準である
独立系SIerの優良ホワイト企業の特徴として、平均年収が高水準であることが挙げられます。優良ホワイト企業であるということは、従業員が定着しやすく、従業員が定着するということは、自社の技術や業務に就職した優秀なスタッフが揃うということです。
そのため、優秀なスタッフが揃うということは高い生産性の維持を実現するとともに、システムやソフトウェアにおける品質の向上にもつながることで、さらに平均年収が高水準になっていきます。
エンジニア側からすれば、働き続けるモチベーションとなり、収入のアップと共にスキルアップも実現できることから、離職する理由がありません。同じく優秀なスタッフということは、コミュニケーションもしやすく、お互いがお互いをサポートできるような働きやすい環境になるのも強みと言えるでしょう。
若手が成長できる企業文化・教育制度がある
独立系SIerの優良ホワイト企業の特徴として、若手が成長できる企業文化・教育制度があることが挙げられます。新人研修や社員研修、勉強会やスキルアップ及びキャリアアップの交流会など、成長できる企業文化や教育制度は「人を育てる余裕がある」という点においてもホワイト企業であるのは明白です。
現代においては、新卒採用を除いて、中途採用の場合など十分な研修制度がない、もしくはあったとしてもマニュアル化されていないようなOJTのみといったようなこともありえます。もちろん、十分に通用する場合もありますが、新しく入ってきた人を大事にしないのはホワイト企業とは言えません。
ホワイト企業かどうかを判断する材料にもなるため、具体的にどのような社員研修や育成制度があるのかは必ずチェックしておきましょう。
多様なキャリアプランを自由に選択できる
独立系SIerの優良ホワイト企業の特徴として、多様なキャリアプランを自由に選択できることが挙げられます。独立系SIerの事業活動を維持するための職種やキャリア、エンジニアとして技術的に様々な分野のプロジェクトに関われることなどが理由です。
ポイントとしては独立系SIerへの転職は必ずしも客先常駐のエンジニアに限らないということと言えます。
ホワイト企業であれば時短勤務、リモートワーク、出産や育児、もしくは介護への対応、怪我や病気も含めて離職から職場復帰を目指せることなども特徴と言えるでしょう。
また自分が望むキャリアや働き方及び生き方を反映してくれる可能性も高く、QOLの向上とワークライフバランスを意識した生き方をしたい場合にホワイト企業を選ぶことは大正解になるということです。
6.独立系SIerのメリット
この章では独立系SIerのメリットについて解説します。
様々なプロジェクトに参画できる
独立系SIerのメリットとして、様々なプロジェクトに参画できることが挙げられます。独立系SIerの場合は自社で営業して案件を受注し、報酬を得ていくビジネスモデルであり、親会社の影響を受けにくいため、幅広いプロジェクトを受注できるのが理由です。
また、自社の製品やサービスを提供していくタイプの場合、業界や業種の垣根を超えて、導入から実務への運用サポートなどの業務も担当するためさらに広がりを見せます。
例えばシステム開発会社の場合、自社の技術的な方向性をある程度固めており、技術的なリソースも同じ方向に向けて人員を集めて、特定の技術に特化していくことで他社との差別化をするのが一般的です。
独立系SIerも基本的には同じではあるものの技術的な部分においても制約がないことから、クライアントのニーズに合わせて技術的な裾野を広げていくことができるのもメリットと言えるでしょう。
大手企業で働ける可能性がある
独立系SIerのメリットとして、大手企業で働ける可能性があることが挙げられます。エンジニアとして客先常駐で働く最大のメリットであり、本来の自分の実力では足を踏み入れられないような場所でかつ、大手企業で働く人と一緒に業務をすることができるようになるのです。
もちろん、命令系統や指示については、雇用契約通りに従う必要はありますが、同じフロアや同じ部屋などで仕事をする場合は、挨拶もすることもありますし、技術的な部分や業務に必要な対話はすることもあります。優秀な人材として評価されることで、もしかしたら直接的に雇用してもらえるということも期待できるようになるでしょう。
即戦力としての成長を求められる
