テクノロジーと医療分野を組み合わせた「ヘルステック」は、革新的な技術の登場とともに幅広いシーンで活用されるようになっています。大手企業だけでなく、ベンチャー企業も積極的に参入していることから、今後も技術発展と有益な利用方法の発見に期待されるでしょう。
ヘルステック関係の仕事に興味があるITエンジニア、フリーランス、社会人の方は、まず「ヘルステックとは何か?」という基本から把握する必要があります。
本記事では、ヘルステックの基本的な概要と、大手ヘルスケア企業ランキングやベンチャー企業一覧、転職のポイントなどを解説します。ヘルステック関連の案件・求人で仕事をしたいのなら、ぜひ詳細を確認してみてください。
目次
1.ヘルステックとは?
そもそも「ヘルステックとは何か?」という点を、具体的に理解することが先決です。ヘルステックは今後も、技術や市場規模の成長に期待されている分野であるため、今から勉強をしておくのもおすすめです。
以下では、ヘルステックの基本的な概要と市場規模について解説します。
最先端のテクノロジーを医療分野で活用すること
ヘルステックとは「ヘルス(Health)」と「テクノロジー(Technology)」をあわせた造語で、医療現場や健康維持のために使用される製品・サービス、もしくはテクノロジーを活かして医療現場の課題を解決するソリューションを指します。
例えばAIやウェアラブルデバイスなどを使い、医療現場の業務改善を進めるといった方法もヘルステックの一環です。ヘルステックは病院だけでなく、介護現場や生活の質を向上させるQOL(クオリティ・オブ・ライフ)のためにも活用されています。
ヘルステックによって医療現場の負担軽減や業務改善の他、オンライン診療などテクノロジーを活かした新しい診療方法の定着などが実現されます。2025年に75歳以上の後期高齢者が増加する「2025年問題」に対応する1つの手段として、ヘルステックへの注目度は高まっていくと考えられるでしょう。
ヘルステックの市場規模
ヘルステックの市場規模は、XENO BRAINの「ヘルステック業界 AI予測分析サマリー」によると、国内市場規模は2029年に5,158億円に達することが予想されています。5年間で市場は44.52%成長し、内訳は医療機関向けのヘルステックが+50.14%、個人向けヘルステックが+20.13%、医療従事者向けヘルステックが+4.4%と公開されています。
その他、「株式会社グローバルインフォメーション」の「日本のヘルステック市場:技術別、競合情勢、用途別、エンドユーザー別、動向分析、競合情勢、予測、2019年~2030年」内で紹介されている「BlueWeave Consulting」の調査によると、日本のCAGR(年平均成長率)は6.16%で大幅に拡大し、2024〜2030年で
6億9,512万米ドルを突破すると予測されています。
大手企業もヘルステック事業を展開している
最先端のテクノロジーを医療分野へ導入することを支援し、技術の進歩に貢献する企業を、「ヘルステック企業」と呼びます。先の通りヘルステック業界は市場規模が拡大していて、2025年問題などを背景に国内での需要も高まっています。
大手企業が複数社参戦することで、技術の発展スピードが加速したり、医療現場で役立つ機器の選択肢が増えたりと、さまざまなメリットにつながると考えられるでしょう。大手企業の案件・求人に参画することは、ITエンジニアやフリーランスエンジニアにとって、キャリアアップの良い経験にもなるでしょう。具体的にどのような企業がヘルステックに参入しているのかチェックし、案件・求人を探してみるのもおすすめです。
2.ヘルステックが注目されている理由
ヘルステックが注目を集めている背景には、さまざまな理由があります。ヘルステックを取り巻く現状を理解することで、社会的なニーズに対して自分ができることを把握しやすくなるでしょう。
以下では、ヘルステックが注目されている理由について解説します。
医療費の負担増加
医療費の負担が増加している点は、ヘルステックが注目されている理由の1つです。少子高齢化が進む国内の現状は、「国民皆保険制度」を採用している日本にとって、医療費の高騰につながってしまいます。
厚生労働省の「令和5年度 医療費の動向」によると、令和5年度の概算医療費は47.3兆円、対前年同期比で2.9%の増加となっています。令和元年度から5年度までの平均伸び率を見てみると、2.1%の増加という結果です。これは新型コロナウイルス感染症の5類移行への影響などが、医療費上昇の背景にあると考えられます。
