退職金を受け取った際には必ず確定申告が必要になるのでしょうか?本記事では退職金に関する確定申告の必要性や計算方法、そして特定のケースで申告が求められる状況について詳しく解説します。
退職を予定している方やすでに退職された方、これから退職を検討している方はスムーズに手続きを進めるための参考にしてください。
目次
1.退職金とは
退職金とは、従業員が退職する際に勤務先の企業から支給される手当のことを指します。
退職金は「退職手当」とも呼ばれ、その所得区分は給与所得ではなく退職所得に分類されます。また、退職時に支払われる「退職一時金」も退職所得に該当します。
課税対象となる退職所得は、退職所得控除を差し引いた後の金額です。なお、この控除額は勤続年数や退職理由によって異なります。
退職所得は長年の勤務に対する報酬という性質を持つため、給与所得や事業所得などと異なり総合課税ではなく分離課税の対象となります。この仕組みにより、納税者の税負担が軽減されるよう配慮されています。
2.退職金の確定申告は基本的に不要
「退職所得の受給に関する申告書」を勤務先に提出していれば、退職金支給時に所得税が自動的に源泉徴収されるため退職金に関する確定申告は必要ありません。
この手続きを踏むことで、退職金支給時に所得税・復興特別所得税・住民税が源泉徴収及び特別徴収されます。退職金は勤労に対する報酬として一時的に支給されるものであるため、退職所得控除などの税負担軽減措置が講じられています。
3.退職所得の受給に関する申告書とは
「退職所得の受給に関する申告書」とは、退職金を受け取る人が支払者に提出する申告書です。この書類を提出することで適切な退職所得額とそれに対する所得税が計算され、源泉徴収が実施されます。
退職所得には「退職金」「特定退職金共済からの一時金」「中小企業退職金共済からの退職金」など、退職時に支給される手当が含まれます。
4.退職所得の受給に関する申告書の記入方法
「退職所得の受給に関する申告書」には、大きく分けてA~Eの5つの欄があります。まず最初に上部の欄には退職する勤務先の所在地や名称、さらに退職者の住所や氏名などを記入します。
退職所得を初めて受け取る場合はA欄だけを記入すれば問題ありませんが、過去に退職所得を受け取ったことがある場合は他の欄にも記入が必要になるためその点を覚えておきましょう。
次に、各欄の記入方法について説明します。
A欄の記入手順
(出典:https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/hojin/010705/pdf/391-2.pdf)
A欄は、退職するすべての人が記入する必要がある部分です。
「退職手当等の支払いを受けることになった年月日」には、実際の退職日を記入します。「退職の区分」については在職中に障害を負いその障害が原因で退職した場合は「障害」に〇を、その他の場合は「一般」に〇をつけます。
また退職年の1月1日時点で生活保護を受けている場合は、「生活扶助」の「有」にも〇をつけることを忘れないようにしましょう。
「この申告書の提出先から受ける退職手当等についての勤続期間」には、退職金を受け取る勤務先での勤続期間を記入します。具体的には入社日を「自」退職日を「至」に記入し、1年未満の端数がある場合は切り上げて記入することに注意してください。
また特定役員退職手当の対象となる期間がある場合は、「うち特定役員等勤続期間」にその期間を記入します。特定役員に該当するか不明な場合は、確認してから記入しましょう。
B欄の記入手順
(出典:https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/hojin/010705/pdf/391-2.pdf)
B欄は、同じ年に他の場所からも退職金を受け取った場合に記入する部分です。
「本年中に支払を受けた他の退職手当等についての勤続期間」には、すでに支払を受けた退職金の「退職所得の源泉徴収票・特別徴収票」から必要な情報を転記します。
「3と4の通算勤続期間」にはA欄で記入した期間と重ならないように、合算した期間を記入してください。
C欄の記入手順
(出典:https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/hojin/010705/pdf/391-2.pdf)
C欄は、前年以前の4年以内に退職金を受け取った場合に記入する部分です。
「前年以前4年内の退職手当等についての勤続期間」には、その退職金を計算する際の基礎となる「勤続期間」を記入します。
「3または5の勤続期間のうち、6の勤続期間と重複している期間」には、A欄とB欄で記載した勤続期間と重なる部分があればその重複期間を記入します。この場合、勤続年数は切り捨てで記載する点に留意してください。
