個人事業主や法人、また資産を保有している人や相続を受けた人などに対しては、税務署や国税庁によって税務調査が実施されることがあります。
「怖いもの」「重い罰則を受けるかもしれない」といったイメージを持つ方もいるかもしれませんが、実際にはどうなのでしょうか。この記事では、税務調査の具体的な流れや準備すべき書類、対応の仕方について詳しく解説していきます。
目次
1.そもそも税務調査とは?
税務調査とは確定申告で提出された内容が正確かどうかを確認するために、税務署が実施する調査のことです。
この調査では売上・所得・経費の詳細に加えて、計上漏れや収支の計上時期などについても精査されます。
調査の対象は、事業規模を問わず、すべての法人および個人事業主が含まれます。
一般的には数年に一度のペースで調査が行われるケースが想定されるものの、企業によっては毎年のように調査を受けることもあります。
税務調査が行われやすい時期はいつ?
税務調査が行われる時期については明確な規定や決まったルールはなく、年間を通じて調査が実施される可能性があります。
とはいえ特に8月から11月中旬にかけては、調査件数が増加する傾向にあります。その背景には、主に以下の2つの要因があると考えられます。
税務署の会計年度が7月から翌年6月であるため
税務署の会計年度は毎年7月に始まり、翌年6月で終了します。つまり7月初旬に実施される人事異動を経て、新体制がスタートするのです。
その後組織が落ち着きを見せ、お盆明けとなる8月中旬頃からその年度に予定されている税務調査が本格的に進められるのが通例です。
3月決算の日本企業が少なくないため
一般的に法人の決算月によって税務調査の実施時期は以下のように分かれます。
決算月が2月から5月の法人は7月から12月にかけて調査が行われるのが通常であり、一方6月から翌年の1月が決算月である法人については翌1月から6月の間に調査が行われる傾向があります。
日本では特に3月決算の企業が多いため、結果として税務調査は7月から12月の期間に集中しやすいと考えられます。
税務調査の確率
国税庁は毎年法人税・消費税などに関する調査を実施し、その結果を公表しています。税務調査の実施率は法人税などの申告件数に対して、国税庁(または所轄の税務署)が実際に調査を行った件数の割合を指します。
法人の場合
国税庁が公表した「令和5事務年度 法人税等の申告(課税)事績の概要」によると、令和5年度における法人税の申告件数は合計約317万6,000件でした。また、「令和5事務年度 法人税等の調査事績の概要」によれば、そのうち約5万9,000件(全体の1.86%)が実地調査の対象となったと報告されています。
なお、過去の実地調査の割合は、令和4年度が1.98%(法人税の申告件数は約312万8,000件、実地調査が約6万2,000件)となっています。
これらのデータから、法人の税務調査が行われる確率は概ね2%程度と推測されます。
個人事業主の場合
国税庁が発表した「令和5年分の所得税等、消費税及び贈与税の確定申告状況等について」によると、令和5年度における個人事業主の消費税申告件数は合計約197万2,000件でした。 また、「令和5事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」によれば、申告件数のうち実地調査が行われたのは2.43%にあたる約4万8,000件と報告されています。
前年度である令和4年度に実地調査が実施されたのは約105万5,000件のうち2.46%にあたる約2万6,000件でした。
これらのデータから、個人事業主が税務調査を受ける確率はおおよそ2.5%程度であると推測できます。
2.税務調査の種類
税務調査は大きく分けて「任意調査」と「強制調査」の2つのタイプがあり、両者には大きな違いがあります。それぞれの特徴について詳しく解説していきます。
任意調査
任意調査は国税局調査部・税務署の調査官・国税局資料調査課の実査官によって実施されます。強制調査と異なり調査官が裁判所の令状を携帯することはなく、一部例外を除き基本的には事前に電話や書面で調査の実施が通知されます。
