SES(System Engineering Service)は、ITエンジニアの雇用形態の1つです。クライアントの要望に合わせてITエンジニアを提供するSES企業に就職して、多数のプロジェクトに携わる働き方も考えられます。SESにはメリットもありますが、労働スタイルが合わない人もいるでしょう。その場合にはSES企業から離れて、より自分らしい働き方を実現できる企業に転職することが望ましいです。
本記事では、SES企業からの転職を考えるタイミングや成功のコツ、転職理由の構築方法について解説します。SES企業からの脱却やキャリアアップを目指している人は、ぜひ参考にしてください。
目次
1.SESからの転職は難しい?
SES企業から転職するのが難しく、なかなか働き方を変えられないと悩んでいる人もいるのではないでしょうか。以下では、SESからの転職難易度が高くなるケースと、解決方法を紹介します。
スキル不足で希望する転職ができない
スキル不足が原因となって、希望する転職が実現できないケースが考えられます。
SESでの仕事は企業からの要望に合わせて決まるため、必ずしも自分のやりたいことや、学びたいスキルを習得できる環境に身を置けません。毎回異なるジャンルの仕事にアサインされる可能性もあるため、仕事経験がスキルアップにつながらず、転職で不利になることもあり得ます。
特に下流工程の仕事に就くことが多かった場合、市場価値の高いスキルを学ぶ機会が少なくなる可能性があります。そのためSESからの転職を考える際には、なるべく上流工程の仕事を経験できるように行動するのが1つのポイントです。また、独学でスキルアップをしたり、難易度の高い資格を取得したりして、転職市場での価値を高める方法も考えられます。
仕事が忙しくて転職活動ができない
SESエンジニアの仕事が忙しすぎて、プライベートに時間をかけられない場合も、転職が難しくなるでしょう。SESはIT業界のなかでも、比較的残業時間が少ない傾向にあると言われています。
SESエンジニアは成果物の納品で報酬を得る「請負契約」ではなく、労働時間を提供する「準委任契約」のもとで働きます。基本的に労働時間が超過することはない契約になっていることが、残業時間が少なくなる理由になるでしょう。
一方で、SES企業によっては残業を押し付けるなど、ブラックな対応をしているケースもあり得ます。その他、プライベートの時間をスキルアップや勉強に当てている場合も、転職活動に割ける時間が少なくなる可能性があります。転職活動にはある程度まとまった時間が必要になるため、スケジュールを調整して上手く利用することも重要です。
転職のためにどんな準備をすればいいのか分からない
転職に必要な準備が分からない場合も、難しく感じる可能性が高まります。どんな手順で臨めばいいのか、どのような準備が求められるのかが不明なままだと、最初の一歩を踏み出すことすら困難となるでしょう。
また、自己アピールの方法や市場価値の高いスキルの種類など、転職に関する知識が少ない場合も、結果が出せずに苦労する可能性があります。
転職活動を行う際には、具体的にどんな準備をして、どのような流れで行動すべきなのかを把握するのが重要です。例えば自分のキャリアプランを構築して転職先を絞り込んだり、やりたい仕事を明確にして職種を考えたりといったことが、転職を始める準備になります。
また、転職エージェントや転職サイトを活用して、情報収集を進めるのもSESから脱却するための手段になるでしょう。
2.30代でSESからの転職はできない?