独立系SIerのメリットとして、即戦力としての成長を求められることが挙げられます。エンジニアとして客先への常駐が可能だと判断してもらった時点から、プロとしてエンジニアの業務が始まるのが理由です。いわゆる即戦力としてすぐに業務をする必要があるため、必然的に成長できるようになっていきます。
特にエンジニアにおいては、事前の学習や情報の収集及び吸収もとても大事ですが、実務の現場で起こることの方が何倍も勉強になるのは間違いありません。もちろん、失敗することや解決できない問題に遭遇することもあるでしょう。
最初は大変でも、実務の現場で揉まれていくうちに、自然とプロとしての技量と対応力及び対話力などのコミュニケーションも身についていくようになるのです。
親会社による依存や制約がない
独立系SIerのメリットとして、親会社による依存や制約がないことが挙げられます。独立系SIerの経営方針に沿って、案件の受注やプロジェクトへの参画を決めていくことができるため、独立系SIerの実力に応じて、業界や業種問わず、技術的にも幅広い開発に携わることができるというメリットです。
もちろん、独立系SIerとして技術的な方向性の基盤が定まっている場合もありますし、独自の製品やサービスをカスタマイズして適用したりするようなケースもあります。自社の製品を幅広い業界に広めながら、業界ごとのニーズから、新しい発見による技術の開発に発展していくことも期待できるでしょう。
人脈形成が将来に役立つ
独立系SIerのメリットとして、人脈形成が将来に役立つことが挙げられます。一般的な企業ですと社内の人間のみの人間関係しかありませんが、独立系SIerのエンジニアとして客席の常駐などのチャンスが得られることで、一緒に働く現場の人との思わぬ縁と人脈がつながっていくようになるメリットです。
いわゆる縦のつながりと横のつながりの両方が手に入ることから、自分の実力を示し、プロジェクトで貢献していくことでさらに評価につながり、将来また一緒に仕事をしたい、次のプロジェクトに参加してもらおうと考えてもらうことができるようになります。
また、自分自身が別の立場から知り合った方を誘うこともあるでしょう。人脈が増えていくことで企業勤めだけでなく、フリーランスとしての働き方も視野に入るため、ワークライフバランスを重視した働き方を目指したい方にもおすすめということです。
7.独立系SIerのデメリット
この章では独立系SIerのデメリットについて解説します。
教育体制が整っていない
独立系SIerのデメリットとして、教育体制が整っていないことが挙げられます。大手有名企業であれば研修やOJTが充実している可能性はありますが、有名でなかったり、規模が小さかったりする場合は就職や転職した状態とほぼ変わらないまま業務を遂行する可能性があるということです。
そのため、新卒の方やエンジニア職務経験の方が独立系SIerを目指す場合は、面接のタイミングなので研修やOJTについてしっかりと質問しておき、満足できる内容かを把握しておくことが求められます。必ずしも即戦力しか採用しないということはないにせよ、いざ業務をする段階で実力不足で役に立たないとなると双方にマイナスになるということも覚えておいてください。
下請けの案件が多い
独立系SIerのデメリットとして、下請けの案件が多いことが挙げられます。この場合も大手有名企業であれば別ですが、独立系SIerの規模によっては有名な独立系SIerが引き受けた案件を、さらに下請けとして受注するといったようなことも一般的であるのが理由です。
ただし、エンジニア側からすれば、雇用契約の通りに正当な賃金が支払われ、法的に問題のない就業規則や就業時間であれば気にならないかもしれません。また、基本的に二重派遣に該当するような業務の指示は法的に違反であることから、表立って違反する場合を除いては、複雑な環境で働くということはないということも覚えておきましょう。
客先常駐が多い
独立系SIerのデメリットとして、客先常駐が多いことが挙げられます。プロジェクトや案件の規模によっては複数人のチーム単位、もしくは1人で常駐するということも一般的です。客先に常駐すること自体はエンジニアとしての成長、コミュニケーションによって人脈形成ができることなどポジティブな要素が、ネガティブな要素があることも否めません。
