マーケティング分野において、「ペルソナ」を設定することには多くのメリットがあります。ペルソナを具体的にイメージすることで、社内に共通認識を作り、マーケティングの精度を高められるでしょう。しかし、ペルソナを設定する際には基本となる定義や意味を把握し、設定方法を理解する必要があります。
本記事ではマーケティング領域などビジネスにおけるペルソナの意味やメリット、簡単な設定方法について解説します。プロダクトマネージャーやマーケターなど、マーケティング業務でユーザー像の把握に悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。
目次
1.ビジネスにおけるペルソナとは?
ビジネスにおけるペルソナとは、重要な意味を持つ要素です。ペルソナの意味や設定のプロセスを理解することが、ビジネスで成果を出すことにつながるでしょう。
以下では、ビジネスにおけるペルソナの基本について解説します。
ペルソナとは心理学用語の1つ
ペルソナとは心理学用語であり、カール・グスタフ・ユングが提唱した概念です。自分の「外的側面」を意味する言葉であり、要するに「周囲にみせている自分」「内側に隠れている自分」を指します。人間は周囲の環境や相手ごとに、複数の顔を無意識のうちに使い分けているというのがユングの考え方です。
ビジネスで顧客の人物像を設定すること
ビジネスで使われるペルソナとは、上記で解説した心理学のペルソナの言葉がもとになって、「仮の人物像を定義する」という意味で使われるようになりました。マーケティング領域などビジネスにおけるペルソナとは、具体的なユーザー像をイメージして設定し、戦略立案に活かす手法を意味します。
例えば年齢、性別、職業、住所、家族構成、学歴、生い立ち、年収、趣味、ライフスタイルなどを設定し、実際にその人がいることを想定して商品・サービス開発やマーケティングの方向性を決めます。
ペルソナの設定ができないと、誰にどんなマーケティングを行えばいいのか曖昧になり、効果的な業務が難しくなります。ペルソナを使える場面は多く、例えばサービス開発で利用者向けのUIを作りたいときや、広告・LP改善に必要な情報をまとめたいときなどにも役立ちます。
ペルソナとターゲットの違いとは?【具体例あり】
マーケティング領域などビジネスにおける「ターゲット」も、ペルソナと似た意味を持つ言葉です。基本的な意味に大きな違いはありませんが、ペルソナとターゲットでは「どこまで深堀りするのか」が変わります。一般的にターゲットを決める際には、年齢や性別などの要素を決めた段階で次のステップに移ります。
一方でペルソナの場合、ターゲット以上に多くの要素を細かく設定し、よりリアルな人物像を構築するのが特徴です。プロジェクトによって「ユーザー像をどこまで深く理解すべきか」は変わるため、ペルソナとターゲットの意味をそれぞれ把握し、最適な方法を選ぶことが重要です。
以下にて例としてペルソナとターゲットをお伝えさせていただきます。
◾︎︎ターゲット 20代 男性 会社員 ITスキルの勉強に興味がある |
◾︎︎ペルソナ 基本情報 ・名前:山下 輝彦(やました てるひこ) ・年齢:28歳 ・性別:男性 ・職業:システムエンジニア(大手SIer勤務、従業員数5,000名規模) ・年収:550万円 ・居住地:埼玉県さいたま市大宮区 ・勤務地:東京都千代田区(通勤時間:片道50分)
・新卒で現在の会社に入社(転職経験なし) ・入社後3年間:プログラマーとして金融系システム開発に従事 ・昨年から:システムエンジニアに昇格、要件定義や設計業務も担当 ・使用技術:Java、Python、AWS基礎レベル
・妻(26歳・パート勤務) ・長女(2歳) ・賃貸マンション(2LDK)居住
・慎重だが向上心が強い ・家族との時間を大切にしたい ・安定志向だが、将来への不安から変化も求めている ・効率性を重視(時間対効果を常に考える)
・AI・機械学習の波に乗り遅れている焦り ・残業が月40時間程度あり、学習時間の確保が困難 ・独学でPythonとAI基礎を学習中だが、体系的な知識が身についていない不安 ・子どもの教育費を考えると、収入アップが必要
・情報収集:Tech系ブログ、XやYouTube(通勤時間に閲覧・視聴) ・学習可能時間:平日早朝5:30-6:30、週末午前中 ・投資可能額:月3万円程度(スクールやセミナー費用) ・意思決定:妻と相談しながら、判断 |
デモグラフィックやサイコグラフィックとは?
