「赤字のほうがいい」「税金を払うのはもったいないから赤字にしたほうが得だ」といった内容の書籍や動画を見たり知り合いから「赤字のほうが税務調査のリスクが低い」という話を聞いたりして、本当に赤字にすべきか迷ったことはありませんか?
こうした表面的な情報をそのまま信じるのは危険です。赤字にすることのメリットとデメリットを正しく理解したうえで判断することが重要です。誰もが単純に考えれば黒字のほうが望ましいと理解していると思いますが、「なぜ赤字にするのか?」という点を十分に理解していない方も少なくないでしょう。
そこで本記事では、個人事業主や法人の赤字のメリットとデメリットをわかりやすく解説いたします。
長く事業を存続させるためにはまず収益力を高めて健全な黒字体質を築くことが最も大切ですが、そのうえで意図的に赤字にする場面が訪れることもあります。
そうした際の判断材料として役立てていただければ幸いです。
目次
1.個人事業主の赤字とは?
「赤字」とは事業の損益がマイナスになっている状態を指します。事業の状態が悪化したり特別な損失が発生したりすることで、収入から費用を差し引いた結果がマイナスつまり利益が出ていない状況のことです。
赤字には退職金の支払いや売掛金の貸倒れなどの多額の費用が一時的に発生して赤字になるケースと原価管理や固定費の問題により慢性的に赤字が続くケースがあります。
黒字との違いとは
「赤字」や「黒字」という呼び方は、帳簿の記載方法に由来すると言われています。簿記の帳簿ではマイナスの金額を赤字でプラスの金額を黒字で記録するため利益がマイナスの状態を「赤字」、利益がプラスの経営を「黒字」と呼ぶようになったという説です。
起源はさておき一般的には「赤字」と「黒字」の違いは、利益がマイナスかプラスかという点にあります。赤字は収益と費用の差額がマイナスである状態、黒字は収益と費用の差額がプラスの状態を指します。
2.赤字決算とは?資金繰り悪化・債務超過・黒字倒産との違いを解説
赤字決算とは、損益計算書上で利益がマイナスになっている状態を指します。これは一定期間(一般的には1年間)において、収入よりも支出が多かったことを意味します。
なお赤字決算に関連する用語として、「資金ショート」「債務超過」「黒字倒産」という言葉もよく使われます。
資金繰りの行き詰まり(資金ショート)
資金ショートとは、事業がすぐに必要な支払いすら賄えないほど手元資金が不足している状態を指します。これは、収入より支出が多い赤字の状態とは異なります。
資金ショートの主な原因には、「売上が予想を下回った」「突然の大きな出費があった」などが挙げられます。また黒字でも「取引先からの入金遅延」などにより資金ショートに陥ることがあります。資金ショートは事業にとって非常に深刻な問題であり、場合によっては倒産のリスクを伴います。
負債が資産を上回る状態(債務超過)
債務超過とは、会社の負債総額が保有する資産の価値を超えてしまっている状態を指します。つまり、会社が持っているすべての資産を現金化しても借金を完済できない状況です。
債務超過の状態にある会社は金融機関からの融資が難しくなり、経営が悪化して倒産のリスクが高まる可能性があります。
利益は出ているのに倒産するケース(黒字倒産)
黒字倒産とは事業自体は利益を上げて黒字であるにもかかわらず、資金繰りがうまくいかずに会社が経営破綻してしまう状況を指します。
このような黒字倒産が起きる主な原因は、資金管理の失敗や多額の負債返済が間に合わなかったことなどが挙げられます。
黒字倒産を防ぐためには入出金の状況をしっかり把握し、余裕を持ったキャッシュフローの計画を立てることが重要です。例えば、売掛金の回収を早める一方で支払いを遅らせるなどの工夫が効果的です。
3.個人事業主が収入より経費が多い年があっても事業を存続できるのはなぜか
赤字決算となったからといって、すぐに事業が終わるわけではありません。借入金や事業以外の収入などで赤字を補う資金が確保できていれば、事業を継続できます。
また市場環境の変化・新製品の開発・事業拡大などの要因で一時的に赤字になった場合でも、適切な対策を講じることで事業を再建することが可能です。
赤字であっても即事業終了とは限りませんが、黒字であっても資金繰りが悪化すれば事業終了のリスクが高まるため常に資金管理に細心の注意を払うことが重要です。
4.意図的に赤字にするのはリスクが高い
この章では意図的に赤字にするのはリスクが高いとされる理由について解説します。
基本は利益を出すのが前提
