マイクロ法人とは、主に小規模な事業を営む法人を指します。創業者が社長を務め、他に役員や従業員はいない形態です。法的な定義はありませんが、「会社法で定められた設立要件を最小限で満たしている法人」といった意味合いで使われます。
このような法人は経営体制がシンプルで運用しやすいため、個人事業主が事業拡大や税制メリットを求めて法人化する際に選ばれることが多いです。
この記事ではこのマイクロ法人について解説いたします。
目次
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1.マイクロ法人の基本知識
「マイクロ法人」という言葉は、実は会社法には存在しません。まずは、この言葉の意味からご説明しましょう。
マイクロ法人とは、代表者自身が一人で事業を行う形態の会社を指します。
一般的な会社が投資を募るために広く株主を募集したり、事業拡大のために複数の従業員や役員を置くのとは対照的に株主も役員・従業員も一人である点がマイクロ法人の最大の特徴です。
ただし会社法上、非公開会社であれば役員の人数や株主の人数に制限はありません。そのため、マイクロ法人も法律上は通常の会社と同じ扱いになります。したがって会社設立の手続きは会社法の規定に従う必要があり、設立時には会社設立登記も求められます。
マイクロ法人と一般的な法人の違い
マイクロ法人と一般的な会社の主な違いは、その規模にあります。
マイクロ法人は通常経営者のみで構成され、資本金も少額な場合がほとんどです。組織もシンプルで、意思決定が迅速に行えるのが大きな魅力です。
対照的に一般的な会社は従業員数が多く、資本金も大きい傾向にあります。組織体制も複雑なため、意思決定には時間を多く要します。
つまりマイクロ法人は、一般的な会社に比べて小回りが利く点が際立っています。
マイクロ法人と個人事業主の違い
マイクロ法人と個人事業主は法人化しているか否かが異なるだけで、事業内容に大きな違いはありません。税務上のメリットを享受するために個人事業主からマイクロ法人へ移行するケースが見られます。
中には、マイクロ法人と個人事業主の両方を活用する「二刀流」スキームを用いる例もあります。これは、法人の役員報酬を抑えることで社会保険料の負担を軽減する目的で行われます。後ほど解説します。
サラリーマンがマイクロ法人を作るのは違法なのか?
マイクロ法人は、どなたでも設立可能です。
なお現在、サラリーマンの方でも設立できますが注意が必要です。設立したマイクロ法人の登記簿謄本やマイクロ法人からの役員報酬の有無によって、勤務先に法人設立が知られてしまう可能性があるからです。
2.マイクロ法人の設立が検討されるケース
この章ではマイクロ法人の設立が検討される主なケースについて解説します。
個人事業から法人化するタイミング
まず一つ目のケースは個人事業主から法人成りし、これまで個人で行っていた事業活動を法人として継続する場合です。
新しいビジネスを始めるとき(二足のわらじ)
二つ目のケースは個人事業主の活動を続けながら、マイクロ法人に別の事業を行わせるものです。
これは通称「二刀流」とも呼ばれます。この場合、マイクロ法人と個人事業主が行う事業は明確に異なる必要があります。法人の役員報酬を抑えることで社会保険料の負担を軽減する目的で行われます。
この「二刀流」戦略を実行する際は、事業内容を明確に区別する必要があります。なぜなら個人事業主とマイクロ法人で同一の事業を行うと、税務当局から個人事業の収入を法人に分散させて租税回避を図っていると判断される可能性があるからです。
したがって個人事業主がマイクロ法人を設立する際には、それぞれの事業が明確に区分されていることを証明できるよう準備しておくべきでしょう。
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3.マイクロ法人設立の手順と進め方
マイクロ法人のメリットとデメリットを理解した上で設立を決めたなら、次にどのような流れで準備を進めるべきかを知っておく必要があります。
この章ではマイクロ法人を設立する際の具体的な手順と流れを説明しますので、ぜひ参考にしてください。
法人用の印鑑を用意する
登記手続きでは、申請書に会社の代表印を押印します。この代表印は登記申請時に一緒に提出する必要があるので、忘れずに準備しましょう。印鑑は即日作成も可能ですが会社の重要な印鑑なので、文具店やはんこ専門店での製作をおすすめします。
お店に依頼すると完成までに時間がかかる場合があるため、余裕を持って早めに準備を始めると安心です。理想的には、類似商号のチェックが完了する頃から準備を始めるのが良いでしょう。
定款を作成する
法人設立には、定款の作成も必須です。定款には必ず記載しなければならない「ていてい」があるので、作成前に必ず確認しましょう。
