WAFは、Webアプリケーションの脆弱性を狙ったサイバー攻撃からサービスを守るために重要な役割を担うセキュリティ対策です。
しかし、WAFは製品によって仕組みや機能に違いがあり、誤った選び方や運用ミスによっては、十分な防御効果を発揮できない可能性もあります。適切なWAFを導入し、正しく運用するためには、事前に基本知識を押さえておくことが不可欠です。
この記事では、WAFの仕組みや防げる攻撃の種類、種類別の特徴、導入時の比較ポイントや注意点まで詳しく解説していきます。WAFの導入を検討している方にとって、実践的に役立つ情報をわかりやすくまとめました。
ぜひ最後までお読みいただき、WAFに対する理解を深めてください。
目次
1.WAFとは?
WAF(Web Application Firewall)とは、Webアプリケーションへの不正アクセスを防ぐためのセキュリティ製品です。具体的には、SQLインジェクションやクロスサイトスクリプティング(XSS)といった攻撃を検知・遮断する役割を担っています。
従来のネットワークファイアウォールはIPアドレスやポート番号の制御に留まるのに対し、WAFはHTTPやHTTPSといった通信内容まで解析する点が特徴です。そのため、アプリケーション層をターゲットにした攻撃に対して有効な防御手段となります。
近年ではクラウド型WAFやマネージド型WAFも普及し、インフラエンジニアやサービス開発者にとって導入しやすい環境が整っています。WAFは単なる防御ツールではなく、企業の信用を守るためにも欠かせない存在です。
2.WAFが必要な2つの理由
WAFが必要な理由は主に以下の2つです。一つずつ見ていきましょう。
Webアプリケーションの脆弱性対策
新種のサイバー攻撃に遭遇する可能性がある
Webアプリケーションの脆弱性対策
Webアプリケーションの脆弱性対策としてWAFが必要です。
Webアプリケーションは、ビジネスに直結する反面、多くの脆弱性リスクを抱えています。たとえば、ユーザー入力を適切に検証しないままデータベースに渡すと、SQLインジェクションの被害に遭う恐れがあります。他にもクロスサイトスクリプティング(XSS)も、セキュリティ対策が甘いアプリでは簡単に成立してしまうため、注意が必要です。
こうしたリスクを事前にゼロにするのは難しく、脆弱性診断や改修には時間もコストもかかるため、有効なのがWAFです。
WAFは、アプリケーションの脆弱性を悪用しようとする攻撃パターンを自動的に検知し、アクセスをブロックします。結果として、脆弱性修正までの「防護壁」として機能し、サービスの安全性を一段と高める役割を果たします。
新種のサイバー攻撃に遭遇する可能性がある
WAFは、既知の攻撃パターンだけでなく、異常な挙動や不正リクエストを検知してブロックする機能も備えています。そのため、未知の脅威に対しても一定の防御効果を期待できます。
サイバー攻撃は年々進化し、これまでにない手法が次々に登場しています。従来のセキュリティ対策だけでは防ぎきれないケースも増えてきました。たとえば、ゼロデイ攻撃のように、まだ修正パッチが存在しない脆弱性を狙った攻撃は深刻なリスクを伴います。
特に、自社でセキュリティ専門チームを持たない場合でも、WAFを導入することで基本的な防御力を確保できるのは大きなメリットです。常に進化する攻撃に対抗するために、WAFの存在は不可欠になっています。
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3.WAFとFW、IDS・IPSとの違い
サイバー攻撃に対する防御には、WAF、FW(ファイアウォール)、IDS(侵入検知システム)、IPS(侵入防止システム)など、さまざまなセキュリティ製品が使われています。役割を正しく理解し、組み合わせて使うことが、効果的なセキュリティ対策には欠かせません。それぞれの違いを見ていきましょう。
WAFとFWの違い
WAFとIDSの違い
WAFとIPSの違い
WAFとFWの違い
WAFとFW(ファイアウォール)は、どちらも外部からの攻撃を防ぐための仕組みですが、守る対象が異なります。
