フリーランスの方の中には「ふるさと納税を試してみたいけれど、仕組みや方法がよく分からない」「自分がふるさと納税に使える金額の目安が知りたい」といった疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
特にフリーランスの方は会社員とは異なり税金の控除や納税手続きについて自分で管理する必要があるため、ふるさと納税を上手に活用したいと考える方がいらっしゃるでしょう。しかしふるさと納税の仕組みや自分がどれだけ寄付できるのかという点は、意外と分かりづらい部分もあります。
そこで今回はふるさと納税の基本的な仕組みをはじめ、フリーランスとして活動している場合に適用される控除上限額の計算方法やふるさと納税を実際に行う際の手順について詳しく解説します。初めてふるさと納税を利用する方にも分かりやすいようにステップごとに丁寧に説明しますので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
1.ふるさと納税とは地域の自治体に対する寄付の制度
「ふるさと納税」という名称には「税」という言葉が含まれていますが、実際にはこれは地方自治体への寄付を指す制度です。
この制度は納税者が自分の好きな自治体に寄付を行うことで、その寄付金額に対して税制面での優遇を受けることができる仕組みです。具体的にはふるさと納税を通じて寄付を行うと寄付金額から2,000円を差し引いた金額が、所得税における所得控除や住民税における税額控除として適用されます。
ふるさと納税の魅力の一つは寄付先の自治体・使途・金額を自由に選べる点です。これにより自分が支援したいと思う地域に寄付することができます。また寄付金額も自分の希望に合わせて設定できるため、柔軟に利用できます。
またふるさと納税は税制面での恩恵を受けられる制度であり、フリーランスの方々にも利用できます。正しく利用することで所得税や住民税の軽減が期待できるため、税金の負担を軽くする手段として非常に有効です。
2.フリーランスがふるさと納税を活用する理由
フリーランスがふるさと納税を活用するべき理由は以下の3点に集約されます。
所得税や住民税の控除を受けられる
魅力的な返礼品を受け取れる
応援したい自治体を支援できる
フリーランスは収入に応じて所得税や住民税を支払う必要があり、収入が増えるほど税負担も大きくなります。ふるさと納税を利用すれば寄付金額に応じて税控除を受けられるため、節税対策として有効です。また寄付を行うと自治体から返礼品が贈られ、生活の中で活用することでコスト削減につながります。
さらにふるさと納税は、自分が支援したい自治体を選んで寄付ができる仕組みです。居住地以外の自治体を応援することで、地域活性化に寄与するという社会的な意義もあります。
住民税や所得税の控除が受けられる仕組み
フリーランスがふるさと納税を利用する最大の利点の一つは所得税や住民税の控除を受けられる点にあります。
ふるさと納税を行うと寄付した金額が所得税から控除され、結果的に納税額が軽減されます。さらに住民税の非課税部分が増えることで、住民税の負担も減少します。ただし控除には上限が設定されているため、自分が寄付できる適切な金額を事前に把握しておくことが重要です。
返礼品を受け取る楽しみ
ふるさと納税を行うと、寄付先の自治体から返礼品が贈られるのが大きな特徴です。これらの返礼品はその地域ならではの特産品・限定商品・地元の名産品・食品・工芸品など、多岐にわたります。
返礼品の内容や金額は自治体ごとに異なり、それぞれの地域が誇る商品を提供しているため寄付する自治体を選ぶ楽しみも増します。また返礼品の種類は非常に豊富であるため、寄付者自身の好みに合わせて選べるという大きな利点があります。
応援したい自治体を選べる
フリーランスの方がふるさと納税を活用することで、応援したい自治体を直接的にサポートすることができます。この制度を利用することで寄付金が地域の財政支援や発展に役立つだけでなく、社会貢献に対する満足感や充実感を得られるのが大きな魅力です。またふるさと納税を通じて寄付先の自治体の特産品や名産品を受け取ることができるため、その地域の魅力をより深く知るきっかけにもなります。
3.フリーランスがふるさと納税をするメリット
ふるさと納税には節税効果や返礼品の魅力など、さまざまな利点があります。フリーランスにとっては特に以下の2つのポイントが大きな魅力と言えるでしょう。
追加の手間が少ない
所得税や住民税の控除を受けるには、通常確定申告が必要です。会社員の場合には普段確定申告を行わないためふるさと納税の控除を受けるためには別途申告が必要になりますが、フリーランスはもともと確定申告を行っているため、同時にふるさと納税の手続きを済ませることができる点が便利です。
確定申告時には寄付を行った自治体が発行した証明書を添付し、寄付金控除欄に「ふるさと納税額から2,000円を引いた額」を記入するだけです。
