フリーランスとして働く場合、会社員のように企業による福利厚生制度はありません。
企業に雇用されずに個人で働く形式を取っているフリーランスにとって、福利厚生はあまり馴染みのない制度だと言えるでしょう。
しかし、フリーランスでも福利厚生サービスを活用することで、さまざまな恩恵を得ることが可能です。福利厚生はスキルアップや生活の安定性の確保など、さまざまなメリットのある制度です。そのためフリーランスでも利用できるサービスをチェックし、福利厚生を有効活用することが、将来の生活に大きな影響を与えるでしょう。
本記事ではフリーランスにとっての福利厚生の基本とメリット、デメリット、利用できるサービスの詳細や選び方について解説します。フリーランスとして働いている人は、ぜひこの機会に福利厚生について調べてみましょう。
目次
1.フリーランスにも福利厚生がある?
そもそもフリーランスとして働いているのに、福利厚生を利用できるのでしょうか。以下では、フリーランスと福利厚生の関係性について解説します。
福利厚生とは?
福利厚生とは、雇用主である企業が従業員やその家族の健康や生活を向上させる目的で実施する、各種施策や取り組みを指します。福利厚生は給与や賞与などの労働対価とは別のものであり、その企業に属するすべての従業員が平等に利用できる制度です。
福利厚生には「法定福利厚生」と「法定外福利厚生」の2つの種類があり、それぞれ以下の特徴があります。
法定福利厚生:企業が従業員を雇用している場合、労働対価とは別に法律で決められた金銭を負担する制度
法定外福利厚生:企業が独自に設定し、従業員とその家族に対して金銭やサービスを提供する制度
原則として法定福利厚生は、すべての企業が実施する義務があります。健康保険や厚生年金保険、雇用保険や労災保険などが、法定福利厚生に該当します。
一方で法定外福利厚生は企業ごとの裁量に任されているため、内容や充実度はまちまちです。例えば通勤手当や住宅手当、育児や介護支援、自己啓発につながるサポートなど、さまざまな種類が考えられます。
フリーランス向けの福利厚生サービスは多数ある
福利厚生は企業から提供される金銭やサービスであるため、個人で働くフリーランスには関係のない制度のように思えるでしょう。しかし、昨今はフリーランスの人口増加などを理由に、「フリーランス向けの福利厚生サービス」も充実しています。
フリーランスの支援を行っている団体・組織が提供するものや、フリーランス向けの案件・求人紹介やマッチングを行うサービスが提供するものなど、その種類は多岐にわたります。フリーランス向けの福利厚生制度をチェックして利用することで、さまざまなメリットを得られるでしょう。
フリーランスの生活にも福利厚生は必要
フリーランスの生活において、福利厚生は重要な役割を担うと考えられます。フリーランスは個人で仕事をしているため、自由に働ける点が大きなメリットです。しかし、仮にトラブルに巻き込まれた場合、自分の力で処理しなければなりません。税務関係の作業も自分で行う必要があるため、万が一ミスがあった場合には多くの労力を消費する結果になるでしょう。
このように、フリーランスは自分でやるべきことがたくさんあります。福利厚生制度の利用は、各種作業の負担を軽減する結果にもなるため、積極的に活用していくことがおすすめです。
また、福利厚生のなかには、体や心をリフレッシュするための支援もあります。健康に関するサポートもあるため、個人で働いているとつい疎かになりがちな、心身の改善を行うきっかけになる点も魅力です。
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2.フリーランスが福利厚生サービスを使うメリット
フリーランスが福利厚生を使うことには、多くのメリットがあります。
以下では、フリーランスが福利厚生によって得られる主なメリットを解説します。
生活の安定につながる
福利厚生はフリーランスの生活を安定させる、重要な基盤になり得ます。福利厚生のなかには、優待価格でさまざまなサービスを利用できるものがあります。健康診断の費用を補助してくれるケースもあるため、問題を早期に発見して健康維持につなげられる可能性もあるでしょう。
フリーランスは会社員と違い、働けない期間があるとその間収入は途絶えてしまいます。病気やケガが生活を揺るがす大きな問題に発展するため、普段から心身の健康に気を配ることは重要です。
福利厚生による健康支援を受けたり、旅行や体のリフレッシュにつながるサービスを優待価格で利用したりすることで、安定した生活を確保できる点は大きなメリットになるでしょう。
また、フリーランス向けの福利厚生には、所得補償が付いているものもあります。所得補償とは、病気やケガで収入が減少した際に、一定額の保険金を受け取れる制度です。病気やケガの治療に専念できるため、フリーランスとして活動するのなら、所得補償はぜひチェックしておきましょう。
