人間誰しも体調不良になる可能性があります。いずれの働き方や職業においても、体調が回復するまでに時間がかかればこれまでの生活と変わるものです。
とはいえ、フリーランスが体調不良になった場合、その影響は会社員と比べて大きいと一般的にいわれています。会社員のように有給制度や傷病手当がないため、仕事ができない期間が長期化すると、生活に与える影響も大きくなるためです。
本記事では、フリーランスが体調不良になったらどういった状況に陥るか確認した上で、対応方法、リスク、長期的に高いパフォーマンスを発揮するコツなどを見ていきましょう。
目次
1.フリーランスが体調不良になったら?
誰しも体調不良になることはありますが、フリーランスは特に体調不良に気を付けなければならないといわれています。体調不良が原因で仕事が出来ず経済的に困窮する可能性もあります。
フリーランスが体調不良になった場合に起こりうることを以下の2つの観点から解説します。
フリー ランスが入院した際の仕事や報酬
フリーランスが体調不良になった際の納期
それぞれ確認していきましょう。
フリー ランスが入院した際の仕事や報酬
フリーランスが入院し、仕事を休むことになった場合、収入は途絶えます。フリーランスは成果物に対して報酬が支払われるため、納品しない限りはお金が入ってこないためです。
パソコン1台あればできる仕事で、なおかつ入院中であっても多少の仕事であればこなせるほど体調がよければ、仕事をして収入を生み出すこともできなくはないでしょう。しかし、入院するような事態の場合、仕事はできないと考えるのが普通であり、仕事を中断せざるを得ないケースがほとんどです。
数日程度の入院で、体調の早期回復が見込まれるのであれば、クライアントは納期を延長してくれるかもしれません。しかし、入院期間が長く、かつ体調が著しく悪い場合は受注している仕事を手放すことになります。クライアントは自社で対応するか、他の委託者に仕事を新しく依頼することになります。
フリーランスは収入源を失うリスクが高いため、ブログやYouTubeなど自動で収入が発生するものを運用することが推奨されています。
フリーランスが体調不良になった際の納期
フリーランスが体調を崩した場合、クライアントにすぐに連絡し、どのように対応すべきか話し合う必要があります。
納期に余裕がある案件であれば、クライアントは柔軟に対応してくれる可能性があります。一方、緊急性の高い案件や納期必須のプロジェクトであれば納期の延長は認められません。
こうした場合、委託者が後任となる人を紹介する、もしくはクライアントが別の委託者を新しく探すことになります。
後任はすぐに見つかるものではなく、従来のスケジュールでプロジェクトを進めるのが難しくなるケースもあります。
体調不良を理由にした納期の遅れや変更は誰にでもあることです。とはいえ、多くの人に迷惑がかかることを忘れないようにしましょう。
2.フリーランスが体調不良になったときの対応方法
会社員であれば体調不良を理由に欠勤した場合、同僚や上司がサポートに入ってくれることがほとんどです。一方、独立して働いているフリーランスの場合、体調不良になった際は自身である程度対応することが求められます。
フリーランスが体調不良になったときの対応方法として、以下の3つが挙げられます。
クライアントに連絡して仕事の納期を延長してもらう、もしくは断る
業務の外注を検討する
体調の回復に専念する
それぞれ確認していきましょう。
クライアントに連絡して仕事の納期を延長してもらう、もしくは断る
フリーランスが体調不良になった場合、クライアントに可能な限り早く連絡を取ってください。クライアントは事情を早い段階で把握できれば対応策を考えやすくなるため、損害を抑えやすいです。特に、納期が近い案件や緊急性の高い案件の場合は、状況を迅速に知らせることが求められます。
また、フリーランスは体調について懸念点がある場合は早めに伝えておくことが大切です。会社員であれば健康診断の結果などから従業員の体調を会社はある程度把握していますが、フリーランスは自ら申告しない限りクライアントに体調について理解してもらえません。自分の体調をクライアントに伝えることは、先方と信頼関係を構築し、よりよいパートナーシップを結ぶ上で重要です。
