みなさん、源泉徴収についてどれくらいご存知でしょうか?「会社員が給与をもらうときに差し引かれる税金のことだよね?」といった程度の認識を持っている方も多いかもしれません。
実は源泉徴収は会社員の給与所得だけに限ったものではなく、一定のフリーランスや個人事業主にも適用される場合があります。そのため、収入がある人は誰でも源泉徴収について正しく理解しておくことが重要です。
そこで今回は源泉徴収の基本を学んだうえで、個人事業主やフリーランスの方向けに押さえておくべき重要なポイントをご紹介します。
目次
1.源泉徴収の仕組みとは
源泉徴収とは給与や報酬を受け取る際に所得税があらかじめ差し引かれ、支払者が従業員や受取人に代わって税金を納める制度のことを指します。
所得税を確実に徴収するために設けられた仕組みであり特定の所得については、受け取る本人が税額を計算して支払うのではなく雇用主や報酬の支払者があらかじめ税額を計算し、その分を差し引いたうえで給与や報酬を支払って国に納付する形となります。
原則として所得税は「申告納税制度」と呼ばれる仕組みに基づいており、個人が自ら年間の所得額を計算して確定申告を通じて税額を確定させたうえで納税するのが基本です。しかし給与所得者などに対しては所得税の納税を簡便化し、税収の安定を図るために源泉徴収制度が適用されています。
給与を支払う企業や報酬を支払う個人事業主が所定の計算方法に基づいて所得税額を算出し給与や報酬から天引きした金額を、税務署に納付することが義務付けられています。
この源泉徴収の仕組みが適用されるのは、主に給与所得・退職所得・報酬などの所得です。サラリーマンの場合は毎月の給与支給時に源泉徴収され、さらに年末調整の際に年間の所得税額が再計算されるため原則として確定申告を行う必要がありません。
一方でフリーランスや個人事業主が受け取る報酬についても一定の条件を満たす場合にはクライアントが源泉徴収を行い、報酬から所得税を天引きする仕組みが適用されることがあります。
なお源泉徴収された所得税の金額が実際の納税額よりも多い場合には、確定申告を行うことで還付を受けることが可能です。
たとえば医療費控除や扶養控除などの各種所得控除を適用すると、納めすぎた所得税の一部が戻ってくることがあります。そのため自身の所得や控除の適用状況を正しく把握し、必要に応じて確定申告を行うことが重要です。
源泉徴収が実際にどのような形で適用されるのか、そして確定申告によって税金の還付を受ける可能性があるのかを理解しておくことが大切です。
源泉徴収を行う義務がある事業者とは
源泉徴収制度において、所得税や復興特別所得税を差し引いて納付する義務を負う者を「源泉徴収義務者」と呼びます。
企業・協同組合・学校さらには個人など、組織の形態に関わらず給与や報酬を支払う側には源泉徴収の義務があります。
ただし個人が家事従事者だけを常時2人以下雇っているような場合は、給与や退職金、報酬・料金について源泉徴収を行う必要はありません。また税理士報酬など特定の報酬・料金についても、源泉徴収の対象外となります。
なお法人ではなくフリーランスであっても従業員に給与を支払っている場合は源泉徴収義務者に該当するため、注意が必要です。
さらに源泉徴収義務者でありながら定められた期限までに税金を納付しなかったり源泉徴収を適切に行わなかったりすると、延滞税が発生する可能性があります。
源泉徴収税の納付期限は給与などを支払った月の翌月10日までとされており、期限を過ぎた場合は法定納期限の翌日から納付日までの日数に応じた延滞税が自動的に課される仕組みです。
源泉徴収票の適用期間
源泉徴収票の対象期間は、その年の1月から12月までの1年間です。これは実際に働いた期間ではなく、給与が支払われた時点を基準としています。
例えば給与が翌月払いの場合、12月に働いた分の給与は翌年1月に支払われるためその給与は翌年分の源泉徴収票に含まれます。
以下の表は、給与が翌月支給される場合の対象期間を示したものです。
源泉徴収票の対象年 | 実際に働いた期間 | 給与が支払われた期間 |
---|---|---|
