ゼロトラストは、テレワークやクラウド利用の普及に伴い、多くの企業や組織で注目されているセキュリティモデルです。
従来の境界型セキュリティでは対応しきれないリスクが増加しているなかで、ゼロトラストの考え方を取り入れなければ、情報漏えいやサイバー攻撃のリスクが高まるおそれがあります。安全なIT環境を維持するためには、ゼロトラストへの理解と対策が欠かせません。
この記事では、ゼロトラストの基本概念から導入のメリット・デメリット、必要なソリューションや導入時のポイントまでを詳しく解説しています。ゼロトラスト導入を検討している方にとって、有益な情報をわかりやすくまとめました。
ぜひ最後までお読みいただき、ゼロトラストの理解を深めてください。
目次
1.ゼロトラストとは
ゼロトラストとは、社内外を問わず「すべてのアクセスを信用せず検証する」という考え方に基づいたセキュリティモデルです。
万が一内部に不正アクセスが発生しても被害を最小限に抑えられるように、従来の「社内ネットワークは安全」という前提を捨て、ユーザーやデバイスごとにアクセス権限を細かく管理します。
中小企業のIT担当者や情シス担当者にとっても、限られたリソースで強固なセキュリティを実現できる手段として注目されています。
2.ゼロトラストが必要な3つの理由
ゼロトラストが求められる背景には、IT環境の急速な変化があります。ここでは、ゼロトラストが必要とされる具体的な理由を3つに分けて解説します。
テレワークの普及
クラウドサービスの普及
サイバー攻撃の増加
テレワークの普及
テレワークの普及によって、従業員が社外から業務システムへアクセスするケースが増えました。場合によっては、社外環境からインターネットに直接接続することもあり、従来の境界型防御では、セキュリティの意味をなさなくなってきています。
また、自宅のネットワークであっても、脆弱なWi-Fi設定や私物端末のリスクを完全に排除することはできません。このような環境では、ゼロトラストに基づき、ユーザー認証やデバイスの状態確認を行うことが不可欠です。
クラウドサービスの普及
クラウドサービスの普及もゼロトラストが必要とされる理由の一つです。
データが社外のサーバーに保存されるため、社内ネットワーク内に限定した防御では不十分になります。特に、複数のクラウドサービスを組み合わせて利用している場合、それぞれに適切なアクセス制御を行わなければ情報漏えいのリスクが高まります。
ゼロトラストの考え方では、サービスごとに厳格な認証とアクセス制御を設定し、必要最小限の権限で運用することが推奨されます。
サイバー攻撃の増加
サイバー攻撃は年々増加しており、その手口も高度化していることもゼロトラストが必要と言える理由の1つです。
マルウェア感染、ランサムウェア攻撃、内部不正など、企業規模を問わず狙われるリスクがあるのが現状です。特に中小企業は、大企業ほどの防御体制を整えにくいため、攻撃者の標的になりやすい傾向があります。
ゼロトラストは、仮に攻撃を受けた場合でも被害範囲を局所化する仕組みを持っています。情シス担当者やIT担当者は、サイバー攻撃を前提とした防御策として、ゼロトラストの導入を積極的に検討する必要があるでしょう。
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3.ゼロトラストを導入する4つのメリット
ゼロトラストを導入することで、従来の境界型セキュリティでは対応しきれなかったさまざまなリスクに柔軟に対応できるようになります。ここでは、ゼロトラスト導入の具体的なメリットを4つに分けて解説していきます。
多様な働き方が可能
情報漏えいリスクを軽減できる
セキュリティ管理が効率化
新しい技術を取り入れやすい
多様な働き方が可能
ゼロトラスト環境では、オフィス勤務に限定されない働き方を実現できます。
自宅やカフェ、さらには海外からでも、安全に業務システムへアクセスできる設計が可能です。ユーザー認証やデバイスの管理を徹底することで、アクセスする場所に依存せず業務を行えるため、社員のワークライフバランス向上にも寄与します。
中小企業にとっても、柔軟な働き方を推進できることは、採用力や社員満足度の向上に直結します。
情報漏えいリスクを軽減できる
ゼロトラストは「常に検証する」という考え方に基づき、アクセス権限を細かく設定します。そのため、仮に悪意ある攻撃者や内部不正が発生しても、影響範囲を最小限に抑えることが可能です。
たとえば、ある社員が特定のクラウドサービスにしかアクセスできない設定になっていれば、重要なサーバーへの侵入は防げます。
