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Terraform入門|導入メリットやAWS構築の流れをわかりやすく解説

公開日:2025/06/17最終更新日:2025/06/17

Terraformは、インフラをコードで管理するInfrastructure as Code(IaC)を実現するために重要な役割を担うツールです。


しかし、Terraformは誤った使い方や設計ミスによっては、十分な効果を発揮できない可能性もあります。適切な構成管理を行い、そのメリットを最大限に活かすためには、事前に基本知識を押さえておくことが不可欠です。


この記事では、Terraformの基本的な特徴から、AWSで利用する具体的な手順、そしてチーム開発で役立つベストプラクティスまで詳しく解説していきます。


Terraformの導入を検討している方にとって、実践的に役立つ情報をわかりやすくまとめました。ぜひ最後までお読みいただき、Terraformに対する理解を深めてください。

1.Terraformとは

Terraformは、インフラ構成をコードで定義し、管理するためのIaC(Infrastructure as Code)ツールです。HCLという独自の言語を用いて、AWSやAzure、GCPといった複数のクラウドサービスからオンプレミス環境まで、様々なプラットフォームのインフラを統一的に管理できます。


従来の手作業によるインフラ構築では、人的誤りや環境ごとの手順の違いが課題でした。Terraformを使えば、インフラの構成をコードとして可視化し、バージョン管理システムで履歴を追跡可能です。誰が実行しても同じ環境を正確かつ迅速に再現できるため、インフラ管理の効率化と信頼性向上を実現します。

2.Terraformの特徴

Terraformの特徴は以下の3点です。一つずつ解説していきます。

  • マルチプラットフォームに対応

  • IaCで環境構築がしやすい

  • 効率的な開発がしやすい

マルチプラットフォームに対応

Terraformの最大の特徴は、特定のクラウドベンダーに依存しないマルチプラットフォーム対応であることです。


AWS、Azure、GCPといった主要なパブリッククラウドはもちろん、VMware vSphereのようなオンプレミス環境まで、さまざまなプラットフォームを同じようにコードで管理できます。各サービスに対応したプロバイダーと呼ばれるプラグインを利用することで、サービスごとのAPIの違いを意識する必要がありません。


マルチクラウド環境を採用している企業でも、エンジニアはTerraformの操作方法を一つ覚えるだけで複数のインフラを横断的に操作できるようになるため、学習コストを大幅に削減し、効率的な一元管理を実現できるのです。

IaCで環境構築がしやすい

Terraformは、IaCを容易に実践できる点も大きな特徴です。


インフラの構成情報をコードで記述するため、どのような設定がされているかが一目瞭然となります。このコードはGitなどでバージョン管理できるため、「いつ」「誰が」「何を」変更したのかを正確に追跡可能です。


手作業での設定変更ミスを防ぎ、人の目で確認するプロセスを導入することでインフラの品質を高められます。


また、コード化された構成は再利用性が高く、同じ環境を何度も正確に再現できるため、開発環境や本番環境の構築を自動化し、作業の属人化を防ぐ効果もあります。

効率的な開発がしやすい

Terraformは、開発プロセスを大幅に効率化する仕組みを備えています。


terraform planコマンドを実行すると、実際のインフラに変更を加える前に、どのようなリソースが作成・変更・削除されるのかを事前に確認できます。この「ドライラン」機能により、意図しない設定変更を防ぎ、安全なインフラ操作が可能です。