2024年分 | 2023年12月 2024年1月〜11月 | 2024年1月 2024年2月〜12月 |
2025年分 | 2024年12月 2025年1月〜11月 | 2025年1月 2025年2月〜12月 |
このように源泉徴収票の対象となるのは、給与の支払いが行われたタイミングで決まる点に注意しましょう。
従業員への給与や賞与を支給した場合
従業員の給与や賞与については年間を通じて支払われた給与と、源泉徴収により差し引かれた所得税の金額をもとに年末調整を行い実際に納めるべき所得税の過不足を精算する必要があります。
12月分の給与を翌年1月に支払う場合、基本的にその給与は翌年の源泉徴収の対象となります。
また年の途中で入社した従業員については、前職の給与と現在の給与を合算した金額をもとに年末調整を行います。そのため年末調整を行う際には、前職の会社から発行された源泉徴収票の提出が必須となります。
個人事業主への報酬を支払った場合
個人事業主やフリーランスに源泉徴収の対象となる報酬を支払う場合、給与と同様に報酬の支払い時期と実際に業務を行った時期が一致するとは限りません。例えば「当月締め翌月払い」の場合、2024年12月の業務に対する報酬は2025年1月に支払われます。
ただしフリーランスは原則として発生主義を適用するため、実際に報酬が支払われたかどうかにかかわらず取引が発生した時点で帳簿に費用として記載する必要があります。
したがって2023年12月に取引が発生した場合、報酬の受け取りがまだでも源泉徴収の対象となります。
源泉所得税の対象となる所得
源泉徴収を行い源泉所得税を支払うべき対象となる所得には、いくつかの種類があります。これらは、報酬や料金を受け取る相手が法人か個人かによって異なります。
源泉所得税が適用される主な所得は、以下の通りです。
原稿料や講演料
執筆や講演によって得た収入は源泉所得税の対象となります。しかし懸賞や応募によって選ばれた人に支払う賞金については、1回の支払い額が50,000円以下の場合には源泉徴収は必要ありません。
診療報酬
社会保険診療報酬支払基金から支払われる診療報酬も、源泉所得税の対象となります。
弁護士や司法書士、公認会計士など特定の資格を持つ人へ支払われる報酬
弁護士・司法書士・公認会計士などの特定の資格を有する人に支払われる報酬や料金にも、源泉所得税が適用されます。
プロ選手への報酬
プロ野球選手・プロサッカー選手・プロテニス選手・モデルや外交員などに支払われる報酬や料金も、源泉所得税の対象となります。
出演報酬
映画・演劇・音楽・漫才・舞踊などの芸能に関連する報酬やテレビ出演料または芸能プロダクションを運営している個人に支払われる報酬や料金には、源泉所得税が課せられます。
ホステス・コンパニオンへの報酬
ホテルや旅館の宴会で接客を担当するバンケットホステスやコンパニオン、またバーやキャバレーで働くホステスなどに支払われる報酬や料金には源泉所得税が適用されます。
契約金
プロスポーツ選手との契約時に支払われる契約金など、一時的に支払われる金額には源泉所得税が課されます。
競馬の賞金
競馬の賞金や広告宣伝費として馬主に支払われる金額も源泉所得税の対象です。
その他にも預貯金の利子・投資信託の配当金などにも源泉所得税が課されます。
また外部業者に報酬を支払って仕事を依頼する場合、業者が法人であれば源泉所得税の徴収は不要ですが個人の場合は業務内容に応じて源泉所得税を徴収しなければならないことがあります。
2.年間を通した所得税の計算の流れ
事業者が従業員の所得税を計算する際には毎月の給与や賞与を元に年間の税額が算出され、年末調整によって最終的な金額が決まります。
必要書類の収集から源泉所得税の差し引き、最終的な所得税額の確定そしてその額を給与に反映させるまでの流れに沿って進めていきましょう。
「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の提出を受ける
毎年、各従業員からその年の最初の給与支給日前日までに「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を回収する必要があります。