D欄の記入手順
(出典:https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/hojin/010705/pdf/391-2.pdf)
D欄はA欄とB欄で記載した勤続期間のうち、前回受け取った退職金と一部または全てが通算されている場合にその通算された期間を記入する部分です。1年未満の端数は切り捨てて記載することに注意してください。
E欄の記入手順
(出典:https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/hojin/010705/pdf/391-2.pdf)
E欄は、B欄またはC欄に記載された退職手当がある場合に記入する部分です。これまでに受け取った退職手当の詳細は、「退職所得の源泉徴収票・特別徴収票」から転記してください。
また「支払者の所在地(住所)・名称(氏名)」の欄には、B欄に記載した支払者の住所および名称(個人名や企業名)を記入します。
5.退職所得の受給に関する申告書の提出方法
「退職所得の受給に関する申告書」の提出方法については、「提出先」「提出時期」「必要な添付書類」の3点に分けて説明します。
申告書を作成したら、できるだけ早く提出することが求められます。また場合によっては添付書類が必要となることもあります。提出時に確認しておくべきポイントをしっかり押さえておきましょう。
提出先
提出先は退職金を支給する側です。退職金の場合は、通常勤務先や共済組合などの支払い元に該当する組合に提出します。
提出時期の目安
通常、提出は退職前に勤務先に行います。支払者は「退職所得の受給に関する申告書」を受け取った後に、源泉徴収額を計算します。
そのため、遅くとも退職金の支払い手続きが始まる前に提出することが重要です。共済組合などでは他の必要書類と一緒に提出後、退職金や一時金の支払い手続きが開始されることが一般的です。
必要な添付書類
申請者によっては、必要な書類を添付する必要があります。例えば同じ年に他の退職手当を受け取った場合、その退職手当の「退職所得の源泉徴収票」を1部添付しなければなりません。
またA欄で「障害」に該当する人は、「障害者手帳のコピー」を添付する必要があります。さらにA欄において生活扶助が「有」に該当する場合は、生活保護決定通知書のコピーを添付しなければなりません。
6.確定申告をすると税金が還付されるケース
退職後に再就職しない場合は年末調整が行われないため、源泉徴収された税額と実際に納めるべき税額との間に差が生じることがあります。こうした場合には確定申告を行って税額を調整することで、過剰に支払った所得税を返金してもらったり来年の住民税を軽減したりすることができます。
そのため確定申告の時期には、申告をすることで得られるメリットがあるケースを事前に確認しておくことをおすすめします。
以下に該当する可能性のあるケースを紹介しますので、自分に該当するものがないかチェックしてみてください。
退職所得の受給に関する申告書未提出の場合
退職金を一時金で受け取った場合に退職所得申告書を提出していなかった人は、確定申告をすることで過剰に支払った税金を取り戻せる可能性が高いです。
退職所得申告書を提出していない場合、退職金には一律で20.42%の税金が源泉徴収されます。
例えば、退職金が2,000万円の場合、408.4万円の税金が引かれて支払われます。しかし仮に勤続年数が40年であれば、2,200万円の退職所得控除を適用できるため確定申告をすることで引かれた408.4万円を返金してもらうことができます。
確定申告を行う際は、退職した勤務先から発行される「退職所得の源泉徴収票」が必要です。確定申告の時期まで大切に保管しておきましょう。
年の途中で退職・転職した場合
年の途中で退職や転職をした場合には退職金に関する確定申告は不要ですが、「給与所得」に関して確定申告を行うことで税金の還付を受けられる可能性があります。以下のケースに該当する場合、確定申告をすることをおすすめします。
年の途中で退職して無職になった場合
給与から天引きされる所得税は通常、1年間の収入が安定していることを前提に計算されています。したがって年の途中で退職した場合、税金を払いすぎていることが多くなります。
退職後年末調整が行われないため、自分で確定申告をすることで過剰に支払った税金を正しく精算することができます。特に1月から6月など早い時期に退職した場合、還付される税額が大きくなることがあります。
転職後の年末調整で前職の源泉徴収票を提出しなかった場合
転職後年末調整を行うことで転職先の税額が正しく計算されますが、前職の源泉徴収票を提出しなかった場合には適切な税額が計算されません。
