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節税で法人化する?メリット・デメリットや後悔しないポイント、あえて法人化しない理由など解説

公開日:2025/04/11最終更新日:2025/04/11

すでに個人事業として運営している事業を法人化すると、「給与所得控除の適用を受けられる」「計上できる経費の範囲が広がる」などの利点があり結果として税負担を軽減できる場合があります。


しかし法人化した場合、赤字であっても法人住民税(均等割)の支払い義務が発生して社会保険料の負担も避けられません。そのため法人化を検討する際には、事業の規模や収益状況などを総合的に考慮し慎重に判断することが重要です。


この記事では法人化によるメリット・デメリットについて説明し、特に節税メリットについて詳しく解説します。

目次

1.法人化による節税メリットとは?

この章では法人化による節税メリットについて詳しく解説します。

給与所得控除を活用できる

会社員は給与を受け取る際「給与所得控除」が適用され、一定額が控除された後の金額に対して所得税が課されます。


一方個人事業主の場合、売上から必要経費を差し引いた利益に直接所得税がかかるため会社員のような給与所得控除の優遇を受けることはできません。


しかし法人化して自ら社長となり役員報酬を受け取る形にすることで、給与所得控除を適用することが可能になり結果として税負担を軽減できる場合があります。

家族へ所得を分散し、税負担を軽減

法人成りのもう一つの利点として、家族を役員にして給与を支払うことで得られる「所得分散」の効果があります。


所得税は所得が増えるほど税率が高くなる仕組みのため、社長一人で全額を受け取るよりも家族に給与を分けることで税率を抑えつつ給与所得控除のメリットを享受できます。


妻や子どもを役員に加えて役員報酬を支給すれば所得分散の効果はさらに大きくなり、家族全体の収入は変わらないままトータルの税負担を抑えることが可能になります。

退職所得の優遇税制が適用される

個人事業主の場合、青色専従者を含めて退職金を支払うことは認められていません。個人事業主が退職金を受け取るためには小規模企業共済制度やiDeCo(個人型確定拠出年金)を利用し、共済金や老齢給付金として受け取る必要があります。


しかし法人を設立すると、役員や従業員に対して退職金を支払うことが可能になります。退職金を支払うことで会社の所得が減少し、その分法人税の節税効果が得られます。


また退職金は退職所得として扱われ、退職所得控除が適用されるため退職金にかかる税金も軽減できます。ただし小規模企業共済制度やiDeCoにも税制優遇があるため、必ずしも会社設立が有利とは限りません。

配偶者控除・扶養控除の適用が可能

個人事業主の場合には所得に関わらず、配偶者控除・配偶者特別控除・扶養控除の対象にはなりません。つまり個人事業では家族に給料を支払うか、控除を受けるかを選ばなければならない状況になります。


しかし法人を設立すれば、家族に支払った給料は基本的に経費として計上できる上に配偶者控除や配偶者特別控除も併せて受けることが可能です。

赤字の繰り越しが長期間可能に

事業を営んでいて年間の利益が赤字になった場合、個人事業主で青色申告をしていればその赤字を最長3年間繰り越すことができます。


翌年以降に利益が出た際には繰り越した赤字と相殺することで税負担を軽減できるため、収益の変動が大きい事業や赤字が続く事業にとっては大きなメリットとなります。


一方で法人の場合、この赤字の繰越控除期間が「10年間」に延長されます。個人事業主であれば3年が経過すると過去の赤字を相殺できなくなってしまいますが、法人であれば10年間も繰り越せるため将来的に黒字化した際に過去の赤字を活用し税負担を大幅に抑えることが可能です。


長期的な視点で黒字化を目指す事業や一時的な赤字が続く可能性があるが将来的には利益を見込める事業を行っている場合、法人化を選択することで長期的な節税メリットを享受できるでしょう。

減価償却による税負担の軽減

建物・機械・車両・器具備品などの固定資産は、業務で収益を得るために長期間使用されるため「減価償却資産」と呼ばれます。


これらの資産は時間が経過することで価値が減少するため、その減少分を少しずつ経費として計上します。減価償却費の計算方法には主に定率法と定額法があります。


建物については個人事業主も法人も定額法を使用しますが、その他の減価償却資産に関しては個人事業主は原則として定額法、法人は原則として定率法を採用します。


異なる方法を選びたい場合には届け出が必要で、選択後は基本的に3年間は変更できません。どちらの方法を選んでも償却可能な総額に違いはありませんが定率法では初期に大きな額を償却できるため、節税効果が高くなります。