この書類は、税額表の甲欄・乙欄の判定や扶養人数の確認に必要です。新卒入社者・中途入社者・既存の従業員に関わらず、最初の給与支給日前日までに必ず回収しなければなりません。
またパートタイマーやアルバイトの従業員についても他の勤務先に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」をすでに提出している場合を除き、基本的には提出が求められます。
毎月の給与・賞与から源泉所得税を徴収
各従業員に毎月の給与や賞与を支給する際には所定の源泉所得税を差し引きます。源泉所得税の額は従業員の社会保険料控除後の給与の課税支給額(賞与の場合は前月の給与から社会保険料を差し引いた課税支給額)や、扶養親族等の人数に基づいて税額表を使って計算されます。
通常翌月の10日までに全従業員分の源泉所得税を(複数の給与支払事務所がある場合にはそれぞれの事務所ごとに)まとめて国に納付することが、事業者を中心とした支給者の責任となります。
年末調整に必要な書類を回収
年末が近づいてきたら、従業員に対して年末調整に必要な書類の提出を依頼します。提出を求める書類は主に以下の通りです。
給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
給与所得者の基礎控除申告書
保険料控除証明書(民間生命保険や地震保険に加入している従業員向け)
給与所得者の保険料控除申告書
国民年金保険料控除証明書(子供の国民年金等を支払った従業員)
住宅借入金等特別控除申告書と年末残高等証明書(住宅ローン控除を受ける従業員。ただし初年度は本人による確定申告が必要)
前職の源泉徴収票(年内に中途入社した従業員や、新卒入社でその年にアルバイトをしていた従業員)
従業員全員が提出する書類と特定の従業員だけが提出する書類があるため、確認をしっかり行うことが重要です。
年間の支給額を確定
12月の給与と賞与が決定すると、各従業員の年間支給額が明確になります。年間支給額が確定した後には給与の合計額や社会保険料、源泉徴収された所得税額などを確認しましょう。
年末調整で最終的な所得税額を決定
確定した1年間の課税支給額や社会保険料額や従業員が提出した年末調整関連の書類をもとに、年末調整を実施します。年末調整の目的は、各従業員が支払うべき正確な所得税額を確定させることです。
過不足分の所得税を給与で精算
確定した年間所得税額とこれまでに源泉徴収された所得税額を比較し、差額があれば過不足分を調整します。一般的には12月の給与支給時に過剰に徴収された場合は還付、足りない場合は追加徴収を行います。
例えば確定した所得税額が21万円ですでに源泉徴収した金額が24万円の場合、過剰に徴収された3万円が還付されることになります。
給与明細にはこの還付金は「年末調整還付」として、追加徴収がある場合は「年末調整徴収」と記載されます。また、「年末調整過不足額」として同じ欄に記載することも可能です。
3.源泉所得税の計算方法
従業員に支払う給与や賞与、退職金から差し引く源泉所得税と社外の個人に支払う報酬や料金から徴収する源泉所得税では税額の計算方法が異なります。これらの計算方法をしっかりと把握しておくことが重要です。
給与から源泉徴収する所得税の計算方法
毎月の給与から差し引く源泉所得税は、「給与所得の源泉徴収税額表(月額表)」を使用して計算します。具体的な計算手順は以下の通りです。
課税支給額の算定
基本給・残業手当・各種手当などの合計額から欠勤控除や遅刻早退控除などを引き、課税支給額を決定します。なお、非課税交通費は課税支給額に含まれません。
課税支給額から社会保険料を控除
課税支給額から社会保険料を差し引きます。
源泉所得税額の計算
課税支給額にもとづいて「給与所得の源泉徴収税額表(月額表)」より、源泉所得税を計算します。
税額表には甲欄と乙欄があり「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出した従業員は甲欄を、未提出の従業員は乙欄を参照します。
