近年、多くの企業がクラウド技術を活用しています。クラウドとはサーバーが提供するサービスやソフトウェア、アプリなどをインターネット上のネットワークを経由し、必要な分だけ利用できる形態のことです。クラウドは初期費用を抑えて利用できる他、場所を問わずにアクセスできることからも人気を集めています。
こうした中で需要が高まっている職の1つとしてクラウドエンジニアが挙げられます。クラウドエンジニアとはクラウドサービスを使いITインフラを構築するエンジニアです。クラウドサービスを利用したシステム設計、構築、運用などを行います。
本記事では、クラウドエンジニアの概要を確認した上で、クラウドエンジニアの年収事情や年収をアップさせる方法などを解説します。
目次
1.クラウドエンジニアとは
クラウドエンジニアとはクラウドサービスを使いITインフラを構築するエンジニアです。
クラウドエンジニアの業務範囲は広く、クラウドサービスを利用したシステム設計、構築、運用などが含まれます。
クラウドはITにおけるインフラ環境でもあるため、クラウドエンジニアにはクラウドとインフラの両方のスキルや知識が求められます。
クラウドエンジニアは幅広く知識やスキルが求められる分、エンジニアの中でも年収が高い傾向にあります。
2.クラウドエンジニアの年収事情
国税庁の「民間給与実態統計調査」(令和5年)によると、平均年収は460万円です。職業を選択するにあたって、年収が平均よりも高いか低いかを意識する人は多いかと思いますが、クラウドエンジニアの平均年収は日本人の平均年収よりも高い傾向にあります。
クラウドエンジニアの年収事情について、以下の2つの観点から解説します。
国内のクラウドエンジニアの平均年収
フリーランスのクラウドエンジニアの年収事情
それぞれ確認していきましょう。
国内のクラウドエンジニアの平均年収
厚生労働省の職業情報サイト「jobtag」によると、国内のクラウドエンジニアの平均年収は557.6万円です。なお、同調査は全国で働く就業者が対象で、平均年齢は38.6歳となります。
クラウドエンジニアの平均年収は日本人の平均年収よりも100万円ほど高いです。
フリーランスのクラウドエンジニアの年収事情
クラウドエンジニアとフリーランスの相性はよく、経験や実績を積んだらフリーランスとして独立する道もおすすめです。
例えば、フリーランスエンジニア・ITフリーランスの案件・求人を扱うフリーランスボードにはクラウドエンジニアの求人が複数掲載されています。月額平均単価は78.6万円で、年収換算するとおおよそ943万円になります。
さらに月額100万円前後の案件が多いため、案件をうまく選び、質の高い仕事を行えば年収が1,000万円を超える可能性も高いでしょう。
クラウドエンジニアのフリーランス案件には、他のエンジニアと比べて給与水準が比較的高い案件が多くあります。
3.クラウドエンジニアは年収1,000万以上稼ぐことも可能
クラウドエンジニアが年収1,000万円以上を目指すのは現実的といえます。
先述したように、フリーランスとして独立し、単価の高い案件をうまくこなしていけば年収は1,000万円を超えるでしょう。
クラウドエンジニアが年収1,000万円を超えることは、企業に所属する場合でも十分に可能です。特に大企業や外資系企業では、スキルの向上や役職の昇進に伴い、30代で1,000万円以上の年収に到達することも珍しくありません。
さらに、クラウド技術の専門性を持つエンジニアは市場価値が高いため、技術の進化に適応し続けることで、市場価値が高まり、短期間での昇進や高収入を実現するチャンスも広がっています。
また、近年の働き方の多様化により、プロジェクトベースでの契約やリモートワークを活用して企業内でも柔軟な働き方を選びながら、1,000万円以上の年収を実現することができるようになっています。
4.クラウドエンジニアの年収が高い理由
クラウドエンジニアの年収は他のエンジニアと比べても高いですが、どのような理由によるのでしょうか。
クラウドエンジニアの年収が高い理由として、以下の2つが挙げられます。
業務に従事するには高い専門性が必要だから
クラウドの需要が高まっているから
それぞれ確認していきましょう。
業務に従事するには高い専門性が必要だから
クラウドエンジニアはクラウドの技術を利用するにあたって、高度、かつ専門的なスキルや知識が不可欠です。
また、クラウドにはAmazon Web Services(AWS)、Microsoft Azure、Google Cloud Platform(GCP)などさまざまな提供元があり、それぞれ扱い方が異なります。クラウドエンジニアは独自の仕様を理解し、適切に操作できる力が必要です。
全ての提供元のクラウドをマスターする必要はありませんが、対応できるクラウドが多いほど需要が高いクラウドエンジニアになれます。
さらに、クラウドは日々変化しています。知識やスキルを一度取得したら終わりではなく、知識やスキルを時代の流れの中でアップデートしていかなければなりません。