車両費を経費として計上可能

個人事業主の場合、業務用車両については家庭用と事業用の使用割合に応じて経費として計上できます。しかし法人の場合は、個人の利用を前提とせず全額を経費として計上することが可能です。


もちろん車は長期間使用する資産なので減価償却を行い、毎年一定額を費用として処理する必要があります。中古車を購入すると耐用年数が短くなるためその分、当期の税金を大きく削減することが可能です。

出張手当を非課税で支給できる

個人事業主が出張をした場合、出張手当を経費として計上することはできません。


ただし従業員が同行している場合は、出張手当を経費にすることが可能です。しかし個人事業主本人に関しては、交通費・宿泊費・研修費・接待交際費など出張に必要な実費のみが経費として認められます。


一方、法人化することで、自分自身への出張手当も経費として計上することができます。もし出張が頻繁にある場合、この制度を活用することで大きな節税効果が得られるでしょう。

消費税の免税期間が最長2年間適用

個人事業主として課税売上が1,000万円を超えるなどの条件を満たすと、消費税の納税義務が発生します。


消費税の仕組みを簡単に説明すると、たとえば550万円(うち消費50万円)で仕入れた商品を1,100万円(うち消費税100万円)で販売した場合、売上と仕入れの差額である50万円の消費税を一時的に預かっている状態になります。


この預かった消費税は年に一度申告し、税務署へ納付しなければなりません。


ただし課税売上などが1,000万円未満の個人事業主や法人は、消費税の納税が免除される制度があります。ここで、法人化による節税メリットが出てきます。


法人の場合にも「2期前の課税売上などが1,000万円を超えていると消費税の納税義務が生じる」というルールがあり、設立1期目と2期目は「2期前の売上」がない状態となり基本的に消費税が免除されるのです。


したがってすでに課税売上が1,000万円を超えている個人事業主が法人化すると、最初の2年間は消費税を納める必要がなくなり、大きな節税メリットが得られます。


例えば、課税売上が1,500万円、仕入れや経費が750万円の場合、(1,500万円-750万円)×10%=75万円の消費税を納める必要がありますが、法人化すればこれが基本的に2年間免除されるため節税効果は非常に大きいといえます。

生命保険を経費にできる

個人事業主が生命保険に加入している場合、生命保険控除を受けることができますがこの控除による節税効果は限られています。


そこで、より効果的な方法として法人で生命保険に加入することをおすすめします。法人が契約する生命保険では保険の種類に応じて、保険料の一部または全額を経費として計上できます。


さらに生命保険の解約返戻金を役員の退職金として活用する法人も多く、これによって経営者の不幸があった場合にも死亡退職金を活用して事業継承に必要な資金を確保することが可能です。


このように法人として生命保険を活用することには、経費処理や事業継承の面でも大きなメリットがあります。

持ち家を家賃として経費

会社を設立して一人社長として運営している場合、持ち家を役員社宅として利用することができます。


役員社宅とは会社が名義を持っている住宅を役員に貸し出す制度であり、持ち家を役員社宅として活用することで会社が家賃を支払い、その家賃を地代家賃として経費計上することができて法人の所得を減らすことができます。


また住宅の一部を事業用として使用している場合、使用している部屋の面積に基づいて経費に計上できる家賃を算出する必要があります。トイレやキッチンなどの共有スペースも事業のために使用していれば、その一部を家賃に含めて経費計上することができます。


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2.個人事業主が法人化する節税以外のメリット

この章では法人化による節税以外のメリットについて解説します。

信用力が向上する

法人は個人に比べて社会的な信用が高いため、取引先の中には法人のみと取引を行っている企業もあります。また、金融機関から融資を受ける際にも法人の方が有利な条件を得やすいです。

無限責任が有限責任になる

個人事業主の場合、万が一事業が失敗した場合、その経済的責任(仕入先への未払金や借入金など)はすべて個人で負わなければなりません(=無限責任)。一方、法人化していれば、個人が保証している借入金を除き、責任は出資の範囲内に限定されるため、基本的に全てまたは一部の責任を有限責任にすることができます(合名会社を除く)。

決算月を自由に設定できる

個人事業主の場合には事業年度は1月1日から12月31日までと決まっており、原則として3月15日までに確定申告を行う必要があります。


しかし法人の場合は定款で事業年度を自由に設定できるため、自分の都合に合わせた期間を選ぶことができます。また定款の変更によって、途中で事業年度を変更することも可能です。