これらが抜けていると、せっかく作った定款が無効になってしまうため注意が必要です。
絶対的記載事項は以下の通りです。
事業の目的
商号
本店の所在地
設立時の出資される財産の価額、またはその最低額
発起人の氏名または名称および住所
これらの項目がしっかり盛り込まれていれば、問題ありません。
公証役場で定款の認証を受ける
定款が完成したら、次に認証の手続きを行います。これは記載内容が適切であるかを確認する工程で、会社の所在地を管轄する法務局内の公証役場で行われます。
定款は紙媒体でも構いませんが、PDF形式の電子定款でも認証が可能です。紙の定款には収入印紙代が必要ですが、電子定款であればこの費用は不要となります。
コストを抑えたい場合は、電子定款の利用がお勧めです。
資本金を払い込み、払込証明書を取得する
次に、資本金の払い込みを行います。資本金は1円からでも設立可能ですが、現実的には推奨されません。
業種によって目安は異なります。
資本金の払い込みを証明する書類が払込証明書で、会社設立時に必要となります。これを証明するには、出資代表者の個人名義の通帳の明細ページを利用します。
必要書類をまとめる際に契約書が複数枚になる場合は、差し替えを防ぐために契印を押すことも忘れないでください。
登記に必要な書類を準備する
次は、登記申請に必要な書類の作成です。基本的に以下の書類が必要となります。
登記申請書
登記事項を記載した別紙
印鑑届書
定款
発起人の決定書
就任承諾書
選定書
設立時代表取締役の就任承諾書
印鑑証明書
本人確認証明書
出資の払込みを証する証明書
資本金の額の計上に関する証明書
これらの登記書類は、A4サイズに統一して製本します。印鑑届書、印鑑証明書以外の書類を重ね、左側2箇所をホチキスで留めます。
もし不明な点が出てきた場合に備えていつでも相談できる専門家を見つけておくと、スムーズに対応してもらえて安心です。
法務局へ登記を申請する
準備が完了したら、いよいよ法務局で会社設立の登記申請を行います。この登記申請は資本金の払い込み後2週間以内に、代表取締役が行うのが原則です。申請自体は会社の本社所在地を管轄する法務局に必要書類一式を提出するだけなので、比較的シンプルです。
登記申請の際には収入印紙が必要となり、株式会社の設立登記の登録免許税額は資本金の額の0.7%です。ただしこの計算で算出された税額が15万円に満たない場合は、申請1件につき一律15万円となります。
そのため法務局で確認してもらってから、局内の販売所で購入することをお勧めします。郵送での申請も可能ですが、その場合は書類が法務局に到着した日が会社の設立日となるためその点に注意してください。
登記事項証明書と印鑑証明書を取得する
会社設立後、まずは登記簿謄本と印鑑証明書を受け取ります。
法務局で「印鑑カード交付申請書」を作成して窓口に提出すれば、印鑑証明書の発行に必要な印鑑カードが手に入ります。銀行口座の開設などで印鑑証明が必要となるため、数枚まとめて発行しておくと便利です。
法務局へ足を運んだ際に、その他の手続きもまとめて済ませておくと負担が軽減されます。登記簿謄本も発行してもらいましょう。印鑑証明書のように特別な準備は不要です。こちらも何かと必要になるため、数枚発行しておくことをお勧めします。
税務署など関係機関への届出を行う
会社設立後は、行政への手続きも確実に行いましょう。
法務局での手続きが済んだら、税務署へは「法人設立届」「青色申告の承認申請書」「給与支払事務所等の開設届出書」などを提出します。さらに、「源泉徴収の納期の特例の承認に関する申請書」「棚卸資産の評価方法の届出書」「減価償却資産の償却方法の届出書」も税務署に提出する書類です。
これらに加え社会保険関連の手続きを年金事務所・労働基準監督署・ハローワークで行います。具体的には厚生年金と健康保険は年金事務所、労災保険は労働基準監督署で雇用保険はハローワークがそれぞれの窓口となります。
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4.マイクロ法人のメリット
この章ではマイクロ法人のメリットについて解説します。
税金の負担を抑えられる
個人の所得税は累進課税であり、所得が増えるほど納税額も大きくなります。
最低税率は5%ですが所得が4,000万円を超えると最高税率の45%が適用され、所得の半分近くを税金として納めることになります。そこでマイクロ法人を設立することで、所得を法人と個人に分ければ個人の所得を抑えることが可能です。
これにより、個人の所得税負担を軽減できます。同時に法人の所得は役員報酬を経費として計上することで課税所得を減らし、社長が受け取る役員報酬には給与所得控除が適用されるため全体として個人の所得税を抑えることができます。
社会保険料を節約できる
