「セキュリティ分野で活躍したい」「エンジニアとしてセキュリティにも強くなりたい」とお考えであれば、SSCPの合格に向けて勉強してみてはいかがでしょうか。
日々進化する悪意のある第三者のサイバー攻撃に対抗するためにも、セキュリティに強いエンジニアとして知識やスキルを身につけることは、企業や組織の情報資産を守るだけでなく、クライアントやユーザーを守ることとなり、自分自身のエンジニアとしての市場価値の向上に役立ちます。
本記事では、SSCPに興味をお持ちの方や勉強されている方のために、SSCP認定資格の概要や詳細情報、取得するメリット・デメリット、そして合格に向けた学習方法などをお話します。
目次
1.SSCPに関する基礎知識
はじめに、SSCPがどのような資格なのかを理解していただくために、SSCPに関する基本的な情報や目指せるキャリアについて解説していきます。
SSCPとは
SSCPとは、Systems Security Certified Practitionerの略称であり、国際的な非営利団体であるISC2(International Information System Security Certification Consortium)が認定及び実施する、情報セキュリティに関する知識やスキルが問われる資格試験です。
SSCPは、企業や組織の情報セキュリティポリシーに基づき、ITインフラストラクチャの運用・管理・保護を担当する実務者向けの認定資格であり、セキュリティ分野でキャリア形成をしたいエンジニアに役立つ資格と言えます。
ネットワークセキュリティ管理者、システム管理者、セキュリティアナリスト、データベース管理者など、現場でセキュリティ対策を実践する役割を担う技術者に求められる知識とスキルを証明することが目的であり、グローバルな資格であることから、国内外問わずセキュリティ分野で活躍したいと考えるエンジニアにもおすすめです。
SSCPの受験に実務経験は必要か
SSCPの受験には実務経験は必要ないものの、合格した後に認定を受けるためには、原則として実務経験が必要です。ISC2が定める「認定要件」のページによると、SSCP CBKの7つのドメインのうち、少なくとも1つのドメインにおいて、1年以上の業務経験が求められます。
また、実務経験が少なく、すぐに認定条件を満たしていなくても、合格後に条件を満たせば認定されるため、セキュリティ分野のエンジニアとして働く予定であれば、合格が無駄になることはありません。
合格後、「ISC2準会員(Associate of ISC2)」として登録され、その後2年以内に必要な実務経験を積むことで正式なSSCP認定を受ける仕組みになっています。また、受験に合格していること自体は証明できることから、合格するだけでも知識やスキルが身についていることの証明になるということは覚えておきましょう。
SSCPの受験に英語力は必須か
SSCP認定試験は、日本語で受験し、合格することが可能です。そのため、英語力の有無が受験の際に大きく影響することはないでしょう。
しかし、ISC2が提供する公式トレーニングや公式教材の一部は英語のみの場合もあります。また、情報セキュリティ分野の最新技術や脅威に関する情報は、英語で発信されることが非常に多いのが現状です。
そのため、試験合格のためだけに英語力が必須とは言えませんが、資格取得後も継続的に知識をアップデートし、グローバルな情報にアクセスするためには、ある程度の英語読解力が必要になることは留意しておくべきです。同様にセキュリティに強いエンジニアとしてキャリアアップを目指す上でも、英語力が強みになることを覚えておきましょう。
SSCPとCISSPの違い
SSCPと同じくISC2が認定する著名な資格にCISSP(Certified Information Systems Security Professional)があり、対象とする役割やレベルが異なります。
SSCPは主に技術者、管理者、運用担当者などの現場の実務者を対象とし、セキュリティ技術の実装・運用・管理といった実践的なスキルに焦点を当てた認定試験です。
CISSPは主にマネージャー、設計者、コンサルタントなど、より上位の役割を対象とし、セキュリティ戦略、設計、管理、リスク評価といったマネジメント寄りの広範な知識体系が求められます。
CISSPの方が難易度が高く、より長い実務経験(5年以上)が必要です。SSCPは、セキュリティ実務の基礎を固め、キャリアのステップアップを目指す上で有効な資格であり、CISSPへの足掛かりと位置づけられることもあります。
どちらの資格を目指すかは、ご自身の現在の役割や将来のキャリアプランに応じて検討することが重要であり、実務経験を満たせていない場合はSSCP、すでに5年以上の実務経験があり、試験の内容的にも合格できる自信がある場合はCISSPの受験を検討してみても良いでしょう。
SSCPの合格で目指せるキャリア