3.法人化のデメリット:あえて法人化しない理由

この章では法人化によるデメリットについて解説します。

会社設立に初期費用が必要

個人事業主が法人化して株式会社を設立する際には、さまざまな費用が発生します。


設立時に必要な登録免許税は資本金の0.7%(最低15万円)かかり、さらに専門家に手続きを依頼する場合は、追加で費用がかかります。


なお株式会社は資本金を1円から設定できるため、事業の進行に支障がない範囲で自由に設定できます。一方資本金を過剰に多く設定すると税制上不利になる場合があるため、適切な額を決定することが重要です。

個人で自由に使えるお金が制限される

法人化すると、個人のプライベートに使えるお金には制約が生じます。法人の資金は法人のものであり、社長個人の私的な支出を法人の経費として計上することはできません。


プライベートな支出を行う場合はまず役員報酬として社長個人に給与を支払い、その後に使用する形となります。


そのため法人税法上では、社長に支払われる役員報酬には以下のような制限があります。

  • 一度決定した役員報酬の金額は、基本的に1年間は変更できません。

  • 会社設立から3ヶ月以内に当期の役員報酬額を決めないと、その報酬は経費として計上できません。

役員賞与を支払う場合、会社設立から2ヶ月以内に税務署に届け出る必要があります。

社会保険への加入が義務付けられる

個人事業主の場合には従業員が5名未満であれば社会保険への加入は任意ですが、法人化すると従業員の人数や雇用の有無に関わらず、社会保険への加入が義務となります。


法人の場合には従業員の健康保険料と厚生年金保険料は会社と従業員で半分ずつ負担するため個人事業主に比べて保険料の支払いが増え、コストがかかります。


さらに法人化すると社会保険の加入に加えて、従業員を増やすことで経費管理などが複雑になり手間がかかることが多くなります。

赤字でも一定の税負担が発生

個人事業主が決算で赤字の場合、所得税や住民税は0円になります。しかし法人の場合、赤字であっても法人住民税の均等割を支払わなければなりません。


法人住民税は地方自治体に支払う税金で、法人税割と均等割の2種類があります。法人税割は法人税額に基づいて計算されるため、赤字の場合は税額が0円になります。一方均等割は資本金や従業員数に応じて定められており、赤字であっても納付する義務があります。


そのため、赤字でも税金を支払わなければならない点は法人化のデメリットと言えるでしょう。

経理や事務作業の負担が増える

法人化すると、個人事業主の場合と比べて経理や事務作業が複雑化します。たとえ1人会社であっても、対応しなければならない業務が増えます。経理担当を雇ったり、税理士に依頼することを考慮するのが良いでしょう。


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4.法人化による節税効果は利益の大きさがカギ

法人化には節税メリットがある場合もありますが、すべてのケースで法人化が有効とは限りません。事業の利益がどの程度かという点に注目して、法人化の判断を行う必要があります。


その理由は、所得税と法人税の税率が異なるためです。所得税は事業の利益が大きくなるほど税率が高くなる超過累進税率が適用されますが、法人税は法人の所得金額に関わらず基本的に一定の比例税率が適用されます。


所得税の税率は、総合課税の対象となる所得金額に応じて最低5%から最高45%となっています。一方法人税は中小法人の場合、所得が800万円までは15%でそれを超えると約23%の税率が適用されます。


そのため事業の利益が少ない場合は個人事業主のまま所得税を支払う方が税負担が軽く利益が増えると、法人化した方が税負担が軽くなる仕組みです。税負担のみを考慮するなら利益が少ない間は法人化せず、利益が増えてから法人化するのが有利と言えるでしょう。

5.個人事業主が法人化を選択すべき状況

法人化のタイミングに迷う個人事業主は少なくありません。しかし「手続きが煩雑」「事業内容が変わらないから」といった理由で法人化を先延ばしにすると、節税の機会を逃したり事務負担が増えたりして後悔する可能性があります。


法人化を検討すべきケースとして、以下のような状況が挙げられます。

  • 所得が800万円を超えている

  • 年間の課税売上高が1,000万円を超えている

  • 事業承継を円滑に進めたい

  • 経営者自身が社会保険に加入したい

これらのポイントについて、詳しく解説していきます。

所得が800万円を超えている場合

所得税は「累進課税」、法人税は「比例課税方式(一定の税率で課税)」が採用されています。


累進課税は所得が多い納税者に対してより高い税率を適用する仕組みで、所得税の最高税率は45%に対し法人税の最高税率は23.2%となっています。


法人税は所得が800万円を超えると税率が一定になり、それにより所得税よりも税負担が軽くなる場合があります。つまり所得が高くなるほど、所得税より法人税の方が税金が安くなるということです。