情報漏えい事故は企業の信用を大きく損なうため、リスクを未然に抑えることは経営上の大きなメリットとなります。特に中小企業や情シス担当者にとって、限られたリソースの中でセキュリティ強化を図る手段として有効です。
セキュリティ管理が効率化
ゼロトラストを導入するとアクセス制御や監視が体系的に行えるため、セキュリティ管理の効率化が可能です。
従来のように「社内は安全、社外は危険」と分ける考え方ではなく、すべての通信に対して一律にルールを適用できるため、運用の手間が減ります。
例えば、ポリシー変更も中央管理で一括適用できる仕組みを整えれば、個別対応の負担が大幅に軽減されます。情シス担当者にとっては、日常業務の工数を抑えながら高いセキュリティレベルを維持できる点が大きな魅力です。セキュリティ体制の整備に悩む企業にとっても、非常に有効な選択肢と言えるでしょう。
新しい技術を取り入れやすい
ゼロトラストを導入すると、最新のITサービスやクラウドソリューションとの親和性が高まります。ゼロトラストモデルは「認証と認可」を前提としているため、SaaSやPaaSといった外部サービスを組み合わせても、安全な運用が可能です。
新たなシステム導入時に、従来型ネットワークのような煩雑な設定変更が不要になるケースも多く、スピーディーなIT活用が実現できます。
中小企業でも、大企業並みの機動力を持ったIT運用ができるようになり、ビジネスの成長スピードに合わせた柔軟な対応が可能になります。これからの企業経営において、ゼロトラストは大きな武器となるでしょう。
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4.ゼロトラストを導入する3つのデメリット
ゼロトラストは多くのメリットがある一方で、導入・運用において注意すべきデメリットも存在します。ここでは、代表的なデメリットを3つ解説し、対策のヒントについても触れていきます。
ランニング費用がかかる
利便性が悪くなる場合もある
問い合わせが増える
ランニング費用がかかる
ゼロトラストを本格的に運用するためには、継続的なコストが発生します。
たとえば、認証基盤の構築や多要素認証の導入、アクセスログ管理ツールの利用には、それぞれライセンス料や運用費用がかかります。
また、導入初期だけでなく、運用中もポリシーの見直しやシステム更新が必要になり、人的リソースの確保も欠かせません。
中小企業にとっては、こうしたランニングコストが経営負担となる可能性もあります。コスト対効果を見極めながら、スモールスタートで導入範囲を広げていく工夫が求められます。
利便性が悪くなる場合もある
ゼロトラストでは、すべてのアクセスを検証するため、ユーザーに追加の認証やアクセス制限を求めるケースが増えます。その結果、ログイン回数が増えたり、通常よりも作業に時間がかかったりする場面が発生することがあります。
特に、現場の業務スピードを重視する企業文化では、「使いにくくなった」という声が上がりやすくなってしまいます。
情シス担当者やフリーランスエンジニアは、ユーザー負担を最小限にするため、シングルサインオンやリスクベース認証の導入を併せて検討するなど、バランスの取れた設計を意識するのがおすすめです。
問い合わせが増える
ゼロトラスト環境では、従来と異なる操作や新しい認証手順が求められるため、社内からの問い合わせが一時的に増加する傾向があります。
たとえば、「急にログインできなくなった」「アクセス制限で業務が止まった」など、トラブル対応が発生する場面も珍しくありません。特に情シス担当者は、導入初期にサポート業務が増えることを前提に準備しておく必要があります。
事前に操作マニュアルやFAQを整備したり、社員向けに説明会を実施したりすることで、問い合わせ件数を減らす工夫が重要となります。丁寧な初期対応が、運用定着への近道となるでしょう。
5.ゼロトラストを実現する7つの要件
ゼロトラストは単に「アクセスを厳しく管理する」だけの考え方ではありません。安全なシステム運用を実現するためには、複数の要素を総合的に管理し、互いに連携させる必要があります。
ここでは、ゼロトラストを実現するために押さえておくべき7つの要件について、それぞれの意味と役割を整理して解説します。
デバイス
ネットワーク
データ
アイデンティティ
ワークロード
可視化と分析
自動化
デバイス
ゼロトラストにおいては、アクセス元のデバイス管理が不可欠です。
会社支給のPCだけでなく、私物のスマートフォンやタブレットも対象となる場合があります。それぞれのデバイスが最新のセキュリティパッチを適用しているか、不正なソフトウェアがインストールされていないかを常にチェックすることが求められます。
中小企業でも、モバイルデバイス管理ツールの導入を検討し、業務に使用する端末の安全性を一元管理することが推奨されます。
