昨今ライター・Webデザイナー・ネットショップ運営者など、個人が起業してフリーランスとして働くことが一般的になりつつあります。
インターネットの普及やテクノロジーの進化により個人でも気軽に事業を始めることができる環境が整いつつあり、以前に比べて起業のハードルが大幅に下がっているといえます。その結果、自身のスキルやアイデアを活かしてフリーランスとして独立することを選んでいる方達がいらっしゃいます。
フリーランスとして起業する際の大きなメリットの一つは、伝統的な会社設立に比べて初期費用が少なく済むことです。法人を設立する場合には登録免許税・定款の作成費用などさまざまなコストが発生しますが、フリーランスの場合はこれらを省略できるため資金面での負担が比較的軽くなります。
しかしながらそれでも一定の資金を用意しておくことで、起業後の生活や事業運営に余裕を持たせることに繋がります。特に収入が不安定になりがちなフリーランスの初期段階では、ある程度の貯金が安心材料となります。
とはいえ「具体的にどのくらいの資金を準備すればいいのか」という点については、多くの方が悩むポイントではないでしょうか。事業の種類・規模・最初に必要な経費は個人によって異なるため、一概にいくらとは言えませんが目安となる金額を把握しておくことは重要です。
特に機材・ソフトウェアの購入・名刺・ホームページの作成費用、さらに営業活動に必要な経費などどの程度の資金が必要になるかを事前に計算しておくと安心です。
そこでこの記事ではこれからフリーランスとしての起業を検討している方に向けて、どのような場面で資金が必要になるのかまたどれくらいの貯金額を目標にすれば良いのかといった具体的な目安について詳しく解説していきます。
初めてフリーランスとしての道を歩み始める方でもわかりやすいように、必要な資金の内訳や節約のポイントについても触れながら起業準備を効率的に進めるためのヒントをご提供します。
フリーランスとして働くことには自由な働き方や自己実現の機会といった大きな魅力がある一方で、資金管理や収入の安定性の確保といった課題もついて回ります。そのためこの記事を参考にして起業準備に必要な知識や情報をしっかりと身につけ、安心してフリーランスとしてのスタートを切れるようサポートします。
ぜひ最後までご覧いただき、理想的なフリーランスライフの第一歩を踏み出してください。
目次
1.フリーランスが開業時に必要な費用の目安は?
フリーランスと一口に言っても、開業に必要な資金は事業内容によって大きく異なります。ただし事業を始める際に必要な資金については、共通する考え方も存在します。
どのような事業でも共通する費用について、詳しく見ていきましょう。
適切な初期投資額を考えるポイント
初期投資を考える際にはどれだけ具体的に計画を立て、準備を進めたかが重要です。開業に向けてやるべきことを時系列で整理しそれぞれの項目について適切な見積もりや調査を行い、妥当な金額を求める準備が必要です。
例えば店舗を開く場合には物件の敷金や家賃が妥当かどうか、内装や設備が必要な場合にはどれくらいの時間をかけて調査して比較検討を行ったかがポイントです。
複数の見積もりを取ることや実際に現地や現物を確認することは、必ず行うべき基本です。特に初期投資が大きい店舗型のビジネスなどでは、計画の詳細さや代替案の有無が事業の成否を左右すると言っても過言ではありません。
押さえておきたい費用項目
この節では特に押さえておきたい費用項目について解説します。
パソコン
パソコンは現代の多くの職種において必須のツールとなっています。フリーランスエンジニアやWebデザイナーはもちろんその他の職種でもオンライン会議の実施や請求書作成など、パソコンを使うシーンは非常に多くなっています。
業務効率を向上させるためには、ある程度高性能なパソコンを選ぶことが重要です。そして動画配信などの特殊な用途が必要な場合には、さらに高い性能が求められることが想定されます。
パソコンはスペックや用途によって大きく異なりますが、おおよそ10~30万円がかかるでしょう。
インターネット通信費
自宅で業務を行う場合、インターネット接続環境を整えることが必要です。新たに有線回線を引く場合は、工事費用や契約手数料などの初期費用がかかります。一方ポケットWi-Fiやホームルーターを利用する場合、工事は不要です。
