IT需要の高まりを受けて、エンジニアとして働ける人材は多くの業界で必要とされています。システムエンジニア、サーバーエンジニア、クラウドエンジニアなど、求められているエンジニアの職種は多数あります。そのため企業は多くのエンジニアを雇用し、プロジェクトの運用や社内におけるIT環境の整備などを行っているのです。
エンジニアの需要が高まっている昨今、多数の業務を1人でこなせる「フルスタックエンジニア」に注目が集まっています。IT業務全般に対応できるフルスタックエンジニアになれれば、高収入の案件を獲得しやすくなるでしょう。
本記事では、フルスタックエンジニアの特徴や必要なスキルについて解説します。フルスタックエンジニアになるためのロードマップも紹介するので、ぜひ参考にしてください。
目次
1.フルスタックエンジニアとは?
フルスタックエンジニアを目指すのなら、まず「フルスタックエンジニアとは何か?」という基本を把握する必要があります。以下では、フルスタックエンジニアの基本について解説します。
1人で開発・運用などの全業務を担当できるエンジニア
フルスタックエンジニアとは、複数の開発工程や保守・運用業務などを1人で担当できるエンジニアを指します。フルスタック(Full stack)には、「複数の技術分野を理解している」「多分野の技術を使って仕事ができる」といった意味があります。フルスタックエンジニアに明確な定義はありませんが、多数の業務を兼任できるITエンジニアを呼称する際に使われるのが一般的です。
フルスタックエンジニアが担当する仕事の組み合わせや働き方に、特別な決まりはありません。そのため「フロントエンドとバックエンドの開発が両方できる」IT人材や、「アプリ開発とデータベース構築の分野で活躍できる」IT人材など、さまざまなパターンが考えられます。
フルスタックエンジニアとシステムエンジニア(SE)の違いとは?
フルスタックエンジニアと違い、システムエンジニア(SE)は主にシステム設計やクライアントへのヒアリングなど、開発における上流工程を担当するのが仕事です。開発の要件定義や基本設計の他、状況によってはプログラミング業務もシステムエンジニア(SE)の仕事になります。
システムエンジニア(SE)も多数の領域で仕事をする職種ですが、フルスタックエンジニアと比較するとその範囲は限定的です。そのためシステムエンジニアよりも、フルスタックエンジニアの方が多くの業務を担当できる点が特徴と言えます。
フルスタックエンジニアの年収
「フリーランスボード」のデータによると、フルスタックエンジニアの年収は2024年11月時点で963万円程度です。月額単価の平均は80.3万円となっていて、高収入を期待できる職種だと言えます。
リモート案件が多いのも特徴で、同じく「フリーランスボード」を参考にするとフルリモート案件の割合が
16.5%、一部リモート案件の割合が81.4%です。リモート環境が整っていれば、フルスタックエンジニアとして在宅もしくは出社と在宅の混合で働くことも考えられます。
2.フルスタックエンジニアが担当する仕事内容
フルスタックエンジニアは、あらゆる業務が担当領域に含まれる職種です。事前に仕事内容を確認し、必要な知識・技術を把握しておくのも重要です。
以下では、フルスタックエンジニアが担当する仕事内容を解説します。
フロントエンド開発
フロントエンド開発とは、Webサイトやアプリにおける「ユーザーが直接触れる部分」を開発する仕事です。例えばユーザーが入力したデータを処理するシステムの開発や、UIデザインに沿ったコーディングなどを行います。
業務ではHTML、CSS、JavaScriptなどのプログラミング言語を使用します。また、Webデザイナーなどの職種と連携して、開発業務を進めるケースも多いです。
バックエンド開発
バックエンド開発とは、「ユーザーの目に届かない部分」の開発を担当することが仕事です。例えばWebサイトやアプリで処理されたユーザーの情報を管理したり、操作に応じて必要なデータを呼び出したりするシステムの開発・保守などを担当します。
バックエンドの仕事をする際には、Python、Ruby、Java、PHPなどのプログラミング言語を扱うスキルが必要です。データベースやCMSに関する知識を使うこともあるため、事前に学びを深めておくのが重要です。
アプリ開発
フルスタックエンジニアは、スマートフォンアプリの開発業務も担当します。企業やサービスの専用アプリを一から開発したり、既存アプリの改善を担当したりします。
iPhoneなどのApple製品で使用されるiOSアプリはSwift、AndroidアプリはJava、Kotlinを使って開発します。Webアプリケーションの開発には、JavaScript、Python、PHPなどが用いられます。
インフラ構築・保守
フルスタックエンジニアは開発だけでなく、インフラ構築や保守業務も担当します。社内サーバーの構築やネットワーク設計など、業務の基盤を支える領域も仕事に含まれます。トラブルの対応も任されることがあるため、原因の究明や解決方法を論理的に導き出す能力も必要です。
他にもインフラ構築・保守を担当する際には、Webサーバーやクラウドのセットアップの知識、サーバーの構築に使われるLinuxやWindows Serverに関する技術も求められます。
データベース構築