特に転職によって働かない期間があった場合は、税金を払いすぎている可能性が高いです。
どちらのケースでも、確定申告時には退職した勤務先から発行された「給与所得の源泉徴収票」が必要です。もし源泉徴収票を紛失した場合は退職した勤務先の経理担当者に連絡し、再発行を依頼しましょう。
生命保険料を支払った場合
生命保険料や個人年金保険料を支払っている人は、「生命保険料控除」を利用することができます。
確定申告を行う際には、保険会社から送付される生命保険料控除証明書が必要です。まだ支払っていない契約については支払い後に順次証明書が届くため、それを確定申告の期限まで大切に保管しておきましょう。
住宅ローン控除の適用を受けられる場合
住宅ローンや耐震・省エネ・バリアフリー化のリフォームローンを支払っている人は、「住宅ローン控除」を受けられる場合があります。
住宅ローン控除を利用するためには、入居した翌年に自分で確定申告を行う必要があります。その後翌年からは勤務先の年末調整で手続きを行えますが、退職した場合は確定申告をすることが求められます。
ふるさと納税などの寄付を行った場合
ふるさと納税で都道府県や市区町村への寄付を行ったり、特定の公益社団法人や特定非営利活動法人に寄付をした場合には「寄付金控除」を受けることができます。
ふるさと納税は支払う税金を直接減らす効果はありませんが、寄付額の最大3割以内でお礼の品がもらえる点が注目され多くの利用者が増えている制度です。
簡単に寄付金控除を受けられる「ワンストップ特例制度」を利用すれば、確定申告をしなくても税金の精算が行われます。確定申告に苦手意識がある方でも使いやすい制度です。ワンストップ特例制度を利用しない場合は、必ず確定申告を行う必要があります。
多額の医療費を支払った場合
1月から12月までに支払った医療費の自己負担額が10万円以上(年収200万円未満の人は総所得金額等の5%)となった場合、「医療費控除」を利用できます。
医療費の対象には病院や薬局で支払った医療費だけでなく、通院にかかった交通費やドラッグストアで購入した市販薬・自費診療の歯科インプラント・治療目的で行ったマッサージや針治療なども含まれます。
医療費控除を申請するには基本的に領収書を保管する必要があるため、病院や薬局でのレシートは忘れずに保管しておくことをおすすめします。
年が明けたら昨年の医療費の領収書を集計し、医療費控除が適用できるかどうかを確認しましょう。
個人型確定拠出年金(iDeCo)などの掛け金を拠出した場合
個人型確定拠出年金(iDeCo)・小規模企業共済・心身障害者扶養共済制度に掛け金を拠出した場合、その掛け金はすべて「小規模企業共済等掛金控除」の対象となります。
これらの制度を利用している人は控除額が大きいため、確定申告を行って税負担を軽減することをおすすめします。
また2022年の改正により、iDeCoの加入年齢が60歳未満から65歳未満に拡大されました。退職後で無職の状態でも、国民年金に任意加入していることが条件となります。
国民年金への任意加入やiDeCoは老後の生活をサポートしてくれる制度ですので、利用できるかどうかぜひ確認してみてください。
給与から天引きされていない社会保険料を支払った場合
自分や家族の国民年金保険料・国民健康保険料・介護保険料などの社会保険料を支払っている場合、「社会保険料控除」を受けることができます。
年金受給者で公的年金から国民健康保険料が特別徴収されている場合、その額が源泉徴収票に記載されていれば社会保険料控除は自動的に適用されるため、特に確定申告を行う必要はありません。
しかし「配偶者や子どもの年金保険料を支払っている」「国民健康保険料が特別徴収されていない」など源泉徴収票に記載されていない社会保険料を支払っている場合は、確定申告をすることでその分の社会保険料控除が適用され過剰に支払った税金を取り戻すことができます。
扶養家族がいるまたは家族構成に変更があった場合
家族の状況によって、所得控除を受けられる場合があります。例えば16歳以上の子どもがいる場合は「扶養控除」、収入が一定の範囲内の配偶者がいる場合は「配偶者(特別)控除」を利用できます。
退職後に公的年金などを受け取っている人は、公的年金等の支払者に「扶養親族等申告書」を提出していれば確定申告をしなくてもこれらの控除が自動的に適用されます。
ただし「扶養親族等申告書」を提出していない場合や、途中で家族が仕事を辞めて扶養親族になった場合などは確定申告を行うことで税金が戻る可能性があります。
災害や盗難の被害を受けた場合
台風や地震などの自然災害または盗難や横領によって自宅などに損害を受けた場合、「雑損控除」を適用することで税金の負担を軽減することが可能です。
