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ソーシャルマーケティングとは?目的や効果、さらに注目理由や具体的な事例などわかりやすく解説

公開日:2025/04/15最終更新日:2025/04/15

自社の商品やサービスを他と差別化することが難しい今、ソーシャルマーケティングが注目されています。


ソーシャルマーケティングとは自社の利益のみならず、社会全体の利益を考えるマーケティング手法です。企業は社会全体の利益につながる取り組みを実施し、社会をよりよくしながら自社のイメージアップを目指します。また、自社の社会活動が消費者から共感を得られれば、自社の商品やサービスを優先的に選んでもらえることもあります。


本記事では、ソーシャルマーケティングの概要を押さえた上で、ソーシャルマーケティングについて効果、注意点、事例などを見ていきましょう。


1.ソーシャルマーケティングとは

ソーシャルマーケティングとはフィリップ・コトラーが1970年代に提唱した概念です。社会問題の解決を目指し、従来のマーケティングの考え方を用いて導き出した手法です。


ソーシャルマーケティングという言葉には、主に以下の2つの意味が含まれています。

  • 従来のマーケティングの発想を行政機関の運営、社会変革などに活用することを目指す

  • 企業が自社の利益や顧客のみならず、社会全体の利益を意識した活動を行う

ソーシャルマーケティングが注目される理由

現代社会においてソーシャルマーケティングは注目されています。注目されている理由は、多くの人たちがさまざまな問題に直面し、不安定な状況にあるためです。自然災害は連日のように報道されていますし、地球温暖化の影響は年々感じやすくなっています。さらに、経済格差、ジェンダーの問題も深刻化しています。


SNS社会といわれる現在、人びとは自分が置かれている状況を客観的に理解しやすくなりました。そうした中で、自分が社会の構成員として何ができるかと考えを巡らせる人が増えています。


社会貢献の一環として、社会のための活動に励む企業の商品を購入する人、社会のための取り組みを実施している企業を応援する人もいます。また、社会について普段あまり考えていない人であっても、商品を購入することで他者の利益になるのであれば協力しようと考える人もいます。

CSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)

1950年代以降、自由主義経済が加速し、生産性を高めるために公害問題を引き起こす企業、不当な方法で利益を得る企業の増加が問題になりました。企業が成長することで国も活性化する一方、環境問題や労働者の待遇などさまざまな問題が生じたのも事実です。


そうした中で、CSRの重要性が問われるようになりました。CSRとは企業が自社の利益を追求するだけでなく、社会全体と継続的に共存していくために責任ある行動をとり、説明責任を果たしていくことを求める考えです。

例えば、企業活動を積極的に開示したり、環境問題や社会問題の解決に向けて動いたりすることが挙げられます。近年では、地球温暖化に関する取り組み、発展途上国を中心に労働搾取撲滅が注目されています。

2.ソーシャルマーケティングの効果

ソーシャルマーケティングの実施で得られる効果を把握しておくことでモチベーションが高まるだけでなく、自社における今後のビジョンも立てやすくなります。


ソーシャルマーケティングの効果として、以下の5つが挙げられます。

  • 競合他社と差別化できる

  • 従業員のエンゲージメントが向上する

  • 優れた人材を確保できる

  • 資金を調達しやすくなる

  • 企業イメージのアップによる保険効果を得られる

それぞれ確認していきましょう。

競合他社と差別化できる

ネット社会といわれる今、老若男女問わず通販サイトを利用しています。在住エリアに関係なく、多様な選択肢の中から商品を購入できます。これにより、企業間の競争が激化し、自社の商品やサービスを選んでもらうための工夫がこれまで以上に必要になりました。


自社ならではの特徴を出すのが難しい商品やサービスもあります。企業の社会貢献の実績や、消費者が商品やサービスを購入することで社会貢献に参加できるのは大きなポイントになります。


自社の商品やサービスとは無縁だった消費者が、自社にソーシャルマーケティングをきっかけに興味をもってくれるかもしれません。

従業員のエンゲージメントが向上する

従業員は自分が働く意義を自社のソーシャルマーケティングの取り組みを通して実感できることもあります。


自分が働くことで社会に価値を与え、人びとに貢献していることを感じられれば、仕事にやりがいを見出せます。また、自社が評価されれば従業員として誇りを感じられます。


従業員の仕事に対するモチベーションの向上は、自社全体における仕事の質のアップや生産性のアップにもつながります。

優れた人材を確保できる

若い世代は物心がついた頃からSDGsの重要性を教えられてきたと同時に、日本の厳しい状況にも直面してきました。こうしたことからも、社会のために他者のために自分にできることを行いたいという思いが強い傾向にあります。


高校生や大学生の中には事業内容や職種ではなく、企業の社会活動に着目して就職先を選ぶ人もいます。


少子高齢化による人材不足が問題となっている今、若い世代の働き手を確保するには従業員が誇りをもって働ける環境を整える必要があります。また、社会の一員としての意識が高い人は仕事にも積極的に従事してくれる傾向があるため、入社後に自社に貢献してくれる可能性も高いです。

