退職を考える際、多くの人が「本音はあるけどどう伝えるべきか」と悩みます。特に初めての退職では、伝え方ひとつでその後の人間関係やキャリアに影響することも。
この記事では、退職理由の本音と建前、引き止められにくい理由の伝え方、面接時の回答例までを徹底的に解説します。円満退職を実現するための参考にしてください。
目次
1. 実際の理由と伝え方は?退職理由ランキング
退職理由を円満に伝えるためには、他の人がどのような理由で退職を決意しているのかを知ることが参考になります。
ここでは、仕事を辞めたいと思った理由や、引き止められにくい退職理由のランキングを紹介します。
仕事を辞めたいと思った理由ランキング
厚生労働省が2023年に実施した調査によると、仕事を辞めたいと感じた理由の上位には以下の項目が挙げられています。
職場の人間関係が好ましくなかった
給料(収入)が少なかった
労働時間が長かった(休日の労働条件が悪かった)
仕事の内容に興味が持てなかった
会社都合
会社の将来が不安だった
能力や個性、資格を活かせなかった
介護・看護
結婚
出産・育児
特に「人間関係のストレス」は全体の約10%を占めており、業務内容や待遇以上に、日々の職場環境が離職に大きく影響していることが分かります。
注目したいのは4位にランクインした「仕事の内容に興味が持てなかった」という退職理由です。条件や待遇、福利厚生が良かったとしても、仕事にやりがいを見いだせなかったため退職を決意した人も少なくないようです。
引き止められない退職理由ランキング
エン・ジャパン株式会社が2023年に実施した調査では、会社に伝えた退職理由(実際の理由とは異なっても良い)のランキングは以下の通りでした。
キャリアアップのための転職(別の職種にチャレンジしたい、など)
家庭の事情(結婚など)
給与が低い
心身の不調(病気・怪我など)
仕事内容が合わない
会社の将来性に不安を感じた
会社が合わなかった(人間関係・社風・風土など)
評価や人事制度に納得がいかなかった
労働時間が長かった(残業・休日出勤など)
福利厚生や待遇が悪かった
これらはいずれも個人の意思やライフイベントによるもので、会社側が状況を変えることが難しいため、無理に引き止めることができないと考える上司が多いようです。
2.退職理由の切り出し方3選
退職の意思を伝えるタイミングや方法は、これまで築いてきた職場の関係性を円満に保つうえで非常に重要なポイントです。特に初めて退職を経験する場合、どのように伝えればよいのか迷う方も多いのではないでしょうか。
ここでは、実際に退職を切り出す際に押さえておきたい3つの基本的なアプローチを紹介します。いずれも、相手に対する配慮を前提としたコミュニケーションであり、退職後の人間関係や職場の雰囲気にも良い影響を与える要素となります。
お詫びの気持ちを伝える
退職の決断が自分にとって前向きなものであっても、会社側にとっては突然の戦力喪失となるため、業務への影響や人員体制の再調整が必要となるケースもあります。そのため、退職の意向を伝える際には、「急なことでご迷惑をおかけしてしまい申し訳ございません」といった一言を添えることで、誠意が伝わりやすくなります。
特にプロジェクトの最中や繁忙期での退職を申し出る場合には、事前にその影響を理解し、謝意を表すことが重要です。相手の立場に立ち、組織に与える影響を十分に配慮している姿勢を見せることで、話し合いの空気を和らげ、信頼関係を損なうことなく話を進めることができます。
感謝の気持ちを伝える
たとえ職場に不満があったとしても、上司や同僚から受けたサポートや、仕事を通じて得た経験には必ず何らかの意味があります。退職の意思を伝える際には、「これまで多くのことを学ばせていただき、本当に感謝しています」など、在職中の経験や人間関係への感謝をきちんと言葉にすることが大切です。
こうした姿勢は、相手に対する敬意の表れでもあり、「この人は最後まで礼儀正しく責任感がある」と好意的に受け取られる要素になります。特に今後フリーランスや業務委託として働くことを視野に入れている方にとって、退職時の印象は将来の信頼にも関わるため、円滑なやり取りを意識しましょう。
引継ぎを行うことを伝える
退職に際して避けて通れないのが業務の引継ぎです。引継ぎが不十分だと、会社側に混乱を招いたり、後任者が困る事態につながる可能性があります。そのため、退職の意思を伝えると同時に、「最後まで責任を持って業務を引き継ぎます」「文書化も含めて丁寧に対応いたします」といった計画的な姿勢を明確にすることが重要です。
特に職場の人間関係に課題がある場合や、すでに退職を察知されているような雰囲気がある中での申し出では、引継ぎ対応をしっかり行う姿勢を示すことが信頼回復につながることもあります。引継ぎ資料の準備や後任者への引継ぎスケジュールなど、具体的な計画と共に伝えることで、会社側に安心感を与えることができます。
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3.上司に退職理由を聞かれたら?答え方例文
上司から退職理由を尋ねられた際には、以下のような例文を参考に、誠実かつ前向きな姿勢で伝えることが重要です。具体的な理由を述べる際も、相手に配慮した表現を心がけましょう。
退職理由「一身上の理由」の答え方例文
「今後の人生について考える中で、一度リセットして新しい環境で挑戦したいと思い、退職を決意いたしました。」