ペルソナを設定する際には、複数の項目を設定して人物像を浮かび上がらせる作業が必要です。そのときの基準になるのが、デモグラフィックやサイコグラフィックなどの構成要素です。人物像を構成する要素を明確にしておくことで、何を決めるべきなのか、どんな情報が足りないのか把握しやすくなります。具体的には、以下の構成要素がペルソナ設定の際に必要になると考えられます。
デモグラフィック | 統計学的な属性を意味する要素。 性別、年齢、住所、学歴、職業、年収、家族構成、など |
---|---|
サイコグラフィック | 心理学的な属性を意味する要素。 趣味、性格、ライフスタイル、価値観など |
ジオグラフィック | 地理学的な属性を意味する要素。 国、文化、地域、宗教、など |
アンメットニーズ | ユーザーの不平不満を意味する要素。 ユーザーが満たされていない要素を具体的に設定する。 |
ビヘイビアル | ユーザーが行った過去の行動に関する属性を意味する要素。 利用目的、習慣、利用頻度、購買履歴、購入場所、閲覧ページなど |
2.ペルソナを設定するメリットとは?
ペルソナを設定することには、多くのメリットがあります。以下では、ビジネスでペルソナを活かすメリットについて解説します。
チーム内で共通の認識が作れる
ペルソナを設定することで、プロジェクトに携わるチーム内に共通認識を作ることができます。チーム内でイメージしているユーザー像がばらばらだと、話し合いに齟齬が生まれて事業展開に時間がかかる可能性があります。そこでまずペルソナを設定し、プロジェクトに関わる全員が同じ方向を向けるように備える事が重要です。
ペルソナを設定していれば、コミュニケーションが円滑になったり、必要な情報の収集がスムーズに進んだりなどのメリットがあるでしょう。
ユーザーのニーズを把握できる
ペルソナ設定は、ユーザーニーズを明確にして、正確に把握できるようになるメリットもあります。ユーザー像を具体的にイメージできれば、求められる要素や優先すべきプロダクトの機能などを決定しやすくなるでしょう。
ユーザーが何を求めているのかわからないと、商品・サービスの有用性を証明するのが難しくなります。ペルソナを設定することでユーザー側の視点も把握できるため、より具体的なニーズを想定しやすくなる点もメリットの1つです。
マーケティングの精度を高められる
マーケティングの精度を高められる点も、ペルソナを設定するメリットです。ペルソナで細かく設定を決めたユーザー像を対象にアプローチ方法を考えることで、ピンポイントで効果的な広告を出すことも可能です。例えば「スポーツが好きな人」よりも、「スポーツのなかでもサッカーが特に好きな人」をペルソナで設定することで、効果の高いマーケティング手法や戦略を考えやすくなるでしょう。
広告の内容や配信する媒体や時間帯、起用する言葉やタレントなどの要素も、ペルソナを軸にすることで最適なものを選択できるようになります。
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3.ペルソナの設定方法を簡単に紹介
ペルソナをマーケティング領域などビジネスのシーンで活用するには、設定方法を把握することがポイントです。設定すべき要素や流れを知ることで、スムーズにペルソナの構築が進められるでしょう。
以下では、ペルソナの設定方法を簡単に紹介します。
自社について分析する
ペルソナの設定を行う際には、まず自社について深く知ることが重要です。市場における自社のポジションや競合他社にはない強みなどを明確にし、「自社なら何ができるのか」を確認します。自社について正確に理解するには、市場分析や商品・サービスのニーズの把握なども行う必要があります。
自社の強みを認識したうえで、それを活かせるフィールドやターゲット層を考案し、具体的なペルソナ設定に移るのがポイントです。
必要な情報を収集する
自社の分析に加えて、ペルソナ設定に必要となる各種情報の収集を行います。現在のユーザー数や特徴、のちに設定する項目の情報などを集めるのが基本です。情報収集の際には、先に紹介したデモグラフィックやサイコグラフィックの要素を参考にすることがおすすめです。
情報収集の際には、Webアンケート、インタビュー、口コミやSNSのチェックなどが手法として考えられます。どの方法を選ぶかで、得られる情報は変わります。例えばインタビューであれば、個人の情報を深くまで把握しやすいでしょう。一方で口コミやSNSを参考にする場合、多くの情報のなかから頻出する意見やキーワードを見つけ出せる可能性があります。
ペルソナを構成する要素を明確にする
情報収集のあとには、ペルソナを構成する要素を明確にします。こちらもデモグラフィックやサイコグラフィックの要素を参考に、各項目を1つずつ設定していく方法が考えられます。設定する構成要素が多いほど人物像は明確になりますが、その分時間がかかります。そのためプロジェクトの進行具合やスケジュールと相談して、どこまで設定すべき項目を採用するか判断する必要もあるでしょう。