調査官には「質問検査権」が与えられており、調査の際には対象者に対してさまざまな質問が行われます。もし申告漏れ・無申告・脱税行為が発覚した場合、修正申告や是正が求められることになります。
通常企業や個人に対して行われる税務調査は、この任意調査の形態がほとんどです。
基本的には納税者の同意のもとで実施されますが、正当な理由なしに拒否すると刑事罰を受ける可能性もあるため十分な注意が必要です。
強制調査
「マルサ」として広く知られている国税庁調査査察部が担当します。これは警察が行う家宅捜索と同様に裁判所から発行された令状に基づいて行われるため、対象者は調査を拒否することができません。
調査官は脱税が疑われる対象者のもとを訪れ、資料の押収や聞き取りを行います。脱税行為が確認されると検察庁に告発され、その後検察官によって起訴され刑事罰が科せられる可能性があります。
メディアでは時折大企業・有名企業・著名人が強制調査を受けたというニュースが報じられ、税務調査というとこの強制調査を連想する方も多いかもしれません。ただし通常は証拠隠滅のための工作が行われたなど、悪質なケースに限られますので、一般の方々にはほとんど関係がないと考えられます。
3.税務調査で調査対象になりやすい法人の特徴
税務調査は、申告内容や納税が正確に行われているかを確認するための手続きです。そのため、税務署が指摘を行いやすい法人を対象に実施されることが通例です。そこで今回は、税務調査を受けやすい法人の特徴についていくつかご説明します。
過去に税務調査で指摘を受けたことがある
過去に税務調査で修正申告や更正処分を受けたことがある法人は、再度税務調査を受ける可能性が高くなります。これは、以前指摘された点が適切に処理されているかを確認するためです。
指摘された部分は修正し、今後も正しい処理を続けることが求められるため問題がないか事前にチェックしておくことが重要です。特に意図的に脱税を試み税務署から指摘された場合は、疑いの目を向けられることになります。
そのため、税務調査を受けるリスクがさらに高くなると考えるべきです。
売上や利益に大きな変動があった
例年と比較して売上や経費が大きく増加した場合や減少した場合は、税務調査を受けるリスクが高くなります。不正な会計操作が行われている可能性が疑われるからです。
また同業他社と比べて利益が極端に低い場合も、不正行為が疑われる原因となります。もちろん不正を行っていなければ心配はありませんが、売上や経費の大幅な増減や利益の異常値についてはその理由を証拠とともに説明できるように準備しておくことが重要です。
開業から数年以上が経過している
開業から数年以上経過している法人は、税務調査を受ける可能性が高くなります。過去数年分の申告内容を調べたり、同業他社と比較して記帳方法などに疑問点がないかを確認したりすることができるためです。
実際には申告内容に不審な点があっても、すぐに調査が行われることは少なく数年経過してから調査が実施されることもあります。
税務調査は通常数期分を対象に行われますが、場合によってはそれ以上さかのぼって調査が行われることもあります。
4.法人が税務調査で指摘されやすい内容
税務調査が行われたからといって、必ずしも指摘を受けるわけではありません。しかし、指摘を受けやすい法人には共通した特徴があるのも事実です。今回は税務調査で指摘を受けやすい法人の特徴について、詳しく説明します。
売上の計上漏れや期ずれ計上がある
売上の計上漏れや翌期への計上遅れがある場合、税務調査で指摘されるリスクが高くなります。これらは税務調査官が特に重点的にチェックしている部分です。
特に前年と比べて売上や利益に大きな変動がある場合、申告漏れがないか調べられます。期末に発生した売上を翌期に計上していると、指摘を受けることが多いです。実際には、期末の売上は当期のものとしてきちんと計上しなければなりません。
また経営者が軽微な売上を個人的に処理してしまうことで、計上漏れが発生する場合もあります。関係者に確認を行い通帳や帳簿に記載されていない売上がないか調べ、申告書に正確に反映させることが重要です。
在庫の計上漏れが発生している
在庫の計上漏れも税務調査で指摘を受けやすい項目の一つです。