負担増加を続ける医療費対策の一環として、ヘルステックの活用が考えられています。例えば健康情報を測定する機器やアプリを日常的に使うことが習慣化されれば、健康を維持して病院に行く機会を減らせる可能性があります。病院を受診する人の数が減れば、結果的に医療費の削減につながると予想されるでしょう。
医療格差の拡大
地方の医療は都市圏と比較して、医師や医療施設が不足しがちです。そのため適切な医療を受けられない人がいたり、病院に行くために負担がかかったりと、地域による医療格差が問題となっています。また、医師や看護師などの医療従事者の人員不足も課題となっていて、都市部でも個人の負担が大きくなることがあります。
医療格差や医療従事者不足による負担軽減を進めるためにも、ヘルステックの導入が有益と考えられます。例えばオンライン診療や自宅で使える検査キットの配布などを行うことで、地方でも適切な支援が受けられるようになる可能性があるでしょう。
デジタル技術が医療分野へ貢献している
デジタル技術の発展も、ヘルステックが普及している背景に関係しています。スマートフォンを1人1台持つのが当たり前となり、IoT機器が身近な存在となった現代では、医療対応もスムーズに行えるようになりつつあります。
また、健康寿命やQOLへの意識が高まっていることも、デジタル技術の発展とシナジーがあると考えられます。アプリなどを使うことで、AIがクラウド上の健康データを解析し、病気予防に必要な情報を提供するなどの対応も可能です。
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3.ヘルステックの上場企業ランキング
ヘルステックに関する仕事に携わりたいのなら、上場している大手企業の情報をチェックするのが重要です。以下では、ヘルステックの上場企業をランキング形式で紹介します。
日本のヘルステック・ヘルスケア企業ランキング
日本におけるヘルステック・ヘルスケア企業を売上高を基準にランキング化すると、トップ5位は以下のような順位になります。
順位 | 企業名 | 売上高 |
---|---|---|
1位 | 富士通 | 3兆5,868億円 |
2位 | NEC | 3兆140億円 |
3位 | 富士フイルム | 2兆5,257億円 |
4位 | TIS | 4,825億円 |
5位 | PHCホールディングス | 3,404億円 |
(引用元:https://jo-katsu.com/campus/26778/)
上記の他にも、医療ポータルサイト「m3.com」を展開する「エムスリー株式会社」、ヘルスケアのネットサービスを提供する「株式会社メドレー」、医療統計データサービスを扱う「株式会社JMDC」など、注目の上場企業は多数あります。
各企業の情報を確認し、自身のスキルを活かして働けるか検討してみるのも良いでしょう。
ヘルステックのベンチャー企業一覧
ヘルステックに関する事業を展開しているのは、大企業ばかりではありません。今後の成長に期待されるベンチャー企業も、ヘルステック分野で活躍しています。例えば以下のベンチャー企業は、ヘルステック業界で注目を集めています。
企業名 | 事業内容 |
---|---|
株式会社メディカルノート | メディア&プラットフォーム事業・ヘルスケアイノベーション事業を展開 |
Ubie株式会社 | AIを活用した症状検索エンジン「ユビー」などの提供 |
株式会社カケハシ | 調剤薬局のDX推進 |
ファストドクター株式会社 | 医療プラットフォーム「ファストドクター」の運営事業などを行う |
株式会社MICIN | オンライン診療サービスなどAIを使った事業などを展開 |
ヘルステックに関する事業を展開しているベンチャー企業も多いため、今後の業界への貢献に期待できるでしょう。
4.日本のヘルステックにおける課題・問題点
ヘルステック業界は注目度が高まっていますが、解決すべき課題や問題点もあります。以下では、ヘルステックにおける課題・問題点について解説します。
医療業界のデジタル化が遅れている
日本の医療業界は、海外と比べてデジタル化が遅れていると言われています。法律の問題や個人情報の管理に関する考え方の違いなどによって、医療分野のデジタル化は十分ではないと考えられています。自身の情報がオンラインで人手にわたってしまうことに、危機感や不安感を覚える人もいるでしょう。そういった認識の問題を乗り越えることが、ヘルスケア業界が抱える課題の1つです。
オンライン診療が定着していない
医療現場のデジタル化が遅れているために、インターネットを活用したオンライン診療が定着していない点も問題になっています。新型コロナウイルスが流行した際にも、日本では諸外国と比較してオンラインへの以降が進みませんでした。