さらに甲欄には「扶養親族等の数」に基づく欄があり課税支給額から社会保険料を差し引いた金額を「その月の社会保険料等控除後の給与等の金額」に照らし合わせ扶養親族等の数に応じて源泉徴収税額を確認し、税額を簡単に求めることができます。
また給与計算が電子計算機などで行われている場合、財務省が告示する計算式を用いて源泉所得税額を求める特例があります。この特例によって税額表で求めた税額と差額が生じても、年末調整で適切に調整されます。
賞与から源泉徴収する所得税の計算方法
賞与から差し引く源泉所得税額は、「賞与に対する源泉徴収税額の算定率の表」を参照して計算します。
賞与月の前月の給与から社会保険料を控除
賞与支給月の前月の課税支給額から社会保険料を差し引きます。給与と同様に、課税支給額には非課税交通費は含まれません。
税率の確認
「1」で計算した金額を「賞与に対する源泉徴収税額の算定率の表」に照らし合わせ、賞与金額に適用する税率を確認します。
源泉所得税額の算出
課税支給額から社会保険料等を差し引いた金額に「2」で確認した税率を掛け、賞与にかかる源泉所得税額を計算します。端数が1円未満の場合は切り捨てます。
退職金にかかる源泉所得税の計算方法
退職金に対する源泉所得税は給与や賞与とは別に計算し、納付します。退職金から差し引く源泉所得税の計算方法は以下の通りです。また退職金に対しては、所得税に加えて住民税も控除した後の金額を従業員に支払う必要があります。
課税退職所得金額の計算
課税退職所得金額=(退職金額-勤続年数に基づく退職所得控除額)÷2 |
なお勤続年数によって退職所得控除額の計算方法が異なります。
所得税額の算出
課税退職所得金額を基に、退職金にかかる所得税額を以下の式で求めます。
退職金にかかる所得税額=課税退職所得金額×所得税率-控除額 |
報酬・料金などにかかる源泉所得税の計算方法
報酬や料金から差し引く源泉所得税の金額は、基本的に報酬・料金額の10.21%となります。しかし同一の個人への1回の支給額が100万円を超える場合、その超過部分については税率が20.42%となります。
なお、報酬・料金額は原則として消費税込みの金額を基に計算します。ただし請求書などで本体価格と消費税が明確に区分されている場合は、消費税を除いた金額だけを源泉徴収の対象とすることも可能です。
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4.2037年までは復興特別所得税が徴収される
2037年まで、復興特別所得税が徴収されることが決まっています。この税は、東日本大震災の復興資金を確保するために課されるものです。復興特別所得税の税率は、所得税額の2.1%です。
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5.源泉所得税の納付手続き
源泉所得税の納付期限は、基本的に給与を支給した翌月の10日となっています。給与の支給日が月初の5日であろうと月末の31日であろうと、納付期限には影響はありません。
ただし常時雇用している従業員が10人未満の企業においては、特例として年に2回半年分の源泉所得税をまとめて納付することが許されています。
源泉所得税の納付方法
源泉所得税の納付方法には大きく分けて2種類あります。以下で、それぞれの納付方法について詳細に説明します。
税務署や金融機関の窓口で納付
税務署または金融機関の窓口で源泉所得税を納めることができます。毎月、納付期限内の営業時間に現金を持参して窓口で支払いを行う必要があります。
納付時には、給与所得・退職所得などの税額計算を記載した「所得税徴収高計算書」という納付書が必要です。この納付書には税額の計算も記載されているため毎回必ず用意し、必要事項を記入して窓口に提出しましょう。
納付書の様式は、納入期日の特例がある場合とない場合で異なります。税務署から送付されてきた納付書には税務署名や整理番号がすでに記載されているため、それらの項目に記入する必要はありません。
