自社サービスの強みと課題を整理し、戦略立案に活かしたいと考える経営者、自分の市場価値を高めたいと考えるフリーランスは多いのではないでしょうか。
このような思いを抱いている人にはSWOT分析をおすすめできます。SWOT分析とは企業や自分自身について現状分析を行い、今後の方向性や改善策を見出すためのフレームワークです。
本記事では、SWOT分析の概要を押さえた上で、SWOT分析についてやり方、具体例、自己分析の方法などを解説します。
目次
1.SWOT分析とは
SWOT分析とは自社の現状や自分自身について把握するためのフレームワークです。また、この分析手法は戦略策定、経営資源の最適化、マーケティングの意思決定にも活用されています。
なお、SWOT分析の読み方はスウォット分析で、以下の頭文字を取った言葉です。
S:Strength(強み)
W:Weakness(弱み)
O:Opportunity(機会)
T:Threat(脅威)
自社や自分の弱みを客観的に分析し、洗い出すことで、課題を発見でき、潜在的なリスクを特定し、対策を講じることができます。
2.SWOT分析のやり方
SWOT分析を行い、成果を出すには正しいやり方に従うことが大切です。適切な手順に従うことで、正しい分析結果を導き出せます。
SWOT分析は一般的に以下の手順で行います。
目的を設定する
内部環境の分析を実施する
外部環境の分析を実施する
戦略立案を行う
それぞれ確認していきましょう。
目的を設定する
SWOT分析を実施する際は目的の設定を行います。取り組むべき課題、分析を行う目的が定まっていなければ、適切な戦略は立てられません。
内部環境の分析を実施する
ここでいう内部環境とは自社を指します。自社の強みと弱みを洗い出し、内部環境の分析を行います。
特定の部門や一部の社員の視点にとどまらず、マーケティング、サービス、製品、人材、財務、設備、知的資産などさまざまな観点から見るようにしてください。
また、事実を羅列するだけではなく、自社の目標達成への影響度合い、競合他社との違いなども考慮することをおすすめします。
外部環境の分析を実施する
外部環境とは自社を取り巻く外部環境を指します。外部環境の分析では機会と脅威の特定を行います。
社会情勢、国際問題、政治、経済などあらゆる角度から分析を行い、自社のチャンスとなるだろう要素と障害となる可能性がある要素を明らかにします。
戦略立案を行う
内部環境と外部環境の両方から分析を行ったSWOT項目に基づき、議論を行います。最終的に、具体的な戦略の立案を目指します。
議論では「自社の強みを最大限活用する方法とは?」「脅威にどのように備えるべきか?」など、SWOT項目を掛け合わせ、目的に合わせて実行可能性の高い戦略を策定します。
また、戦略は実行したら終わりではなく、定期的に見直し、その都度改善する必要があります。
3.SWOT分析の具体例
SWOT分析について理解を深めるために、ここでは大手企業を例にSWOT分析について見ていきましょう。
SWOT分析の具体例として、以下の2社について解説します。
トヨタ
マクドナルド
それぞれ確認していきましょう。
トヨタ
トヨタのSWOT分析は以下の通りです。
S(強み)
世界に通用するブランド力、自動運転技術への膨大な投資、自社が有する生産ライン
W(弱み)
軽自動車の生産が国内他社よりも劣る、海外市場は為替変動の影響で利益が不安定になりがち
O(機会)
日本国内における自動運転車の法整備の進展、発展途上への進出
T(脅威)
若者の車離れ、世帯人数が少なくなり普通車や大型車の需要が減少、資源国や新興国市場における小型車や低価格車の競争激化
この分析結果から、自社の利益を上げる方法として、海外への進出、自動運転車への注力が見えてきます。
マクドナルド
マクドナルドのSWOT分析は以下の通りです。
S(強み)
ブランドの認知度の高さ、季節メニューの豊富さ、手頃な価格、スピーディーなサービス
W(弱み)
健康志向の消費者から好まれにくい、物価高での価格維持、品質のコントロール
O(機会)
デリバリーの普及、コスパ重視志向の拡大
T(脅威)
新規参入企業の増加、環境問題による原材料の不足
この分析結果から、自社の利益を上げる方法として、健康志向の人を対象にしたメニューの開発、お得な商品の充実化などが見えてきます。
4.SWOT分析を使った自己分析の方法
SWOT分析は企業だけでなく、個人においても活用できる分析手法です。フリーランスとして市場価値を高めたい人、今後の方向性を見直したい人にもおすすめできます。
SWOT分析を自己分析に活用することで、自分の強みと弱みを把握し、それをどのように活かし、改善できるのかが見えてきます。
自己分析ではSWOT分析は以下のように活用します。
フリーランスのITエンジニアとして収入を上げたい場合
【O(機会)】 ・在宅で働ける ・単価が高い | 【T(脅威)】 ・ライバルが多い ・収入が不安定 | |
---|---|---|
【S(強み)】 ・複数のプログラミング言語のスキルがある ・難易度の高いプロジェクトに参加した経験がある | プログラミング言語を数多く扱えること、難易度の高いプロジェクト参加の経験を活かし、難しい案件を獲得する | 高単価、かつライバルが少ない難易度の案件を獲得する |
【W(弱み)】 ・営業が苦手 ・人と関わるのが苦手 | メールや応募フォームなどから自身のスキルや経験を企業にPRする | クラウドソーシングサービスなどを活用し、面接がなく、かつ高いスキルが求められる仕事から始める |
まずは、自分の強みを洗い出してください。強みは数が多ければ多いほどよいので、思いつくだけ書き出しましょう。