「30代でSESからの転職はできない」と、年齢が悩みの種となるケースもあります。以下では、SES企業・ITエンジニアの「30代からの転職事情」について解説します。
年齢に関係なく転職は可能
まず前提として、ITエンジニアは年齢に関係なく転職することが可能です。IT人材の数は不足しているため、仮に30代以降でも、積極的に採用する企業と出会える可能性があります。
一方で30代からの転職時には、年齢を理由に応募できる求人・案件の範囲が狭まるケースもあり得ます。
また、年齢が高いとベテランとして扱われ、要求されるスキルがより高度なものになるケースもあるでしょう。年収が高くなりやすいなどのメリットもありますが、年齢や経験年数に見合ったスキルを保有していないと、転職での失敗が続く可能性も懸念されます。
年齢に合ったスキル・転職方法を理解することが重要
30代からなかなか転職できない場合には、まず自身の年齢に合ったスキル・転職方法を理解することが解決のポイントです。企業ニーズから外れている年齢や、求められているスキルを保有していない場合、採用される可能性は低下します。
時間を無駄にしないためにも、採用枠から外れている可能性のある求人・案件は避けて、自分のスキルや経験を活かせる仕事を探すように意識しましょう。
年齢が気になる場合にも、年齢不問の求人・案件をスムーズに探せるように、転職サイトやエージェントなどを活用するのがおすすめです。そのうえで自分のスキルを見直して、マッチする求人・案件を絞り込んでいくと良いでしょう。
フリーランスとして独立するのも1つの方法
30代からの転職を考えているのなら、フリーランスとして独立するのも1つの方法です。これまでの仕事で得たスキルや経験に自信があるのなら、フリーランスとして働ける可能性もあります。
フリーランスになると、企業勤めをしていたときよりも、自由な時間が増える点は大きなメリットです。フルリモート・在宅の求人・案件を中心に受注すれば、出退勤にかかる時間を削減できます。削った時間をスキルアップなどに活用できれば、より単価の高い仕事を受注できる可能性もあるでしょう。
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3.SESから転職を考えた方が良いケース
そもそも「本当に転職した方がいいのか」「SESのままの方がいいのではないか」と、転職の必要性に悩んでいる人もいるでしょう。以下では、SESから転職を考えた方が良いケースについて解説します。
自分のやりたい仕事ができない
自分のやりたい仕事ができていない場合には、SESからの転職を真剣に考えるのがおすすめです。仕事に不満がある状態ではモチベーションが上がらず、スキルアップなどが困難になる恐れがあります。
結果的に社内からの評価が下がり、昇給できずにまたモチベーションが低下するといった、負のループに陥るケースも懸念されるでしょう。
モチベーションが低下しているとストレスによる負担も問題になりやすいため、メンタルに影響が出る前に転職して職場を変えることが望ましいです。転職後にまた同じ悩みを抱えないように、自分のやりたい仕事を明確にして、確実に実現できる職場を探すのもポイントです。
キャリアプランの実現が難しい
このままSESで働いていても、キャリアプランの実現が難しいと思う場合にも、転職するのがおすすめです。将来的に就きたい職業やポジションがあるのなら、早めに方向性を決めて必要な経験を積んでいく必要があります。
SESでの仕事がキャリアに良い影響を与えないのなら、具体的なキャリアマップを構築して、今自分がどんな職業に就くべきなのか分析することから始めてみましょう。
年収が低いなど待遇面に不満がある
年収などの待遇面に不満がある場合にも、SESからの転職が考えられます。仕事量や難易度に対して、適切な報酬が支払われていないと感じる場合、転職市場で自分の価値を試すのも1つの方法です。
豊富な経験やスキルを保有しているのなら、転職することで年収アップを実現できる可能性があります。現在の企業で昇給を待つよりも早く年収を上げられるケースもあるため、待遇改善を目指す際にも転職が解決策になり得るでしょう。
今の働き方を続けることに不安を覚えている
今の働き方を続けることに不安を覚える場合にも、転職がおすすめです。「エンジニアとしてスキル不足にならないだろうか」「年収が低くて将来の生活に支障が出るのでは」など、エンジニアが抱える不安・悩みはさまざまです。
不安を抱いたままではメンタル面に負担となる可能性も懸念されるため、なるべく早く解消する方法を探すことが望ましいでしょう。
まずは不安の原因を明確にして、具体的な解決策を考案するのがポイントです。解決策が1つとは限らないため、さまざまなパターンを考慮して複数の解決方法を模索すると良いでしょう。
原因が分からない漠然とした不安も、追求していくと原因を探し出せる可能性があります。自分だけで解決が難しい場合には、周囲の人に相談してアドバイスをもらうのも1つの方法です。
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4.SESからの転職を成功させるコツ
SESからの転職を目指すと決めたなら、次に成功させるためのコツを把握するのが重要です。以下では、SESからの転職を成功させるコツについて解説します。
自己分析とスキルの棚卸しをする
SESからの転職時には、自己分析とスキルの棚卸しをしておきましょう。まず自己分析を通して自分の長所や短所を把握し、アピールできるポイントを明確にします。他のエンジニアに負けない自分だけの魅力を発信する準備をすることで、転職時に企業からの評価を得やすくなるでしょう。