個人事業主とマイクロ法人を両方持つ場合、個人事業主としての社会保険加入は不要です。
個人事業主は通常、「国民健康保険」と「国民年金」を支払います。一方マイクロ法人の役員は、これらの保険を法人の「健康保険」や「厚生年金」に切り替えられます。マイクロ法人から受け取る役員報酬を自由に調整することで、社会保険料の軽減が可能です。
そのため国民健康保険や国民年金と比較して、健康保険料や厚生年金保険料の支払額を抑えられるのが特徴です。
経費として認められる支出の幅が広がる
個人事業主では経費として認められる範囲が限られていますが、マイクロ法人化することでその範囲を広げられます。例えば、以下の費用が経費計上の対象になります。
役員報酬:給与(役員報酬)として支給すれば、法人の経費に計上できます(条件あり)
接待交際費:年間800万円までの定額控除限度額内であれば、基本的に損金として算入できます
家賃:社宅として取り扱うことで、住居部分のおおよそ50%にあたる賃料を費用として計上できる場合があります
生命保険の保険料:役員や従業員を被保険者とする生命保険の保険料は、所定の要件を満たせば経費として計上できます。
自動車保険の保険料:法人で購入した自動車の保険料を経費として計上できます
出張手当:役員や従業員への出張手当を経費として計上できます。
このようにマイクロ法人になることで経費にできる項目が増え、節税効果を得られる可能性が高まります。特に事業規模が大きくなるほど、その節税効果も顕著になるでしょう。
対外的な信用力が高まる
マイクロ法人を設立すると代表取締役社長という肩書きが得られ、個人事業を行うよりも取引先からの信用を得やすくなります。さらに個人とは取引しない法人も存在するため、法人を設立することで新たな顧客開拓に繋がる可能性もあります。
融資や資金調達のハードルが下がる
事業拡大のために資金を調達する際、株式の発行による投資誘致や金融機関からの融資といった方法が考えられます。具体的には、以下の点で資金調達が有利になります。
株式の発行: 株式会社であれば株式を発行できるため、個人事業主時代には難しかった大規模な資金調達がしやすくなります。
融資: 法人を対象とした融資の方が種類が多く、一般的に個人の場合よりも審査に通りやすい傾向があります。
このように資金調達の面で有利になる点も、マイクロ法人設立の大きなメリットと言えます。
条件を満たせば消費税が免除される
マイクロ法人を設立するメリットの一つに、消費税の免税事業者になれる点が挙げられます。これは法人も基準期間の課税売上高が1,000万円未満などの条件を満たせば、消費税の納税義務が免除されるためです。
個人事業主と法人は、それぞれ独立して消費税の納税義務を負います。
5.マイクロ法人のデメリット
この章ではマイクロ法人のデメリットについて解説します。
経理・事務作業が増える
マイクロ法人を設立すると、個人事業主だった頃よりも経理業務や事務手続きが複雑になります。個人事業主は年に一度の確定申告で済みますが、マイクロ法人ではそれに加えて決算申告も必要です。
具体的には貸借対照表・損益計算書・株主資本等変動計算書などの書類作成と提出が求められます。これらの複雑な書類を自分で準備できない場合、税理士への依頼が必要となりその分のコストも発生します。
設立・維持にコストがかかる
マイクロ法人設立には、費用やランニングコストが発生する点もデメリットです。またバーチャルオフィスや電話受付代行などを利用すれば、毎月これらの費用がかかります。
もし税金や社会保険料の節減が目的であればマイクロ法人の設立費用やランニングコストが得られる節減額を上回らないか、事前に確認しておく必要があります。
赤字でも法人住民税の支払いがある
マイクロ法人を設立すると、赤字経営であっても法人住民税の支払い義務が生じます。
個人事業主であれば、赤字の場合には所得税や住民税は免除され支払う必要はありません。しかし法人化すると、赤字であっても均等割の法人住民税を納付しなければならない点に注意が必要です。
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6.マイクロ法人設立を後悔しないための注意事項
この章ではマイクロ法人設立を後悔しないための注意点をご紹介します。
会社員が法人を作っても社会保険の節約にはならない
自身が設立したマイクロ法人以外に所属している会社で社会保険に加入している場合、マイクロ法人を設立しても社会保険料の節約効果は得られません。
そのため、基本的にサラリーマンにとってマイクロ法人は不要と言えるかもしれません。
節税を超えて違法と判断されないように注意
脱税とは意図的または不注意により、正当な理由なく税金を支払わない行為を指します。これは法律で罰せられる犯罪行為です。なお当然ですが節税と脱税は異なります。
