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PEST分析とは?目的、具体的なやり方、注意点などわかりやすく解説

公開日:2025/06/11最終更新日:2025/06/11

事業戦略やマーケティング施策を考える上で、自社の努力ではどうにもできない外部環境による要因は考慮しておく必要があります。

この外部要因は、PEST分析と呼ばれ、経営や戦略立案においても重要視されています。


例えば、近年の新型コロナウイルスの影響も、自社の努力だけではどうしても対応しきれない要素の一つです。

これらを意識し、戦略や施策に活かすことで、リスクを抑え効率よく展開できるようにもなります。


そこで今回は、PEST分析の基礎をはじめ、目的や効果的なやり方などについて紹介していきます。


1.PEST分析とは?

PEST分析とは、自社の商品やサービスを販売していく上での外部環境による要因のことを指します。

外部環境要因は、Politics(政治)、Economy(経済)、Society(社会)、Technology(技術)に分類でき、それぞれの頭文字をもとにPEST分析といわれています。


新規事業の開発や、商品・サービスのマーケティング戦略を考える上で、自社ではどうしても対応できない外部要因は存在します。

これらを把握せずに展開した場合、外部環境が影響して効果的な販促につながらず、失敗に終わってしまう可能性も高まります。


特に近年では、ユーザー行動やニーズの多様化が進んでいるため、常に市場や競合他社の動向を適切に把握しておく必要があります。

その上で、PEST分析による外部環境も戦略とあわせ十分留意しておくことが求められます。

外部環境分析とは

外部環境は内部環境と異なり、自社でコントロールできるものではありません。

例えば、少子化が進む日本では、幼児向けの市場は縮小傾向にあります。


とはいえ、少子化を抜本的に解決する手法は一企業で展開するには限界も生じます。

このような外部環境による要因を意識せず、マーケティング施策を行ったとしても無駄に終わってしまう可能性が高まります。


これに対し内部環境では自社の商品やサービスにおける環境が対象となります。

強みや弱みを可視化し、問題点を明確化することができれば、改善することで売上増加や利益拡大につなげることも期待できます。


このように、経営や戦略立案において内部環境の分析だけでなく、外部環境の分析も重要となります。

さらに、この外部環境の分析には、マクロ環境分析とミクロ環境分析に分けられます。

マクロ環境分析

マクロ環境分析は、自社のマーケティングにおいて間接的に影響を与える要因を分析する手法です。

PEST分析にて対象となる4つの要素は、このマクロ環境にも該当してきます。


マクロ環境分析では、PEST分析以外にも、SWOT分析などのフレームワークも有効活用できます。

短期的ではなく、5年から10年程度の中長期的な視点で市場の動向を捉え、戦略につなげていく手法となります。

ミクロ環境分析

ミクロ環境分析では、自社のマーケティングにおいて直接的に影響を与える要因を分析していきます。

市場規模や競合他社、顧客ニーズなどを定期的に分析していく手法となります。


3C分析や4P分析などのフレームワークを活用し、短期的に見直しを図りながら運用していくことが求められます。

PEST分析が重要視される背景

PEST分析は、ノースウェスタン大学ケロッグビジネススクールの教授であるフィリップ・コトラー氏によって提唱されたマーケティングフレームワークの一つです。


外部環境は、時代に応じて変化し続けています。

近年でもユーザーニーズの多様化に加え、ブームやトレンドなど流行の短期化が進んでいます。


このような中で、時代に即したビジネスを展開していくことが求められています。

その上で、外部環境による要因を適切に把握しておくことは重要で、自社の販促戦略およびマーケティング施策においても、PEST分析は業種問わず多くの企業が活用しています。