ネットワーク
ネットワークもゼロトラストにおける重要な要素です。
社内LANであっても信頼せず、すべての通信を暗号化し、検査・監視対象とする考え方が基本となります。たとえば、オフィスWi-Fiであっても適切な認証を行い、ネットワークを分離させることでアクセス権限を細かく制御することが必要です。
ネットワーク担当者はVPNだけで安心するのではなく、ゼロトラスト視点でのネットワーク設計を意識することが求められます。
データ
データの取り扱いもゼロトラストの中心的なテーマの1つです。
データがどこに保存され、誰がアクセスできるのかを常に把握し、適切な暗号化やアクセス権限設定を行う必要があります。特にクラウドサービスを利用している場合、共有リンクや外部共有設定がリスクになりやすいため、細かな制御が欠かせません。
情シス担当者は、データ分類ポリシーを策定し、機密データと一般データを明確に区別して管理する体制を整えることが大切です。
アイデンティティ
アイデンティティ管理とは、ユーザー本人確認を厳格に行う仕組みを指します。IDとパスワードだけに頼らず、多要素認証や生体認証などを組み合わせることが推奨されます。
また、ユーザーごとに最低限必要なアクセス権限だけを与える「最小権限の原則」を徹底することも重要です。
ゼロトラストでは、「誰が」「いつ」「どのリソースに」アクセスしたのかを明確に把握し、不審な挙動があれば即座に対応できる体制を作ることが求められます。
ワークロード
ワークロードとは、アプリケーションやシステム上で稼働しているプログラムや処理を指します。ゼロトラストでは、アプリケーション同士の通信や動作についても信頼せず、検証を行うことが前提です。
たとえば、Webサーバーとデータベース間の通信を許可する場合でも、通信先や通信内容を細かく制御する仕組みを整えます。クラウドネイティブな環境では、コンテナ単位でアクセス管理を設計する考え方も浸透しつつあります。
可視化と分析
ゼロトラストを実現するには、システム内で何が起こっているかを常に可視化し、分析する仕組みが欠かせません。
ログ収集とリアルタイムモニタリングを通じて、異常な挙動を早期に検知する体制を整えることが重要です。特に、中小企業においては、人手をかけずに異常検知できるツールを活用し、運用負担を軽減する工夫が効果的です。
可視化を強化することで、セキュリティレベルの向上と運用効率の両立を図れるようになります。
自動化
自動化もゼロトラストの実現に欠かせない要素です。
たとえば、不審なログイン試行を検知したら自動でアカウントをロックする、未承認デバイスからのアクセスは即時ブロックする、といった対応を人手を介さず行う仕組みを整えます。
手動対応では時間がかかるうえ、対応ミスのリスクも高まるため、自動化はセキュリティ強化と運用負担軽減の両面で大きな効果を発揮します。情シス担当者やエンジニアは、できる範囲から自動化を取り入れる発想を持つことが求められます。
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6.ゼロトラストの導入に必要な4つのソリューション
ゼロトラストを実践するためには、単一の製品やサービスだけでは不十分です。ここでは、ゼロトラスト導入に必要となる代表的なソリューションを4つのカテゴリに分けて解説します。
エンドポイントセキュリティ
ネットワークセキュリティ
クラウドセキュリティ
セキュリティ監視・運用
エンドポイントセキュリティ
ゼロトラストの第一歩は、各デバイスの安全性を確保することから始まります。主なソリューションは以下のとおりです。
EDR:端末上での異常な挙動を検知し、自動対処する機能を持つソリューション
MDM:スマートフォンやタブレットなどモバイル端末のセキュリティ設定やアプリ管理を遠隔から行える仕組み
デバイス管理:社内外問わず業務端末を登録・監視し、使用許可や機能制限を細かくコントロールする体制を構築
ネットワークセキュリティ
ネットワークにおける信頼性確保も、ゼロトラストでは極めて重要です。ネットワークセキュリティの主なソリューションは以下のとおりです。
ZTNA/SDP:ユーザーやデバイスが認証された場合のみ、必要最小限のリソースへのアクセスを許可する仕組み
SWG:インターネットアクセスを安全に保つために、不正サイトへの接続遮断や通信内容の検査を行う仕組み
SD-WAN:拠点間通信を効率化しつつ、暗号化やセキュリティ制御を標準で提供するネットワーク技術
これらを組み合わせて、常にアクセス制御と監視ができるネットワーク環境を整えることが求められます。
クラウドセキュリティ