FWは主にネットワーク層を保護し、IPアドレスやポート番号、通信プロトコルなどの情報を基に通信の許可・遮断を行います。つまり、誰がどこにアクセスするかを管理する役割を担っています。
一方、WAFはHTTPやHTTPS通信の中身まで解析し、Webアプリケーションに対する攻撃を検知・防御します。たとえば、ログイン画面に対して不正な入力が試みられた場合など、FWでは見逃してしまう攻撃もWAFなら防げます。
ネットワークの入口を守るのがFW、アプリケーション層を守るのがWAFというイメージを持つと分かりやすいでしょう。
WAFとIDSの違い
WAFとIDS(侵入検知システム)は、どちらも不正なアクセスを検出する点では共通しています。ただし、IDSは主にネットワークやシステムへの侵入行為を「検知」することに特化しており、攻撃を防ぐのではなく、異常を検出して管理者に通知する役割に留まります。
一方、WAFは単なる検知にとどまらず、攻撃リクエスト自体をリアルタイムで遮断できるのが大きな違いです。特にWebアプリケーションを狙った攻撃では、検知だけでなく即時防御が求められるため、WAFの導入が効果的です。
IDSは広範な監視に強みを持ち、WAFはWebに特化した即時防御を担う、という棲み分けになります。
WAFとIPSの違い
WAFとIPS(侵入防止システム)は、どちらも「検知と防御」を担う点で似ていますが、防御対象と動作内容に違いがあります。
IPSはネットワーク全体を監視し、異常なトラフィックや攻撃パターンを検出した場合に、自動で通信を遮断するシステムです。
これに対してWAFは、特にWebアプリケーション層の通信内容に注目し、不正なリクエストを細かく解析してブロックします。たとえば、データベースを狙ったSQLインジェクションや、不正なスクリプト注入など、Web特有の攻撃にはWAFが高い防御効果を発揮します。
IPSはネットワーク全体の異常検知・防御、WAFはWebアプリに特化した防御、という違いを理解して使い分けることが重要です。
4.WAFの3つの種類
WAFには、提供形態や設置場所に応じて複数の種類があり、目的や利用環境によって適したタイプを選ぶことが重要です。ここでは、以下3つの種類を詳しく解説していきます。それぞれ見ていきましょう。
ソフトウェア型WAF
アプライアンス型WAF
クラウド型WAF
ソフトウェア型WAF
ソフトウェア型WAFは、Webサーバーやアプリケーションサーバー上にインストールして利用するタイプのWAFです。
自社環境に合わせた細かなチューニングやルール設定が可能なため、カスタマイズ性に優れています。特定のアプリケーション構成に最適化できる一方で、導入や設定に専門知識が求められる場合もあります。
また、サーバーリソースを消費するため、ハードウェア性能に余裕がないとWebアプリケーションのパフォーマンスに影響が出るリスクも存在します。運用管理の手間は増えるものの、自社内で制御できる範囲が広い点は大きなメリットです。特に、オンプレミス環境を重視する企業には有力な選択肢となります。
アプライアンス型WAF
アプライアンス型WAFは、専用ハードウェアとして提供されるタイプのWAFです。
ネットワークに接続するだけで利用できるため、導入が比較的スムーズに行えるのが特徴です。高い処理能力を持つ機種が多く、大規模なアクセスや高負荷環境にも耐えられる設計になっています。
また、ハードウェアレベルで最適化されているため、安定性とパフォーマンスの両立が期待できます。一方で、初期投資が大きくなりがちで、運用管理やファームウェア更新といったメンテナンス作業も必要です。主に大企業や、堅牢なセキュリティ対策が求められる業種で導入されるケースが多いのがアプライアンス型WAFの特徴です。
クラウド型WAF
クラウド型WAFは、インターネット経由でサービスとして提供されるWAFです。
自社にサーバーや機器を設置する必要がなく、導入や運用のハードルが非常に低いのが大きなメリットです。最新の脅威情報に基づくルール更新も自動で行われるため、手間をかけずに常に最新の防御が可能になります。