業務の外注を検討する
フリーランスが体調を崩した場合、フリーランスの仲間や自身の人脈の中から信頼できる人材を選定し、クライアントに紹介する方法もあります。特に、急ぎのプロジェクトや納期厳守の案件であれば、クライアントに自分の知人を紹介するのは有効です。クライアントは委託者を探す時間や手間が省けるため損害を最小限に抑えられます。
ただし、仕事を別の人に引き継ぐ際は、クライアントに事前に相談し、了承を得る必要があります。別の誰かに仕事をクライアントに無断で依頼するような事態は回避しなければなりません。
また、知人をクライアントに紹介する際はその人物のスキルや経歴も伝えておくとスムーズです。
体調の回復に専念する
フリーランスは体調不良で仕事を休むと収入が発生しないため、仕事に早急に復帰したいと焦るものです。また、体調が悪くても収入面や責任感を理由に無理して仕事をしてしまう人もいます。
しかし、病気になった際は仕事を休み、体調の回復に専念することが大切です。仕事を無理に継続した場合、病状が悪化し、回復までより期間を要することもあります。
3.準委任契約において体調不良になった場合の対応方法
準委任契約では業務の遂行のみを報酬対象としており、成果の達成は基本的に問わないとされています。なお、業務が何かしらの事情によって中断された場合、委任者(クライアント)が受ける利益の割当に応じ、報酬を受け取ることができます。
準委任契約は専門性や高い技術を必要とする業務に適用されることが多いです。例えば、ITエンジニア、ITコンサルタントといった職種には準委任契約の求人が多々あります。
体調不良になった場合はできるだけ早くクライアントにその旨を伝え、相談してください。納期の融通が利かない場合、クライアントは他の人に再度依頼することになります。この場合、報酬は基本的に支払われません。
また、損害賠償義務について契約時に確認しておく必要があります。準委任契約を途中解約するにあたって、委託者が損害を被った場合には受託者が損害賠償を請求されることもあります。契約書に病気や不可抗力に関する条項がないか事前にチェックしておくと同時に、クライアントにも事前に確認しておきましょう。
フリーランスエージェントを活用して案件に参画している場合は、
まずは自分の状況をフリーランスエージェントへ報告し、必要に応じてエージェントとクライアントで調整してもらいましょう。
準委任契約で案件に参画する際は事前にフリーランスエージェントに確認することをおすすめします。
4.会社員と比較したフリーランスが体調不良になった場合のリスク
フリーランスは自分の都合に合わせて働きやすく、場所や時間にとらわれず働けます。自由が多いといわれているフリーランスですが、体調を崩したときにこの働き方を選択したことを後悔する人が多いのも現状です。
会社員と比較したフリーランスが体調不良になった場合のリスクとして、以下の4つが挙げられます。
傷病手当金や労災保険の対象外
仕事を休んでいる期間は収入が発生しない
クライアントに多大な迷惑がかかる
仕事を失う恐れがある
それぞれ確認していきましょう。
傷病手当金や労災保険の対象外
会社員の場合、病傷手当金や労災保険などがあるため、病気やケガなどで働けなくなったら手当や保険金が支給されます。
傷病手当金とは会社員を主な対象とする手当金です。病気やケガで働けなくなった際に最長1年6カ月の間補償を受けられます。
また、労災保険は業務中や通勤中などにに起きた傷病に対し、保険金の給付対象となる制度です。受け取ったお金は治療費などに充てられます。
フリーランスはいずれも対象外となるため、病気やケガの治療費、治療期間中の生活費などは全額自己負担となります。
仕事を休んでいる期間は収入が発生しない
フリーランスは体調を崩した場合、無収入になるリスクがあります。フリーランスは仕事をし、成果物を納品しなければ収入が発生しないためです。
収入がない期間は貯蓄を切り崩して生活する、もしくは借入することになるのが一般的です。また、任意で加入している保険の給付金で生活費を補う方法もあります。
クライアントに多大な迷惑がかかる