さらにインターネットを利用するためには、プロバイダーと契約を結ぶ必要があります。
インターネット通信費は回線速度や契約内容によって異なりますが、おおよそ月額5千円〜1万円程度かかるでしょう。
名刺・カード
フリーランスとして活動を始める際、名刺を準備することは非常に有益です。特に実績が少ない初期段階では自分の存在をできるだけ多くの人に知ってもらい、仕事を得るチャンスを広げることが重要です。名刺作成には以下の2つの選択肢があります。
自作
業者に依頼
業者に依頼する場合には費用がかかります。さらにイラストやロゴを追加する場合は、追加料金が発生することがあります。
業者に依頼する場合、名刺・カードはデザインや枚数によって異なりますが、おおよそ1千円〜5千円程度かかるでしょう。
会計管理ソフト
フリーランスは、納税申告を自分で行う必要があります。納税申告では、年間の収入と支出を計算し支払うべき所得税額を算出することが求められます。初めて納税申告を行う場合、時間がかかることが多いです。
納税申告をスムーズに進めるためには、クラウド会計ソフトウェアを活用することが効果的です。会計ソフトを使用する場合、月額費用が発生します。
会計管理ソフトは機能や価格帯も様々ですが、おおよそ年間1〜3万円程度かかるでしょう。
デスク・チェア
家庭で作業を行う際は、机・椅子はある程度高品質なものを選ぶことが賢明です。長時間座っていると腰の痛みや肩こりの原因になりうるため、身体への負担を軽減できる家具が推奨されます。
例えば、ゲーミング用の椅子は長時間の使用でも疲れにくいように設計されています。また人間工学に基づいたデザインの椅子もあります。作業用の机は資料を広げられる程度の広さがあると、作業がより快適に進めやすくなります。
デスク・チェアは価格帯が幅広く、おおよそ2〜20万円程度かかるでしょう。
業務用ソフトウェア
職務内容によっては、有料のアプリケーションを購入する必要が生じることがあります。例えばWebデザイナーの場合、Adobeのデザインツールは必須です。ブログ運営を行うなら、キーワード提案ツールが必要になるでしょう。
なおエクセルやワードなどは文書作成に便利ですがGoogleスプレッドシートなどで代用できることもあるため、その必要性を慎重に見極めてから購入するのが賢明といえるでしょう。
業務用ソフトウェアは業種や業務内容によって必要な費用が大きく異なります。
Webサイト開設費用
ビジネスの広報活動としてWebサイトを立ち上げる際には経費が発生します。Webサイトを作成するには、サーバー料金やドメイン料金が必要です。またWordPressなどのCMSを使用する場合、エンジニアリングスキルも求められます。サーバー料金やドメイン料金も発生します。
ドメイン料金にはSSL証明書料金などの付帯費用が含まれ、ドメイン移管時には移管手数料がかかります。さらに、2年目以降には更新料金も発生することに注意が必要です。
またWebサイト制作を外部に依頼する場合、制作費用がかかります。ページ数によっては、さらに高額になる可能性もあります。
Webサイト開設費用は例えば業者に依頼する場合、初期費用として数万円〜数十万円の費用が発生し、運用費用が月額1〜5万円程度かかります。
プリンター
職務内容によっては、プリンターが必要になることがあります。コンビニエンスストアなどで印刷することもできますが、印刷物の量が多い場合には何度も店舗に足を運ぶのは効率的ではありません。
低価格のプリンターなら比較的安価で購入することが可能です。デザイナーなどの職種では、高解像度での印刷品質が求められることが多いです。
プリンターは、印刷頻度や機能によって異なり、おおよそ1〜5万円程度かかるでしょう。
オフィス賃貸料
フリーランスとして独立したばかりの際は資金が限られていることが多いため、最初から本格的なオフィスを構えるのは現実的ではありません。エンジニアやデザイナーであれば、自宅で仕事をすることも可能です。しかし、自宅での作業では集中力を欠いてしまう方もいるかもしれません。