また、スケーラビリティにも優れており、アクセス急増時でも柔軟に対応できます。ただし、クラウド型WAFは提供ベンダー側に設定が依存する部分もあるため、きめ細かい制御が必要な場合には向かないこともあります。
中小企業や、スピーディーにセキュリティ対策を強化したいプロジェクトには、非常に相性の良い選択肢と言えるでしょう。
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5.WAFの2つの仕組み
WAFには主に以下2つの仕組みがあります。それぞれを解説していきます。
ブラックリスト方式
ホワイトリスト方式
ブラックリスト方式
ブラックリスト方式は、攻撃のパターンや特徴を事前にリスト化し、それに該当するリクエストを検知して遮断する仕組みです。
たとえば、SQLインジェクションやクロスサイトスクリプティング(XSS)といった代表的な攻撃手法に対して、有効な防御が期待できます。既知の脅威に対して即座に対応できる点が大きなメリットであり、ルール更新も定期的に行われるため、新たな攻撃パターンにも追従しやすい特徴があります。
ただし、リストに存在しない新種の攻撃には弱く、未知の脅威に対応しきれないリスクも抱えています。そのため、ブラックリスト方式を採用する際は、定期的なルールの見直しや脅威情報の更新を怠らないことが重要です。
ホワイトリスト方式
ホワイトリスト方式は、あらかじめ許可された正常な通信パターンのみを受け入れ、それ以外のリクエストをすべて拒否する仕組みです。この方式の最大の特徴は、未知の攻撃にも強い耐性を持つ点にあります。たとえば、通常の利用パターンから逸脱するリクエストはすべてブロックされるため、ゼロデイ攻撃などにも効果的に対処できます。
一方で、正規の機能追加やWebアプリケーションの仕様変更があった場合、都度ホワイトリストを更新する必要があり、運用負荷が高くなりやすいデメリットもあります。特に頻繁に機能改修が行われるWebサービスでは、メンテナンス体制をしっかり整えることがホワイトリスト方式を成功させる鍵となります。
6.WAFの基本的な5つの機能
WAFの代表的な機能は以下の5つです。正しく利用するためにも機能をしっかりと理解することが大切です。順番に解説していきます。
通信監視および通信制御
シグネチャの自動更新
Cookieの保護
特定URLの除外やIPアドレスの拒否
ログ収集およびレポート出力
通信監視および通信制御
WAFはWebアプリケーションへのすべての通信をリアルタイムで監視し、不審なリクエストを検知すると即座に制御を行います。
たとえば、SQLインジェクションやクロスサイトスクリプティング(XSS)に該当するようなリクエストは、自動的に遮断する仕組みです。正常な通信と異常な通信を瞬時に見分けるため、パターンマッチングや異常検知アルゴリズムが活用されます。
その結果、手動では把握しきれない大量のアクセスを自動で監視できるため、限られたリソースでも高い防御力を確保できます。WAFを導入することで、管理者の負担を軽減しながら、安定したセキュリティ体制の構築が可能です。
シグネチャの自動更新
WAFには、攻撃検知ルールである「シグネチャ」を定期的に更新する機能が備わっています。
シグネチャは、既知の攻撃パターンを検出するための情報集であり、更新を怠ると最新の脅威に対応できなくなるリスクがあります。自動更新機能があることで、新たに発見された脆弱性を狙う攻撃にも迅速に対応できます。
管理者が手動でルールを追加・更新する手間を省ける点も大きなメリットです。
また、ベンダーが最新の脅威情報をもとにシグネチャを提供してくれるため、専門的な知識がなくても一定のセキュリティレベルを維持できます。WAFの信頼性を高める上で、シグネチャの自動更新は欠かせない要素となっています。
Cookieの保護
WAFは、セッション管理などに使われるCookie情報を保護する機能も持っています。
CookieはWebアプリケーションとユーザー間の認証情報やセッション情報を保持するため、もし悪意のある第三者に奪われた場合、なりすまし攻撃など深刻なリスクを招きかねません。WAFはCookieの改ざんや盗難を防ぐために、暗号化、署名付与、Secure属性の強制付与などのセキュリティ対策を自動で適用します。