「体調面や家庭の事情など、一身上の理由で一度立ち止まって今後を見つめ直す時間が必要と感じました。」
「個人的な事情となりますが、環境を変えて新たな一歩を踏み出す決断をいたしました。」
「一身上の理由」という曖昧な表現でも、誠意をもって答えることで納得感を与えることができます。詳細には触れずとも、前向きな姿勢や冷静な判断であることを伝えることが重要です。
退職理由「精神的に限界」の答え方例文
「ここ数ヶ月、心身ともにバランスを崩してしまい、仕事に支障が出てしまう前に一度立ち止まることを選びました。」
「プレッシャーやストレスをコントロールしきれず、働き続けることが難しいと判断いたしました。」
「体調管理が難しくなり、今後も安定した勤務が難しいと考え、退職を決意しました。」
「精神的に限界」と伝える場合でも、冷静に事実を述べることが大切です。また、責任放棄ではなく、誠実な判断だったという印象を与えるようにしましょう。
退職理由「やりたいことのため」の答え方例文
「以前から関心のあった業界に挑戦したいという気持ちが強くなり、このタイミングでチャレンジすることにしました。」
「自己成長を目指して、より専門性の高い業界に進む決意をいたしました。」
「新たな分野に挑戦したいという思いがあり、今のままではその機会が得られないと考えました。」
ポジティブな志向をアピールする良い機会になります。批判的な印象を与えないよう、今の職場にも感謝しながら前向きな理由を語るのがポイントです。
退職理由「フリーランスになる」の答え方例文
「独立して自分の力を試したいという思いが強まり、フリーランスとして活動していくことを決意しました。」
「今後は複数のプロジェクトに関わる働き方にシフトしたいと考え、独立の道を選びました。」
「専門性を活かして、より柔軟な働き方を実現したいと考え、フリーランスとしての活動をスタートする予定です。」
「フリーランスになる」と伝える際は、逃げの姿勢ではなく前向きな挑戦であることを強調しましょう。また、準備をしていることを伝えると説得力が増します。
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4.言いづらい退職理由の時におすすめの伝え方
退職理由の中には、「職場の人間関係に悩んでいる」「長時間労働が常態化している」「成果が正当に評価されない」といった、本音ではあってもストレートに伝えにくいものが少なくありません。特に直属の上司との関係性や職場の雰囲気によっては、ネガティブな理由を正直に伝えることで、退職までの残りの期間が気まずくなってしまうリスクも考えられます。
このようなケースでは、退職理由を前向きな形に変換して伝える工夫が重要です。事実から大きく逸脱するような虚偽の内容を伝えることは避けるべきですが、伝え方の表現を変えることで、相手に与える印象を大きく改善することができます。ここでは、言いづらい退職理由を円満に伝えるための具体的な方法を解説します。
ポジティブな退職理由に言い換える
退職理由にネガティブな側面がある場合でも、それをそのまま伝えるのではなく、前向きな目的へと転換して話すことで、相手に不快感を与えずに伝えることが可能です。
たとえば、「現在の勤務形態では体力的に限界を感じている」といった内容は、「ワークライフバランスを重視した働き方を模索したい」と言い換えることで、印象が大きく変わります。
同様に、「評価が不透明で昇進の見込みがない」といった理由も、「自身のキャリア形成をより明確に描ける環境に身を置きたい」と伝えることで、より納得感のある退職理由として受け取られやすくなります。初めての退職を経験する方にとっては、こうした伝え方をあらかじめ整理しておくことで、退職の場面でも落ち着いて話すことができるでしょう。
嘘は基本的に避けるのがベスト
退職理由について、事実とは異なる理由を伝えることは、原則として避けるべきです。在職中に内容の矛盾が発覚した場合、信頼関係が崩れるだけでなく、最悪の場合、周囲との関係性にヒビが入ることにもなりかねません。
また、次の転職先やフリーランスとして活動を始めた後に、前職の関係者と接点が生まれることも十分にあり得ます。その際、前職の退職理由に不誠実な部分があったという印象を持たれると、今後の信頼構築にも悪影響を及ぼす可能性があります。
どうしても退職理由を明確に伝えづらい場合には、「一身上の都合」や「キャリアの方向性を見直したい」といった抽象度の高い表現を使い、そのうえで今後のキャリア展望を前向きに語ることがポイントです。
特にフリーランス転向を考えている場合は、「自身の専門性を活かしながら柔軟な働き方を目指したい」という言い回しが自然かつ納得されやすい表現と言えるでしょう。
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5.円満退職を実現するためのポイント
退職そのものは、現代において特別な出来事ではありません。誰もがキャリアの節目で選択を迫られる局面に直面します。しかし、どう辞めるか・どのように伝えるかという点は、本人の信頼性や将来のキャリア形成において、極めて大きな影響を及ぼします。
特にフリーランスや業務委託など、過去の実績と人脈が評価に直結する働き方を目指す場合には、退職時の振る舞いが後々の信用につながることも少なくありません。