続いて、自分の弱みを洗い出します。弱みのない人はいないため、自分の弱みをいくつも思いついたとしても落ち込む必要はありません。むしろ、自覚しているということは改善できる見込みがあるということなので喜ばしいことです。
強みと弱みを洗い出したら、環境の機会・脅威を洗い出します。業界や企業について情報収集を行った上で書き出しましょう。
強み、弱み、機会、脅威を洗い出したら掛け合わせを行い、戦略の方向性を考えます。
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5.SWOT分析活用のポイント
SWOT分析は思いつくままに行えばよいものではありません。SWOT分析で成功するにはポイントを押さえることが大切です。
SWOT分析活用のポイントとして、以下の4つが挙げられます。
目的の明確化
前提条件の整理
精度の高いデータの取得
広い視野を担保するメンバーの選定
それぞれ確認していきましょう。
目的の明確化
SWOT分析を行うにあたって、なぜSWOT分析を行うのか理由を明確にしておく必要があります。
取り組むべき課題、範囲や期間、分析結果の活用方法が決まっていなければ、適切な戦略を立てられません。また、他の仕事の合間に時間を作り、SWOT分析を行う意義が分からなければモチベーションは上がらないものです。
前提条件の整理
分析対象、目標、競合企業などの前提条件を整理します。前提条件によって強みや弱み、機会、脅威は変わってきます。
SWOT分析を前提条件が曖昧な状態で実施すると、軸が定まらない分析になるので注意してください。
精度の高いデータの取得
SWOT分析で扱うデータは内部環境、外部環境ともに正確性が高いデータが必要です。
データの精度が不十分だと、分析結果を導き出しても、その結果が役に立たないこともあります。
広い視野を担保するメンバーの選定
SWOT分析を行うにあたって、メンバーの選定も重要なポイントです。経営陣やマーケティング部門だけで分析を行うと視野が狭くなり、分析材料が少なくなる恐れがあります。
例えば、経営陣のみでSWOT分析を実施した場合、経営の観点からはうまく分析を行えたとしても、商品設計、マーケティング、現場の温度感については考慮されていない結果になりがちです。
こうした事態を回避するためにも、SWOT分析では各部門から一人はSWOT分析に協力してもらうことが理想です。
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6.SWOT分析のメリットとデメリット
何事においてもメリットとデメリットがありますが、SWOT分析においても良い面だけではありません。SWOT分析を行う際はメリットとデメリットを把握した上で、行うことをおすすめします。
SWOT分析のメリット
SWOT分析のメリットとして、以下の4つが挙げられます。
全体像を把握できる:ビジネスやプロジェクト、自分自身の全体像を把握できる
簡単に行え、かつ効果を期待できる:SWOT(強み、弱み、機会、脅威)の分析により、ビジネスやプロジェクトの現状を簡単に明らかにできる
客観的な評価を得られる:強み、弱み、機会、脅威を明確にすることで、客観的な評価を得られる
改善のヒントの提供:強み、弱み、機会、脅威を明らかにすることで、改善のヒントを提供できる
SWOT分析のデメリット
SWOT分析のデメリットとして、以下の4つが挙げられます。
偏向性:分析者の偏見、メンバーの偏りなどにより、分析結果が偏るケースがある
単純化:4つの要素のみで複雑な問題を評価することは難しい。結果が単純化されたものになることがある
結果の不確定性:強み、弱み、機会、脅威に関する判断は主観的なものであり、不確定な結果の可能性がある
改善に向けたアクションの限定性:改善のためのアクションの提起、および実行計画の立て方に限界がある
7.SWOT分析は時代遅れなのか?
結論を先に述べると、SWOT分析は時代遅れではありません。
SWOT分析は1960年代にアメリカで考案され、日本でも経済成長の時代から使われてきました。SWOT分析が考案されてから50年以上経っていること、当時と現代ではビジネスを取り巻く状況に違いがあることから、この分析手法は時代遅れといわれることもあります。しかし、SWOT分析は時代や環境が変わっても活用できる分析手法です。
SWOT分析を使いこなすにはコツがいります。うまく使いこなせなければ、有益な結果はでませんので、SWOT分析を使えないもの、時代遅れとみなしてしまいがちです。SWOT分析を行う際は単一事業に対して行い、SWOT(強み、弱み、機会、脅威)の定義を明確にする必要があります。
また、SWOT分析は情報整理の機能が高い分析方法です。この分析を戦略策定にまで繋げるには、PESTLE分析やVRIO分析など他のフレームワークと合わせて活用すると効果的です。
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8.まとめ
SWOT分析は自己分析に役立つだけでなく、企業の現状分析を行い経営やマーケティングの戦略立案に活用できるフレームワークです。
SWOT分析を行うことで分析対象について、現状、解決できる方法、将来的なリスクを把握できます。これらを把握することで、対応策を講じたり、強みをより伸ばしたりしやすくなります。
ただし、SWOT分析で正しい結果を得るにはコツを押さえる必要があります。また、結果には不確定な部分がある可能性があることも忘れてはなりません。
本記事が皆様にとって少しでもお役に立てますと幸いです。
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