そうした場合、コワーキングスペースを利用するのが賢い選択です。また立地にこだわりたい場合は、バーチャルオフィスを検討するのも一つの方法です。バーチャルオフィスは、場所によって価格が異なりますがサービスは多数あります。
例えばコワーキングスペースやシェアオフィスは場所や使用頻度により異なりますが、おおよそ月額2〜30万円程度かかるでしょう。
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2.起業後の継続的な経費(運転資金)
起業後に事業を継続するための運転資金であるランニングコストは、業種や事業規模によって異なるため一概に言うことはできません。ただし主な費用である以下の4つについては、実際に収益が得られるまで確保しておくことが重要です。
オフィス賃料
起業してオフィスや事務所を賃貸する場合、継続的に家賃を支払い続ける必要があります。広さや立地条件によって金額は変動しますがランニングコストの中で大きな割合を占める費用のひとつです。
水道光熱費
オフィスや事務所を借りた場合だけでなくフリーランスとして自宅で仕事をする場合でも、電気代をはじめとする光熱費がかかります。
従業員の給与
人を雇う場合、人件費は継続的に支払わなければならないランニングコストの一つです。
3.フリーランスの運転資金の準備はどれくらい必要?
この章ではフリーランスの運転資金の準備はどれくらい必要なのかについて解説します。
運転資金が重要な理由
運転資金とは、事業を運営するために必要な資金のことです。日常的な取引ではまず「仕入れ」や「経費」の支払いが先に発生し、その後に売上が回収されるため先に支払うための資金が必要となります。運転資金はこのような「仕入れ」や「経費」に充てるお金に回されます。
開業後、すぐに事業が軌道に乗るわけではありません。また取引先の支払サイトによっては、売上から現金が手元に入るまでに時間がかかることもあります。
その間にも毎月の経費の支払いは続きますので、現金不足で支払いが滞らないように運転資金を確保することが重要です。
最低でも3カ月分の運転資金を確保しよう
開業時には、少なくとも3ヶ月分の経費をカバーできる運転資金を準備しておくと安心です。なお運転資金は、売掛金の回収期間に影響されます。小規模にスタートし回収期間が短ければ、必要な資金を比較的少なく抑えることも可能です。
一方事業を早期に拡大したい場合などは、ある程度の運転資金を確保しておく必要があります。この際「事業計画」が明確であれば、運転資金の目安を立てやすくなります。事業が軌道に乗るまでに時間がかかると予測される場合は、6ヶ月分の運転資金を準備しておくことが望ましいこともあります。
4.業種別に異なる開業資金の目安
開業に必要な資金は、業種によって大きく異なります。主要な業種ごとに確認してみましょう。
コンサルティング業など事務所を構える個人事業
個人で事務所を開設する場合、代表的な例としては税理士などの専門資格を活かした業務やコンサルティングやアドバイスを基盤にした事業があります。これらの事業では開業時に必要な原材料や在庫はなく、機械設備も最低限で問題ありません。
ライターやデザイナーなどパソコン一つで始められる仕事
ライター・デザイナー・ブロガー・アフィリエイトなどパソコンを使用する業種では、初期費用はパソコン代やインターネット通信費のみで済みます。その分節約できた費用を、広告や宣伝などのソフト面に充ててもよいでしょう。
ネット販売業
インターネットを活用する場合でも通信販売(物販)を行うとなると、初期費用はPC代や通信費だけでは済みません。通販サイトの制作費や、在庫を抱える場合には仕入れ費用が必要です。
また在庫の保管にはある程度の広さを持つ事務所が求められ、場合によっては別途倉庫を借りる必要もあります。さらに海外から仕入れる場合は、送料や関税も考慮しなければなりません。
一方専用のサイトを立ち上げるよりも楽天・Yahoo!ショッピング・Amazonマーケットプレイスなど通販専用のプラットフォームを利用すれば初期費用を抑えられ、開設の手間も軽減され集客も比較的しやすいという利点があります。
飲食店など多くの顧客を迎えることで利益を得る事業
飲食店・物販店・修理業など不特定多数の顧客が訪れることで収益を上げる事業では、主な初期費用として店舗を借りるための敷金・礼金・しばらくの家賃・内装や外装のデザイン・施工費用・設備の購入費用・仕入れ費用・人件費・スタッフの募集のための広告費などが必要です。