確定申告を行う際には、災害に関連する費用の領収書や被害の状況がわかる写真などの証拠書類が必要になることがあります。災害に関する証拠資料は大切に保管しておきましょう。
不動産所得や事業所得が赤字の場合
給与・年金・退職金などの収入がある一方で不動産所得・事業所得・譲渡所得などで損失が発生している場合、「損益通算」を行うことで税金の負担を軽減できることがあります。
不動産投資や事業を行っている方だけでなく、株式投資で損失を出した方にも適用できる場合があります。
該当するかどうか確認してみましょう。
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7.退職金や各種控除に関する確定申告の手続き
退職金に関しては多くの場合には確定申告が必要ありません。ただし確定申告を行うことで払いすぎた税金を取り戻せる場合もあるため、該当する方は忘れずに申告を行いましょう。
確定申告は国税庁の「確定申告書作成コーナー」などを利用して申告書を作成し、所轄の税務署に提出します。
確定申告の期間は、通常翌年の2月16日から3月15日までです。申告期限を忘れないように、カレンダーなどに記入しておくと良いでしょう。
提出先:所轄(最寄り)の税務署
作成方法:税務署から取得した確定申告書に手書きで記入、国税庁の「確定申告書作成コーナー」でデータを作成(印刷も可能) など
提出方法:税務署に持参・郵送・e-Tax(インターネットを利用して提出)
相談先:税理士・最寄りの税務署・国税庁の電話相談センター など
8.退職金にかかる税金の仕組み
退職金にかかる税金は主に「所得税(復興特別所得税を含む)」と「住民税」の2種類です。
所得税は国が課す税金で、住民税は地方自治体が課す税金です。企業が役員や従業員に退職金を支払う際にはこれらの税金は源泉徴収され、納付しなければなりません。
所得税は退職金の総額から一定の控除額を差し引いた後に計算されます。この控除を「退職所得控除」と呼び、退職金が一定額以下の場合、所得税が課税されないこともあります。
一方住民税は所得税の額を基に、別途地方自治体が計算して徴収します。
課税対象となる退職所得の計算方法
退職金に課税される額(課税退職所得金額)は退職金の全額(税引き前の金額)から「退職所得控除額」を差し引き、その残りの金額に1/2を掛け算した額となります。
課税退職所得金額 = (税引き前の退職金額 - 退職所得控除額) × 1/2 |
「税引き前の退職金額」とは、源泉徴収票に記載されている「収入金額」や「退職に起因する源泉徴収前の収入金額」を指します。
また確定給付型企業年金がある場合、従業員が負担した保険料は控除されその分退職金の課税対象額が減少します。さらに特定の役員に対しては、退職金から退職所得控除額を引いた金額がそのまま課税される退職所得となります。
このように課税される退職金の額の計算方法は、いくつかの条件や特例によって異なる場合があるため注意が必要です。
所得税および復興特別所得税の計算方法
退職金に対する所得税および復興特別所得税は、以下の手順で計算されます。
まず、課税退職所得金額を算出します。その後、課税退職所得金額に適用される所得税率を掛け控除額を差し引いて「基準所得税額」を計算します。基準所得税額に2.1%を掛けて、復興特別所得税額を算出します。
最後に基準所得税額に復興特別所得税額を加えた合計が、実際に源泉徴収される税金額(所得税と復興特別所得税の合計額)となります。
退職所得控除の計算方法
退職所得控除額は勤続年数に基づいて異なります。計算方法は以下の通りです。
勤続年数が20年以下の場合: 退職所得控除額 = 40万円 × 勤続年数(A)
ただし、40万円 × 勤続年数が80万円未満の場合は80万円になります。
勤続年数が20年を超える場合: 退職所得控除額 = 800万円 + 70万円 × (勤続年数(A)- 20)
また障害を理由に退職した場合、控除額に100万円が追加される特例があります。
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9.退職金に関する確定申告の特別なケース
この章では退職金を受け取る際に生じる特別なケースにおいて、必要となる対応について解説します。
退職金の受取人が亡くなった場合
退職金を受け取るはずだった本人が亡くなった場合、本来支給されるべき退職手当金や功労金など、これに類する給与などを「退職手当金等」といいます(物品として支給される場合も含まれます)。
亡くなった後3年以内に支給が確定した「退職手当金等」を相続人が受け取る際、その金額は相続税の課税対象となります。非課税限度額は、以下の計算式で求められます。
5,000,000円 × 法定相続人の数 = 非課税限度額 |