節税とは、税法が認める範囲内で税負担を減らす行為を指します。例えば必要経費を正しく計上して課税所得を減らしたり税額控除などを活用して税金を少なくしたりすることは、税法で認められているため脱税には当たりません。むしろ余計な税金を払って資金繰りが苦しくならないよう、積極的に活用すべきです。
具体的な脱税の例としては、以下のようなものがあります。
収入や利益を実際より少なく申告する
経費や損失を実際より多く計上する
非課税対象や控除を偽って申告する
悪意を持って税金の支払いを滞らせる
税務申告や納税の義務を無視する
脱税を行った場合、以下のデメリットが生じます。
税務調査や追徴課税といった処分を受ける
刑事罰や行政罰などの制裁を科される
信用や社会的な評価が失われる
事業の継続や拡大が難しくなる
顧客や取引先との信頼関係が損なわれる
脱税を避けるために以下の対策を行いましょう。
正確かつ適切に税務申告や納税を行う
経理や会計の知識・スキルを習得する
会計ソフトなどを積極的に活用する
税務に関する最新情報や制度を常に把握する
税務に関する記録や証拠を整理し、保管する
設立目的を明確にする
マイクロ法人を設立して後悔しないためには、会社を設立する目的を明確にすることが肝心です。税制優遇など魅力的に見える点だけを追い求めると、後で後悔する可能性があります。
目的意識が曖昧だと、日々の煩雑な事務作業や手続きにモチベーションを維持できなくなるかもしれません。そうならないためにも、設立目的をはっきりさせることで、日々の業務への意欲を保ちやすくなるでしょう。
法人と個人の違いを理解する
マイクロ法人を設立する前に、法人と個人事業主の違いを正確に理解しておくことが重要です。
例えば、お金の管理方法が挙げられます。個人事業主の場合、事業で得たお金は自分のものとして自由に使えることが多いです。しかし、法人の場合は、会社のお金と個人の財産を厳密に区別しなければなりません。たとえ社長一人だけの会社であっても、会社の資金を個人的に使うことは原則として認められないのです。
7.マイクロ法人の設立は年収いくらから検討すべき?
税務上のメリットを追求するなら、所得が800万円から900万円程度が法人化を検討する目安とされます。この所得水準を超えると、個人事業主の所得税率が法人税率を上回り始めるためです。
一方社会保険料の負担軽減が目的であれば、一般的に扶養家族がいなければ所得200万円程度から扶養家族がいる場合は年収に関わらずマイクロ法人の設立を検討する価値があるでしょう。
ただしこれらはあくまで目安です。実際には個々の状況や事業内容によって最適な選択は異なります。
法人設立にかかる費用や維持費なども考慮し税理士などの専門家と相談しながら、ご自身の状況に合った判断をすることが重要です。
8.マイクロ法人を設立したいが、売上なしでも大丈夫?
マイクロ法人は売上がなくても設立は可能ですが、以下の点に注意が必要です。
売上がなくても申告は必須
廃業手続きには手間と費用がかかる
ペーパーカンパニーは脱税とみなされるリスクがある
ここでは、売上がない状態でマイクロ法人を設立する際の注意点について詳しく解説します。
たとえ売上がゼロであっても、税務署や自治体への申告書提出義務は発生します。もし申告を怠ると青色申告の承認が取り消されるだけでなく、税務調査の対象となる可能性も。
また本来売上があるにもかかわらず申告をしない場合は、納めるべき税金に加えて無申告加算税や延滞税といったペナルティが課される可能性もあるため、注意が必要です。売上がない場合の決算や税金については、
また廃業手続きには手間と費用がかかります。せっかくマイクロ法人を設立したものの、事業がうまくいかずに廃業するケースもあります。その際設立時と同様に、様々な手続きと費用が発生します。会社を解散し清算する手続きには、法務局への登記申請や官報への公告などが必須です。
これらの手続きを個人で行うのは難しいため、司法書士や税理士などの専門家へ依頼するのが一般的です。さらに、会社に残った財産を整理する際にも費用が発生する可能性があります。
法人を設立する際は将来的に廃業する可能性も考慮し、事前に手続きや費用について調べておくことが重要です。安易に法人化すると後で思わぬ負担が生じる可能性があるため、注意しましょう。
ペーパーカンパニーとは登記上は存在するものの、実際の事業活動がない会社を指します。税務署はペーパーカンパニーを監視しており、節税目的で設立するのはリスクが高い行為と言えます。
売上がない法人すべてがペーパーカンパニーに該当するわけではありませんが、事業活動の実態がない場合は、ペーパーカンパニーとみなされ、脱税と判断される恐れがあるため注意が必要です。
9.個人事業主がマイクロ法人を設立したあとの個人事業の扱いは?