製造業
製造業は製品を生産しなければ収益を得られません。そのため、製品を作るための機械や原材料が大量に必要となります。その結果、開業資金も多く必要です。大規模な設備を必要とするライン製造の場合、人件費なども含めて数億円単位の費用がかかることがあります。
一方で3Dプリンターやオンデマンド印刷機など、製造機械の技術革新により初期費用を大きく抑えられるケースも増えてきており費用を削減できる場合もあります。運転資金については、事前に3ヶ月分以上を確保しておくことをおすすめします。
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5.フリーランスとして独立する前に整えておきたい準備
フリーランスになると社会的信用が低く見られがちで、クレジットカードの審査に通りづらくなることがあります。
クレジットカードを事前に作成しておく
クレジットカードや銀行口座をプライベート用と仕事用で分けておくと、確定申告時の帳簿作成がスムーズになります。そのためまだカードを持っていない方は、会社員としての在職中に少なくとも1枚は用意しておくことをおすすめします。
賃貸契約などの不動産手続きを完了させる
自宅を引っ越す場合でも事務所を借りる場合でも、フリーランスになると審査が厳しくなりがちです。そのため、これらの契約は会社員のうちに済ませておくのが望ましいでしょう。
ローンの見直しや計画を整理する
フリーランスになると、金融機関からの融資を受けることが難しくなります。特に会社員時代に住宅ローンを組んだ方は無理のない返済が可能かどうか、計画を再検討する必要があります。
ビジネス用の屋号を決定する
必須ではありませんが、あると便利なのが屋号です。自社サイトやメールアドレスはもちろんFacebookやTwitterなどのSNSを活用する際にも屋号を使うことで、認知度を高めやすくなります。
独自ドメインを取得する
屋号名でドメインを取得すると、自社のWebサイトやメールアドレスをそのドメイン名で運用できるようになります。
自分のWebサイトを構築する
Webサイトは、工夫次第で優れた営業マンのような役割を果たします。特に積極的な営業活動をしなくても仕事を受注できる可能性を広げてくれるため、可能であれば準備しておきたいものです。
名刺や封筒をデザイン・準備する
名刺や封筒に屋号・ドメイン・メールアドレスを記載しておくと、フリーランスとしての活動に役立ちます。
請求書や納品書のフォーマットを用意する
仕事を進める上で必須となるものですので、事前に準備しておきましょう。
会計ソフトを導入して管理を始める
控除額が大きい青色申告用の会計ソフトを導入しておくと良いといえるでしょう。簿記の知識がなくても帳簿を簡単に付けることができるため、青色申告の手間を大幅に減らすことができます。
安定した仕事の発注元を確保する
受注先は今後改めて増やすことができる可能性があるため全てを事前に準備する必要はありませんがフリーランスとしてのスタートには、少なくともある程度の受注先がある方が有利です。
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6.個人事業主向けの資金調達方法
個人事業主が資金を調達する際には、さまざまな方法があります。しかし事業を始めていない段階でまとまった資金を調達するのは、簡単ではないことが多いです。
資金をどのように活用しその結果としてどれくらいの利益が見込めるのかについて、客観的で明確な計画を立てることが重要です。また返済のスケジュールを考慮したうえで、特定の方法に固執せず複数の調達手段を検討することが賢明です。
銀行や信用金庫などの金融機関からの借入
銀行や信用金庫から直接融資を受ける方法です。ローンを申し込む際には必ず審査が行われますが開業時はまだ事業実績がないため、信用度が低く審査が厳しくなることが多いです。審査では自己資金や事業計画に加えて、健康状態や過去の信用情報も考慮されます。
また連帯保証については信用保証協会の制度を活用することで、保証審査に通れば融資を受けやすくなる可能性があるためこちらも検討する価値があります。