2.PEST分析の目的

PEST分析によって外部環境による要因を把握しておくことは、自社のビジネスを円滑に進める上で欠かせません。

この目的について細かく紹介していきます。

マーケティングの方向性の明確化

市場動向が目まぐるしく変化する昨今において、売上増加や利益拡大を図るためには、マーケティング施策を戦略立てて実行していく必要があります。

間違った方向性による戦略では、たとえ実行したとしても大きな損失で終わってしまう可能性も起こりえます。


この方向性を明確化する上で、PEST分析は有効活用できます。

PEST分析では、マクロ環境分析として広い視点で戦略立案につなげることが可能です。

ある程度の方向性が導き出せれば、ミクロ環境分析をもとに細分化していくことで、より精度を高めることもできます。


そのため、まずは狙うべきビジネスやマーケティングの方向性を定める上で、PEST分析は効果が期待できます。

環境の変化や脅威の把握

PEST分析を行う目的は、環境の変化や脅威を把握することにもあります。

環境や市場の変化は、ビジネスにおける将来性にも影響していきます。

将来性が低い市場に対して新たに参入しても売上増加につなげることはできません。


また、市場・環境の変化とあわせ、脅威も把握しておくと、事業開発や戦略に活かすことが可能になります。

例えば、新たな可能性のある市場が見つかったとしても、大手資本などが参入してくればチャンスを活かせずに終わってしまう可能性も起こりえます。


このようなリスクを極力回避し、効率よくビジネス展開していく上で、PEST分析を行うことは効果が期待できます。


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3.PEST分析における4つの要素

概要でもふれたように、PEST分析による外部環境要因は、Politics(政治)、Economy(経済)、Society(社会)、Technology(技術)に分類されます。

効果的な分析につなげるためには、それぞれの要素について適切に把握しておくことが重要です。

Politics(政治的要因)

Politics(政治的要因)は、自社のビジネスに影響を与える政治や法律、税制などの要因のことを指します。

政権交代による政府の動向や法改正、税率の見直しなどは、業界によっては脅威となる可能性もあります。


また一方で、外交関係の動向や規制緩和などは、新たな市場の開拓などビジネスチャンスにつながるケースも少なくありません。

特に、昨今のインバウンド需要の高まりやライドシェアなどの規制緩和などは、ビジネスチャンスと捉え事業展開する企業も増加傾向にあります。


Politics(政治的要因)に該当する代表的な要因としては以下が挙げられます。

  • 法律や法改正による規制もしくは規制の緩和

  • 税制改革による減税および増税

  • 裁判制度や判例

  • 政治や政権交代

  • 政治団体による動向、デモなど

Economy(経済的要因)

Economy(経済的要因)は、為替相場や金利など消費動向に関する影響を表す要因のことを指します。

昨今の円安をはじめ、インフレやデフレ、金利政策などは企業の売上にも大きな影響を及ぼします。


企業単位で直接的な介入・改善はできませんが、ある程度の動向にもとづく脅威を予測することで、リスクを抑え効率的な施策につなげることも可能になります。


Economy(経済的要因)に該当する代表的な要因としては以下が挙げられます。

  • 為替や株価、金利の動向

  • 原油価格の上下

  • 経済成長率の変化

  • 物価の変動(インフレやデフレ)

  • 景気や消費の動向など

Society(社会的要因)

Society(社会的要因)は、文化や生活環境における変化をはじめ、価値観やライフスタイルに関する要因のことを指します。


また、人口の増減や家族構成、世帯数の変化なども社会的要因に含まれます。

少子高齢化が進む日本においては、若年層の減少と高齢者の増加が顕著になりつつあります。


さらに、外国人労働者の増加や首都圏への人口集中などが注目されています。

このような要因に加え、ライフスタイルの変化などを予測し、消費者ニーズを的確につかむことで外部環境による要因をビジネスチャンスにつなげることも可能です。


Society(社会的要因)に該当する代表的な要因としては以下が挙げられます。

  • 人口の増減

  • 人口動態や家族構成、世帯数、密度

  • 少子高齢化

  • 宗教や言語、文化

  • 教育環境

  • 生活環境やライフスタイルの変化など

Technology(技術的要因)