期末棚卸しで在庫が計上されていない場合には売上原価が過剰に計上され、利益が少なく見積もられてしまいます。棚卸資産は金額が大きく納税額にも大きな影響を与えるため、調査官も特に注視しています。
仕掛品・貯蔵品・社外に保管されている在庫は見逃されやすい点で注意が必要です。社外在庫には、例えば未着品(注文したがまだ届いていないもの)やトラック在庫(発送済みだが相手にまだ届いていないもの)が含まれます。
実務上では棚卸表を作成しそれを基に決算処理を行いますが、数量や価格に誤りがあれば正しい計算ができません。誤りがないか、改めて確認することが重要です。
経費が重複して計上されている
経費の二重計上がある場合、税務調査で指摘を受けるリスクが高くなります。特に、経費をクレジットカードで支払っている場合は注意が必要です。
クレジットカードで支払った経費を領収書とクレジットカードの明細書の両方から計上してしまうと、二重計上となり税務調査で指摘される可能性があります。特に交際費や外注費については水増し計上されることが多いため、これらの経費は税務調査で重点的にチェックされることが想定されます。
社内で交際費や外注費が多く発生している場合は、二重計上を避けるように特に注意が必要です。日常的に領収書の管理を徹底し万が一二重計上が発覚した場合は、すぐに修正を行うことが重要です。
5.税務調査の対象になりやすい個人の特徴
個人事業主やフリーランスを含む個人にも税務調査が実施されることがあります。特に以下のような特徴がある場合、調査の対象になりやすいです。
売上が急増している場合
利益が異常に低い場合
申告漏れが多い業種に該当する場合
税務申告をしていない
申告内容に不明瞭な点がある
新たに事業を開始した分野で活動している
売上が1,000万円をわずかに下回っている
これらの特徴について、詳しく解説します。
売上が急増している
個人事業主の売上が急激に増加している場合、税務調査の対象になるリスクが高くなります。税務署は、急激な売上増加が事業の実態と合致していないのではないかと疑うことがあるからです。
例えば昨年まで売上が低迷していたにもかかわらず、特に理由がないまま急に売上が倍増した場合には税務署はそれを不自然な増収とみなすことがあります。
また売上が急増しているにもかかわらず、経費がそれほど増えていない場合も税務署の疑念を招くことがあります。売上の増加に伴い通常は仕入れや人件費などの経費も増加しますが、そのバランスが取れていないと売上を過大に申告しているのではないかと疑われる可能性があるのです。
利益が異常に低い場合
個人事業主の利益が極端に低い場合、税務調査を受ける可能性が高くなります。事業の収入に対して経費が過剰であったり申告した所得が著しく低すぎたりすると、税務署が不審に思うことが多いです。
例えば同業他社と売上規模がほぼ同じであるにも関わらず、利益率が極端に低い場合は要注意です。また事業主の生活水準と申告所得が大きくかけ離れている場合も、税務署が疑問を抱くことがあります。
申告漏れが多い業種に該当する場合
申告漏れが多いとされる業種に従事している個人事業主は、税務調査を受けるリスクが比較的高くなります。
これらの業種では申告漏れが頻繁に発生する傾向があり、税務当局が特に調査を行いやすい対象となっているからです。具体的には経営コンサルタントなどが該当します。
確定申告を行っていない
「申告しなければ調査されることはない」と考える方もいるかもしれませんが、そのような考え方には注意が必要です。例えば取引先に税務調査が行われた場合、その取引記録を通じて自分の売上や申告漏れが税務署に知られることがあるからです。
長期間税務調査を受けていない場合
長期間にわたり税務調査を受けていない個人事業主は、税務調査の対象になりやすい傾向があります。税務当局は定期的に事業者の税務状況をチェックする必要があるため、長期間調査が行われていない事業者は優先的に調査される可能性が高いと見なされます。
このような特徴を持つ個人事業主は、税務調査を受ける確率が高くなります。そのため個人事業主として活動する際には、これらの点を意識し適切な税務処理を行うことが重要です
申告内容に疑わしい点がある
「売上や業種の平均と比べて経費の割合が異常に高い」「確定申告書と取引先の支払調書の金額に不一致がある」など、申告内容に疑問が生じる場合も税務調査が行われる可能性が高くなります。