体調不良は誰にでも起こりうることであり、健康を気にしていたとしても自分ではどうにもできないものです。とはいっても、体調不良で仕事がストップすると、クライアントに迷惑がかかります。
納期が厳しいプロジェクトや納期まで余裕がないプロジェクトの場合、クライアントからの印象が体調不良が理由であっても悪くなることもあります。
仕事を失う恐れがある
フリーランスは病気から回復しても、以前と同様の仕事を任せてもらえるとは限りません。療養期間中にクライアントが別の人に仕事を依頼した場合、任せてもらえる仕事はしばらくなくなります。場合によっては、初めから仕事を探さなければなりません。
また、体調不良で契約を途中解約したり、コミュニケーションが疎かになったりすると、クライアントから依頼が途絶えることもあります。
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5.フリーランスが長期的に高いパフォーマンスを発揮するコツ
病気は誰にとってもリスクがありますが、日々の生活における心がけで、体調不良で仕事がストップする事態に陥る可能性をいくらか軽減できます。
フリーランスが長期的に高いパフォーマンスを発揮するコツとして、以下の4つが挙げられます。
健康診断を受ける
適度に休息をとる
日常的に運動を心掛ける
栄養バランスがとれた食事をする
それぞれ確認していきましょう。
健康診断を受ける
フリーランスは会社員のように定期的な健康診断の機会がありません。自ら健康診断を申し込み、健康診断を受ける必要があります。
フリーランスとして働く人の中には、ITエンジニアやWebデザイナーなど長時間座りっぱなしで仕事をしている人も多いです。こうした生活をしていると、生活習慣病のリスクが高まるので注意が必要です。体調に異変や不安がなくても年に一度は健康診断を受けて、自分の健康状態を正確に把握するようにしましょう。
地方自治体が行う健康診断、フリーランスを対象にした福利厚生サービスを活用すれば、健康診断をお得に受診できる場合があります。
また、病院やクリニックで健康診断を受ければ検査項目を自由に選べます。若年層は会社員が受ける定期健康診断の項目を参考にし、女性は子宮頸がん検診を追加することをおすすめします。
適度に休息をとる
フリーランスには定められた労働時間がありません。それゆえに、会社員以上に長時間の労働になってしまうケースも多々あります。
フリーランスは自分が働ければ働くほど収入が増えますが、過重労働は禁物です。ハードワークで疲弊し、体調不良になった場合は治療費で稼いだお金がなくなることもあります。
日常的に運動を心掛ける
フリーランスの中にはジムに週に何度か通っている人もいます。しかし、近くにジムがない人、ジムの利用料の負担が重く感じる人もいます。
お金をかけずとも運動できる方法は多々あります。例えば、ウォーキングは運動が苦手な人にもおすすめです。ウォーキングには生活習慣病の予防効果だけでなく、自律神経を整えたり、脳を活性化したりする効果もあります。仕事のパフォーマンス向上も期待できます。
また、筋トレもおすすめです。筋トレは自宅に居ながらにして行えるため天候に左右されることはありません。
栄養バランスがとれた食事をする
食事は健康を維持するために不可欠な要素です。野菜や果物、タンパク質、ビタミン、ミネラル、炭水化物、脂質をバランスよく摂取し、エネルギーを効率よく供給できるようにしましょう。
また、身体の状態を整えるには外食やファーストフードに依存しないようにしてください。これらに依存すると栄養素が不足したり、脂質を過剰に摂取したりする恐れがあります。
さらに、おやつはほどほどにするようにしましょう。糖分を摂取しすぎると、糖尿病のリスクが高まります。
6.フリーランスが体調不良になった際に利用できる制度
フリーランスは会社員と比べて、体調不良になった際に利用できる制度が少ないといわれています。しかし、全ての国民が利用できる制度やフリーランスが任意で加入できる制度もあります。
フリーランスが体調不良になった際に利用できる制度として、以下の2つが挙げられます。
生活保護制度
フリーランスを対象にした保険会社からの給付金(加入者のみ)
それぞれ確認していきましょう。
生活保護制度