結果として、Webアプリ側の設定ミスや脆弱性を補完し、全体のセキュリティレベルを底上げできます。特に、個人情報や機密情報を扱うサービスでは、Cookie保護機能の活用が非常に重要です。
特定URLの除外やIPアドレスの拒否
WAFは柔軟なルール設定が可能であり、特定のURLやIPアドレスを対象に通信制御を細かく設定できます。
例えば以下のような制御が可能です。
管理画面へのアクセスは社内ネットワークからのみに制限する
特定の悪意あるIPアドレスからのアクセスを一律に遮断する
このような設定により、不必要なリスクを最小限に抑えられるだけでなく、セキュリティポリシーに合わせたきめ細かい運用が実現できます。
また、一時的に特定機能だけ防御対象外にする「例外ルール」も設定できるため、誤検知時の柔軟な対応も可能です。サービスの特性や利用状況に応じて、WAFルールを最適化することが安全運用には欠かせません。
ログ収集およびレポート出力
WAFは、通信内容や遮断履歴、不審なアクセスの詳細情報を自動でログに記録します。これらのログデータは、後から攻撃の傾向を分析したり、インシデント対応を行ったりする際に非常に重要な情報源となります。
また、多くのWAF製品ではレポート出力機能も備えており、定期的にレポートを生成して、管理者や経営層に対してセキュリティ状況を可視化できます。ログとレポートの活用により、単なる防御だけでなく、脅威の傾向把握や対策の優先順位付けも効率的に進められます。
長期的なセキュリティ強化を目指す上で、ログ管理とレポート活用は欠かせない活動の一つです。
7.WAFで防げる7つの攻撃の種類
WAFは、Webアプリケーションを狙ったさまざまな攻撃を防御する役割を担います。代表的な防御対象は以下の7つです。詳しく解説しています。
バッファオーバーフロー
クロスサイトスクリプティング
SQLインジェクション
OSコマンドインジェクション
DDoS攻撃
ブルートフォースアタック
ディレクトリトラバーサル
バッファオーバーフロー
バッファオーバーフローは、プログラムが用意しているデータ格納領域(バッファ)を超えてデータを書き込む攻撃手法です。
攻撃者はこれを利用して、任意のコードを実行させたり、システム権限を奪取したりする可能性があります。特に、C言語やC++などメモリ管理を手動で行うプログラムに対して発生しやすい問題です。WAFは通信内容を解析し、異常に長いリクエストデータや想定外の入力を検知して遮断することで、バッファオーバーフローによる侵害を防ぎます。
バッファサイズを超える入力を早期に弾く仕組みが備わっているため、サーバー側プログラムの脆弱性をカバーできる点が大きなメリットです。
クロスサイトスクリプティング
クロスサイトスクリプティング(XSS)は、ユーザーが入力するデータに悪意あるスクリプトを仕込み、それをWebページ上で実行させる攻撃です。
攻撃者はこれを利用して、ユーザーのCookie情報を盗んだり、不正な操作を強制したりします。XSSはWebアプリケーションの入力値検証が甘い場合に発生しやすく、被害も広範囲に及び安いのが特徴です。WAFは、リクエスト内に含まれるスクリプトタグやJavaScriptコードパターンを検出し、危険な通信をブロックします。
入力フィルタリングだけで完全に防ぐのは難しいため、WAFによる二重防御が非常に効果的です。サービス利用者の安全性を守るためにも、XSS対策は必須となります。
SQLインジェクション
SQLインジェクションは、データベースと連携するWebアプリケーションに対して、不正なSQL文を混入させる攻撃手法です。
たとえば、ログイン画面で特別な入力を行うことで、パスワードを知らなくても認証を突破したり、データベース内部の情報を引き出したりできてしまいます。
WAFは、リクエスト内容にSQL構文特有の文字列や異常なクエリパターンが含まれていないかをチェックし、不正なリクエストを遮断します。アプリケーション側で十分なサニタイズができていない場合でも、WAFによって防御層を追加できるため、リスクを大幅に軽減できるのが大きな強みです。