状況によっては赤字にも一定の利点があるとはいえ、基本的には意図的に赤字を作ることにはリスクが伴い継続的には黒字を維持することが望ましいと考えられます。
たとえば事業主と親族のみで構成された事業であれば、事業と個人生活が密接に結びついており事業が赤字であっても個人に余裕があれば乗り切れるという考え方も成り立つかもしれません。
しかし事業を社会的役割を担う存在でありそして事業主と従業員のものであると捉えるならば、赤字による弊害は大きく安定的に利益を上げることが重要です。
利益を出し納税すること自体が、社会への貢献でもあるといえるでしょう。
利益は事業を継続するうえで必要不可欠な資源
一般的には「税金はできるだけ少ない方がいい」と考えられがちですが、それは本当に正しい判断なのでしょうか。
利益とは事業を守るための備えであるといえます。利益を積み重ねていくことでたとえば突発的な売上の急減・業務上のトラブルによる損害賠償・自然災害や事故・コロナのような予期せぬ社会的危機が発生したときでも、事業の継続が可能になります。
逆に利益が蓄えられていない状態で赤字が続くと、いざというときに事業の存続自体が危ぶまれます。
近年、数年おきに“滅多に起こらないはず”の出来事が現実に発生しています。
2008年:リーマンショック
2011年:東日本大震災
2019年:新型コロナウイルスの流行
2022年:ロシアによるウクライナ侵攻
今後も何が起こるかは予測できませんが、「いつか必ず何かが起こる」という前提で考えておくことが重要です。
実際コロナ禍で売上が大幅に落ち込んだ方も見られましたが、日頃からしっかりと利益を出し現金を確保していた方は厳しい状況を乗り越えることができました。一方で極端な節税に走り利益を十分に確保していなかった方は、資金繰りに大きな苦労を強いられました。
このように先行きの読めない時代においては、赤字ではなく安定して黒字を出すことがますます重要になっているといえるでしょう。
5.個人事業主の赤字が推奨されることがある背景とは
この章では個人事業主の赤字が推奨されることがある理由について解説します。
欠損金の繰越で将来の利益と相殺できる
赤字の繰越が可能であることが大きな特徴です。基本的には青色申告者が対象ですが、変動所得など一部の損失については白色申告者でも繰越しが認められています。
赤字繰越とは事業で発生した赤字を翌年以降3年間にわたって持ち越し、その期間の所得から差し引くことができる制度です。ただし繰越できる損失は事業所得・不動産所得・山林所得・譲渡所得などに限られています。
例えば起業1年目に200万円の赤字が出て翌年に50万円の黒字があった場合、1年目に青色申告で赤字の繰越を申請していれば翌年の50万円の利益から1年目の赤字のうち50万円分を差し引くことができます。こうして2年目の所得税は、利益があっても0円になるのです。
繰越損失を使って利益を相殺できるため、課税所得を減らし納税額を抑えられるというメリットがあります。
ただし、赤字繰越を受けるためには以下の条件を満たす必要があります。
赤字が発生した年に青色申告書を提出していること
その後も毎年確定申告を継続していること
なお赤字の翌年に白色申告をしている場合でも、繰越の適用は可能です。
黒字の前期がある場合、繰戻還付金がもらえるケースも
源泉徴収額や予定納税がある場合、赤字でも確定申告をすることで還付金を受け取れる可能性があります。源泉徴収とは報酬を支払う側が所得税をあらかじめ差し引いて納税者に代わって納付する仕組みで、所得税の前払いにあたります。
事業が赤字となり本来所得税が発生しない場合は、確定申告を行うことで既に納めた源泉徴収税額の還付を受けることができます。
ただし源泉徴収があっても、預金の利子など源泉分離課税の対象となる所得は事業所得などの総合課税とは別扱いとなるため還付の対象にはなりません。また予定納税を納めていた場合でも納め過ぎているときは、その分の税金が還付されます。
含み損資産の処理で赤字を活用するケース
財務体質の改善やキャッシュフローの見直しを目的として含み損を抱えている資産を処分し、意図的に赤字を計上する手法があります。これは、状況によっては非常に有効に働くことがあります。
たとえば、
売却損や除却損などの特別損失により税引前利益は赤字になるものの、経常利益は黒字を維持している
一時的に赤字になっても純資産へのダメージが軽微である
といった条件が整っていれば、この方法は戦略的な選択肢となり得ます。
含み損資産の整理は財務戦略として適切に活用すれば、税負担の軽減とキャッシュフローの改善の両立につながる手段となります。