フリーランスは控除限度額が高くなることが多い
ふるさと納税による控除額は、所得に基づいて決まります。会社員の場合収入から「給与所得控除」を差し引いた額が所得として計算されますが、個人事業主は給与所得控除がなく収入から経費を差し引いた額が所得となるため控除の限度額が高くなりやすいとされています。
4.フリーランスがふるさと納税利用時のデメリット・注意点
この章ではフリーランスがふるさと納税を利用する際のデメリットや注意点について解説します。
寄付には上限がある
ふるさと納税の利用において重要なポイントの一つが、控除の対象となる上限額です。
この上限額は、寄付を行う方の年収や家族構成といった要因によって大きく異なります。また控除されるふるさと納税額には、「総所得の40%」という上限が法律で定められています。そのため自分の収入や家庭の状況を踏まえたうえで、正確な寄付可能額を知ることが大切です。
具体的な限度額を確認する方法としては、ふるさと納税を取り扱っている各種Webサイトが提供するシミュレーションツールを活用するのが便利です。これらのツールは自身の収入や扶養家族の人数などを入力するだけで、寄付可能な金額の目安を簡単に計算することができます。
ただしこうしたシミュレーションによる計算も、必ずしも完全に正確であるとは限りません。計算方法や個別の状況によって誤差が生じる場合があるため、余裕を持った計画を立てることが重要です。
特に注意すべき点として上限額を超えて寄付を行った場合、その超過分は控除の対象外となります。結果として寄付の際に受け取る返礼品の価値に対して実質的に割高な出費をしている状況となり、ふるさと納税のメリットを十分に活用できない可能性があります。
そのため寄付を行う際には上限額をしっかりと把握し、計画的に進めることが必要です。
計算が複雑な場合がある
基本的に会社員であれ個人事業主であれ、ふるさと納税の控除上限額に違いはありません。
寄付金のうち2,000円を超えた額については、所得税と住民税が全額控除される点は同様です。しかしフリーランスの場合は年ごとの所得に変動があるため、年度の初めにふるさと納税を行うと正確な控除上限額を把握するのが難しいことがあります。
もし毎年の所得が安定しているなら前年のデータを元に控除上限額の目安を算出することができますが、所得が不安定な場合には年間の所得がある程度確定したタイミングでふるさと納税を行う方が良いでしょう。
ふるさと納税は経費計上できない
フリーランスの方がふるさと納税を行った場合、その寄付金額は経費として認められません。ふるさと納税の寄付金額は所得税の控除を通じて税制上の優遇措置を受けることができますが、経費として計上できないため、事業所得には含まれません。
そのためふるさと納税の寄付金額を経費として扱うことはできず、確定申告の際に誤って計上しないよう注意が必要です。
資金は増えるわけではない
ふるさと納税は節税効果があり実質2,000円の負担で自治体から返礼品を受け取れる魅力がありますが、寄付金を支払うための資金は必要です。
納税額は減らせますが支払った金額は戻ってこないことを理解した上で、資金に余裕がある時にふるさと納税を行うことをお勧めします。
ワンストップ特例制度は利用できない
ワンストップ特例制度はふるさと納税を行った後に確定申告をしなくても、所得税や住民税の控除を受けられる便利な仕組みです。主に確定申告に不慣れな会社員や給与所得者向けに提供されています。
一方でフリーランスはワンストップ特例制度を利用することができず、確定申告を通じてふるさと納税の控除を申請しなければなりません。
ただしワンストップ特例を利用する場合には寄付先の自治体数が年間5つまでに制限されるため、フリーランスはその制限を受けることなく寄付先を自由に選べるというメリットがあります。
iDeCoや小規模企業共済利用の場合、控除上限額が異なる
iDeCoや小規模企業共済を利用している場合、これらの控除上限を全て利用できるわけではありません。iDeCoや小規模企業共済は掛け金を所得控除として申請でき、ふるさと納税と併用することも可能です。
ただし併用しても控除上限が増えるわけではなく、ふるさと納税の控除上限が一部引き下げられることになります。併用しているとふるさと納税の控除上限を超えてしまうことがあるため、注意が必要です。
5.フリーランスにおけるふるさと納税の控除上限額の目安
フリーランスは給与所得者と比べてふるさと納税の控除上限額が異なります。控除上限額を超えないように活用したい場合は、事前にその目安を確認する方法を理解しておくことが重要です。
住民税の所得割額のおよそ2割を控除上限の基準とする
控除上限額を手軽に知りたい場合、住民税の所得割額を基にする方法があります。
ふるさと納税の控除上限額は、おおよそ住民税所得割額の20%程度です。この金額は、毎年5月または6月に自治体から送付される「住民税決定通知書」に記載されています。