クラウドサービスを活用する際も、ゼロトラストの考え方を適用しなければなりません。クラウドセキュリティの主なソリューションは以下のとおりです。
ID管理:クラウド上のユーザーアカウントやアクセス権限を一元管理し、不正利用を防止する
クラウドアクセス管理:CASBなどを活用し、どのユーザーがどのクラウドサービスにアクセスしているかを可視化・制御する役割を担う
データセキュリティ対策:保存データの暗号化や、データ漏えい防止機能の導入
これらの対策を通じて、社内外を問わずクラウドリソースを安全に利用できる環境を整備します。
セキュリティ監視・運用
ゼロトラストの環境では、セキュリティイベントの監視と迅速な対応体制が欠かせません。
SOC/・MDR:専門チームが24時間体制で監視・分析を行い、インシデント発生時には迅速に対処する
マネージドサービス:自社内で対応が難しいセキュリティ運用を外部パートナーに委託する形で、専門的な知識を活用する仕組み
事故対応:万が一の情報漏えいなどが発生した際に、速やかに原因調査と影響範囲の特定、復旧作業まで進める体制
日常的な監視体制を確立することで、リスクを最小限に抑えながらゼロトラスト運用を持続できるようになります。
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7.ゼロトラスト導入のポイント5つ
ゼロトラストは、一朝一夕で完成するものではありません。導入に向けたステップを踏みながら、段階的に完成度を高めていくアプローチが求められます。初期段階での計画づくりから、運用開始後の改善プロセスまで、実践的な流れを理解しておきましょう。
現状分析とあるべき姿の検討
グランドデザインの作成
投資判断
環境構築
検証・改善
現状分析とあるべき姿の検討
まずは、自社の現在のIT環境やセキュリティ対策状況を客観的に把握することが重要です。
どこに脆弱性があり、どの資産が特に守るべき対象なのかを明確にする作業から始めます。同時に、将来的に目指す「あるべきセキュリティの姿」もイメージしておく必要があります。
ゼロトラストにおける理想像を具体的に描くことで、現状との差分が明確になり、優先順位をつけた対応計画を立てやすくなります。小さな改善から着手する意識も大切です。
グランドデザインの作成
ゼロトラスト導入には、全体像を見据えたグランドデザイン(全体設計図)が欠かせません。
どの領域にどの対策を施すのか、段階的な導入ステップをどのように設定するのかをあらかじめ整理しておきましょう。IT担当者やフリーランスエンジニアも、案件ごとにこのグランドデザインを提案できるようになれば、プロジェクト推進力が格段に高まります。
投資判断
ゼロトラスト導入には、一定の初期投資とランニングコストが発生します。そのため、費用対効果をしっかり見極めたうえで投資判断を行うことが求められます。
すべての領域に一気に投資するのは現実的ではないため、リスクが高い部分から優先的に強化する考え方が有効です。
また、投資効果をコスト削減だけでなく、情報漏えいリスクの低減やビジネス継続性向上といった観点で評価する視点も持つ必要があるため、経営層への説明も重要なポイントです。
環境構築
計画と投資判断を経たら、実際にゼロトラスト環境の構築に着手します。
この段階では、対象とするデバイス、ネットワーク、クラウド、ID管理など、それぞれの領域での具体的な設定作業が発生します。特に初期段階では、利用者側に大きな負担をかけない設計を意識することが重要です。
利便性とセキュリティのバランスをとりながら、段階的に制御レベルを高めていくアプローチが求められるため、状況によっては外部ベンダーとの連携も視野に入れるとスムーズに進められます。
検証・改善
ゼロトラスト環境を構築した後も、導入プロジェクトは終わりではありません。
実際に運用を始める中で、想定外の課題や使いにくさが表面化することがあります。そのため、定期的に検証を行い、ポリシーの見直しやシステム改善を重ねていく姿勢が不可欠です。
現場からのフィードバックを積極的に受け取り、改善サイクルを回すことで、実効性の高いゼロトラスト運用体制が確立できます。柔軟な対応力が、最終的な成果を大きく左右します。
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8.ゼロトラスト導入時によくある4つの質問
ゼロトラストは新しいセキュリティモデルである一方、既存の考え方や他の用語との違いがわかりにくいと感じる方も多いでしょう。ここでは、ゼロトラストに関してよく寄せられる4つの質問に焦点を当て、それぞれわかりやすく解説していきます。
境界型セキュリティとの違いは?