他の所得と相殺(損益通算)ができる
損益通算とは、さまざまな所得の計算で発生した損失を一定の範囲で他の所得から差し引くことができる制度です。不動産所得・事業所得・譲渡所得・山林所得などの所得は損益通算の対象となります。個人事業主の場合、本業は主に事業所得に分類されるため損益通算の対象に含まれます。
この損益通算が特に役立つのは、個人事業主が本業以外にも収入がある場合です。例えば会社に雇われて給与を受け取っている場合、その収入は給与所得として扱われます。
もし事業所得が赤字であれば確定申告を行うことで給与所得の利益と赤字の事業所得を相殺し、結果として所得税の負担を軽くできるというメリットがあります。
6.赤字によって生じるマイナス面
赤字が有効に働く場合についてご紹介しましたが、この章では赤字によって生じるさまざまなデメリットについてお話しします。
赤字には多くの不利な側面が存在しますのでそれらを理解していただければ、「企業の継続には黒字経営が基本である」という点を改めてご認識いただけるはずです。
資金調達(融資)に不利になる可能性
赤字決算にすることの大きなデメリットのひとつが、「金融機関からの資金調達が困難になる」という点です。
個人事業主は資金繰りの一環として銀行などの金融機関から融資を受けていることがあります。その際に必ず行われる審査では、決算内容が重要な判断材料となります。赤字決算の場合金融機関からの評価(格付)が下がりやすく、それに伴い融資条件が悪化する可能性があります。
実際金融機関は決算終了後に提出された決算書を確認しますが、そこに赤字が計上されていれば返済能力に疑問があると判断され追加融資が難しくなったり融資が受けられたとしても金利が高くなるなどの不利な条件が課されることがあります。
一度下がった格付けは翌期以降黒字に戻したとしてもすぐに回復するとは限らず、信用回復には時間を要することもあります。
このように安易な節税を目的に赤字決算を選択すると、確かに税負担は軽減されるかもしれませんが資金調達の道を狭めてしまい最悪の場合資金ショートから事業破綻へとつながるリスクもあるのです。節税以上に健全な資金繰りと信頼維持が重要であることを忘れてはなりません。
債務超過から経営危機につながるリスク
事業を健全に成長させていくためには資産をいかに増やしていくかが重要なポイントです。赤字が続くと資産より負債が大きくなり、債務超過に陥る可能性があります。債務超過になると金融機関からの融資が難しくなり、資金繰りが悪化して倒産のリスクが高まることにつながります。
黒字に比べて現金残高が減りやすい
「わざと赤字決算」にする際に利益を減らすために「必要以上の経費を計上する」方法を用いると、その分だけ会社の現金も減少します。
例えば税引前利益が500万円ある場合、赤字決算にするためには500万円分の経費を増やして利益をゼロにしなければなりません。つまり500万円を経費として支出するため、手元の現金が減ってしまうことになります。
従業員の不安を招く恐れ
従業員の立場からすると赤字決算であると知れば、不安を感じることが多いでしょう。特に個人事業では損益計算書や貸借対照表といった財務状況が従業員には公開されていないケースが考えられ、その場合従業員は赤字であることを知らずに働いているのが実情です。
近年は人手不足が深刻化しており採用環境はますます厳しくなっています。そのため離職率を抑えることがますます重要な課題となっています。
求職者は事業の安定性を重視しており、従業員も赤字のよりは黒字で財務基盤がしっかりしている事業で働きたいと考える方が想定されます。こうした「人」の面から見ても、黒字決算を目指すことは非常に重要です。
案件での信用に影響する
案件を受注する際に赤字だからといって必ず評価が下がるわけではありませんが、赤字決算の場合は結果に関わることもあります。
また大手企業と取引している場合には、定期的に決算書の提出を求められることもありえます。赤字が続くと信用評価にマイナスの影響を与え、取引関係に悪影響が出る可能性もあります。
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7.赤字でも確定申告を行う際の個人事業主のデメリット
個人事業主が赤字で確定申告を行う場合、メリットだけでなくデメリットも存在します。申告をする際には、その点についても十分に理解しておくことが大切です。
申告書類の準備に時間と労力がかかる
確定申告をする際には、書類作成にかなりの時間と手間がかかります。売上を計算するために請求書を整理したり経費の証明となる領収書をまとめて金額を入力したりと、細かい作業が必要となるため簡単ではありません。