住民税決定通知書に記載されているのは、納める住民税の額です。住民税は均等割と所得割に分かれており、控除額の目安を確認する際には所得割の金額を見てください。控除上限額は所得に基づいて変動するため住民税所得割額を目安にすることで、ある程度の見積もりが可能です。
また所得割額は課税所得額により割合が変動し、課税所得額が高くなるほど割合が増えます。場合によっては20%以上の割引が適用されることもあり、住民税所得割額を目安にした場合と差が生じることがありますので注意が必要です。
ポータルサイトのシミュレーション機能を活用して上限額を計算
計算の手間を省いて上限控除額の目安を知りたい場合は、総務省などのふるさと納税ポータルサイトでシミュレーションを試すと便利です。
自分の所得や他の控除額を入力することで、控除上限の概算額を素早く確認できます。フリーランスの場合には確定申告書を事前に準備しておくと入力作業がスムーズに進むので、あらかじめ用意してから利用することをお勧めします。
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6.フリーランスのふるさと納税控除額の算出方法
フリーランスがふるさと納税を行う場合の、控除額の計算方法について詳しく説明します。
ふるさと納税は寄付額から自己負担額2,000円を差し引いた金額を、その年の所得税と翌年の住民税から控除できる制度です。
所得税については、控除額が還付される形で返ってきます。一方住民税の控除は、翌年に支払う住民税額を減額することになります。
以下に、所得税と住民税それぞれの控除額の計算方法と例を示しています。
所得税控除額の計算手順
所得税の控除は、ふるさと納税を行った年の所得税から適用されます。所得税の控除額は、次の計算式で求めることができます。
所得税からの控除額 =(ふるさと納税額 - 2,000円)× 所得税率 |
所得税の税率は、課税所得が増えるほど高くなる仕組みです。課税所得金額が以下の範囲で、税率が適用されます。例えば課税所得が1,000円から194万9,000円までの場合、税率は5%で、控除額は0円です。課税所得が195万円から329万9,000円の場合、税率は10%、控除額は97,500円となります。
税率は段階的に増加していきます。なお、ふるさと納税の控除対象となる寄付金額は、総所得金額等の40%を上限としています。
そして令和19年分の寄付に関しては所得税の税率に加え、復興特別所得税の税率も適用されます。
住民税控除額の計算手順
住民税からの控除には「基本分」と「特例分」の2つがあり、それぞれ次のように計算されます。
(1)住民税からの控除(基本分) = (ふるさと納税額 - 2,000円) × 10% |
基本分の控除額は上記(1)の式で求められます。なお控除対象となるふるさと納税額は、総所得金額等の30%を上限としています。
(2)住民税からの控除(特例分) = (ふるさと納税額 - 2,000円) × (100% - 10%(基本分) - 所得税率) |
特例分の控除は住民税所得割額の20%を超えない範囲で、上記(2)の式に従って計算されます。ここでいう所得税率は、個人住民税の課税所得金額から人的控除差調整額を差し引いた額をもとに算出されたものです。
(2)'住民税からの控除(特例分) = 住民税所得割額 × 20% |
特例分が住民税所得割額の20%を超える場合は、上記(2)'の式が適用されます。この場合(ふるさと納税額 - 2,000円)の全額が控除されず、実質的な負担額は2,000円を超えることになります。
なお詳細な計算方法については、居住地の市区町村に確認することをおすすめします。
7.ふるさと納税の手続きから確定申告までのステップ解説
ふるさと納税を行う際は、以下の手順で進めます。
応援したい自治体を選んで寄付を申し込む
ふるさと納税の最初のステップは、全国の自治体から寄付先を選んで申し込むことです。締め切りは毎年12月31日まであるため、早めに申し込みを行いましょう。寄付先は、自分の好みに合わせて選ぶことができます。主に以下のような理由で選ばれると考えられます。
自分の地元を応援したいから
好きな自治体だから
支援したい自治体だから
魅力的な返礼品があるから
寄付金の使い道に共感できるから
地域の特色を感じられる返礼品があるから
ふるさと納税サイトで推奨されているから
フリーランスの場合には自治体数に制限なく寄付が可能です。ほとんどの自治体はふるさと納税を受け入れていますが受け付けていない自治体もあるので、必ず自治体のホームページで確認しましょう。
またふるさと納税のポータルサイトでは返礼品をカテゴリー別に検索したり人気ランキングやおすすめ返礼品をチェックできるので、上手に活用することをお勧めします。