Technology(技術的要因)は、IT技術やテクノロジーの進歩などに伴う要因のことを指します。


スマートフォンの普及や5G回線の発達、SNSの浸透など、近年ではIT技術が常に進化し続けています。

さらに今後はAI技術や3D、メタバースなどが新たなイノベーションをもたらすともいわれています。

このような技術は、新規事業の開発だけでなく、業務効率化などさまざまな用途に活用できます。


一方で、技術的要因を無視したままでは取り残され、機会損失につながる可能性も起こりえます。

このようなリスクを防ぐためにも、新たな技術には常にアンテナを張っておくことが求められます。


Technology(技術的要因)に該当する代表的な要因としては以下が挙げられます。

  • IT技術の登場や発達

  • インフラなどの整備状況

  • 新たな技術の普及度や浸透

  • イノベーションの期待値など

4.PEST分析の効果的な進め方

PEST分析は、先ほどふれた4つの要素に分類できますが、ただやみくもに分類すればいいという訳ではありません。

以下の項目に応じて目的をふまえ分析していくことが重要です。

①目的やゴール、環境要因の設定

自社においてPEST分析を行う際には、何を目的に分析するのかあらかじめ明確にしておく必要があります。

単に既存事業の売上増加を図るのであれば、PEST分析よりも適したフレームワークがあるかもしれません。


例えば、新たな事業を開発して売上を伸ばしたいという目的と、自社の業務効率化を図りたいという目的では、捉えるべき外部環境が変わってくる可能性があります。

海外進出を図りたい場合には、海外におけるPEST分析が必要になります。


このように、何を目的にPEST分析を行うのか、最終的なゴールはどこに設定しているのか明確化した上で、分析を進めていくと効果的です。

②4つの要素に応じた情報収集

目的やゴールを明確化したのであれば、続いてPEST分析の4つの要素に応じた情報を収集していきます。

PEST分析に関する情報は、自社だけで収集するには限界もあります。


国が公開している統計データや、各種団体が公表しているレポート結果、専門誌の調査データなどをもとに収集していくと効果的です。

ただし、公表されているデータ中には、集計期間が古いものもあります。


情報が日々変わる昨今においては、古い情報は間違った方向性につながる可能性もあるため注意が必要です。

状況によっては、マーケティング会社などに目的に応じた調査や情報収集を依頼することも有効です。

③「事実」と「解釈」に分類

次に、4つの要素に分類した外部環境による要因を、「事実」と「解釈」に分類していきます。

「事実」とは、実際に起きた事象をそのまま情報として取り扱います。

これに対して「解釈」とは、起きた事象に対する個人的な考えのことを意味します。


PEST分析において、この「事実」は有益な情報となります。

そのため、主観的な考えは「解釈」に分類し、あくまで数値から判断できる事象やデータに紐づく情報を「事実」として分類していくことが重要です。


明確に因果関係が示せないものは「解釈」に含めていくと効果的です。

④「機会」と「脅威」に分類

続いて、③にて「事実」に分類した情報を、さらに「機会」と「脅威」に分類していきます。

事実に含めた内容が、自社にとってビジネスチャンスとなり得るものであれば「機会」とし、不利やリスクにつながりかねない場合には「脅威」として振り分けていきます。


同じ「事実」であっても、チャンスと見るかリスクとするかは企業によって異なります。

そのため、あくまで立ち位置としては自社の業界や業種、規模、対応力などを基準に分類していくことが重要です。

一般的な視点で捉え過ぎると、機会を見逃したり脅威を想定できずにマイナスに作用する可能性もあるため注意が必要です。

⑤「短期」と「長期」に分類

「機会」と「脅威」に分類した情報は、さらに「短期」と「長期」に分類していきます。

それぞれの事実に関する情報が、短期的に影響してくるのか、長期的な影響なのかを把握することで、時間軸での整理がしやすくなります。


例えば、機会の中でも短期的に影響を及ぼす情報は、ビジネスチャンスとなるためスピーディーな事業開発が求められます。

このように、短期と長期で分類しておけば、戦略的な優先度を立てやすくなり、且つ事業に携わるメンバー間でも共有しやすい利点があります。

⑥戦略や施策に落とし込む

ここまで分類することができたら、分類した情報をもとに戦略や施策につなげていきます。


短期や長期の分類によって優先度が明確になれば、どこから着手すべきか導きやすくなります。

一般的には、「短期」+「脅威」によるリスクを避けつつ、「短期」+「機会」に注力することでビジネスチャンスを活かしていくと効果的です。


とはいえ、開発にかかる期間や社内リソースなどによって対応しきれないケースもあるため、自社の状況をふまえ現実的な事業戦略やマーケティング施策につなげていくことが重要です。