トラブル時にサポートを受けられる
フリーランスとして働いていると、思わぬトラブルに巻き込まれるケースもあるでしょう。例えば情報漏洩などの問題が発生した場合、個人で損害を賠償しなければなりません。しかし、高額な賠償金額を支払うのは難しく、生活の破綻につながる可能性も懸念されます。
福利厚生サービスには賠償責任保険が備わっていることもあり、損害に対する補償を行ってくれます。損害賠償の請求を受けないことが最良ですが、万が一のトラブルを考えて、賠償責任保険を含む福利厚生を利用するのもおすすめです。
税務関係の支援が充実している
フリーランスは確定申告をはじめとした、各種税務関係の作業を1人で行う必要があります。会社員の場合には、企業が基本的なものはすべて対応してくれるため、税金の特別な知識がなくても問題ないケースが多いでしょう。
しかし、フリーランスは税金の計算から支払いまですべて対応する必要があるため、最低限の知識は欠かせません。税務関係の作業は煩雑なため、慣れないうちは多くの時間を取られたり、勘違いやミスによって追加徴税を受けたりする可能性もあるでしょう。
フリーランス向けの福利厚生には、確定申告の方法を学ぶセミナーの開催や、税理士・弁護士などに無料で相談できるサービスがあります。税務関係の知識は生涯役に立つため、積極的に各種サービスを利用して勉強すると良いでしょう。
スキルアップによる収入向上にも期待できる
フリーランス向けの福利厚生のなかには、スキルアップにつながる支援もあります。例えば学習にかかる費用の補助などを受けることで、低コストでスキルアップを目指せるでしょう。
活用できるスキルが増加すれば、フリーランスとして請け負える仕事の幅が広がります。より高単価の求人・案件にも挑戦できるようになるため、収入アップに期待できるでしょう。効率的なスキルアップにつなげられる点も、福利厚生制度を使うメリットの1つです。
3.フリーランスが福利厚生サービスを使う際の注意点
フリーランスが福利厚生サービスを使う際には、注意点もあります。特に経費については注意が必要になるため、概要を確認しておきましょう。
原則として福利厚生サービスは経費にならない
フリーランスが福利厚生で各種サービスや商品を購入した場合、それらは原則経費とはなりません。福利厚生の費用は、個人事業主であるフリーランスが、自分のために何らかのサービスを使用したお金となるため、経費には当てはまらないと考えるべきでしょう。
また、会社員が利用できる企業の福利厚生に関しても、経費での計上は認められていません。
サービス内容や使い方次第では経費になることも
原則としてフリーランスは福利厚生にかかる費用を経費にできませんが、サービスの内容や使い方などによっては、経費計上が可能なケースもあります。
例えば会計ソフトの利用料や金融や財務に関する相談費用などは、諸経費になる可能性があります。その他、クライアントと打ち合わせをした食事の費用は、会議費や接待交際費での計上が可能な場合があります。また、仕事上欠かせない移動にかかった費用は、交通費として計上が可能です。
経費のラインは曖昧な部分もあるため、判断が難しい場合には、税理士に相談して内容を精査してもらうのも1つの方法です。
会費を比較しよう
フリーランスが福利厚生を利用する際には、会費が必要になります。会費はサービスごとに価格が異なるため、事前に確認して比較すると良いでしょう。
会費は年単位でかかる年会費や、月額で契約する月会費を採用しているケースが一般的です。年会費になると1回の出費が大きくなるため、加入は慎重に検討する必要があるでしょう。また、福利厚生サービスによっては入会金がかかることもあります。初期費用でいくら必要になるのかも、福利厚生サービスを受けるうえで大切な要素です。
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4.フリーランス向けの福利厚生サービスのおすすめ
フリーランス向けの福利厚生サービスには、数多くの種類があります。以下では、提供している媒体ごとにおすすめの福利厚生サービスを紹介します。
クラウドソーシングが提供する福利厚生サービス
「ランサーズ」や「クラウドワークス」などのクラウドソーシングは、サービスの一環として福利厚生制度を提供しています。例えばランサーズは「フリーランストータルサポート」というサービスを提供し、税務の専門家が対応してくれるサポート制度や、レジャー・グルメ・健康などに関する特別優待制度を確立しています。
クラウドソーシングの福利厚生を利用するには、多くの場合条件を満たす必要があります。例えばランサーズの場合には、「過去3か月連続で5,000円以上の報酬を獲得している人」が対象になります。
クラウドソーシングで仕事の受注を行っている場合には、福利厚生制度を使えないかチェックしてみるのがおすすめです。
フリーランス支援組織が提供する福利厚生サービス