構成する要素が増えるほど、その人の人物像が複雑になり、イメージするのが難しくなることもあります。項目ごとに矛盾が生じると、途端にリアルさを失ったペルソナになってしまうため、ある程度は構成要素を絞り込むこともポイントです。
ペルソナの人物像を具体的にイメージする
構成する要素を明確にしたあとは、ペルソナの人物像を具体的にイメージする作業を行います。例えば年齢であれば「20代」ではなく、「24歳」と明確な数値を決定します。ユーザー像の背景をイメージするために、複数のストーリーを考案したり、悩みを抱える過程や解決するための行動を具体的に構築するのも1つの方法です。写真やイラストを作り、視覚的にペルソナをイメージできるようにすることも考えられます。
ペルソナの要素を設定する際には、可能な限りリアルなユーザー像を形成することが重要です。「なぜその人は〇〇なのか」「どうして〇〇ではないのか」など、論理的に設定を構築していくことで、ペルソナとして活かせる人物像を作り出せます。
BtoBの場合には、意思決定のプロセスや契約意向などについて、具体的に決めることも大切です。個人の性質だけでなく、その人が持つ権限や職場におけるポジションも行動に影響することを意識しましょう。
内容を見直してシンプルに整理する
ペルソナの設定が決まったら、内容を見直して整理します。「設定した要素に矛盾はないか」「非現実的な人物像になっていないか」など、複数人でチェックしつつペルソナをまとめましょう。
見直しの際には不要な部分を削ったり、表現を変えたりしてなるべくシンプルに収めることも大切です。ペルソナ設定が複雑すぎると、想定されるニーズを満たす方法に現実味がなくなったり、チーム内で具体的なイメージを共有することが難しくなったりします。
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4.ペルソナを活用する際の注意点
マーケティング領域などビジネスでペルソナを活かすには、いくつかの注意点を把握しておく必要があります。注意点を意識しつつ適切な手法を取ることが、ペルソナを活用するためのコツになるでしょう。
以下では、ペルソナをビジネスシーンで活用する際の注意点について解説します。
認識のズレがないか確認する
ペルソナの設定時には、プロジェクトのチーム内で認識にズレがないか確認することが重要です。どれだけ細かくペルソナの設定をつめても、根本的な認識がズレていると、その後の話し合いやサービスにおけるマーケティング活動に支障が出る可能性があります。
そもそも「ペルソナとは何か?」という基本を、全員が正しく認識できているか確認しておく必要があります。ペルソナの意味や必要性を把握できない人がいると、マーケティングでの有効活用が難しくなるだけでなく、これまでの要素を見直す必要が出てくるケースも懸念されます。
まず最初にプロジェクトに携わる全員でペルソナの意味を共有し、そのうえで設定に移るようにしましょう。
ペルソナの定期的な見直しを行う
決定したペルソナは、定期的に見直しを行う必要があります。顧客ニーズや市場のトレンドは変化を続けているため、いつまでも同じペルソナが最適なものになるとは限りません。時間が経過したら改めてペルソナの設定を見直し、市場の状況やライフスタイルに合っていないものを修正していく作業も重要です。
また、設定したペルソナにリアリティを持たせるために、時間が経過するにつれて項目に変化を促すのも1つの手法です。実際に生きていると、さまざまな要素に影響されて性格や生き方が変化していきます。ペルソナも同様に、時間のなかでどのように変化していくのかをイメージし、新しい設定にアップデートしていく必要があるでしょう。
思い込みでペルソナを設定しない
ペルソナの設定時には、思い込みや偏見をなくすことが重要となります。経験則や思い込みだけでペルソナを設定していると、偏った人物像になる可能性があります。「〇〇の人はだいたい〇〇だと思っている」「〇〇のような人が使っていると感じる」など、経験や感覚を理由に設定しないように注意を促しましょう。
ペルソナの項目に採用する内容は一次情報のデータを参考にして、本当にいる人物に近づけていく意識が必要です。情報収集の段階で集めたデータの偏りがあると、その後の設定にも影響してしまうため、最初から思い込みや経験則で判断しないことを周知しておくのがポイントです。
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5.まとめ
ペルソナとは、ビジネスやマーケティングのシーンで活かされる要素の1つです。ペルソナの意味やメリット、設定方法などを理解することで、より効率的かつ効果的なマーケティング手法を考案できるでしょう。一方でペルソナの設定時には注意すべき点もあるため、事前に詳細を把握して対策を考えておくのもポイントです。
本記事で紹介した内容を参考に、マーケティング業務に携わるマネージャーやマーケターは、この機会にあらためてペルソナの重要性を確認してみてください。
本記事が皆様にとって少しでもお役に立てますと幸いです。
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