また帳簿が適切に管理されていない場合も、同様に調査のリスクが高まります。
新規分野で事業を始めた
インターネット通販・インターネット広告・仮想通貨などオンラインでの取引に関連する新しい分野の事業を行っている場合、税務署はその事業に関する情報を収集する目的で税務調査を実施することがあります。
売上が1,000万円をわずかに下回っている
個人事業主は売上が1,000万円を超えるなどの条件を満たすと消費税の課税事業者となります。そのため売上がその基準をわずかに下回っている場合、消費税を回避する目的で過少申告をしているのではないかと疑われることがあります。
6.税務調査を受ける際の準備と対応策
この章では税務調査を受ける際の準備と対応策について解説します。
税務調査に対して過剰な不安を持つ必要はない
意図的な不正行為がない限り、税務調査を過度に心配する必要はありません。申告内容に誤りが指摘されても悪質でない限り罰則を受けることはなく、通常は修正申告を行うことで解決します。
事前に顧問税理士と綿密に打ち合わせを行う
税務調査に備えて必要書類や調査の進行、対応方法について事前に顧問税理士と相談しておきましょう。顧問税理士は事業の内容や経理・納税状況に詳しく、税務調査の立会い経験も豊富ですので適切なアドバイスを受けられます。また調査当日には、質問内容に応じて税理士に回答を任せることもできます。
質問には誠実に答え、曖昧な受け答えは控える
税務調査で質問されたことには、正直に答えるようにしましょう。もしその場で分からない場合は、きちんと調べた上で後日回答することは問題ありません。しかしあいまいな回答をすると、それが原因で調査官に疑念を抱かれることがあるため注意が必要です。
聞かれたことに対してのみ簡潔に回答する
税務調査では、質問された内容にのみ回答することが重要です。聞かれていないことまで話してしまうと、その情報から余計な疑念を抱かれる可能性があります。無駄なことは話さないように注意しましょう。
書類の押収(留置き)に備えて、必要書類はコピーを取っておく
「留置き」とは税務調査官が納税者の同意を得て、帳簿や書類を一時的に預かることを指します。
税務署が業務に必要な書類を預かると、業務に影響が出る可能性があります。重要な書類については、事前にコピーを取っておくと安心です。
7.税務調査が入るとどうなる?
税務調査をスムーズに進めるためには、全体の流れを理解しておくことが重要です。この章では、税務調査が入るとどうなるかをプロセスごとに説明します。
税務署からの事前通知を受け取る
税務調査が実施される場合、通常税務署から事前に電話通知があります。調査官から訪問日を調整するための連絡があり、もし都合が悪ければ別の日に変更することもできます。通知の際には、調査にかかる期間や提出すべき書類の期限も伝えられます。
また顧問税理士がいる場合、もし「税務代理権限証書」の「調査の通知に関する同意」欄にチェックが入っていれば顧問税理士にも通知が届きます。これがチェックされているかどうかは、確定申告時に確認できます。
調査に向けた事前準備を行う
事前通知を受けてから実地調査までの期間には、準備作業を行います。この準備には帳簿・領収書・請求書・口座の取引明細など、多くの書類を整える必要があります。
書類の準備が整ったら税理士とミーティングを実施し、確認すべき事項や課題について話し合っておきましょう。
税務調査を受ける
実地調査では調査官が会社や店舗を訪れ、実際に調査を行います。調査の期間は通常数日ですが、脱税の疑いがある場合はそれ以上の時間を要することもあります。一般的な調査の流れは次のようになります。
1日目午前・・・経営者へのヒアリングや会社の概要確認
1日目午後・・・帳簿や関連資料の確認
2日目午前・・・疑問点を確認しながら詳細な調査
2日目夕方・・・税務調査結果の説明
税務署からの指摘に対応する
通常、調査結果は簡単なメモ形式で提示されます。このメモには発見された問題点や誤り、追加で課される税額などが記載されています。もし調査結果に不満がある場合は、異議申し立てを行う権利もあります。
8.税務調査でどこまで調べる?