さらに、よく利用するインフラ構成を「モジュール」として部品化し、再利用できます。これにより、同じようなコードを何度も書く手間が省け、コードの保守性も向上します。


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3.Terraformの基本ワークフロー

Terraformでのインフラ管理は、主に4つのコマンドからなるシンプルなワークフローで完結します。

  1. initコマンド:設定ファイルに応じたプロバイダーをダウンロードし、作業ディレクトリを初期化するコマンド

  2. planコマンド:コードと現在のインフラ状態を比較し、どのような変更が行われるかの実行計画を確認するコマンド

  3. applyコマンド:計画に問題がなければ変更を適用し、実際にインフラを構築するコマンド

  4. destroyコマンド:構築したリソースが不要になった際に使うコマンド

4.Terraformの基本用語

Terraformでよく使う用語がそれぞれどのような役割を持ち、どのように連携してインフラをコード化するのかを知ることで、Terraformの学習と実践がよりスムーズに進むはずです。それぞれを解説していきます。

  • Terraformプロバイダー

  • Terraformモジュール

  • Terraformリソース

Terraformプロバイダー

Terraformプロバイダーは、AWSやAzure、GCPといった各プラットフォームのAPIとTerraformを連携させるためのプラグインです。


Terraform本体はクラウド固有の機能を知りませんが、プロバイダーが仲介役となることで、各プラットフォームのリソースを操作できるようになります。


例えば、terraformブロック内でrequired_providers を使用してどのプロバイダーを利用するかを宣言し、terraform initコマンドを実行すると、Terraformレジストリから対応するプロバイダーが自動的にダウンロードされる仕組みです。


利用したいサービスのプロバイダーを定義することで、Terraformの管理対象を自由に拡張していくことが可能となります。

Terraformモジュール

Terraformモジュールは、関連するリソースの集合を一つの単位としてまとめ、再利用可能にしたコードの塊です。


例えば、「Webサーバーとロードバランサー、セキュリティグループ」といった一般的な構成を一つのモジュールとして定義しておけば、異なるプロジェクトや環境でそのモジュールを呼び出すだけで、同じ構成を簡単に展開できます。


モジュールを活用することで、コードの重複を避け、可読性と保守性を大幅に向上させられます。小規模な構成から大規模なシステムまで、モジュールはTerraformによる効率的なインフラ管理に欠かせない要素と言えるでしょう。

Terraformリソース

Terraformリソースとは、EC2インスタンスやS3バケット、VPCなど、Terraformを通じて作成・管理する個々のインフラ構成要素を指します。


設定ファイル内ではresourceブロックとして記述され、「リソースタイプ(例:aws_instance)」と「リソース名(例:"web_server")」を指定して定義します。このブロック内に、AMI IDやインスタンスタイプといった、そのリソースに必要な具体的な設定値を記述することで、希望する構成のインフラをコードで表現可能です。


Terraformはこのリソース定義を読み取り、対応するAPIを呼び出して実際のインフラを操作するのです。

5.Terraformの環境構築方法

Terraformの環境構築はシンプルで、専門的な知識がなくても数ステップで完了します。


まず、HashiCorpの公式サイトにアクセスし、お使いのOS(Windows, macOS, Linux)に対応した実行ファイルをダウンロードしてください。ダウンロードしたファイルはzip形式で圧縮されているため、これを解凍します。


解凍して出てきたterraformという単一の実行ファイルを、コマンドラインから直接実行できるディレクトリに配置するだけで準備は完了です。


ターミナルやコマンドプロンプトを開き、以下のコマンドを入力してバージョン情報が表示されれば、正しくインストールされています。

terraform -v

6.TerraformをAWS上で利用する手順

Terraformを使って実際にAWS上にインフラを構築する具体的な流れを解説します。この手順を追うことで、Terraformによるインフラ管理の基本を実践的に学べるでしょう。一つずつ解説していきます。

  • AWS接続の準備

  • 設定ファイル(main.tf)の作成

  • 初期化の実行 (terraform init)

  • 実行計画の確認 (terraform plan)

  • インフラの構築 (terraform apply)

  • リソースの削除 (terraform destroy)

AWS接続の準備

TerraformがAWSを操作するためには、まず認証情報の設定が必要です。


セキュリティの観点から、AWSの管理者権限を持つIAMユーザーを作成し、そのユーザーの「アクセスキーID」と「シークレットアクセスキー」を発行しましょう。このアクセスキーは、TerraformがAWSのAPIを呼び出す際の認証に利用されます。