自己アピールを上手に行うためには、保有しているスキルの棚卸しをして、具体的な言葉に言い換える必要もあります。「自分は周囲を巻き込んで引っ張っていくのが得意だ」と思えるエピソードがあるのなら、「コミュニケーションスキルがある」と言い換えることができます。エピソードはスキルを証明する際に役立つため、スムーズに伝えられるように詳細をまとめておくのがおすすめです。
転職の目的を明確にする
転職の目的を明確にして、ゴールを設定するのも1つのコツです。転職におけるゴールは人によって異なり、場合によっては1社から内定をもらうだけでは終わらない可能性もあります。目的が曖昧だと転職後にSES時代と同じ悩みにぶつかり、再び転職を考えなければならなくなるケースも起こり得るでしょう。
自分がどんな職業に就きたいのか、どんな条件で働きたいのかといった目的は、最初に明確にするのが転職の基本です。目的が決まるとゴールも設定できるので、具体的な行動に移りやすくなるでしょう。
転職活動のスケジュールを大まかに決めておく
転職活動を始める際には、大まかなスケジュールを決めておくのもポイントです。転職活動にかける時間は自分次第となるため、納得のいく求人・案件を見つけられずに長引いてしまう可能性もあります。転職期間が長引くと心身に負担がかかったり、仕事が疎かになったりするデメリットが懸念されます。
ある程度スケジュールの目安を設定し、転職活動が長くなりすぎないように注意しましょう。
転職サイトやエージェントを有効活用する
転職サイトやエージェントを有効活用するのも、転職の成功につながるコツです。転職に関する有益な情報を得るには、専門のサービスを活用するのが基本となります。転職サイトやエージェントに登録することで、転職活動に欠かせない情報収集ができるだけでなく、さまざまな支援を受けられる点がメリットです。
例えば非公開の求人・案件を紹介してもらったり、キャリアアドバイザーによる面接指導を受けたりといったことが、メリットになり得るでしょう。
フリーランスエンジニアを目指している方はフリーランス向けのエージェントサービスの利用をおすすめします。案件提案や参画中の相談ごと、税務関連のサポートなど多面的なサポートを受けることができます。
より詳しいフリーランスエージェントの詳細はこちらからご覧いただけます。
転職時の注意点を把握しておく
転職活動における基本的な注意点を把握しておくのも、成功を近づけるポイントです。
例えば退職の流れや転職活動時のメンタルケアの方法などは、事前に確認しておかないとトラブルの原因になる可能性があります。転職活動が妨害されるリスクもあるため、事前に注意点になり得る部分はきちんとチェックしておきましょう。
その他にも以下の要素は、転職時に注意すべきものとなります。
転職理由や希望職種が曖昧なままになっている
転職の流れを把握していない
自己分析が正しくできていない
企業分析ができていない
転職活動中に休みの時間を設定していない など
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5.SESからの転職理由はどうすれば良い?
転職活動の際には、「転職理由」を明確にしておくのもポイントです。SESからの転職時にも同様となるため、以下で転職理由を考える方法を確認しておきましょう。
転職理由はポジティブになるように言葉を選ぶ
SESからの転職理由を考える際には、ポジティブな言葉に内容を変換していくのがコツです。「仕事が嫌だったから」「年収が低かったから」といった言葉だけでは、転職先の企業に良い印象を与えるのが難しくなります。転職理由がネガティブなものにならないように、希望を持って転職しているように見せるのがポイントです。
具体的には、以下のような言い換え方法が考えられます。
「仕事が嫌だったから」→「自分の経験・スキルを活かせる職場で働きたいと思い、転職を始めました」
「年収が低かったから」→「自身の努力や実績が評価される企業で働きたかったため、転職を始めました」
「休みが少なかったから」→「ワークライフバランスを整えて、スキルアップなどに励みたいと考えて、転職を始めました」など
SESへの不満を転職理由にしない
転職理由が「SESという働き方に対する不満」だとしても、そのまま理由にはしないように注意しましょう。退職する予定の企業に対してネガティブな発言があると、採用担当者の心象が悪くなる恐れがあります。仮にSESに対する不満が転職の根本的な理由であっても、文句を言うような形にならないように調整が必要です。
面接の機会を不満の吐口にしないように、言葉選びに気を遣うのが重要となります。
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6.まとめ
SES企業から転職をする際には、まず自分自身と向き合って現状を正しく把握し、必要な準備を進めるのがポイントです。SES企業からの転職は特別難しいわけではありませんが、準備不足や転職市場との認識にズレがあると、なかなか納得のいく結果を出せない可能性も懸念されます。スムーズに転職活動を進行させるためにも、本記事でSESの転職事情や成功のコツをチェックしてみてください。
エンジニアとして転職を考える際には、フリーランスとして独立するのも1つの選択肢になります。「フリーランスボード」では、フリーランスエンジニア向けの案件・求人を多数取り扱っています。自分のスキルや働きたい職種ごとに求人・案件を簡単検索できるため、フリーランスエンジニアとしてのスタート時にも大いに役立ちます。
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