事業の税金を抑えたい場合は所得が800万円を超えるかどうかを基準にすると、税負担の違いが明確になります。

年間の売上が1,000万円を超えている場合

先述した通り個人事業主は法人化することによって、基本的に2年間の消費税免除を受けられます。「事業に回す資金が増える」や「資金繰りに余裕ができる」など、多くの利点を享受できるでしょう。


例えば毎年100万円の消費税を納付している場合、法人化によって2年間分の消費税200万円が免除される可能性があります。


ただし消費税の課税事業者を選択した方が有利なケースもあり、適格請求書発行事業者の場合は消費税免除が適用されないこともありますので注意が必要です。

事業承継を円滑に進めたい場合

法人は、個人事業主に比べて事業承継を円滑に進めやすいというメリットがあります。事業承継がスムーズに行える理由は以下の通りです。

  • 経営者が亡くなった後でも口座が凍結される心配がない

  • 経営者交代後も許認可や契約がそのまま引き継がれる

  • 経営者交代時の事業用資産の引き継ぎが容易

個人事業主の場合には契約・口座・許認可などが個人名義で結ばれているため、代表者が変わると再度手続きを行う必要があります。特に代表者が亡くなると口座が凍結される可能性があり、事業に支障をきたすこともあります。


一方で法人の場合には契約や許認可は法人名義で行っているため、代表者が交代しても手続きは不要で口座の凍結を心配する必要もありません。


また法人化することで事業資産は法人の所有となり、引き継ぐ資産が限られるため事務的な負担も軽減されます。


事業承継をスムーズに進めたい場合は、法人化を検討するのがおすすめです。

経営者自身が社会保険に加入したい場合

「国民健康保険」と「社会保険」には医療給付の内容や保険料の額など、さまざまな違いがあります。個人事業主が国民健康保険に加入している場合、社会保険に加入することによって以下のようなメリットが得られるケースがあります。

  • 将来受け取る年金額が増える

  • 支払う保険料が減る

  • 医療給付がより充実する

  • 一定の条件を満たす家族を社会保険の扶養に入れる

法人化することで、経営者自身も社会保険に加入することができます。個人事業主の場合には社会保険に加入できるケースは限られているため、社会保険に切り替えたい場合は法人化が一つの選択肢となります。

6.法人化で後悔しないための重要ポイント

法人化は事業を次の段階へ進めるための重要な一歩ですが、メリットばかりに焦点を当てて、準備が不十分なまま法人化してしまうと予期しない問題に直面することがあります。


そこでこの章では法人化を成功させるためのポイントについて解説します。

法人化の目的を明確にする

法人化を考える際には、まず「なぜ法人化をしたいのか?」という目的をはっきりさせることが重要です。目的が不明確なまま法人化してしまうと、後々「思っていたのと違った」と後悔する可能性があります。


法人化には社会的信用の向上・資金調達のしやすさ・税金面でのメリットなど、多くの利点があります。しかしこれらのメリットは一般的なものであり、すべての事業主に適用できるわけではありません。


自分の事業にとって、法人化が本当に必要な一歩かどうかをしっかり判断することが大切です。例えば事業規模が小さく、取引先が限られている場合には法人化のメリットがそれほど大きくないことも考えられます。


法人化を考える際には現在の事業の状況と将来のビジョンをよく見比べて、本当に法人化が必要かどうかどんなメリットが得られるかを慎重に判断しましょう。

増えるコストを事前に把握する

法人化に伴うコストとして、設立費用・社会保険料・税理士への報酬などが増えることが挙げられます。特に社会保険料は個人事業主の時は任意加入であったものが、法人化すると強制加入となるため負担が大きくなることがあります。


これらのコスト増加を見越して、事業計画をしっかりと立てることが重要です。例えば法人化による売上の増加とその分のコスト増を比較してシミュレーションを行い、どのように対処するかを考える必要があります。また資金調達が必要となる場合もありますので、その計画も立てておくことが求められます。


法人化後に資金繰りが厳しくなり、事業の運営が難しくなるケースは少なくありません。事前にしっかりと資金計画を策定することで、このようなリスクを回避することが可能です。

法人化後に節税できる税金についてなどシミュレーションを行う

法人化を検討する際は、事前にシミュレーションを行うことを強くおすすめします。シミュレーションを実施することで、法人化の利点や課題を具体的に理解することができます。


シミュレーションでは現在の収入・支出・予想される売上などを基に、法人化後にかかる税金や社会保険料などを計算します。これにより法人化による節税効果がどれくらい期待できるか、または逆にどれほどのコスト増が見込まれるかを明確に把握できます。