次にSSCP認定を取得することで、情報セキュリティ分野においてどのような選択肢が増えるのか見てみましょう。
ネットワークセキュリティ管理者
システム管理者
セキュリティアナリスト
セキュリティコンサルタント
セキュリティエンジニア
データベース管理者
IT監査担当者
上記載は一例ですが、これらの職種において、SSCP認定はセキュリティに関する専門知識と実務能力を持つことの証明となり、就職や転職、昇進において有利に働く可能性があります。また、企業内でセキュリティ担当者としての役割を担う場合においても、信頼性を示す上で役立つでしょう。
また、セキュリティはほとんどの技術分野に関係の深い分野であることから、この先に身につけるスキル次第でさらにキャリアの選択肢を広げることもできます。また、民間企業だけでなく、公的機関のセキュリティチームへの応募なども視野に入るため、よりやりがいや社会貢献のできる場所で働きたい方にも向いている資格と言えるでしょう。
2.SSCPの詳細情報
次にSSCP認定試験の試験形式、出題範囲、費用、有効期限など、より具体的な情報について解説します。
SSCPの詳細
試験名 | SSCP(Systems Security Certified Practitioner) |
---|---|
試験会場 | ピアソンVUEテストセンター |
試験日時 | ピアソンVUEテストセンター ・試験会場ごとに確認する必要あり |
試験時間 | 3時間 |
出題形式 | CBT(Computer Based Testing)方式 四者択一 |
出題数 | 125問 |
合格基準 | 1,000点満点中700点以上 |
受検料 | 249ドル |
前提資格 | 認定要件はあるが、受験自体は前提資格なし |
試験結果 | 試験終了後、ディスプレイ上に表示 |
参考元:https://japan.isc2.org/examination_sscp.html
上記がSSCP認定試験の詳細です。後述する出題範囲(ドメイン)が広いことと、3時間で125問、70%以上の正答率が必要であるため、合格をするためには正答率を上げるための反復的な勉強と、余裕を持った勉強計画が必要となるでしょう。
また、受験料が249ドルと日本国内の技術分野における民間資格と比べると割高な傾向にあるため、費用面での負担を抑えるためにも、1回の受験で合格するように準備していくことをおすすめします。
SSCPの出題範囲
SSCPの試験範囲は、以下の7つのドメイン(知識分野)から構成されています。各ドメインの出題比率も定められており、バランスの取れた学習が必要です。
セキュリティの概念と実践
アクセス制御
リスクの特定、モニタリングと分析
インシデントレスポンスとリカバリ
暗号化
ネットワークと通信のセキュリティ
システムとアプリケーションセキュリティ
上記の試験範囲となるドメインは、セキュリティ実務者が日常業務で直面する可能性のある幅広い内容が含まれています。公式の「SSCP CBK 7ドメイン概要」のページで、それぞれのドメインの試験範囲が確認できるのでチェックしておきましょう。
SSCPの受験者数・合格率・難易度・勉強時間
SSCPの受験者数や合格率は、ISC2から正式には公開されていません。そのため、受験者数や合格率から試験の難易度を推測することは難しいでしょう。
試験範囲となるドメインの概要から難易度を推測すると、IPAの基本情報技術者試験以上、応用情報技術者試験と同程度の難易度であることが推測されます。そのため、試験範囲の概要を見てもよくわからない場合は、ITの基礎から学ぶ、違う試験の受験を検討した方が良いかもしれません。
勉強時間については、受験される方の前提となる知識や経験によって大きく異なります。試験範囲となるドメインの内容から推測すると、初めて学ぶ方でおおよそ100時間から200時間、実務経験のある方でもおおよそ50時間から100時間前後の勉強時間が必要となるでしょう。
難易度や勉強時間はあくまでも目安であり、勉強の進捗状況に合わせて柔軟に変更していくこと、転職などのタイミングに合わせて合格や認定を目指す場合においても、余裕を持って勉強計画を練ることが大切です。
SSCPの申し込み手順
ピアソンVUEでアカウントを作成
受験場所の選択
受験チケット事前購入または試験予約
クレジットカード、コンビニ決済、振込決済のいずれかで支払い
本人確認書類を持参して、指定した日時に受験
上記がSSCPの申し込み手順です。受験日の決定については、勉強の進捗具合とともに、テスト問題などで難なく答えられるかどうか、合格できる自信があるかどうかで判断すると良いでしょう。
また、個人差がありますが、一定の期間を区切らないとモチベーションが下がったり、途中で諦めたりしてしまうこともあります。そのため、先にアカウントを作成しておき、おおよその受験日を決めた上で勉強計画を練ることも視野に入れておいてください。
SSCPの有効期限