金額の記入に間違いがあった場合は、修正ができないため訂正して新しいものを用意しましょう。
e-Taxを利用して電子納付
e-Taxを利用した電子納付には、ダイレクト納付・クレジットカード払い・インターネットバンキング・コンビニ払いなどの方法があります。ダイレクト納付では事前に登録した銀行口座から振替により支払いが行われ、簡単な操作で期日通りに納付できます。
e-Taxを利用する手順は以下の通りです。
e-Taxソフトの準備:e-Taxのホームページから、e-Taxソフト(Web版)をセットアップします。
e-Taxの開始届出:初めてe-Taxを利用する場合は、開始届出書を送信します。届出書を送信すると、利用者識別番号が表示されます。
納付手続き:ダイレクト納付を利用する場合は、税務署へ「ダイレクト納付利用届出書」を提出します。クレジットカードで支払う場合は、利用できるクレジットカードを準備しましょう。対応するカードは、国税庁のホームページで確認できます。
インターネットバンキングで支払う場合は、利用する金融機関とインターネットバンキングの契約が必要です。利用したい金融機関でインターネットバンキングに申し込むか、税金の支払いが可能なペイジーの利用ができるかどうかを確認しましょう。
6.年末調整による年間所得税額の計算方法
源泉所得税に関する年末の手続きが年末調整です。この手続きでは事業者が従業員から源泉徴収した所得税と、実際に支払うべき所得税額との差を計算し、その差額を調整して最終的な納税額を確定します。年末調整の進行方法は以下の通りです。
年末調整に必要な書類を準備
最初に前年の年末調整で提出された当年分の扶養控除等申告書を従業員に配布し、変更があれば修正して再提出してもらいます。また翌年分の扶養控除等申告書を渡し、記入後に回収します。そのほか、必要に応じて従業員から提出してもらう書類もあります。
翌年分の扶養控除等申告書は翌年1月分の給与計算までに提出してもらえれば問題ありませんが、提出漏れがないよう前年度の修正と一緒に提出してもらうことが一般的です。
年末調整に関連する書類の準備は10月末ごろから始め11月中旬~下旬には全ての書類を回収できることが望ましいです。
記入ミスなどで再提出が発生する可能性があるため、余裕を持って期限を設定することが推奨されます。
年間の給与・給与所得を確定
1月1日から12月31日までに支給された給与と賞与を合算し、1年間の総支給額を確定します。この合計額に対して、給与所得控除と所得金額調整控除を適用した後の金額が給与所得となります。
所得控除額と課税所得金額を算出
従業員が提出した年末調整の書類を基に、各従業員が適用できる控除の種類とその金額を確認します。給与額から所得控除額を差し引いた額が課税所得となります。年末調整で適用できる主な所得控除は例えば以下のものです。
基礎控除(年間所得が2,400万円から段階的に縮小され、2,500万円を超えると対象外)
社会保険料控除
扶養控除
配偶者控除または配偶者特別控除
生命保険料控除
寡婦控除
ひとり親控除
小規模企業共済等掛金控除
障害者控除
勤労学生控除
基礎控除は、すべての従業員に適用されます。
所得税額を計算
課税所得金額に定められた税率を適用し、そこから控除額を引いた額が最終的な所得税額となります。
基準となる所得税額を確定
算出した所得税額から税額控除を引いた額が基準となる所得税額です。主な税額控除には、住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)などがあります。
1年間で支払うべき所得税額を決定
最終的な納税する所得税額は、基準所得税額と復興特別所得税額を合算した金額となります。復興特別所得税額は所得税額に上乗せされるもので、2013年から2037年までの各年について基準所得税額の2.1%が課されて所得税と一緒に納めることになります。
1年間に支払うべき所得税額は、以下の式で計算できます。
支払うべき所得税額 = 基準所得税額 + 復興特別所得税額(基準所得税額 × 2.1%) |