データベースの構築も、バックエンド業務の一環としてフルスタックエンジニアが担当することがあります。機能性と柔軟性を兼ね備えたデータベースを構築するには、構成の最適化やバックアップのシステム開発など、多くの知識が必要です。
また、重要なデータを扱うことを考慮して、セキュリティの知識も重要視されます。データベースの管理システムには、Oracle Database、PostgreSQL、MySQL、Microsoft SQL Serverなどが使用されます。昨今はAmazon RDS、Google Cloud SQL、Azure SQL Databaseなどの、クラウドデータベースが利用されるケースも増えているため、関連知識・技術の習得が求められます。
3.フルスタックエンジニアに必要なスキル
フルスタックエンジニアとして働く際には、さまざまなスキルが必要になります。以下では、フルスタックエンジニアが身につけるべきスキルについて解説します。
プログラミングスキル
フルスタックエンジニアが担当する業務では、プログラミングスキルが必要とされるケースが多いです。システム開発やアプリ開発など、さまざまな仕事でプログラミング能力が試されるでしょう。
業務内容によって必要なプログラミング言語は異なるため、フルスタックエンジニアを目指すのならなるべく多くの言語を学ぶことが重要です。しかし、最初から多数の言語を同時に学ぶのは、現実的ではありません。メインで担当する業務に必要なプログラミング言語を優先して習得しつつ、別の言語を少しずつ勉強していく方法がおすすめです。
ミドルウェア・OSの知識
バックエンド業務やインフラ構築の仕事では、ミドルウェアとOSに関する専門知識が求められます。現在の主要OSとして使用されているWindows、iOS、Android、Linuxに関する知識は、事前に学んでおくと良いでしょう。
クラウドに関するスキル
近年はデータベースなどのクラウド化が進んでいるため、フルスタックエンジニアとして働くのなら関連知識と技術の習得が必要です。先に紹介したAWSやAzureなどは、多くの現場で使用されているため、基本知識を学んでおくのがおすすめです。
同時にクラウドサービスの有用性を把握して、クライアントのヒアリング時に具体的な提案をすることもフルスタックエンジニアの仕事になり得ます。
マルチタスクを実行するスキル
フルスタックエンジニアは、複数の業務を同時進行するケースも珍しくありません。本来は複数人で担う業務を1人で対応するのが役割であるため、マルチタスクをこなせるスキルも必要になるでしょう。
マルチタスクを実践するには、視野を広く持ち、業務に優先順位をつけてスケジュール管理を行うのがコツです。自分でタスクをすべて管理する必要があるので、冷静かつ素早く状況を把握して行動する能力も求められます。
コミュニケーションスキル
フルスタックエンジニアは1人で複数の業務を担当しますが、すべて自分だけで対応するわけではありません。仕事中は多くの人と関わり、協力して業務を進めていくのが基本です。そのため円滑に意思疎通を取り、良好な人間関係を構築・維持できるコミュニケーションスキルもフルスタックエンジニアには必要となります。
コミュニケーションが不足すると周囲からの信頼を得られず、フルスタックエンジニアのポジションを任せてもらえなくなる可能性もあります。積極的に周囲の人たちと接触し、コミュニケーションを取っていく姿勢を意識しましょう。
4.フルスタックエンジニアになるには?ロードマップを紹介
フルスタックエンジニアになるには、さまざまな経験を積んでスキルアップと実績の確保を進める必要があります。そのためにはロードマップを把握し、具体的なキャリアプランを構築するのが重要です。
以下では、フルスタックエンジニアになるためのロードマップを紹介します。
IT人材として基礎的な能力を身につける
フルスタックエンジニアになるには、まずIT人材として働くための基礎的な能力を身につける必要があります。システムエンジニアやプログラマーなどの仕事を経験し、実務経験やスキル習得に励みましょう。システム開発のプロジェクトに参画して、実際の業務を経験するのも重要です。
下流・上流それぞれの工程を経験する
フルスタックエンジニアとして働く際には、下流と上流の仕事を両方担当します。開発の初期段階である上流工程で要件定義や設計の方法を学び、下流工程でプログラミングやテスト作業などの基本を習得することがポイントです。どのような現場でも柔軟に立ち回れるように、可能な限り多くの仕事を担当して自分なりの働き方を確立しましょう。
専門性の高い分野を学ぶ
IT業務における基本を習得したら、専門性の高い分野の学習を進めます。専門分野を担当できるようになれば、基本業務を行いつつ特定の領域における仕事も任せてもらえるようになります。自分の得意な分野を分析して、学習する領域を決めることから始めてみましょう。
フルスタックエンジニアの主なキャリアパス
フルスタックエンジニアとして働く場合、スペシャリストとして現場で活躍するケースと、プロジェクトマネージャー(PM)やITコンサルタントとして上流工程の担当やマネジメントを担当するケースが考えられます。
スペシャリストを目指すのなら専門的な分野の知識・技術を積極的に学び、多くの業務を担当できるフルスタックエンジニアとなるのが重要です。プロジェクトマネージャー(PM)やITコンサルタントに興味があるのなら、IT関連の知識をアップデートしつつ、マネジメント能力や伝える能力を磨くのが基本です。
フルスタックエンジニアに必要な資格とは?