たとえば法定相続人が3人いる場合、次のように算出されます。
非課税限度額:5,000,000円 × 3(法定相続人の数) = 15,000,000円 |
なお、相続を放棄した人も法定相続人の数に含まれます。また法定相続人に養子がいる場合、非課税限度額を計算する際に含められる養子の数には上限があります。実子がいる場合は1人まで、実子がいない場合は2人までとされています。
1年の間に複数回の退職金を受け取った場合
複数の企業に在籍していたなどの理由で同じ年に2回以上退職金を受け取る場合は、「退職所得の受給に関する申告書」の記入や提出時に注意が必要です。
異なる企業(支払者)に申告書を提出する際は、それぞれの提出順を明記する必要があります。
またすでに退職金を受け取っている場合は、申告書に支払者の名称・退職金額・源泉徴収税額などを記入して受け取り済みの源泉徴収票を添付して勤務先に提出してください。
10.退職金を受け取った際に確定申告が必要となるケース
退職金を受け取った際には、状況によって確定申告が必要になることがあります。この章では、確定申告が求められるケースについて説明します。
公的年金などの合計額が400万円を超える場合
退職金の確定申告が必要となるケースの一例として退職金を受け取った方が年金受給者であり、国民年金や厚生年金などの公的年金の合計額が400万円を超える場合が挙げられます。
確定申告を行う際には、退職金の金額も申告書に記載する必要があります。
なお民間の生命保険会社が提供する個人年金保険は、公的年金等には該当しません。そのため公的年金等の収入総額には含まれません。
年金所得があり、他の所得が20万円を超える場合
年金所得があり年間の受給額が400万円以下の場合でも、その他の所得が20万円を超えると確定申告が必要になります。その他の所得には給与所得・雑所得・一時所得などが含まれます。
これらの所得の合計が1月1日から12月31日までの間に20万円を超えた場合、確定申告を行う必要があるため退職金の収入金額や退職所得金額についても申告書に記載しましょう。
転職先で年末調整を行ったが、前職の源泉徴収票を提出していない場合
再就職先で年末調整を受けていても、前職の源泉徴収票を提出していない場合は確定申告が必要になります。前職を退職後に再就職した場合には前職の源泉徴収票を転職先に提出すれば、年間の給与所得を合算した上で年末調整が行われます。
しかし何らかの理由で前職の源泉徴収票を提出していない場合は、自身で確定申告を行わなければなりません。
また転職先に提出する必要があるのは、その年に発行された「給与所得の源泉徴収票」です。前年以前の「給与所得の源泉徴収票」や、「退職所得の源泉徴収票」は提出不要です。
なお前職の勤務先から退職金を受け取っており退職時に「退職所得の受給に関する申告書」を提出している場合は退職所得控除が適用された上で所得税・復興特別所得税・住民税が源泉徴収されるため、確定申告に含める必要はありません。
所得税が源泉徴収されない退職金を受け取った場合
外国企業から受け取った退職金など所得税が源泉徴収されていない退職金を受け取った場合は、他の源泉徴収されている退職金も含めて確定申告が必要になります。
源泉徴収票や明細書を確認し源泉徴収が行われていない場合は、適切に確定申告を行いましょう。
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11.まとめ
退職金を受け取った際には、税制上の手続きとして「退職所得の受給に関する申告書」の提出が求められることがあります。
この申告書を適切に提出していれば退職金に対して源泉徴収が適用され、原則として確定申告を行う必要はありません。退職所得には税制上の優遇措置が設けられており一定の控除を受けた後に税額が計算されるため、通常の給与所得よりも税負担が軽減される仕組みになっています。
しかしながら「退職所得の受給に関する申告書」を提出しなかった場合、退職金に対して高い税率の源泉徴収が行われることになります。この場合確定申告をすることで本来の退職所得控除を適用し、過剰に納めた税金の還付を受けることが可能です。
また他の所得と合算して課税所得の計算が必要なケースや医療費控除・ふるさと納税などの所得控除を適用したい場合も、確定申告をすることで税負担を抑えられる可能性があります。
退職金を分割して受け取る場合や企業型確定拠出年金(DC)などの退職金制度を活用して年金形式で受給する場合なども、税務上の扱いが異なるため注意が必要です。
退職金に関する税務手続きは、自身の状況によって異なります。事前に必要な手続きを把握し適切な申告を行うことで、不要な税負担を避け退職金をより有効に活用することが重要です。
本記事が皆様にとって少しでもお役に立てますと幸いです。