SSCP認定の有効期限は認定日から3年間です。認定を維持するためには、ISC2が定める要件を満たす必要があります。3年間で合計60クレジット以上のCPE(継続教育クレジット)の取得と、毎年定められた年間維持費(AMF)の支払い(135ドル)が必要です。
ISC2が定める要件を満たせない場合、認定資格は失効してしまいますので、計画的にCPEの取得とAMFの支払いを忘れないようにしましょう。ただし、合格と認定を受けた時点で、合格した事実と一定の実務経験があるという証明が失われるわけではありません。
同時に、日本国内においては認定を維持できなければ、何らかの仕事ができないという特別な資格ではないため、一度の合格を目指すという考え方を持っておいても良いかもしれません。
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3.SSCPの資格取得のメリット
次にSSCP認定に向けて勉強のモチベーションを高めていただくために、認定されることで具体的にどのようなメリットがあるのか、代表的な3つのメリットについて解説していきます。
セキュリティの知識やスキルが身につく
SSCPの学習プロセスを通じて、情報セキュリティに関する7つのドメインにわたる幅広い知識と実践的なスキルを体系的に習得することができます。
日々の業務におけるセキュリティインシデントへの対応能力や、より安全なシステム運用・管理能力の向上に直結します。断片的な知識ではなく、網羅的かつ実践的な知識が身につく点は大きなメリットです。
また、セキュリティ分野の知識やスキルは、進化する悪質なサイバー攻撃に対応するために、常に最新の状態にアップデートすることが求められるため、情報の正確性や鮮度も含めた情報収集を行う癖が自然と身につくようになります。
エンジニアとしての成長や学習にも必要である「正しい情報か精査する力」が身につくという意味でもあり、セキュリティ分野だけでなく、エンジニアとしても活躍しやすい学習姿勢が手に入るメリットです。
セキュリティに関する実力の証明になる
SSCPは、ISC2という国際的に認知された組織が認定する資格であり、取得することで情報セキュリティ分野における一定レベルの実務能力を持っていることを客観的に証明できます。特に、転職活動や社内でのキャリアアップにおいて、自身のスキルレベルを具体的にアピールする際の強力な武器となります。
実務経験に加えて資格を持つことで、専門性に対する信頼性が高まり、キャリアアップとともにポジションアップも期待できるようになるでしょう。また、CISSPのような上位資格に挑戦していくことで、さらなる実務経験と専門知識を有していることの証明となり、段階的なポジションアップがしやすいというのも魅力的なメリットです。
特にセキュリティ分野で活躍したいことは決まっていても、将来的なキャリア形成が漠然としていて悩んでいる場合の手助けともなるため、キャリアを明確にしたい場合にも役立つ資格と言えるでしょう。
セキュリティ分野のキャリアが広がる
SSCP認定は、情報セキュリティ分野でのキャリアを築く上で有利に働き、前述したように、ネットワークセキュリティ管理者、システム管理者、セキュリティアナリストなど、多様な職種への道が開かれます。エンジニア領域では、自分自身の興味関心に合わせて選択肢が増えることで、将来的なキャリアが停滞しにくくなることもメリットと言えるでしょう。
また、セキュリティに関する知識が増えることで、エンジニアとしての信頼性や市場価値も高まります。そのため、自分自身の得意とする技術領域のみではアピールが足りない場合など、SSCPに合格することで新しい価値が提供できるようになり、キャリアアップやキャリアチェンジに役立つでしょう。
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4.SSCPの資格取得のデメリット
次に多くのメリットがあるSSCP認定ですが、認定の取得を検討する上で考慮すべきデメリットや注意点も把握していただくために、3つのデメリットをご紹介します。
時間や費用のコストが発生する
SSCP認定試験の受験には受験料が必要であり、合格に向けた学習には、参考書や問題集の購入費用、場合によっては公式トレーニングの受講費用などがかかります。さらに、学習時間を確保するための時間的なコストが発生するというデメリットがあります。
ただし、キャリアに対する先行投資であること、セキュリティに関する知識やスキルが国際的にも認められることは、将来的に大きなリターンになるということも忘れてはなりません。同時に、認定取得に向けて勉強を始めること自体が、セキュリティ分野のエンジニアとしての第一歩となるということも覚えておきましょう。
認定や認定継続に条件がある