寄付先の自治体から寄付金受領証明書を受領
寄付が完了すると、寄付先の自治体から確定申告に必要な「寄付金受領証明書」が送付されます。この証明書を基に確定申告の際にふるさと納税に関する内容を記入するため、しっかりと保管しておきましょう。
またふるさと納税専用の振込用紙や自治体から発行される納入通知書(納付書)で寄付を行った場合には確定申告時に払込票控(振込用紙の半券)が必要になることがありますので、忘れずに保管しておきましょう。
自治体から返礼品を受け取る
返礼品がある自治体に寄付をした場合は、自治体から返礼品を受け取りましょう。地域の特産品やサービスなど、様々な返礼品が提供されています。寄付額に応じて返礼品が異なるため、自分の希望に合ったものを選ぶと良いでしょう。
確定申告でふるさと納税に関する内容を記載
確定申告には国税庁の「確定申告書等作成コーナー」を利用する方法と、確定申告書を手に入れて記入する方法の2通りがあります。また、会計ソフトを使用して確定申告を行う方法も選べます。
国税庁の確定申告書等作成コーナーを利用するには、以下の2つが必要です。
マイナンバーカード
寄付金受領証明書
寄付金受領証明書を元に、必要な情報を入力していきます。その後勘定科目を「事業主貸(※1)」に設定し、記入が完了したら国税電子申告・納税システム(e-Tax)を通じて電子申告を行うか、お住まいの地域の税務署に郵送または持参して確定申告書を提出します。
(※1)フリーランスや個人事業主が経費として認められない支出などを記録するための勘定科目です。
住民税控除や所得税還付の結果を確認
確定申告が完了するとしばらくして、住民税や所得税の還付金を確認することができます。住民税や所得税の還付金は、e-Taxを通じて以下の手順で確認できます。
「e-Taxソフト(WEB版)」にログイン
「マイページ」の「還付・納税関係」を選択
メニューから「還付金処理状況を確認する」を選択して確認
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8.フリーランスによるふるさと納税の仕訳と勘定科目
フリーランスが事業資金を一時的に使用してふるさと納税を行う場合は、「事業主貸」の勘定科目を使います。事業主貸は事業用資金を家計支出に充てた際に計上するもので、個人事業主専用の勘定科目です。
フリーランスは個人の資金と事業の資金を区別するのが難しく、事業のお金を家計の支出に使うことがよくあります。そのため「事業主貸」の勘定科目を使用することで、個人の資金として使用されたことを明確に区別できます。また事業主貸の金額は会計年度内に精算する必要があるため、精算漏れに注意を払うことが大切です。
ふるさと納税を仕訳する具体例
個人事業主が勘定科目「事業主貸」を使用してふるさと納税の仕訳を行う例は、以下のようになります。
例:ふるさと納税で30万円を寄付した場合
借方 | 事業主貸 | 300,000円 | 貸方 | 現金 | 300,000円 |
さらに事業主貸を使用した場合、事業用の現金を回収して精算を行う処理も必要です。この際の仕訳は、以下のようになります。
借方 | 現金 | 300,000円 | 貸方 | 事業主貸 | 300,000円 |
9.返礼品を受け取った際のふるさと納税の仕訳方法
ふるさと納税は個人が選んだ地方に寄付をし、その後その地方から返礼品を受け取る仕組みです。ただしふるさと納税は個人から自治体への寄付であり、事業主として行うものではないため事業収入には該当しません。そのため、返礼品が届いた際に仕訳を行う必要はありません。
しかし返礼品は一時所得として扱われるため、もしその金額が50万円を超える場合は課税対象となり申告が必要です。これは、一時所得に対する特別控除額が最大50万円であるためです。
また返礼品の価値は寄付額の3割以内に設定されているため、一時所得の額は寄付額の3割を目安に計算できます。詳細に一時所得額を調べたい場合は、寄付先の自治体に問い合わせて確認することをおすすめします。
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10.まとめ
この記事ではフリーランス向けにふるさと納税について説明しました。ふるさと納税を始めることで、寄付を通じて自分が納めている税金の使い道や地域の活動に関心を持つきっかけになるでしょう。また、地域の特産品などの返礼品も魅力的です。
初めてふるさと納税を行う際、確定申告に関する作業が複雑でハードルが高く感じられるかもしれません。しかし毎年確定申告を行うフリーランスにとって、ふるさと納税が大きな負担となることはありません。寄付の流れや控除の上限金額を理解しておけば、あとは申し込みをして、手順に従って進めるだけです。
ぜひ、この記事を参考にしてふるさと納税を始めてみてください。
本記事が皆様にとって少しでもお役に立てますと幸いです。