OSコマンドインジェクション
OSコマンドインジェクションは、Webアプリケーションを経由してサーバー上で不正なOSコマンドを実行させる攻撃です。
たとえば、フォームに特別な文字列を入力してシェルコマンドを実行し、ファイル操作やシステム情報の取得を行うケースがあります。WAFは、リクエスト中にコマンド実行に関わるパターンや不正なパラメータを検知し、攻撃を未然に防ぎます。
OSコマンドインジェクションは一度成功すると被害が甚大になるため、初期段階での遮断が極めて重要です。特に外部入力をコマンド引数に渡すような設計の場合、WAFによる追加防御が効果的です。
DDoS攻撃
DDoS(Distributed Denial of Service)攻撃は、複数の端末を使って標的のサーバーに大量のリクエストを送り付け、サービスをダウンさせる攻撃です。
WAFは、一定時間内に異常な数のリクエストが集中した場合に、通信を制限・遮断することでDDoS攻撃を緩和します。特にWebアプリケーションへのHTTPリクエスト型DDoS攻撃に対して有効です。
アクセス数のしきい値を設定したり、IP単位で制御したりすることで、被害を最小限に抑えられます。DDoS対策専用サービスと組み合わせることで、さらに堅牢な防御体制を築くことも可能です。
ブルートフォースアタック
ブルートフォースアタックは、パスワードや認証情報を総当たりで試行し、突破を狙う攻撃手法です。
特にログイン画面や管理画面を狙った攻撃が多く、放置するとアカウント乗っ取りの危険性が高まります。
WAFは、同一IPアドレスから短時間に大量のログイン試行が行われた場合にアクセスを制限する機能を持っています。
さらに、失敗回数に応じた一時的なIPブロックなども可能です。アプリケーション側にロック機能がない場合でも、WAFが事前防御できるため、認証系リスクの軽減に役立ちます。
ディレクトリトラバーサル
ディレクトリトラバーサルは、ファイルパスを操作して、本来アクセスできないファイルやディレクトリに不正アクセスを試みる攻撃です。
たとえば、「../../etc/passwd」のようなパスを指定し、サーバー内部の機密情報を取得しようとするケースがあります。WAFは、リクエスト内に含まれる異常なパス指定や相対パス操作を検知してブロックします。
ファイル公開範囲の設定ミスだけでは防ぎきれないため、通信段階での検査は非常に効果的です。特にファイルダウンロード機能を持つWebアプリケーションでは、ディレクトリトラバーサル対策は不可欠です。
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8.WAF製品を導入する際の比較ポイント
WAFを導入する際は、単に知名度や価格だけで選ぶのではなく、複数の視点から慎重に比較することが重要です。この章では以下の比較ポイントについて解説していきます。
WAFの種類
費用対効果
サポート体制
WAFの種類
WAFには「ソフトウェア型」「アプライアンス型」「クラウド型」の大きく3種類があります。それぞれに特徴があり、選択を誤ると運用負荷やコストに大きな影響を与えかねません。
ソフトウェア型:カスタマイズ性に優れる反面、運用管理の手間が増える。
アプライアンス型:高性能で安定性が高い一方、導入費用やメンテナンスコストがかかりがち。
クラウド型:手軽に始められ、最新の脅威情報にも対応しやすいですが、細かなチューニングが難しい場合がある。
自社のセキュリティポリシーやシステム構成に合ったタイプを選ぶことが、WAF導入成功のカギです。
費用対効果
WAF導入時は、初期導入費用だけでなく、継続的な運用コストも含めたトータルコストを把握する必要があります。
たとえば、アプライアンス型はハードウェア購入費に加え、保守契約や定期的なバージョンアップ費用も発生します。クラウド型の場合は、月額料金制が一般的であり、短期的には安価に導入できても、長期的には総額が高くなるケースもあります。