補助金・助成金の利用
補助金や助成金は国や地方自治体が事業資金を支援する制度で、一定の条件を満たせば申請が可能です。融資とは異なり返済不要のため、該当するものがあれば積極的に利用するのが賢明です。しかし補助金は基本的に後払いであるため、受け取るタイミングに注意が必要です。
クラウドファンディングの活用
クラウドファンディングはインターネットを通じて事業の支援者を募り、資金を調達する手法です。通常専用のプラットフォームを利用してプロジェクトを立ち上げ、インターネット上で共感を得られるように発信します。
事業計画を明確に説明し、支援を募ることが重要です。このプロセスはオンラインで完結し、審査も比較的緩やかです。特に購入型クラウドファンディングでは支援者に対して商品やサービスなどのリターンを提供することで、魅力的な商品やサービスを通じて多くの支援を集めることができる可能性があります。
ビジネスローンの利用
ビジネスローンは、事業資金を調達するために特化したローン商品です。銀行・クレジット会社・消費者金融業者などで提供されており、借りた資金は新規事業の立ち上げや運転資金など事業に関連する支払いに使用できます。
このローンの利点は一般的な融資よりも融資のスピードが速いことや、通常担保や保証人が不要である点です。しかし金利は通常の融資に比べて高くなるため、返済計画を慎重に立てることが重要です。
カードローンの選択肢
カードローンは、銀行や消費者金融が提供する借入専用のカードを使った個人向けの融資サービスです。借入限度額の範囲内であれば、ATMなどを通じていつでも何度でも自由に借り入れが可能です。
フリーランスの場合にはビジネス用クレジットカードでもキャッシングを利用できますが、カードローンはこれよりも金利が低いため長期間の利用を考えるとカードローンの方が有利です。
親族や知人からの借入れ
親・兄弟・友人・知人などから資金を借りる方法もあります。こうした場合利息や返済期限について明確な取り決めがされないことが多いですが、借りたお金を返さないと信用を失い関係に亀裂が入る可能性があります。
また返済をしないままでいるとそれが「贈与」とみなされ、贈与税の対象となることがあります。そのため開業資金を借りる際には返済条件を明確にし、契約書を交わすことが大切です。
自治体が提供する制度融資
制度融資は地方自治体が民間の金融機関や信用保証協会と提携して提供する融資制度で、主に小規模事業者を対象としています。申請した事業者が自治体の審査を通過すると、金融機関に紹介状が発行される仕組みです。
制度融資の内容や条件は自治体ごとに異なりますが、一般的に金利などが優遇されているため利用しやすいことが特徴です。
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7.勘定科目「開業費」とは
開業費とは開業日までの準備期間中にかかった費用を表す簿記上の勘定科目です。業種によって異なりますが、開業を決めてから実際に営業を始めるまでにさまざまな支出が生じます。
さらに開業費は節税に役立つ重要な費用であり、課税の繰り延べとして処理できる場合があります。開業前に発生した費用は領収書などを整理して管理し、忘れずに記録しておくことが必要です。以下で詳しく解説します。
開業費は繰延資産として計上・償却が可能
開業費は経費として一度に計上するのではなく、「繰延資産」として扱い償却することができます。これは貸借対照表の資産の部に計上し、毎年一定額を経費として計上することで課税の繰り延べのメリットを享受できる仕組みです。
開業費と創立費の違いを理解しよう
創立費は開業費と似ているものの実際には異なる意味を持つため、混同しないよう注意が必要です。
創立費とは法人が登記を行うまでに発生した費用のことを指します。この費用は法人にのみ該当し個人事業主が開業する際には創立費ではなく「開業費」を科目として計上することが求められます。個人事業主の開業は、創立費には該当しない点に留意しましょう。
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8.開業後の資金繰りに困らないために確認すべきポイント