生活保護制度とは条件に該当すれば、全ての国民に利用が認められている制度です。生活に困窮する人がその困窮の程度に応じ、必要な保護を受けられます。健康で文化的な最低限度の生活を保障し、自立を助長することを目的としています。
フリーランスの場合、体調不良によって仕事を失い、なおかつ治療費などで貯蓄も底を尽いたときは一つの選択肢になります。
フリーランスを対象にした保険会社からの給付金(加入者のみ)
フリーランスは病気やケガで仕事を休んだときの補償が手薄いため、それを補うためにも保険に任意で加入しておくことをおすすめします。
例えば、フリーランス協会の加入者は収入、ケガ、介護に備えられます。追加料金は発生するものの、ケガや病気で働けなくなったときに喪失所得を保険金でカバーできます。
また、FREENANCEのあんしん補償サービスには入院時などの所得を補償してもらえるプランがあります。
その他にも、フリーランスを対象にした保険があるため、自分に合った保険を探してみてください。
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7.フリーランスの体調不良に関するよくある質問
フリーランスになったばかりの人、フリーランスへの転身を検討している人の中には、体調不良になったときのことを懸念している人も多いのではないでしょうか。
そこで、フリーランスの体調不良に関するよくある質問に回答します。
フリーランスの体調不良に関するよくある質問として、以下の3つが挙げられます。
フリーランスは仕事の納期遅れを許容してもらえますか?
フリーランスにお盆休みはありますか?
フリーランスの体調不良時に向けた事前対策って?
それぞれ確認していきましょう。
フリーランスは仕事の納期遅れを許容してもらえますか?
フリーランスが仕事の納期の遅れを許容してもらえるかどうかはクライアントによります。ただし、体調不良を理由とした納期の遅れは仕方がないことなので、クライアントが対応してくれることがほとんどでしょう。
納期を延長し、体調が回復するのを待ってくれるクライアントもいれば、他の委託者に依頼し直すクライアントもいます。クライアントによって対応は異なるため、詳細はクライアントに確認する必要があります。
フリーランスにお盆休みはありますか?
フリーランスは働く時間や曜日を自分で決めるため、お盆休みがあるかどうかは一概にはいえません。
フリーランスの中にはお盆期間は休む人もいますし、働く人もいます。また、この期間は休む予定であっても、仕事が発生した場合は状況によって働くことになります。
ただし、ITエンジニアなどに多い常駐型のフリーランスの場合、常駐している企業がお盆休みであれば自分も休みになることがほとんどです。
フリーランスは会社員のようにお盆休みだけでなく、長期休暇が明確に定まっていないため、健康を維持するためにも自身で休暇を取得する必要があります。
フリーランスの体調不良時に向けた事前対策って?
体調不良で仕事がストップしたときにスムーズに対応するためにも、日頃からスケジュールを把握しておくことが大切です。自分のスケジュールを把握しておくことで、病気やケガで仕事ができなくなったときに、重要性の高い案件や納期が近い案件から順番にクライアントに連絡をとるなど円滑に対応できます。
また、業務をサポートしてくれる仲間をつくっておくことも大切です。自分が仕事をできなくなった際、別の人にクライアントに了承を得た上で、引き継いでもらえます。
クライアントと良好な関係を日頃から構築しておくことで、万が一のときも快く応じてもらえるでしょう。
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8.まとめ
フリーランスが体調不良になった場合、会社員以上に生活が大きく変わるリスクがあります。
例えば、会社員であれば病気やケガによって休んでいる期間は各種給付金が支払われるため生活費を補えますが、フリーランスは自身で備えておかなければ給付金の対象にはなりません。
体調不良は職種や働き方を問わず誰しも直面する可能性がある問題です。健康に自信がある人も他人事だと思わず、体調不良になったときのことを考えておくようにしましょう。
本記事が皆様にとって少しでもお役に立てますと幸いです。