この章では項目ごとに税務調査でどこまで調べるのかについて解説します。
売上および仕入金額
期ズレ
損金の振り分け
辻褄が合わない領収書 など
これらに不審な点が見受けられた場合、調査が厳しく行われる可能性が高いため常に正確な申告を心掛けましょう。
売上額や仕入額の確認
売上は、税務調査で必ず確認される項目です。特に計上漏れや過少申告がないか、預金通帳・帳簿・決算書との一致が見られます。
仕入金額も調査官が注目する重要なポイントです。仕入金額を過剰に計上することで税負担を軽減しようとする不正がよくあるためです。このため仕入金額のチェックでは、売上と正しく対応しているかどうかが重点的に見られます。
また前年に比べて売上や仕入金額に大きな変動がある場合、その理由が確認されますので説明できるように準備しておきましょう。
収益・費用の計上時期のズレ(期ズレ)
期ズレがあると実際に支払うべき税額が変わるため、税務調査で確認されます。そのため特に事業年度の前後で行う取引の処理には注意を払い、誤りがないように発生主義に基づいて計上することが重要です。
なお発生主義とは、売上や費用が発生したタイミングで計上する方法を指します。
損金として計上された費用の内容確認
損金とは法人税法において、法人が所有する資産の減少を示す費用・経費・損失のことを指します。会計上では費用として扱えるものでも、税務上では損金として認められない場合があります。
そのため損金に該当する項目を正しく計上し、認められないものを除外することが重要です。損金として認められない例には過剰な役員報酬や限度額を超えた交際費・寄付金などが含まれます。
不自然な領収書や証憑書類の整合性
税務調査で確認される主な書類は決算書や帳簿ですが、状況によっては領収書まで確認されることがあります。たとえば交通費の不正計上がないかや頻繁に利用している飲食店の領収書が不適切でないかなど、細かな点が調査の対象となります。
特に交通費は一定額以下であれば領収書なしでも経費として計上できる場合があるため、帳簿に記載された内容について目的や日付を正確に説明できるよう準備しておくことが大切です。
また頻繁に利用している飲食店の領収書は、私的利用の疑いを持たれやすいため交際費や会議費として計上している場合はその目的や取引先との関係を明確に説明できるようにしておきましょう。
さらに、時系列にも注意が必要です。例えば出張中の社員数と社員旅行や忘年会の出席者数に不整合があると、経費の水増しなど不正が疑われる可能性があります。
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9.税務調査時に準備すべき書類一覧
税務調査(任意調査)では、帳簿や申告書などの確認が行われます。そのため、調査当日までに必要書類を準備しておくことが大切です。
準備する資料は法定の保存期間が決められている帳簿や書類です。なお帳簿類の保存期間は基本的に7年ですが、欠損金がある年度については青色欠損金の繰越控除を受けるため10年間の保存が求められます。
【準備する資料】
帳簿類 :仕訳帳・総勘定元帳・現金出納帳・当座預金出納帳・売掛帳・買掛帳・経費帳・集金予定表・支払予定表・資金繰り表・固定資産台帳など(青色申告承認申請書で届け出た帳簿や伝票)
帳簿作成の根拠資料|:領収書・請求書・納品書・注文書・旅費精算書・小切手控・普通預金の通帳・定期預金の通帳・証書・借用証・クレジットカード明細書など
決算関係書類 : 損益計算書・賃貸対照表・棚卸表など
人件費関係の書類|:給与台帳・扶養控除等申告書・源泉徴収簿・社会保険関係の書類・労働者名簿・タイムカードの記録・作業日報など
その他 :見積書・契約書(賃貸借・売買など)・登記簿謄本・稟議書・株主総会議事録・取締役会議事録・定款・個人の預金通帳・パソコン内のデータなど
10.税務調査のリスクを減らすための対策ポイント