現在も普及率は低く、「令和4年情報通信白書」ではオンライン診療の導入率は全体の15%程度でした。一方で、「日本テレネット株式会社の調査」によると、現在オンライン診療をしている医療機関の半数以上が、直近3年以内にシステムを導入していると回答しています。
また、3割程度の医療機関は、対面・訪問診療と比べてオンライン診療は、診療時間が50%未満になっていると答えています。コスト面に対する質問では、オンライン診療の費用は「毎月1万円未満である」とする医療機関が約7割となっています。
上記のようなオンライン診療を導入するメリットやコストの安さが周知されれば、普及率は高まっていく可能性があるでしょう。今後オンライン診療の普及率が高まれば、必要な機器やシステムにも需要が生まれ、ITエンジニアの仕事が増える可能性にも期待できます。
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5.ヘルステック企業に転職するには
ヘルステック企業に転職したり、フリーランス向けの案件・求人に応募したりする際には、事前にさまざまな準備をしておく必要があります。ITエンジニアとしてヘルステックの仕事をしてみたいのなら、まずは何をするべきか以下を参考に確認しておきましょう。
ヘルステックの主要分野を把握しておく
ヘルステック企業への転職およびフリーランス案件・求人の獲得を成功させるには、まず主要分野やビジネスモデルについての理解を深めておく必要があります。例えば以下の分野で、ヘルステックは活用されています。
オンライン診療
電子版のお薬手帳
AI画像診断
IoMT(IoTの一種で、医療機器とヘルスケアを結ぶシステム)
処方箋薬の配達
介護ロボットの利用
ウェアラブルデバイスの活用 など
これらの領域を基本とし、どのような仕事をしたいのか具体的に考えてみることが、ヘルステック企業で働くための第一歩です。ヘルステックの仕事をする際には、各領域における基本的な知識が求められるため、勉強の時間を確保して即戦力になれる人材を目指すと良いでしょう。
業界研究・企業研究をしておく
ヘルステックの業界研究・企業研究を行うことも、転職・フリーランスとして働くための準備になります。先に紹介した大手企業やベンチャー企業のWebサイトを参考に、どのような事業展開を予定しているのか、どんな人材を求めているのか確認してみましょう。
自身のスキルがニーズにマッチしている企業をピックアップしておくことで、その後のキャリアを考えたり、応募する求人・案件を探したりといった準備がスムーズに進められます。
例えばヘルステック企業では、プロダクト開発やDX推進の業務経験がある人材などが求められる傾向にあるようです。自分のスキルや経験と照らし合わせて、活躍できる職場を探してみることから始めてみましょう。
転職エージェント・転職サイトを活用する
ヘルステック企業への転職を目指すのなら、転職エージェント・転職サイトに登録してサービスを有効活用するのがポイントです。ヘルステック企業への転職に特化したエージェントを使えば、ITエンジニアとして活躍できる職場をスムーズに見つけられる可能性を高められるでしょう。
また、フリーランスとしてヘルステック企業の案件・求人を探す際にも、専用のサービスを活用するのがおすすめです。例えばITフリーランス向けの案件・求人を掲載している「フリーランスボード」では、ヘルステック関係の仕事が多数掲載されています。
ヘルステックベンチャーの開発業務、ヘルステックアプリの開発・運用などの案件・求人があります。フルリモートで働ける仕事もあるため、自分の労働スタイルに合わせた求人・案件を選びやすいでしょう。
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6.まとめ
ヘルステックは医療現場の課題を解決し、将来的な問題に対処するための手段の1つとして注目されています。市場規模は今後も拡大していくことが予想されているため、大手企業・ベンチャー企業の参入が増える可能性もあるでしょう。
ヘルステック事業を展開する企業が増えれば、そこで働くIT人材も必要になります。ヘルステック業界の仕事に興味があるのなら、この機会に基本的な特徴と企業情報、転職やフリーランスとして働くための方法を確認してみてください。
本記事が皆様にとって少しでもお役に立てますと幸いです。
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