ここでは、退職時に信頼を損なわず、今後のキャリアにプラスとなる、円満退職の実現に向けた実践的なポイントを紹介します。
上司へは直接・丁寧に伝える
退職の意思は、できるだけ早い段階で直属の上司に直接、面談などの場を設けて伝えることが基本です。メールやチャットツールなど、文章だけで済ませると「誠意が感じられない」「勝手な判断だ」といった誤解を生む恐れがあります。
まずは感謝の気持ちを伝えたうえで、冷静かつ端的に退職の理由を述べるようにしましょう。また、上司が知らないうちに周囲に情報が広がってしまうと、信頼関係に傷がつくこともあるため、情報共有の順序にも配慮が必要です。
在職中の転職活動は慎重に進める
転職活動やフリーランス転向に向けた準備は、在職中から進めることも多いですが、職場に知られないよう慎重に進めることが求められます。「あの人、辞めるらしい」といった噂が社内で広まると、業務に支障をきたすだけでなく、個人の評価や職場の雰囲気にも悪影響が及ぶことがあります。
面接などのスケジュールは業務時間外に設定する、私用電話の管理を徹底するなど、情報管理への意識も必要です。
退職の意思は1〜2ヶ月前に伝える
退職の意思を伝えるタイミングは、就業規則に準じて最低でも1ヶ月前が一般的ですが、できれば2ヶ月程度の余裕をもって伝えることが理想です。特に後任の人選や引き継ぎに時間がかかる職場では、早めに申し出ることで業務の混乱を避けることができます。
また、繁忙期やプロジェクトの重要な節目と重ならないよう、可能な限り業務への影響が少ないタイミングを選ぶよう心掛けることが重要です。
引き継ぎは丁寧かつ計画的に
業務の引き継ぎは、退職者としての最後の責任です。内容が曖昧だったり、資料が不十分だったりすると、残されたメンバーに不安を与えることになります。タスク一覧やマニュアル、関係者リストなどを文書化し、体系的に整理しておくことが望まれます。
また、口頭での説明だけでなく、クラウドストレージや社内共有フォルダなどにファイルをまとめておくことで、後任者が必要なときにいつでも確認できる環境を整えることが可能です。こうした引き継ぎへの配慮が、退職後の職場との関係性を良好に保つ鍵となります。
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6.面接で退職理由を聞かれたときの答え方
転職活動における面接では、ほぼ間違いなく「なぜ前職を辞めたのか」という質問が投げかけられます。これは企業が候補者の価値観や職場との相性を見極めるうえで、非常に重視している項目の一つです。
特に退職理由に関しては、その人の仕事に対する姿勢や、転職に対する本気度を読み取る材料として扱われるため、事前に準備しておくことが不可欠です。
基本的なポイントとして、退職理由を語る際は、ポジティブな転職理由に言い換えて説明することが重要です。前職に対するネガティブな感情や不満をストレートに伝えてしまうと、「この人は環境のせいにするタイプなのでは」「また同じ理由で辞めるのでは」といった不安を与えてしまいかねません。
一方で、「キャリアアップを目指したい」「新しいスキルを身につけたい」といった前向きな理由であれば、企業側も、目的意識を持って行動していると評価してくれる可能性が高くなります。
例えば以下のような表現が効果的です。
「より専門性の高い領域に挑戦し、自分のスキルを磨きたいと考えました」
「これまでの経験を活かしながら、新たな環境で成長の機会を広げたいと思いました」
「業務範囲が限られていたため、裁量のある仕事に挑戦したいと感じました」
また、フリーランスとしての独立を視野に入れている場合には、曖昧な説明ではなく、今後の働き方について明確なビジョンを示すことが重要です。
「専門分野に特化したスキルを活かしながら、より柔軟な働き方を実現したい」「複数のプロジェクトに携わることで、より多様な経験を積みたい」など、将来を見据えた目的を伝えることで、面接官の納得を得られやすくなります。
実際にフリーランスという選択肢を伝える際も、自己中心的な印象を与えないよう注意が必要です。重要なのは、どのように働くかではなく、その働き方を選ぶことで、どのような価値を提供できるかを伝えることです。相手企業にとっても将来的なパートナーとしての関係構築が見込めると判断されれば、好意的に受け取ってもらえる可能性が高まります。
面接は、自分の意思を正しく伝え、相手に安心感を与えるコミュニケーションの場です。退職理由についても、前向きな姿勢と論理的な構成を意識することで、信頼を得ることにつながります。準備を怠らず、自分らしいキャリアを描くうえでの次の一歩として、面接に臨みましょう。
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7.まとめ
退職理由の伝え方は、働き方を変えたいと考えている人にとって避けて通れないテーマです。円満に退職するためには、伝え方・タイミング・配慮の3点を意識することが大切です。
本記事が皆様にとって少しでもお役に立てますと幸いです。
現在では、退職後の選択肢としてフリーランスを選ぶ方も増えています。時間や働く場所に縛られず、自身のスキルで案件を獲得していく働き方は、多くの方にとって理想的な選択肢となりつつあります。
本記事が皆様にとって少しでもお役に立てますと幸いです。
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