さらにシミュレーションを通じて、法人化後の資金繰りがどうなるかを予測することもできます。もし法人化が原因で資金繰りが厳しくなる可能性がある場合は、事前に対策を立てておくことが重要です。


シミュレーションは無料のオンラインツールでも行えますが、その結果があなたの具体的な状況や目的に合っているとは限りません。したがってシミュレーションを行う際は、専門家に相談してみるとよいかもしれません。

7.法人化のプロセスと必要な手続き

法人化はゼロから法人を設立する起業とは異なり、個人事業主として行っていた事業を法人に引き継ぐプロセスです。


以下に、法人化を進めるための手順を紹介します。

  1. 法人設立手続き

  2. 個人事業の廃業手続き

  3. 資産や負債の引き継ぎ

  4. 許認可手続きおよび各種契約の名義変更

会社設立の手続き

法人化の際には、まず法人設立に関連する手続きを進める必要があります。


具体的には定款の作成および認証・資本金の払い込み・設立登記申請などが求められます。株式会社や合同会社など設立する法人の種類によって手続きの詳細は異なるため、事前に設立する法人の手続き内容を確認しておくことが重要です。

個人事業主の廃業手続き

法人を設立した後は個人事業を廃業するために、税務署に「廃業届(個人事業の開業・廃業等届出書)」を提出します。青色申告をしていた場合は「所得税の青色申告の取りやめ届出書」を、従業員を雇っていた場合は「給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出書」も提出しなければなりません。


個人事業を廃業してもその年の確定申告は必要です。廃業後の翌年に確定申告を行うことを忘れないようにしましょう。また法人化の初年度には個人事業主としての事業所得に加えて、法人化後の役員報酬に基づく給与所得の申告が必要となりますので2種類の申告を行うことになります。

資産や負債の移行

設立した法人に対して、事業に関連する資産や負債を引き継ぐことになります。資産の移行方法には、「売買契約」「現物出資」「賃貸契約」の3種類があり、それぞれ手続きの方法や税法上の取り扱いが異なります。


また法人に債務を移転する方法には、法人が個人事業主と一緒に債務を引き受ける「重畳的債務引受」と、法人が単独で債務を引き受ける「免責的債務引受」の2つの方法があります。

許可・認可手続きおよび契約名義の変更

許認可が必要な事業を行っている場合や、オフィスや店舗の賃貸契約を結んでいる場合などには個人名義から法人名義への変更手続きが必要です。


また取引に使用する銀行口座についても、個人名義のものとは別に法人名義の口座を新たに開設することが求められます。


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8.まとめ

事業の利益が増加し法人化を選択すると、所得税よりも法人税の負担が軽減される可能性があります。


また役員報酬として支払うことで給与所得控除を活用できるほか、家族従業員に支給する退職金を損金として計上できるといった税務上の利点も考えられます。さらに、消費税についても課税事業者となる時期を遅らせることが可能になる点も法人化のメリットの一つです。


こうした点を踏まえ、事業の利益が増えてきた段階で法人化を検討するのも一つの選択肢となるでしょう。


本記事が皆様にとって少しでもお役に立てますと幸いです。


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目次

1.法人化による節税メリットとは?

給与所得控除を活用できる

家族へ所得を分散し、税負担を軽減

退職所得の優遇税制が適用される

配偶者控除・扶養控除の適用が可能

赤字の繰り越しが長期間可能に

減価償却による税負担の軽減

車両費を経費として計上可能

出張手当を非課税で支給できる

消費税の免税期間が最長2年間適用

生命保険を経費にできる

持ち家を家賃として経費

2.個人事業主が法人化する節税以外のメリット

信用力が向上する

無限責任が有限責任になる

決算月を自由に設定できる

3.法人化のデメリット:あえて法人化しない理由

会社設立に初期費用が必要

個人で自由に使えるお金が制限される

社会保険への加入が義務付けられる

赤字でも一定の税負担が発生

経理や事務作業の負担が増える

4.法人化による節税効果は利益の大きさがカギ

5.個人事業主が法人化を選択すべき状況

所得が800万円を超えている場合

年間の売上が1,000万円を超えている場合

事業承継を円滑に進めたい場合

経営者自身が社会保険に加入したい場合

6.法人化で後悔しないための重要ポイント

法人化の目的を明確にする

増えるコストを事前に把握する

法人化後に節税できる税金についてなどシミュレーションを行う

7.法人化のプロセスと必要な手続き

会社設立の手続き

個人事業主の廃業手続き

資産や負債の移行

許可・認可手続きおよび契約名義の変更

8.まとめ