フリーランスを支援する団体・組織も、積極的に福利厚生サービスを展開しています。
例えば「フリーランス協会」は、会員特典として「ベネフィットプラン」を提供しています。
賠償責任保険や弁護士費用保険「フリーガル」、収入・ケガ・介護の保険など、金銭面で困ったときに役立つ保険制度が充実しています。
その他、全国3,000施設の健康診断や人間ドックの割引が利用できる「WELBOX」や、厳正な審査をクリアした仕事仲介サービスを紹介する「認定マッチングサービス」など、多種多様な支援制度が整っています。
フリーランスエージェントが提供する福利厚生サービス
フリーランスに仕事を紹介するエージェントサービスも、福利厚生に力を入れています。フリーランスエンジニア向けのサービスを展開している「ギークスジョブ」は、エントリーすることで各種支援が使い放題となる「フリノベ」を提供しています。
会計ソフト・ヘルスケア・グルメなどで利用できる豊富なラインナップが特徴で、現状の悩みや不安に合わせてさまざまなサポートを活用できます。20年以上の支援と、21,000人以上の登録エンジニア数など、実績が伴っている点も魅力です。
公的機関が提供する福利厚生サービス
公的な機関も、積極的にフリーランス向けの福利厚生サービスを提供しています。例えば「東京商工会議所」は、「CLUB CCI」という会員事業所を対象とした福利厚生支援サービスを取り扱っています。エンタメ・健康・ショッピングなど、生活のあらゆるシーンでお得な体験ができる点が特徴です。
5.フリーランス向けの福利厚生の選び方
フリーランス向けの福利厚生サービスは数多くあるため、どれを選んだら良いのか分からなくなることもあるでしょう。以下では、福利厚生サービスの選び方について解説します。
サービスの使いやすさや充実度で選ぶ
サービスの使いやすさや内容の充実度で選ぶのが、自分にとって最適な福利厚生制度を見つける1つのポイントです。同じ「福利厚生」という名称でも、実際に利用できるサービスの内容や有効範囲は変わります。例えばフリーランスエンジニアとして働いているのなら、エンジニアとしてキャリアアップできる支援制度や、関連サービスが安く利用できる福利厚生を選ぶと良いでしょう。
福利厚生サービスを選ぶ前に、「どのようなメリットを得たいのか」「どんなサービスがあると日常で役立つのか」といった点を考えておくのがポイントです。
料金を比較して選ぶ
フリーランス向けの福利厚生サービスを利用する場合、費用がかかります。なかには無料で利用できるサービスもありますが、より良い支援を受けたいのなら、ある程度のコストが必要になるでしょう。そのため費用対効果を考慮し、もっともお得な福利厚生を選ぶのも1つの方法です。
どれだけ便利で魅力的なサービスでも、収入に対して見合わない料金の場合、有効活用するのが難しくなります。手数料やプランごとの費用をチェックし、無理のない範囲で使える福利厚生サービスを選ぶのがおすすめです。
自分の生活に必要なサービスがあるかで判断する
そもそも福利厚生の内容が、自分の生活に必要なサービスなのか考えることも、選択するうえで重要です。フリーランスの福利厚生は、自分の意思で使わない限りコストがかかりません。逆に言えばせっかく費用をかけているのに、ほとんど使用しないような状態になると、無駄な出費となって生活費を圧迫する結果になるでしょう。
そのため無理に福利厚生を使うのではなく、自分の生活に本当に必要なのかを判断したうえで、最適なサービスをピックアップしていくのがポイントです。
口コミや評判で選ぶ
フリーランス向けの福利厚生を選ぶ際には、そのサービスの口コミや評判を参考にすることも1つの方法です。実際に福利厚生サービスを使用しているフリーランスの話をチェックし、良い点・悪い点をピックアップして、自分のニーズにマッチするか確認しておきましょう。
福利厚生サービスの口コミ・評判は、ネットの口コミサイトやSNSなどを参考にするのが基本です。しかし、すべての情報が正しく客観性を持つとは限らないため、複数の意見をチェックして極端な内容に惑わされないように注意しましょう。
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6.まとめ
福利厚生は会社員の特権ではなく、フリーランスも利用できる制度です。フリーランス向けの福利厚生サービスも充実しているため、実際にどんなものがあるのかを、この機会にチェックしてみると良いでしょう。
福利厚生サービスはフリーランスの生活を支えたり、トラブルに対する備えとして使えたりと、あらゆるシーンで役立てられます。しかし、福利厚生の具体的な内容やメリットを知らないと、せっかくの制度を活用できずに損をする可能性もあるでしょう。個人で働くフリーランスだからこそ、外部の助けを得られる福利厚生は、積極的に利用していくのがおすすめです。
本記事が皆様にとって少しでもお役に立てますと幸いです。