⑦検証と改善

PEST分析は、一度実施すればいいという訳ではありません。

市場環境やユーザー行動は常に変化し続けているため、定期的に分析し直していくことが重要です。


例えば、今まで脅威としていなかった要素が急に脅威となるケースも少なくありません。

PEST分析によって実行した戦略や施策であっても、途中段階で都度分析・検証していくことで、正しい方向性に改善・修正できるようにもなります。


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5.PEST分析を行う上での注意点

PEST分析は、マクロ面での外部環境要素を効果的に導くことができます。

それ故に、戦略や施策を策定する上で有効活用できますが、分析時には注意点も存在します。

以下の要素は分析前に把握しておくと効果的です。

短期間の分析には向いていない

PEST分析は、中長期的な視点で実施していく必要があります。

そのため、短期的な分析には向いていないため注意が必要です。


例えば、一般的に事業開発から販促までには半年から1年以上を要する傾向にあります。

これに対し、翌月の営業戦略やマーケティング施策などの短期的な戦略には、4つの要素を有効活用することができません。

内部環境の分析も求められる

ビジネスにおける戦略立案には、外部環境による要因だけでなく内部環境も考慮しておく必要があります。

内部環境要素は自社の強みや弱みのことを指し、ブランド力や営業力、技術力、資金力、顧客満足度などが挙げられます。


これらの要素は売上増加や利益拡大に直接影響してくる傾向にあり、PEST分析と同じく適切に分析・把握しておくことが重要です。

なお、内部環境の分析にはSWOT分析というフレームワークを活用すると効果的です。

分析に時間をかけすぎない

中長期的な視点で実施するPEST分析ですが、分析に時間をかけすぎないことも重要です。

PEST分析では、進め方でもふれたように、さまざまな要素で細かく情報を分類・分析していきます。


また、分析に足る情報を収集するためには、専門機関に調査をお願いするなど多くの時間を要します。

ただ、時間をかけ過ぎるあまり実行までに時間がかかってしまっては、機会損失につながる可能性も高まります。

そのため、目的を意識し、スピーディー且つ効率よく分析していくことが求められます。


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6.まとめ

新規事業の開発やビジネスチャンスを掴むためには、外部環境要因を適切に把握し、変化を見逃さずに対応していくことが重要です。

この分析を行う上で、PEST分析は有効活用できます。


4つの要素に応じて情報を収集・分類・分析できれば、新たなビジネスチャンスの発見や、リスクを事前に防ぐなど、効果的なビジネスにつなげることが可能になります。

今回紹介した内容も参考に、PEST分析を活用して適切な戦略立案につなげていきましょう。


本記事が皆様にとって少しでもお役に立てますと幸いです。


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この記事の監修者

笠間 慎

大学卒業後、人材紹介会社にコンサルタントとして従事。フリーランスとして独立。その後、フリーランス案件サイト「フリーランススタート」の立ち上げに編集長兼ライターとして参画し、月間30万人が利用する人気メディアへと成長させる。 2024年より、フリーランスボード編集長に就任。自身の経験を元に、フリーランスの活躍を支援する情報を発信している。

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目次

1.PEST分析とは?

外部環境分析とは

マクロ環境分析

ミクロ環境分析

PEST分析が重要視される背景

2.PEST分析の目的

マーケティングの方向性の明確化

環境の変化や脅威の把握

3.PEST分析における4つの要素

Politics(政治的要因)

Economy(経済的要因)

Society(社会的要因)

Technology(技術的要因)

4.PEST分析の効果的な進め方

①目的やゴール、環境要因の設定

②4つの要素に応じた情報収集

③「事実」と「解釈」に分類

④「機会」と「脅威」に分類

⑤「短期」と「長期」に分類

⑥戦略や施策に落とし込む

⑦検証と改善

5.PEST分析を行う上での注意点

短期間の分析には向いていない

内部環境の分析も求められる

分析に時間をかけすぎない

6.まとめ