税務調査が行われると意図的な不正がなくても企業の信頼が損なわれたり、追徴課税や罰金によって経済的な負担が増大するなどさまざまなリスクが生じます。
こうしたリスクを避けるためには帳簿を適切に管理し、正確な税務申告を行える体制を整えることが重要です。そのためには内部統制を強化したり、適切な経理処理を行ったりすることが大切です。
正確な確定申告を心がける
正確な確定申告書を作成することは、税務調査のリスクを回避するために不可欠な要素です。ミスを防いで確定申告を行うために、以下のポイントに留意しましょう。
不備がないかしっかり確認する
確定申告書には収入・経費・税額などを記入します。これらの情報に誤りがあると、税務署から問い合わせや調査が入るリスクが高まります。
計算ミス・記入漏れ・書類の不備がないかどうか、全てを徹底的にチェックすることが重要です。
申告内容を詳細に記載する
売上や利益に大きな変動があった場合、その理由を明確に記載しましょう。事業の拡大・新製品の投入・経済状況の変化など、変動の要因を具体的に記載します。
また証拠となる領収書や請求書などの関連書類は全て保管し、必要に応じて提出できるように準備しておきましょう。
故意の不正を行わないことが重要
税務調査のリスクを減らすためには、売上の不正な調整や経費の水増しといった行為を避けることが必要です。
こうした不正行為は税務署の監視に引っかかりやすく、調査の対象となる可能性が大きく高まります。
例えば売上を低く見せるために架空の経費を計上して税負担を軽減しようとする行為は、明確な不正行為です。また相続税申告においても、財産の評価額を過少に見積もるような操作は通用しません。
税務署は申告内容に異常値がないか厳しくチェックしています。
悪質な不正行為が発覚すれば、重い罰則が科されることになります。このようなリスクを避けるためにも、日頃から正確な申告を行うことを心がけることが重要です。
11.税務調査で誤りを指摘された場合の対応方法
この章では税務調査で誤りを指摘された場合の対応方法について解説します。
修正申告を提出する
過去に提出した申告書を正しい内容に訂正する手続きです。税務調査で申告した税額が実際より少なかったことが判明した場合、修正申告を行って足りない税額を納める必要があります。
納期限を過ぎているため、追加で納める税額には延滞税や過少申告加算税が加算されることがあります。また、悪質な場合には重加算税が課せられることもあります。税務調査の結果、修正申告を行うことで調査が終了することが一般的です。
更正の請求によって訂正を求める
税務調査の結果、過剰に税金を納めていることが判明した場合、更正の請求を行うことができます。
更正の請求とは、過剰に納めた税金について、税務署に訂正を求める手続きです。請求が認められると、過剰分の税金が還付されます。
更正の請求は、原則として法定申告期限から5年間の期間内に行うことができます。ただし、税務調査を受けた後に更正の請求を行うケースは少ないといえます。
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12.まとめ
税務調査は申告漏れや過少申告の疑いがある場合に限らず、無作為に選ばれて行われることもあります。「自分には関係ないだろう」と油断せず、日頃から正確な帳簿や証憑類をしっかりと整えておくことが大切です。
実際の調査においては税理士に同席してもらうかどうかや、提出書類に不備がないかといった事前の準備が調査への対応を円滑に進められるかを大きく左右します。
また今回の調査で問題がなかったとしても将来的に再度調査が行われる可能性もあるため、常に正確かつ透明性の高い経理と申告を心掛けることが求められます。
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