資金を調達しやすくなる

現代社会では融資の中でも環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)が重要なポイントです。


また、近年はESG投資(=環境・社会・ガバナンスへの取り組みを考慮して投資先を選定)も増えています。ソーシャルマーケティングを実施することで、投資家から信頼され、この企業に投資してみようと思ってもらえる可能性も高くなります。


投資家の中には社会貢献を意識して投資する人もいます。自社が社会的に高い価値があることを証明できれば資金調達の目途が立ちやすくなることもあります。

企業イメージのアップによる保険効果を得られる

消費者から厚い信頼がある企業はトラブルが起きた際にもダメージを抑えられる傾向があります。


企業は何らかのトラブルで窮地に立たされた場合、自社を信じてくれる消費者や自社のファンのありがたさを実感することがあります。

3.ソーシャルマーケティングの注意点

ソーシャルマーケティングは効果的なマーケティングであるものの、実施にあたって注意点もあります。


ソーシャルマーケティングの注意点として、以下の3つが挙げられます。

  • 消費者に受け入れてもらえるストーリーが求められる

  • 企業活動で得られる利益とのバランスを考慮しなければならない

  • 成果を出すには継続して実施する必要がある

それぞれ確認していきましょう。

消費者に受け入れてもらえるストーリーが求められる

ソーシャルマーケティングを実施する際は企業イメージにマッチし、多くの消費者に受け入れてもらえるストーリーを提示する必要があります。


ストーリーに共感してくれる消費者が少なければ着目され、話題になる機会も限られます。多くの人に共感してもらえるようにその分野で活動する理由、将来のビジョン、活動を行うことで社会に与える影響などをしっかりと設計し、提示しなければなりません。

企業活動で得られる利益とのバランスを考慮しなければならない

ソーシャルマーケティングを実施したからといって確実に利益を得られる保証はありません。ソーシャルマーケティングを実施するには予算が必要になることがほとんどですが、予算を必ず回収できるわけでもありません。


ソーシャルマーケティングに過大な期待をし、各種コストを無理をして捻出すると、活動を途中で中断せざるを得なくなったり、自社の資金繰りに影響が出たりすることもあります。


ソーシャルマーケティングにおける活動は本業の企業活動に差し障りのない範囲で行うことが大切です。また、今後期待できる利益とのバランスを考慮しながら実施するようにしてください。

成果を出すには継続して実施する必要がある

ソーシャルマーケティングは即効性のあるマーケティングではありません。来月までに利益を〇%アップするためにソーシャルマーケティングを実施したところで、思うような成果は得られないでしょう。


ソーシャルマーケティングは目先の利益ではなく、長期的な利益を見込んで実施するものです。活動を長期間におよんで継続することでこそ、自社の取り組みが消費者にも伝わり、ブランドイメージとして定着します。すぐに効果が出ないからといって中断してはもったいないです。

4.ソーシャルマーケティングの例を紹介

ソーシャルマーケティングの成功のコツは、成功事例を自社の取り組みでも参考にすることです。


ソーシャルマーケティングの例として、以下の5社の事例が挙げられます。

  • ユニクロ「RE.UNIQLO」

  • 森永製菓「1 チョコ for 1 スマイル」

  • サントリー「天然水の森 人類以外採用」

  • アメリカンエクスプレス「自由の女神修復キャンペーン」

  • LUSH「NO!動物実験」

それぞれ確認していきましょう。

ユニクロ「RE.UNIQLO」

ユニクロは人びとが着なくなった服の回収を店舗で行い、服の廃棄量の削減、および再利用を行っています。


回収した服は国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)、および各国のNGO・NPOと協力し、難民キャンプや被災地などに届けています。


また、服として利用することが難しい状態にあるものは断熱材や防音材などの素材として活用しています。ダウンについては着なくなった素材から新しいものを作るリサイクルにも挑戦しています。

森永製菓「1 チョコ for 1 スマイル」

森永製菓はガーナをはじめとするカカオの国の未来を担う⼦どもたちを⽀援しています。支援の財源は年間を通して⾏う寄付に加えて、森永チョコレートなどの対象商品の売上の一部です。


学校で学ぶ子どもたちのために教育環境の改善、児童労働改善に向けた取り組みを実施しています。また、森永製菓のチョコレートを学校で学ぶ子どもたちにプレゼントとして贈ることもあります。

サントリー「天然水の森 人類以外採用」

サントリーは天然水を将来的にも生み出し続けることを目指して、森を育む活動を2003年から実施しています。サントリーは森を守るために専門家と共同調査を実施したり、地元の子どもたちと共に苗木の育成を行ったりしています。


「天然水の森 人類以外採用」というサイトを立ち上げることで自社の取り組みを消費者に分かりやすく、おもしろく伝え、興味をもってもらうことに成功しました。

アメリカンエキスプレス「自由の女神修復キャンペーン」

アメリカンエキスプレス社は消費者がクレジットカードを1回利用するごとに1セント、クレジットカードを新規作成するごとに1セントを自由の女神の修復のための資金として寄付をしました。