例えば、同じ職場で働いている方と給与があまりにも違ったり、福利厚生などの待遇に差を感じたりすることもあるでしょう。差別化されることはないにせよ、常駐の方と正社員の方を区別するようなことはあるかもしれません。
ただし、一般的な就職や転職と同様に職場の良し悪しはタイミングや運によるものも多いので、必ずしもネガティブな環境になってしまうと思い込まないことも大切です。
帰属意識を持ちにくい
独立系SIerのデメリットとして、帰属意識を持ちにくいことが挙げられます。特に新卒からの就職、もしくは中途採用としての転職ですぐに客席状況になったような場合は、一緒に働いているその他の人たちの方が同じ仲間のように感じてしまいますし、雇用関係のある企業の一員だという意識を持ちにくくなるのが理由です。
帰属意識を持ちにくいこと自体は大きなデメリットとは言えないものの、常駐している客先への安心や信頼が増えてしまえば、直接的に雇用してほしいと考えてしまうことがあります。
また、法的には認められないものの、契約によっては受注先での再就職を禁じると言ったような文言を言われることもあるため、直接働く立場の方からすれば、働きやすい環境にいてもキャリア形成にプラスにすることはできないと落ち込んでしまうこともあるでしょう。
ただし、独立系SIerとの契約や規則によっては禁止や制限をすることなく、常駐する客先に直接雇用してもらうことを促してくれるケースもあります。客先においても契約社員から正社員という流れを構築している場合もあるため、働いていて気に入った場合は相談してみることをおすすめします。
自由だが不安定
独立系SIerのデメリットとして、自由だが不安定なことが挙げられます。この場合の自由とはエンジニアとして働く自分自身の自由という意味ではなく、独立系SIerとして親会社の制約を受けることなく案件の受注はできるものの、親会社がある場合と比べて安定的な受注が約束されていないという意味です。
ある程度の規模で有名になれば案件やプロジェクトが途切れることはありませんが、スタートアップしたばかりの規模や特定の企業に依存しているような場合など、いくら社風が自由であっても将来的に継続可能な企業として維持できるかは疑念が残ります。
そのため、自由であるかどうかは判断基準にせず、今までの受注実績や現在の顧客などのリストをチェックし、継続的に受注できる営業力と信頼性があるかどうかは前もって精査しておくことが大切です。
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8.「独立系SIer やめとけ」と言われる理由
「独立系SIer やめとけ」と言われる理由として、デメリットで解説したような内容が原因であることが推測されます。ただし、独立系SIerに限らず、ほとんどの職種で「やめとけ」というキーワードとセットでSEO対策を行っているだけのコンテンツである可能性も高く、信頼性に欠ける点には十分に注意する必要があるでしょう。
実際にやめとけと言われるような理由に遭遇することもあるかもしれませんが、求人や案件についての情報収集を行う段階、書類選考や面接の段階などを経て、ネガティブな要素がないかを精査して自分自身で防ぐことが求められます。
警戒すべきである点は理解しても良いものの、あからさまに避けてしまうことでエンジニアとしての何らかのチャンスを失う可能性があることも忘れないようにしてください。
9.独立系SIerを選ぶポイント
次に独立系SIerを選ぶポイントについて解説します。
元請・2次請けとして案件の量
独立系SIerを選ぶポイントとして、元請や2次請けとして案件の量が多いかどうかが挙げられます。業界的に多重下請け構造になってしまうことはあるものの、元請けか2次請けの案件の量が安定しているのであれば、転職先としても安心ですし、フリーランスとして案件を受注する際にもトラブルになりにくいのでおすすめです。
また、元請・2次請けの比率が高ければ高いほど、業界的にも顧客やクライアントからの信頼性が高い企業であるという判断もできます。独立系SIerとしての業界内での立ち位置を確立しているという意味でもあるため、エンジニアとして働く際も堂々働くことができるようになるでしょう。
企業規模と業績の安定性