SSCP認定は、前述したように試験合格後もすぐに得られるわけではなく、実務経験の証明やいくつかの要件を満たす必要があります。また、一度認定を取得した後も、その有効性を維持するためには継続的な取り組みが求められる点をデメリットに感じる方もいらっしゃるかもしれません。
具体的には、認定継続要件として1年ごと、3年間の認定サイクルごとに、ISC2定める60クレジット以上のCPE(継続教育クレジット)を取得し、毎年、年間維持費(AMF)を支払う必要があります。CPEは、研修への参加や関連書籍の執筆、セミナー登壇など、様々な専門能力開発活動を通じて獲得できますが、活動によっては費用が発生する場合もあります。
認定取得および維持の要件を満たせない場合、認定は受けられない、あるいは失効してしまうため、資格取得後も計画的な学習継続と費用負担が必要となる点を留意しておきましょう。
日本語対応の教材が乏しい
SSCP試験自体は日本語で受験可能ですが、ISC2が提供する公式の学習教材(公式ガイドブックや公式トレーニングなど)は、英語が中心であり、日本語に対応した教材は限られているというデメリットがあります。市販されている日本語の参考書や問題集も、他の主要なIT資格と比較すると選択肢が豊富とは言えません。
そのため、学習を進める上で、英語の資料を読解する必要が出てくる場面もあり、英語に苦手意識がある方にとっては学習のハードルとなる可能性があります。ただし、昨今ではオンライン上で翻訳するサービスも精度が上がり、比較的英語に不慣れでも学習を進めていくことは可能です。
日本語の教材と併用しながら、少しずつ翻訳をしながら理解を深めて、英語で記述されている技術についても補填しながら進めていく方法もあると覚えておきましょう。
5.SSCP合格のための受験の判断基準や学習方法
最後にSSCP認定試験に合格するためには、試験の難易度が自分に適切かを判断する基準と、合格に向けて学ぶためにどのような方法があるか解説していきます。
SSCPの難易度が自分に適切かを把握
SSCPの受験の判断基準として、SSCPの難易度が自分に適切かを把握することから始めましょう。まず、SSCPの難易度が自身の現在のスキルレベルやキャリア目標に合っているか、試験範囲や試験の詳細を確認する上で難なく読み解くことができるかなどで把握しましょう。
SSCPの認定には実務経験が必要であることから、実務者向けの資格であることから、ある程度のITおよびセキュリティの基礎知識が前提となります。全くの未経験者の場合は、ITパスポート試験や情報セキュリティマネジメント試験、基本情報技術者試験など、より基礎的な資格からステップアップすることも検討すると良いでしょう。
SSCPの過去問や問題集を活用
SSCPの試験範囲は広いため、知識をインプットするだけでなく、アウトプットを通じて理解度を確認し、知識を定着させることが重要です。ISC2から公式の過去問は公開されていませんが、市販されている問題集や、オンラインで提供されている参考書及び技術書などを活用しましょう。
問題を解くことで、自身の弱点分野を把握し、重点的に学習を進めることができます。また、試験形式に慣れるという意味でも、問題演習は非常に有効です。
また、難易度の確認を把握した時と同じように、専門的な用語がわからないと感じた場合は、ITパスポート試験や情報セキュリティマネジメント試験などの参考書も手に取るのもおすすめであり、参考書の説明文や問題文を読み解くために必要な知識を蓄えながら進めていくと良いでしょう。
SSCPの公式トレーニングを受講
ISC2は、SSCP認定のための公式トレーニングとして、「自己学習オンラインコース」を提供しています。公式のオンライントレーニングでは、試験範囲である7つのドメインを網羅したカリキュラムで構成されており、認定インストラクターから直接指導を受けることができます。
英語力が必要なことと、費用はかかりますが、体系的に知識を整理し、効率的に学習を進めたい場合や、独学に不安がある場合には有効な選択肢となります。
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6.まとめ
本記事では、SSCPについて詳しく知りたい方のために、SSCP認定の概要、詳細情報、メリット・デメリット、そして合格に向けた学習方法などをお話しました。
SSCPは、情報セキュリティの実務能力を証明する価値のある国際認定資格であり、取得することで専門知識の習得、スキルの証明になり、セキュリティ分野でのキャリアを築く上で有利になることが期待できます。
また、セキュリティに強いエンジニアとして活躍できる可能性もあるため、自分の得意とする技術領域の習熟とともに、セキュリティに関する知見をアピールしながら、より良いキャリア形成に向けて、試験の合格を目指してみてください。
最後までお読みいただきありがとうございました。
本記事が皆様にとって少しでもお役に立てますと幸いです。
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