独立後の資金不足を防ぎ安定した経済基盤を確保するためには、開業前にいくつかの重要な点を確認しておくことが大切です。
収入を得るためのスキルが備わっているか
開業前には、自分が提供できるスキルやサービスに対する需要があるかどうかを確認することが重要です。市場調査を行い、自分のスキルがどのように収益に繋がるかを検討しましょう。フリーランスになると、競合他社が多すぎて、自分の存在が小さく感じる瞬間もあるかもしれません。
これまでの経験や独自の知識・技術を明確に言葉にして商材化し、積極的にPRすることが長期的に成功を収めるためのカギといえるでしょう。
自分のスキルに対する適正な料金設定はできているか
会社員時代に行っていた業務をフリーランスとして続ける方は多いと思いますが、その場合会社員時代に得ていた単価と同じ金額で仕事を受けることは非常に稀です。会社での価格設定には、会社のブランド力や看板が影響しているためです。
業種ごとに異なるとは思いますが、フリーランスの市場単価の平均を事前に調べて自分が独立した場合に以下のような見積もりを立てておくと良いでしょう。
どのくらいの単価で
どれくらいの案件数をこなせそうか
何時間程度の作業が可能か
フリーランスの単価はマッチングサービスやクラウドソーシングサービスなどで確認することができます。ただし自分で営業してクライアントに見積もりを提示して仕事を獲得する場合、市場価格よりも高い単価で受けることも可能なケースがあります。
どのスキルを活かしてどのような方法で仕事を獲得するかを具体的にイメージしておくことが、成功のためには重要といえるでしょう。
貯金額は十分に確保しているか
フリーランスとしての活動を始める前には、一定の貯金があると安心です。収入が安定するまでの間の経済的な不安を軽減することができ、特に開業初期は収入が不安定になりやすいからです。
少なくとも3ヶ月分の生活費をカバーできる程度の貯蓄があれば、精神的にも安定して業務に集中できるでしょう。
9.フリーランスの初期費用を抑えるためのポイント
この章ではフリーランスの初期費用を抑えることに繋がるポイントについて解説します。
DIYを行う
オフィスの内装や家具をDIYすることで、コストを抑えながら個性豊かな空間を作り上げることができます。DIYは費用対効果が高いだけでなく、チームの絆を深めたり仕事への愛着が湧く環境づくりにも役立ちます。
以下の方におすすめです。
低予算で理想のオフィスを実現したい
チームの団結力を強化したい
愛着を持って働ける環境を整えたい
中古品を活用する
オフィス家具や事務機器を新品ではなく中古品に切り替えることで、初期コストを大幅に抑えることが可能です。最近では高品質な中古品を取り扱う専門店やオンラインマーケットが充実しており、予算やニーズに合った商品をスムーズに見つけることができます。
以下の方におすすめです。
コストを抑えながら、クオリティの高いオフィスを整えたい
環境に優しい選択をしたい
レンタル・リースを活用する
高額な設備が必要な場合でもレンタルやリースを利用すれば、フリーランスとして活躍する際初期費用を抑えつつ必要なタイミングで必要なものを手軽に利用できます。さらに経費として計上できるため節税効果も期待でき、資金の効率的な活用に繋がります。
以下の方におすすめです。
高額な初期投資を避けつつ、最新設備を導入したい
設備の保守や管理の負担を軽減したい
中長期的なコスト削減を目指したい
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10.まとめ
フリーランスとして開業するのは、最悪の場合でも資金ゼロからでも可能です。
大切なのは、うまくいかなかった場合に備えることです。リスクを抑えて独立を目指すなら開業に必要な基本的な手続きや初期費用について理解し、しっかりと準備をすることが重要です。特に自分の持っているスキルがどれほど稼げるか、市場での相場や適切な単価設定が独立後の安定した仕事のために非常に重要な要素となります。
独立当初は創業時に特有の支援制度・助成金・融資などを活用して、経済的なリスクを軽減する方法もあります。これらの情報を積極的に調べて、上手に活用しましょう。
本記事が皆様にとって少しでもお役に立てますと幸いです。