なお令和6年分に関しては定額減税が実施されるため、基準所得税額から定額減税を引いた後の金額に復興特別所得税率を掛けて復興特別所得税額を計算します。
源泉徴収済みの税額と差額を精算(還付・追加徴収)
1年間に支払うべき所得税額と、源泉徴収税額の累計との差額が過不足額となります。令和6年分では、復興特別所得税を計算する前に定額減税が適用されるため、その点も考慮して税額を算出する必要があります。
過不足額の調整結果、源泉徴収税額の累計が支払うべき所得税額より多かった場合には過剰に徴収された税額分を従業員に還付します。逆に源泉徴収税額の累計が支払うべき所得税額より少なかった場合、不足分を従業員から追加で徴収します。
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7.源泉所得税を計算する際の注意点
フリーランスが源泉徴収に関して注意すべき重要な点について、詳しく説明します。
請求書に消費税を別途記載
次に注意すべき点は、報酬に関連する消費税の取り扱いです。源泉徴収は特定の報酬が対象となりますが、原則としてその報酬にかかる消費税も含まれます。
ただし請求書で報酬金額(本体価格)と消費税が分けて記載されている場合、消費税分を除いた報酬金額のみが源泉徴収の対象となります。
例1)請求書に「報酬220,000円(消費税込)」と記載された場合
源泉徴収税額は220,000円に対して10.21%となり、22,462円になります。
例2)請求書に「報酬200,000円・消費税等20,000円」と記載された場合
報酬と消費税が分けられている場合、源泉徴収税額は、報酬200,000円に対して10.21%となり、20,420円となります。
確定申告を必ず行う
確定申告を行う際には、源泉徴収で差し引かれた金額を忘れずに申告することが大切です。
確定申告では1年間の収入や支出をもとに正確な年間税額を算出し、その金額と前もって支払われた源泉徴収税額を調整します。源泉徴収税額は収入に一定の割合を掛けて簡単に計算されるため、場合によっては確定申告で算出した年間税額を超えることもあります。
その場合、確定申告を通じて過剰に支払った源泉徴収税額を還付してもらうことができます。
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8.まとめ
源泉所得税はあくまで仮に徴収される税金であり、実際に納めるべき税額は年末調整や確定申告を通じて最終的に確定します。これは給与や報酬から一定の割合で天引きされるものであり、最終的な税額との差額が年末調整や確定申告の際に精算される仕組みになっています。
そのため源泉徴収だけで税金が完全に確定するわけではなく、過不足が生じることもあります。過剰に徴収された場合は還付され、不足している場合は追加で納付する必要があります。
会社員の場合、給与所得者の多くは税金の計算や納付を勤務先の会社が行ってくれるため日常的に意識することは少ないかもしれません。しかし年末調整では控除の適用範囲や家族構成の変化が税額に影響を及ぼすため、基本的な税知識を持っておくことは重要です。
特に転職によって年収が大きく変動した場合や、結婚・出産などで扶養家族の状況が変わった場合には税額に大きな変化が生じることがあります。こうした変化を正しく把握し適切な控除申請を行うことで、不要な納税負担を避けることができます。
フリーランスの場合は源泉徴収される報酬とされない報酬があり、確定申告で正確に計算しなければなりません。源泉徴収された金額が過剰であれば還付を受けることができるため、支払調書をもとに正しく計算することが大切です。また事業所得として必要経費を適切に計上し、所得控除や税額控除の適用を確認することで税負担を最適化できます。
いずれの立場においても源泉徴収の仕組みを正しく理解し、必要な控除申告書類を適切に提出することが重要です。源泉徴収された税額が適正かどうかを把握し適切な申告・調整を行うことで、無駄な税負担を防ぎ適正な納税を実現しましょう。
本記事が皆様にとって少しでもお役に立てますと幸いです。