独立系SIerを選ぶポイントとして、企業規模と業績の安定性があるかが挙げられます。従業員数や売上などの企業としての規模、そして過去何年か分の利益や売上の経緯をチェックして、安定的に独立系SIerとしての事業をできているかどうかを見ることはとても大切です。
独立系SIerはいかに安定的に案件を受注できるか、同時に品質に対して正当な報酬を得られているかどうかで企業として持続性があるかを判断する指標にもなります。
例えば複数年にまたぐ単発的な案件が重なっていただけのような状態ですと、その案件が途切れたり、契約が満了になった時に仕事がなくなってしまうようなことも考えられることから、どのようなクライアントと契約や取引があったのかも含めて調べておくと良いでしょう。
離職率が低い
独立系SIerを選ぶポイントとして、離職率が低いことが挙げられます。離職率が低いということは、少なくとも働いてる方が退職したいと考えるケースが少ないということでもあるため、自分自身がエンジニアとして働く際にもより良い環境である可能性が高いということです。
そのため、独立系SIerを選ぶ時には必ず離職率をチェックし、明らかに高い場合は警戒すべきですし、同じく明らかに低すぎる場合も少々警戒した方が良いでしょう。特にあまり有名でない場合や売上などの数値が芳しくない場合は離職率の数値自体が信頼できない可能性があります。
ただし、離職率だけで判断するのではなく、売上、平均年収、有給休暇取得率、定着率、もしくは企業としてのネームバリューが高いかどうかも判断基準とすべきです。簡単に言えば、明らかに低すぎる離職率はホワイト企業であることを示している可能性も高いため、警戒しすぎて良い条件の企業を逃さないようにしましょう。
待遇面の充実度
独立系SIerを選ぶポイントとして、待遇面が充実しているかが挙げられます。給与や年間の休日の日数、有給休暇の取得など法的な労働者の保護、その他にも福利厚生において働く人に対する待遇が手厚いかどうかを見るということです。
特に対応については求人募集の情報にほとんど記載していないまま、面接時に初めて説明を受ける場合もあるので注意しましょう。
そのため、求人情報でしっかりと待遇や福利厚生について記載がある場合は、積極的に書類選考や面接の対策や準備を行うことをおすすめします。企業の業績などの情報にも通ずる部分ですが、透明性が高いかどうか、信頼できる数字であるかどうかに対して、疑うことなく安心できる独立系SIerを選べるように精査していきましょう。
自己成長できるか
独立系SIerを選ぶポイントとして、自己成長できるかが挙げられます。独立系SIerの受注している案件の内容やプロジェクトの方向性、それぞれに必要となる技術と、自分自身のスキルセットや将来的なキャリアとの相性が良いかという視点を持つことが大切です。
例えばプロジェクトで利用するOSやソフトウェアのバージョンは最新に保たれているか、可能な限り性能の高いパソコンの支給をしており、新しい技術的な要素を柔軟に取り入れていく姿勢があるかどうかなどは見ておく必要があります。
環境については前もって把握することが難しい場合もあるものの、実際に取引した企業や利用した技術などがホームページなどに掲載されているかをチェックすること、もしくは面接の際に技術的な質問をして、納得できるかどうかを判断することが大切です。
10.まとめ
本記事では、独立系SIerについて、その基礎知識や他のSIerとの違い、主な業務内容についてご説明しました。
優良企業のランキングやホワイト企業の特徴、さらに独立系SIerはやめておいた方が良いと言われる理由なども詳しく解説いたしました。
エンジニアとして独立系SIerと契約することで得られるメリットやデメリットは将来的なことを考えて総合的にプラスになるかを判断する必要があります。特に環境による成長やスキルアップと人脈形成の点においては、就職後にどこに配属されるかによっても異なることから、必ずポジティブな結果を生むとは断言できません。
そのため、独立系SIerの企業を選ぶ時は慎重になることをおすすめします。フリーランスとして案件を受注したいと考えている場合も同様であり、その他のクライアントとの交渉と同じようにしっかりと相手を精査しながら契約を結ぶことを忘れないようにしてください。
最後までお読みいただきありがとうございました。
本記事が皆様にとって少しでもお役に立てますと幸いです。