個人事業主がマイクロ法人を設立する際、これまでの個人事業をどう扱うかという疑問が生じます。マイクロ法人設立後における個人事業の処理方法には、主に以下の2つの選択肢があります。
個人事業を廃業して法人に業務を移行する
マイクロ法人設立後に個人事業を廃業し、その事業を法人へ引き継ぐというシンプルな方法があります。この場合事業は全て法人で行われるため、個人事業の廃業年度には個人の確定申告と法人の申告の両方が必要ですが翌年からは法人の申告だけで済みます。
この方法の最大のメリットは、事業を拡大しやすくなる点です。個人事業に比べ法人は対外的な信用度が高く、新規顧客の獲得が容易になります。さらに、事業拡大のための融資や補助金も受けやすくなるでしょう。
事業規模が大きくなり収益が増えた場合でも多くの場合、個人事業主よりも法人のほうが税制面で有利になる傾向があります。
デメリットとしては顧客への法人化の周知や請求書・領収書・名刺などを個人事業主のものから法人仕様へ変更する手間や労力が発生する点が挙げられます。
個人事業は継続し、マイクロ法人では別のビジネスを行う
今後成長が見込まれる新たな分野に参入する際などには、個人事業を維持しつつマイクロ法人で別の事業を展開するのも良いでしょう。
この方法のメリットは個人事業とマイクロ法人で異なる事業を行うことで、事業ごとの管理がしやすくなる点です。また万が一個人事業と法人のどちらかの経営が悪化した場合でも、経営状態の良い方に一本化するといったリスクヘッジにもなります。
デメリットとしては個人事業と法人の両方で申告が必要になるため、事務作業が煩雑になることが挙げられます。
10.個人事業主がマイクロ法人を立ち上げた場合の確定申告の取り扱い
個人事業主がマイクロ法人を設立し両方の事業を続ける場合、個人事業の確定申告と法人の申告の両方が必要になります。
個人の確定申告つまり所得税の確定申告は毎年原則2月16日から3月15日までに、前年1年間の売上・経費・所得・税額などを計算した確定申告書を税務署に提出します。
一方法人の場合は、決算日の翌日から2ヶ月以内に法人税の申告書を税務署に提出する必要があります。例えば3月末が決算日なら、5月末が申告書の提出期限です。
このケースだと3月に個人の確定申告が終わったばかりなのに、すぐに5月に法人税の申告を終わらせなければなりません。個人と法人どちらも棚卸や減価償却といった決算業務が必要になるため、作業の手間も増えてしまいます。
加えて法人税の申告では申告書以外にも勘定科目内訳明細書・法人事業概況説明書などを作成しなければならず、これに時間がかかります。
また、法人税の計算は所得税よりも複雑です。
会計上は収益や経費になるものが税法上はそうならなかったり、その逆で会計上は収益や経費にならないものが税法上は認められたりするケースがあるためです。
個人事業とマイクロ法人の両方を運営する際には法人の決算月を個人の確定申告時期からずらすか、それが難しい場合は税理士に法人の決算を依頼するなど工夫が必要になるでしょう。
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11.まとめ
ここまでこの記事では税金や社会保険料の削減効果が期待できるマイクロ法人の設立について解説しました。
マイクロ法人化を検討する際はまずご自身が現在支払っている所得税・住民税・国民健康保険料・国民年金・国民年金基金の金額を正確に把握することが重要です。その上で税金や社会保険料がどの程度安くなるのかを、しっかりシミュレーションすることをお勧めします。
またマイクロ法人設立にあたりバーチャルオフィスなどの利用を考えている場合は、それらのコストも加味してシミュレーションを行いましょう。
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