申告の受付期間に入ってから慌てて準備するのではなく、日頃から帳簿や領収書をこまめに整理しておくことが大切です。確定申告の期間は毎年2月16日から3月15日までと決まっているため年間のスケジュールに組み込み、余裕をもって準備を進めましょう。
融資や資金調達のハードルが上がる
赤字の状態で確定申告を行うと、資金調達が難しくなる可能性がある点に注意が必要です。
金融機関は融資審査の際に確定申告書の数字を基に判断するため赤字の場合は返済能力が低いとみなされ、希望する融資額よりも少ない金額しか借りられなかったり融資を断られたりすることがあります。
長期間にわたり事業を続けていて黒字と赤字を繰り返しているケースでは過去の財務状況を総合的に評価してもらえる場合もありますが、赤字が続くと資金調達は難しくなると考えておくべきです。
赤字経営で今後融資を検討している場合は、確定申告によるメリットとデメリットを十分に理解した上で判断することが大切です。
8.経費が収入を上回る個人事業主に確定申告の義務はある?
確定申告とは、1年間(1月1日から12月31日まで)の所得金額とそれにかかる所得税額を確定し、税務署へ報告する手続きのことです。個人事業主の場合、収入より経費が上回って所得税が発生しなければ基本的に確定申告の義務はありません。
確定申告が不要とされるケースとは
国税庁によると、以下の条件に当てはまる場合は確定申告が不要とされています。
給与収入が一定額以下で、かつ給与以外の所得も一定額以下である場合
公的年金などの雑所得について課税対象となる所得がない場合
退職所得(ただし、外国企業から源泉徴収されない退職金を受け取った場合は除く)
計算の結果、納付すべき所得税が発生しない場合
特に収入より経費が多く所得税が発生しない「赤字」の場合は、原則として所得税の確定申告は不要となります。
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9.経費の方が多い場合でも個人事業主が確定申告するメリット
収入より経費が上回っている個人事業主は、確定申告の義務は基本的にありません。では、義務がないにもかかわらず確定申告を行う意味はあるのでしょうか。この章では、確定申告をすることで得られるメリットをご紹介します。
収入証明書として利用できる
確定申告書の控えは、その年の所得を証明する書類として活用できます。というのも確定申告書には所得税額だけでなく、その年の所得金額など税務に関する詳細な情報が記載されているからです。
さらに、確定申告書は所得証明書よりも多くの情報を提供します。例えば各所得の収入額が確認でき、青色申告決算書や収入内訳書が添付されていれば売上高・必要経費の内訳・資産の状況なども把握できます。
そのため住宅ローンの申請や事業融資を受ける際には、確定申告書の控えを提出することが求められることが多いです。赤字であっても借入や公的機関への所得証明を行う場合は、確定申告書を作成しておくことが有益です。
10.確定申告をしない場合のデメリット(経費超過の個人事業主)
収入より経費が多い場合に、個人事業主が確定申告をしなかった場合の主なデメリットをご紹介します。
ローンや融資申請時に収入証明が出せない
個人事業主が住宅ローンなどの融資を申し込む際には、所得を証明するために確定申告書の提出が求められることが多いです。確定申告をしていないと申告書の控えが用意できず、その結果ローンの申請ができないなどの支障が出ることがあります。
非課税証明書を取得できない
非課税証明書とは市民税や都道府県民税が課税されていないことを証明する書類で、住民税が課税されていない場合に発行されます。逆に住民税が課税されている場合は、非課税証明書ではなく課税証明書が発行されます。
非課税証明書が必要となるケースには奨学金の申請・公営住宅の入居申込・各種手当の申請などがあります。
所得税の確定申告を行うと住民税の申告も自動的に処理されますが、確定申告をしなければ住民税の申告がなされないため(ただし別途住民税の申告をした場合は除きます)、非課税証明書の発行ができない可能性があります。
国保の保険料軽減制度が適用されない可能性
国民健康保険料には法律で定められた所得基準を下回る場合に、保険料の2割から7割を軽減する制度があります。ただしこの軽減を受けるためには、確定申告や住民税の申告が必要です。たとえ赤字であっても確定申告を行わないと、本来所得基準に該当して軽減されるはずの保険料軽減が受けられないという不利益が生じます。