クラウドの需要が高まっているから
現在成長中の分野や社会的なニーズが高い業界は従業員の平均年収が高い傾向にあります。
クラウドは場所を問わず、少ない負担で利用できることから多くの企業がクラウドを導入しており、クラウドの市場規模は拡大しています。総務省の「令和4年版 情報通信白書」によると、世界のパブリッククラウドサービス市場規模は2016年には1,640億ドルだったのに対し、2024年は6,589億ドルです。
なお、2016年から2024年まで市場は右肩上がりとなっています。
2020年の新型コロナウイルスの感染拡大時にはオフィスの移転や縮小化を検討する企業が相次いでいましたが、この時期にはクラウドへの移行やDXの拡大も進んでいました。
5.クラウドエンジニアが年収アップするために必要なスキル
クラウドエンジニアが年収をアップするためには、年収アップを目指して行動を起こす必要があります。年収アップにおいて鍵となるスキルを把握し、それらを培うことが大切です。
クラウドエンジニアが年収アップするために必要なスキルは、以下の3つです。
マネジメント力
セキュリティ・ネットワークに関する知識
プログラミングスキル
それぞれ確認していきましょう。
マネジメント力
クラウドエンジニアが年収を上げる方法の1つとして、マネジメント的な立場になる方法があります。マネジメント職には技術者としてのスキルや知識だけでなく、リーダーとして周囲を統括する力や困っているメンバーに寄り添える人間力が求められます。
また、マネジメント職になればチーム内外での情報の橋渡しを任されたり、クライアントとのやりとりを担当したりすることもあるので、高いコミュニケーション力が必要です。
例えば、クラウド関連のプロジェクト全体を統括する役割としてプロジェクトマネージャーという職があります。プロジェクトマネージャーはプロジェクトの開始から終了までの全責任を負い、スケジュール管理や人材の選定を行います。
その他にも、プロジェクトを円滑に進められるよう、周囲にはたらきかけます。
セキュリティ・ネットワークに関する知識
クラウド環境ではセキュリティとネットワークの管理を行うには高度なスキルが不可欠です。
クラウドセキュリティの基本にはデータの保護、セキュリティポリシーの管理、アクセス制御など全体的なセキュリティ対策が含まれます。クラウドエンジニアはクラウドプロバイダーのセキュリティ機能を理解し、これらを活用していかなければなりません。
プログラミングスキル
クラウドエンジニアはカスタマイズやクラウド環境の自動化を行う機会もあるため、プログラミングスキルがあると業務をより効率的に進められます。これらを行うにはPython、Bash、PowerShellなどのスクリプティング言語の知識が必要です。
特に、Pythonはクラウドエンジニアに人気のプログラミング言語です。機械学習、自動化、データ分析、Webアプリケーション開発などの分野で使われています。
Pythonは初心者にも比較的理解しやすい言語としても知られています。
6.年収アップを目指すクラウドエンジニアにおすすめの資格
クラウドエンジニアは資格がなくても業務に従事できますが、年収アップを目指す人は業務に関連する資格を取得しておくことをおすすめします。資格を保有していれば、転職の面接で自分のスキルを客観的に証明できるため、より好待遇の条件を提示してもらえることもあります。
また、資格手当を支給している企業もあります。
クラウドエンジニアが年収をアップさせるためにおすすめの資格として、以下の3つが挙げられます。
AWS認定試験
Google Cloud認定資格
Microsoft Azure認定資格
それぞれ確認していきましょう。
AWS認定試験
AWS認定はAmazonが提供するAWSに関する認定資格で、日本だけでなく、世界でも認められている認定資格です。
AWSは国内外でのシェア率が高く、数多くのクラウドプロジェクトで利用されているため、資格を活かせる場が多いです。
ITやクラウドの経験がない個人でクラウドのキャリアに転身したい人、基礎的なクラウドリテラシーを求める基幹業務の従業員におすすめです。
AWS認定試験の詳細はこちらから確認いただけます。
Google Cloud認定資格
Google Cloud認定資格はGoogleが提供するプラットフォームのGoogle Cloudに関する認定資格です。
Google Cloud に関する知識やスキルが評価されるだけでなく、テクノロジーごとに資格が用意されているためGoogle Cloudテクノロジーを使った特定業務の遂行能力も証明可能です。
Google Cloudは多くの企業で利用されているため、この資格を保有していることで活躍できる場を広げられるでしょう。
Google Cloud認定資格の詳細はこちらから確認いただけます。
Microsoft Azure認定資格