SASEとの違いは?
デジタル庁が提唱するゼロトラストアーキテクチャーとは?
ゼロトラストセキュリティ対策とは?
境界型セキュリティとの違いは?
境界型セキュリティは、「社内は安全、社外は危険」という前提に立った防御モデルです。
ファイアウォールやVPNを用いて、社内ネットワークへの不正侵入を防ぐことを中心に設計されています。しかし、テレワークやクラウド利用が進む現代では、ネットワークの境界線が曖昧になり、境界型モデルだけでは防御が難しくなっています。
一方、ゼロトラストは「すべてのアクセスを疑う」考え方に基づき、社内外を問わずユーザーやデバイスを認証・検証してアクセスを制御します。柔軟性と高度なセキュリティを両立できる点が、境界型との大きな違いです。
SASEとの違いは?
SASE(Secure Access Service Edge)は、ゼロトラストの思想を含みつつ、ネットワークとセキュリティ機能をクラウド上で統合するアーキテクチャです。
SASEは、SD-WANによるネットワーク最適化に加えて、ZTNA、SWG、CASB、ファイアウォール機能を一体化して提供する点が特徴です。ゼロトラストは主に「考え方」や「アクセス制御モデル」を指しますが、SASEはそれを実現するための技術的なパッケージと位置付けられます。
両者は対立するものではなく、ゼロトラストを実践する際の有力な手段としてSASEが存在すると理解しておくとよいでしょう。
デジタル庁が提唱するゼロトラストアーキテクチャーとは?
日本のデジタル庁も、政府情報システムの安全性向上を目的にゼロトラストアーキテクチャーの導入を推進しています。
デジタル庁が提唱するモデルでは、「ID管理の徹底」「通信の暗号化」「アクセス権限の最小化」「ログ監視による異常検知」といった基本原則を重視しています。
また、クラウド活用を前提とし、システム間連携を安全に行うための基盤整備にも注力しています。民間企業にとっても、デジタル庁のゼロトラスト指針を参考にすることで、より標準的で実効性の高いセキュリティ対策を構築できるヒントが得られるでしょう。
ゼロトラストセキュリティ対策とは?
ゼロトラストセキュリティ対策とは、ゼロトラストの考え方を具体的に実現するための取り組みや技術です。
単なる理論ではなく、実際に「誰も信用せず、すべて検証する」ために必要な対策群を体系的に整えることが求められます。
具体例としては、多要素認証による本人確認、モバイルデバイス管理による端末制御、ゼロトラストネットワークアクセスによるアクセス制御、リアルタイムのログ監視などを組み合わせて、サイバー攻撃や内部不正に対して強固な防御網を築けるようになります。
ゼロトラストの導入を検討する際は、単にポリシーを定めるだけでなく、これら具体的な対策の導入と運用を計画的に進めることが重要です。
9.まとめ
今回は、ゼロトラストについて基本的な考え方や必要性、導入に向けたポイントをお話ししました。
ゼロトラストは、テレワークやクラウドサービスの普及により、今後ますます重要となるセキュリティモデルです。社内外問わず、すべてのアクセスを検証・管理することで、情報漏えいやサイバー攻撃リスクを大幅に軽減できる特徴があります。
導入には一定のコストや運用負担も伴いますが、段階的に進めることで、中小企業や個人案件でも十分に実現可能です。ゼロトラストを上手に取り入れて、安全なIT環境づくりを目指しましょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。
本記事が皆様にとって少しでもお役に立てますと幸いです。
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