アメリカンエキスプレス社はこのキャンペーンによって自由の女神を守れただけでなく、カードの利用額、カードの新規申込数のアップに成功できました。

LUSH「NO!動物実験」

LUSHは創立以来、動物実験に反対し、このポリシーを自社における生涯をかけた目標にしています。


動物実験の科学的根拠の乏しさを広く伝えることに努め、人のボランティアで商品の安全性や効果を実証しています。


また、同社は2007年6月1日以降に動物実験の実施や委託、または関与が判明した生産者や取引先からは原材料を購入しない方針を貫いています。さらに、安全性試験で動物を使わない代替手法を採用するようサプライヤーに奨励し、動物実験代替法の研究開発に資金提供を行っています。


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5.ソーシャルマーケティングと福祉の関係

ソーシャルマーケティングとは社会福祉向上を目的としたマーケティングであり、社会的な問題に対処する手段としても注目されていることから福祉と結びつきがあります。


アメリカでは1980年代に医療ソーシャル ワーカーが病院内でさまざまな職業の人たちと連携しました。ソーシャル マーケティングの手法を活用した実践事例があります。また、ヘルスケアや公衆衛生の分野でも採用されています。


日本においては日本ユニセフ協会のコーズ・リレイテッド・キャンペーンが挙げられます。コーズ・リレイテッド・キャンペーンは企業の広報や販売促進活動において社会貢献活動を実施するものです。企業が実施するセールスプロモーションにおいてユニセフの名前のもとで募金活動をしたり、収益を上げたりすることで、企業はユニセフに対価を支払います。日本ユニセフ協会はこの取り組みによって資金を集めることに成功しました。


ソーシャルマーケティングとは住民参加型のマーケティングですが、これにより人びとのニーズにマッチしたサービスを生み出せます。

6.ソーシャルマーケティングに関するよくある質問

ソーシャルマーケティングについて疑問を抱えている人もいます。ソーシャルマーケティングを始める際はこの概念を正しく理解した上で実施することが大切です。


ソーシャルマーケティングに関するよくある質問として、以下の3つが挙げられます。

  • ソーシャルマーケティングをわかりやすく言うとなんですか?

  • ソーシャルマーケティングとは簡単に言うとなんですか?

  • ソーシャルマーケティングはすぐに利益が出ますか?

それぞれ確認していきましょう。

ソーシャルマーケティングを簡単かつわかりやすく言うとなんですか?

従来のマーケティングは自社の利益拡大のみを目指して行います。一方、ソーシャルマーケティングは自社や顧客だけでなく、社会全体が利益を得られる取り組みを実施します。


ソーシャルマーケティングは社会をよりよくするための考え方、行動指針などへの理解を世の中に浸透させるためのマーケティングともいえます。

ソーシャルマーケティングはすぐに利益が出ますか?

ソーシャルマーケティングはすぐには利益を実感しにくいマーケティング手法です。


ソーシャルマーケティングを短期的に実施しても、消費者に社会貢献に取り組んでいる企業というイメージを抱いてもらうことはできません。また、すぐに辞めてしまうと「継続性がない企業」「イメージアップのために建前として行っただけなのか」とも思われかねません。こうなると、逆に印象が悪くなることもあります。


ソーシャルマーケティングは長期的に行うことでメディアに取り上げてもらえたり、応援者が増えたりします。


ソーシャルマーケティングは長期的に実施することを前提とするため、費用や労力など無理がない範囲で検討するようにしましょう。


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7.まとめ

社会の一員としての自覚を持ち、社会をよりよくしていきたいと考える人が多い今、ソーシャルマーケティングの重要性は高まっています。


ソーシャルマーケティングは他のマーケティング手法と比べて即効性のある手法ではありません。しかし、ソーシャルマーケティングを行うことで自社の信頼を消費者から得られ、多くの人たちから愛される企業への成長を見込めます。


本記事が皆様にとって少しでもお役に立てますと幸いです。


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目次

1.ソーシャルマーケティングとは

ソーシャルマーケティングが注目される理由

CSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)

2.ソーシャルマーケティングの効果

競合他社と差別化できる

従業員のエンゲージメントが向上する

優れた人材を確保できる

資金を調達しやすくなる

企業イメージのアップによる保険効果を得られる

3.ソーシャルマーケティングの注意点

消費者に受け入れてもらえるストーリーが求められる

企業活動で得られる利益とのバランスを考慮しなければならない

成果を出すには継続して実施する必要がある

4.ソーシャルマーケティングの例を紹介

ユニクロ「RE.UNIQLO」

森永製菓「1 チョコ for 1 スマイル」

サントリー「天然水の森 人類以外採用」

アメリカンエキスプレス「自由の女神修復キャンペーン」

LUSH「NO!動物実験」

5.ソーシャルマーケティングと福祉の関係

6.ソーシャルマーケティングに関するよくある質問

ソーシャルマーケティングを簡単かつわかりやすく言うとなんですか?

ソーシャルマーケティングはすぐに利益が出ますか?

7.まとめ