フルスタックエンジニアとして働く際に、必須となる資格はありません。一方で、資格を取得することで高度な知識・技術を持つことを客観的に証明できるため、案件獲得時に有利に働く可能性があります。
例えば以下の資格は、フルスタックエンジニアとして働く際に役立つと考えられます。
ITストラテジスト試験
システムアーキテクト試験
Microsoft認定資格(Azure関連のもの)
データベーススペシャリスト試験
Linux技術者認定試験 など
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5.フルスタックエンジニアの将来性は?
フルスタックエンジニアは、さまざまな理由から将来性のある職種だと考えられます。以下では、フルスタックエンジニアの将来性や今後の需要について解説します。
将来的にも高い需要が見込める
フルスタックエンジニアは将来的にも、高い需要が見込めると判断できます。IT需要が急速に拡大したため、多くの業界で専門スキルを持つ人材が不足しています。必要なIT人材を確保できず、プロジェクトが破綻するケースも決して珍しい話ではありません。
フルスタックエンジニアは複数の業務を兼任できるため、1人雇用するだけでプロジェクトを動かす力があります。得意分野が複数あり、様々なシーンで活かせる柔軟性を身につければ、フルスタックエンジニアとして高い需要を見出せるでしょう。
また、近年は多様なITサービスが普及しているため、それらを柔軟に組み合わせて利用できるスキルも重要とされています。そのためフルスタックエンジニアのように、幅広い知識・技術を持つ人材の需要は高まっていると考えられます。
フルスタックエンジニアは、例えばベンチャー企業やDX推進を進める企業などで、活躍できる可能性が高いです。多くの人員を雇う余裕のないベンチャー企業にとって、さまざまな業務を任せられるフルスタックエンジニアは喉から手が欲しい人材になるでしょう。多くの人手が不要となるため、コスト面の改善にもつながる点がメリットとなり、フルスタックエンジニアの需要を押し上げると予想できます。
フルスタックエンジニアが「やめとけ」「いらない」と言われる理由は?
高い需要が見込まれるフルスタックエンジニアですが、「やめとけ」「いらない」といったネガティブな意見もみられます。これは「フルスタックエンジニア=知識が広くて浅いエンジニア」というイメージがつき、実際に仕事をする能力は低いとみる人がいることが背景にあります。
また、ITの技術革新のスピードに追いつけず、「専門家として脱落していくフルスタックエンジニアが多いのではないか」という、信頼性のなさも原因だと考えられます。
そのためフルスタックエンジニアとして働くのなら、クライアントや同僚からの信頼を得られるように、スキルアップと専門的な学習を継続していくことが重要です。
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6.まとめ
1人で複数の業務を担当できるフルスタックエンジニアは、今後さらに需要が高まると考えられます。高収入も実現できるため、今からフルスタックエンジニアになるためのキャリアプランを構築し、具体的な行動に移してみてはいかがでしょうか。
フルスタックエンジニアとして働く場合、フリーランス向けの案件を請け負う方法がおすすめです。「フリーランスボード」にはフルスタックエンジニアを必要とする求人が多数あるため、自分の求める条件とマッチする案件を見つけやすいです。
この機会に「フリーランスボード」から、フルスタックエンジニアの仕事をぜひチェックしてみてください。
本記事が皆様にとって少しでもお役に立てますと幸いです。