発行したキーは、環境変数やAWSの認証情報ファイルに設定することで、Terraformが自動的に読み込んでくれるようになります。AWSへの接続準備を正しく行うことが、安全なインフラ管理の第一歩です。

設定ファイル(main.tf)の作成

AWSへの接続準備が整ったら、次にインフラの構成を定義する設定ファイルを作成します。


一般的にmain.tfという名前のファイルを作成し、HCLで記述していきます。


ファイル内には、まずprovider "aws"ブロックを定義し、利用するリージョン(例:ap-northeast-1)を指定します。


続いて、resourceブロックを使って、作成したいAWSリソースを定義します。例えば、EC2インスタンスを作成する場合はresource "aws_instance" "example"のように記述し、その中にAMI IDやインスタンスタイプなどの必要な情報を指定します。

 初期化の実行 (terraform init)

設定ファイル(main.tf)を作成したら、まずterraform initコマンドを実行します。このコマンドは、Terraformの作業ディレクトリを初期化するための重要なステップです。


実行すると、Terraformは設定ファイルを読み込み、provider "aws"の記述を見て、AWSプロバイダーのプラグインを自動的にダウンロード・インストールします。


この初期化プロセスは、新しいTerraformプロジェクトを開始する際に必ず最初に行う必要があり、これによって後続のplanやapplyコマンドが実行可能になるのです。

 実行計画の確認 (terraform plan)

インフラを実際に変更する前に、terraform planコマンドを実行してどのような変更が行われるかを確認します。


このコマンドは、作成した設定ファイル(main.tf)の内容と現在のAWS上のインフラ状態を比較し、差分を検出します。その結果、「どのリソースが新規作成され、どれが変更または削除されるか」という実行計画が詳細に表示される仕組みです。


このステップを踏むことで、意図しないインフラの変更を未然に防げます。安全性を高めるため、applyを実行する前には必ずplanで内容を確認する習慣をつけましょう。

 インフラの構築 (terraform apply)

terraform planで実行計画を確認し、内容に問題がないことがわかったら、いよいよterraform applyコマンドで実際にインフラを構築します。


このコマンドを実行すると、planで表示された計画が再度表示され、実行の可否を問われます。ここでyesと入力すると、TerraformがAWSのAPIを呼び出し、設定ファイルに記述された通りのリソースを自動で作成します。


処理が完了すると、構築されたリソースの情報が表示されるでしょう。コマンド実行後、AWSマネジメントコンソールにログインすれば、リソースが正しく作成されているのを確認できます。

 リソースの削除 (terraform destroy)

Terraformで作成したインフラが不要になった場合、terraform destroyコマンド一つで管理下のすべてのリソースを簡単に削除できます。


このコマンドを実行すると、削除対象となるリソースの一覧が表示され、最終確認を求められるため、誤って重要なリソースを消してしまうリスクを低減できます。検証用に作成した環境をクリーンアップする際などに非常に便利です。


手作業で一つずつリソースを削除する手間や、削除漏れによる不要なコストの発生を防ぐことが可能です。このように、Terraformはリソースの作成から破棄まで、ライフサイクル全体を効率的に管理します。


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7.Terraformのベストプラクティス

Terraformを個人利用だけでなくチームで活用し、プロジェクトが大規模化しても破綻しないように運用するためには、いくつかのベストプラクティスを知っておくことが重要です。この章では公式のベストプラクティスから以下の3つを抜き出して解説していきます。

  • 命名規則

  • Terraformコード構造

  • ドキュメントの自動作成

命名規則

Terraformのコードの可読性と一貫性を保つためには、統一された命名規則を設けることが非常に重要です。


HashiCorpが推奨するスタイルガイドでは、リソース名、変数名、出力名など、すべての識別子において、ハイフン(-)の代わりにアンダースコア(_)を使用することが基本です。