11.赤字経営を脱するためのステップ
「あえて赤字決算」にすることには節税上のメリットがあります。しかし事業の長期的な成長を考えると、黒字を維持していくほうが望ましいと言えます。
そのため事業が赤字になった場合は意図的であってもそうでなくても、早めに黒字化を目指して事業の立て直しに取り組むことが重要です。この章では、赤字決算に直面した際にまず取るべき対策について説明します。
赤字の原因を把握する
まずは事業が赤字に陥った原因を明確にすることが重要です。原因が分からなければ、適切な対策を講じることができません。
損益計算書で分析する
損益計算書に現れる赤字には、「営業損失」「経常損失」「当期純損失」「現金収支の赤字」があります。自社の赤字がどの部分で生じているかによって、取るべき対策も変わってきます。これは決算書上の赤字が発生している箇所によって、その意味合いが異なるためです。
そのため損益計算書の内容をしっかり分析し、どの種類の赤字が計上されているのかを正確に把握することが大切です。
キャッシュフローの状況をチェックする
赤字の原因を特定するために、キャッシュフローを計算して資金の流れを見直す方法も有効です。キャッシュフローは大きく分けて以下の要素に分類されます。
固定資産の購入など、投資に関わる資金の増減を示す「投資キャッシュフロー」
借入金の返済や資金調達など、金融取引に関する資金の増減を表す「財務キャッシュフロー」
日常の営業活動による資金の増減を示す「営業キャッシュフロー」
どのキャッシュフローの部分で手元資金が減少したかを把握することで、資金の流れを適切に見直すことが可能になります。
経費の見直しを行う
赤字の原因が明らかになったら、まずコスト構造を見直しましょう。赤字は売上に対して費用がかかりすぎている状態を指します。そこで無駄な支出や不要な業務を削減し、事業を効率化する「支出の最適化」が欠かせません。余剰在庫を減らし業務プロセスを見直すことも、収益の向上と赤字解消につながります。
こうした無駄なコストを徹底的に削減するためには、いわゆる「リストラクチャリング(再構築)」を実行することが有効です。
金融機関と相談して資金繰りを改善する
経営を立て直すためには、財務キャッシュフローの改善が欠かせません。手元資金を増やすには金融機関からの新たな融資を受けることや、既存の返済スケジュールの見直しについて交渉を行うなどの対応が求められます。
12.個人事業主の赤字に関するよくある疑問と回答
個人事業主の赤字に関して、よく寄せられる疑問をまとめてご紹介します。赤字についてより詳しく知りたい方は、ぜひ目を通してみてください。
Q:会社員と個人事業主を両立していて、副業が継続的に赤字だと節税効果はありますか?
会社員の方が副業で赤字を出した場合でも、条件を満たせば節税が可能です。具体的には副業による赤字を本業の給与所得と損益通算することで、所得税の還付を受けられることがあります。ただしこの損益通算が認められるのは、副業の収入が「事業所得」として認められた場合に限られます。
一方副業が「雑所得」とみなされると、損益通算の対象とはならず節税効果は期待できません。副業を継続的かつ反復して行っていれば事業所得として扱われる可能性が高いですが、一時的な物販などの場合は雑所得と判断されるケースもあるため注意が必要です。
Q:赤字申告した場合、消費税の納税義務はどうなりますか?
個人事業主が赤字で確定申告をしていても、場合によっては消費税の納税義務が生じることがあります。その理由として消費税は商品やサービスの購入者から預かった税金を、事業者が国に納める仕組みであるためです。
つまりたとえ事業が赤字で利益が出ていなくても、消費者から受け取った消費税分については適切に納税する必要があります。すべての取引が消費税の対象になるわけではありませんが、基本的には赤字かどうかに関わらず納税義務が発生します。
ただし以下のような条件を満たす場合は、消費税の納税義務が免除されることがありますので、確認しておくとよいでしょう。
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13.まとめ
ここまで個人事業主がわざと赤字にするメリット・デメリットなとを解説してきました。基本的には黒字の方が良いということをご理解いただけかと思います。
本記事が皆様にとって少しでもお役に立てますと幸いです。
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