Microsoft Azure認定資格はMicrosoft社が提供しているクラウドプラットフォームであるMicrosoft Azureに関する認定資格です。
Microsoft Azureにおいて主要な専門的機能を構成、管理、セキュリティ保護、管理するために求められるスキルの保有を証明できます。
AzureのIDとガバナンスの管理やストレージの実装と管理など、日常的な管理タスクに関するスキルを示します。
Microsoft Azure認定資格の詳細はこちらから確認いただけます。
7.クラウドエンジニアの将来性
結論を先に述べると、クラウドエンジニアの将来性は明るいといえます。
クラウドは費用対効果が高く、手軽に利用できるなどさまざまな点が評価されています。そのため、各企業におけるクラウドの導入は年々進んでおり、今後もこの流れが加速することが予想されます。
クラウドテクノロジーは企業が迅速に市場に対応し、ITインフラの運用コストを最適化するために必要不可欠な要素となっています。
リモートワークや分散型チームの増加によって、クラウド環境での業務運用が標準化されつつあり、これに伴いクラウドエンジニアへの需要もますます高まると考えられます。
さらに、クラウドの進化は今後も止まらないでしょう。マルチクラウド戦略の採用やクラウドネイティブなアプリケーション開発が進むことで、クラウドエンジニアにはさらに高度なスキルや専門知識が求められます。
特にクラウドセキュリティ、AI、機械学習といった先端技術との連携が進む中で、クラウドエンジニアはこれらの技術も扱う必要があり、市場での価値が一層高まることが予測されます。
また、IT人材は国内で不足しており、クラウドの対応を行えるエンジニアだけでなく、エンジニア全体の需要が高まっています。IT人材を募集しても適任者が集まらないと悩んでいる企業は多く、年齢などの制限を設けず門戸を大きく開いている企業も多くあります。
8.クラウドエンジニアについてよくある質問
クラウドエンジニアへの転身を検討している人の中には、疑問や不安を抱える人も多くいます。
ここでは、クラウドエンジニアについてよくある2つの質問に答えます。
クラウドエンジニアは未経験からなれますか?
クラウドエンジニアはやめとけと言われるのはなぜですか?
それぞれ確認していきましょう。
クラウドエンジニアは未経験からなれますか?
未経験からクラウドエンジニアになることは可能です。クラウドエンジニアの社会的ニーズは高いため、クラウドエンジニアになるために他業界から転身することも可能です。
しかし、クラウドエンジニアは専門職で、スキルが不可欠のため最初のうちは苦労することも多いと思います。クラウドエンジニアにはクラウドサービスだけでなく、インフラに関するスキルも求められるため、複数のスキルを取得する必要があります。
そのため、まずはインフラエンジニアとしての実務経験を積むことをおすすめします。
インフラエンジニアとしての経験を持つことで、サーバーやネットワーク、データベースなど、クラウドを支える基礎的な技術を理解することができます。
これらの知識はクラウド環境の構築や運用において非常に重要です。特にクラウドエンジニアは仮想化技術やネットワーク設定などのインフラ技術とクラウドプラットフォームを統合して運用するスキルが求められるため、インフラに関する基礎的な知識を身に付けることで、その後のキャリア成長がスムーズになります。
なお、クラウドエンジニアの平均年収は高めですが、未経験から転身したばかりの人は平均年収に年収が届かないこともあります。しかし、インフラエンジニアとしての基礎を固め、クラウドの専門知識を磨いていくことで年収の向上は十分に見込めます。
クラウドエンジニアはやめとけと言われるのはなぜですか?
クラウドエンジニアは仕事の責任が重く、技術の進歩について行くのも大変な仕事です。また、早朝や深夜、休日を問わずトラブル対応を行わなければなりません。
しかし、やりがいを感じて働いている人、クラウドを支えることを誇らしく感じながら働いている人もいます。どの職業もそうだと思いますが、クラウドエンジニアはやめとけとは一概には言えないでしょう。
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9.まとめ
クラウドエンジニアの年収は平均年収よりも高く、500万円を超えています。また、1000万円以上の年収を得ることも現実的で、スキル次第では年収を大きく上げることも可能です。
また、多くの企業がクラウドの利便性の高さを実感している昨今、今後もクラウドは社会で利用され続けると考えられます。クラウドの導入や運用などにはクラウドエンジニアの存在が不可欠であるため、クラウドエンジニアの需要は続くでしょう。
クラウドエンジニアにこれから転身する人も、長期的に安定的な収入を得られると考えられます。
本記事が皆様にとって少しでもお役に立てますと幸いです。