また、リソース名は、その種類(例:aws_instance)を繰り返すのではなく、具体的な役割(例:"web_server")を示す名前をつけます。


文字はUTF-8がサポートされていますが、予期せぬ問題を避けるため、小文字のアルファベットと数字、アンダースコアのみを使用するのが安全です。

Terraformコード構造

プロジェクトの規模に応じて、Terraformのコード構造を最適化することが推奨されています。


個人の学習や非常に小規模な構成であれば、すべての定義を一つのmain.tfファイルにまとめても問題ありません。しかし、プロジェクトが中規模になると、variables.tf(変数定義)、outputs.tf(出力定義)、providers.tf(プロバイダー定義)のように、役割ごとにファイルを分割すると見通しが良くなります。


さらに大規模な環境では、ネットワーク、アプリケーション、データベースといった機能単位でディレクトリを分け、モジュールを活用してコードを再利用する構成が効果的です。

ドキュメントの自動作成

Terraformのコードが複雑化・大規模化してくると、ドキュメントの維持が大きな負担になります。そこでterraform-docsのようなオープンソースツールを活用すると、TerraformのコードからMarkdown形式などのドキュメントを自動で生成できます。


CI/CDパイプラインに組み込むことで、コードが変更されるたびにドキュメントも自動で最新の状態に保たれるため、メンテナンスコストを大幅に削減できるのです。


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8.Terraformの製品形態

Terraformには、用途やチームの規模に応じた複数の製品形態が用意されています。


基本となるのは、個人や小規模チームでの利用に適したオープンソースの「Terraform Community Edition」で、これは無償で利用可能です。


一方、企業での本格的な利用には、共同作業やガバナンス、セキュリティ機能を強化した「Terraform Cloud」や、セルフホストで運用する「Terraform Enterprise」といった有償版が推奨されます。


有償版では、ポリシー準拠の自動チェックやコスト見積もり、高度な権限管理といった機能が提供され、より安全で統制の取れたインフラ運用を実現できます。

9.まとめ

今回は、Terraformについて、その特徴や基本ワークフロー、AWS上での利用手順やベストプラクティスまでお話ししました。


Terraformは、AWS、Azure、GCPなど複数のプラットフォームに対応し、インフラ構成をコードで管理することで、誰が作業しても同じ環境を正確かつ迅速に構築できる強力なツールです。


正しく導入・運用すれば、手作業によるミスをなくし、開発の効率を大きく向上させます。


Terraformを効果的に活用し、安全で再現性の高いインフラ運営を目指しましょう。


最後までお読みいただきありがとうございました。


本記事が皆様にとって少しでもお役に立てますと幸いです。


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この記事の監修者

笠間 慎

大学卒業後、人材紹介会社にコンサルタントとして従事。フリーランスとして独立。その後、フリーランス案件サイト「フリーランススタート」の立ち上げに編集長兼ライターとして参画し、月間30万人が利用する人気メディアへと成長させる。 2024年より、フリーランスボード編集長に就任。自身の経験を元に、フリーランスの活躍を支援する情報を発信している。

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目次

1.Terraformとは

2.Terraformの特徴

マルチプラットフォームに対応

IaCで環境構築がしやすい

効率的な開発がしやすい

3.Terraformの基本ワークフロー

4.Terraformの基本用語

Terraformプロバイダー

Terraformモジュール

Terraformリソース

5.Terraformの環境構築方法

6.TerraformをAWS上で利用する手順

AWS接続の準備

設定ファイル(main.tf)の作成

 初期化の実行 (terraform init)

 実行計画の確認 (terraform plan)

 インフラの構築 (terraform apply)

 リソースの削除 (terraform destroy)

7.Terraformのベストプラクティス

命名規則

Terraformコード構造

ドキュメントの自動作成

8.Terraformの製品形態

9.まとめ