また、WAFによっては機能追加ごとに別途料金が必要な場合もあります。単純な価格比較だけではなく、攻撃リスク低減による損害防止効果や、運用負荷軽減による人的コスト削減効果まで視野に入れた「費用対効果」を総合的に評価することが大切です。
サポート体制
WAFは導入して終わりではなく、運用フェーズでのサポートが非常に重要です。製品によっては、以下の内容が含まれる場合があります。
初期設定支援
チューニングサポート
脅威情報の提供
トラブル時の緊急対応など
一方で、サポートが限定的な製品を選んでしまうと、設定ミスによるセキュリティホールが放置されたり、攻撃発生時に迅速な対応ができなかったりするリスクが高まります。
特に、セキュリティ人材が社内に少ない場合は、ベンダーサポートの品質が導入成否を大きく左右するため、導入前に、サポート範囲や対応スピード、費用有無などを詳細に確認し、安心して運用できる体制を整えることが欠かせません。
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9.WAFを導入する際の注意ポイント
WAFはWebアプリケーションのセキュリティ向上に役立つ一方で、導入・運用には以下3つの注意すべきポイントがあります。
誤検知・誤遮断が発生する可能性がある
Webサイト停止のリスク
WAFでは防げない攻撃もある
誤検知・誤遮断が発生する可能性がある
WAFは通信内容を精密に検査する反面、正常なリクエストを誤って攻撃と判断して遮断してしまう「誤検知・誤遮断」が発生するリスクを抱えています。
たとえば、特定のフォーム入力やAPI通信が、WAFの検知ルールに引っかかって正しく処理できなくなるケースがあります。これが続くと、ユーザー体験の低下や業務システムの不具合につながりかねません。そのため、導入後はログを細かく確認しながら、適切にルールのチューニングを行うことが求められます。
初期設定のまま放置すると、誤検知のリスクを見逃す可能性が高まるため、運用フェーズでの監視・改善作業が重要になります。
Webサイト停止のリスク
WAFを導入する際には、システム構成や設定ミスによってWebサイト全体が停止するリスクも考慮しなければなりません。
一例として、WAFをWebサーバーとユーザーの間に配置するため、設定エラーやハードウェア故障が発生すると、すべての通信が遮断される恐れがあります。
また、過剰な検査負荷により、レスポンス速度が低下したり、アクセス集中時にWAF自体がボトルネックになったりするケースも存在します。
こうしたリスクを避けるためには、冗長構成や、障害発生時に即時バイパスできる設定を事前に整えておくことが重要です。
WAFでは防げない攻撃もある
WAFは非常に多機能なセキュリティツールですが、すべての脅威に対応できるわけではありません。
特に以下のものはWAFの防御対象外となるケースが多くあります。
内部関係者による情報漏えい
マルウェア感染によるバックドア設置
ネットワーク層での攻撃(例:ARPスプーフィング)など
また、ゼロデイ攻撃の中にはWAFの検知ルールをすり抜けるものも存在します。このため、WAF単体に依存するのではなく、IDS・IPS、EDR、アクセス制御など、複数の防御層を組み合わせた多層防御の考え方が重要になります。
WAFを正しく位置づけたうえで、総合的なセキュリティ対策を構築する意識が求められます。
10.まとめ
今回は、WAFについて、仕組みや防げる攻撃の種類、導入時の比較ポイントや注意点についてお話しました。
WAFは、Webアプリケーションを狙うサイバー攻撃からサービスを守るために欠かせない防御手段です。ソフトウェア型、アプライアンス型、クラウド型といった種類があり、自社の環境やニーズに合わせた選択が求められます。
さらに、正しく導入・運用すれば、脆弱性リスクを大きく低減でき、サービスの信頼性向上にもつながります。WAFを効果的に活用し、安全なWebアプリケーション運営を目指しましょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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