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適格請求書(インボイス制度)とは?書き方や注意すべき点、発行事業者登録の流れをわかりやすく解説

公開日:2025/06/15最終更新日:2025/06/15

インボイス制度(適格請求書等保存方式)の開始に伴い導入された「適格請求書(インボイス)」は、売手と買手の双方が扱うことのある請求書や納品書です。この適格請求書を発行するには、事前に適格請求書発行事業者としての登録が必須となります。また、その書き方や保存方法にはいくつか留意すべき点があります。


そこでこの記事では適格請求書の交付方法や取り扱い上の注意点について、分かりやすく解説します。

目次

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1.適格請求書(インボイス)は登録事業者だけが発行できる証憑書類

「適格請求書(インボイス)」とは、売り手が買い手に対して取引にかかる税率や消費税額などの詳細を記載し正確に伝えるための書類です。インボイス制度の導入に伴い、この書類の発行が求められるようになりました。


書類には販売金額・消費税額・税抜・税込の価格・取引当事者の情報などが明確に記載されており、通常の請求書や納品書も内容を満たしていれば適格請求書に該当します。


適格請求書は仕入税額控除を受ける際に必要不可欠で、正式な取引記録としても利用されます。そのため、書類の保存には細心の注意が必要です。不備のある請求書では消費税の控除が遅れたり否認されたりする可能性があるため、内容の正確性が非常に重要です。


また適格請求書を発行するには、税務署への申請を経て「適格請求書発行事業者」としての登録が必要です。

インボイス制度の目的と背景

インボイス制度の施行により、売り手は買い手の求めに応じて適格請求書を発行することが求められるようになりました。これにより適格請求書の正しい取り扱い方を理解することが、日々の経理業務を円滑に行ううえで欠かせません。


この節ではインボイス制度が導入された経緯や消費税の仕入税額控除に関する基本的なしくみについて、詳しく解説します。


インボイス制度とは2023年10月1日から始まった仕組みで、課税取引において相手方から求められた場合には「適格請求書(インボイス)」を発行することが義務づけられる制度です。


従来の制度では取引金額のみを記載した請求書でも税務処理が行われており、税額の算定ミスや不正な処理が起きやすいという課題がありました。こうした課題を解決するため、取引ごとに税率や税額などの詳細が明示された書類の導入が進められました。


インボイス制度の導入により電子請求書を通じて不正や記載ミスのリスクが軽減され、税務署によるチェックも効率化されます。その結果、税務手続きの合理化と公平な税負担の実現が期待されています。


さらにインボイスを発行することで取引内容が明確化され、売り手と買い手の双方にとって透明性と信頼性の高いビジネス関係を築くことが可能になります。

仕入税額控除について

「仕入税額控除」とは事業者が商品やサービスを仕入れる際に支払った消費税を、自身の納税額から差し引いて還付を受けられる税制度です。


この制度は消費税が生産・流通の各段階で二重に課税されるのを防ぎ、最終的に消費者が税金を負担する仕組みを維持するためにあります。また、国や地方自治体が必要な税収を確保する役割も果たしています。


ただし仕入税額控除を適用するには、請求書の適切な処理と保管が不可欠です。

インボイス制度導入の背景

2019年10月の消費税率引き上げで食料品などに軽減税率が導入され、消費税は10%と8%の二種類が混在するようになりました。これにより正確な消費税額を算出するには、各取引や商品にどちらの税率が適用されているかを明確にする必要が生じました。


そこで導入されたのがインボイス制度です。この制度により請求書に商品ごとの消費税率や消費税額などが明記されることで、正確な消費税額を把握できるようになります。


またインボイスに税率や税額が記載されることで売手は納税すべき消費税を受け取り買手は納税額から控除される消費税を支払うという対応関係が明確になり、消費税の円滑な転嫁にも繋がると考えられます。

適格請求書(インボイス)と区分記載請求書の違い

インボイスは売手から買手へ正確な適用税率や消費税額などを伝えるために、それらが明記された請求書のことですが具体的には、制度開始前に使われていた「区分記載請求書」に、特定の記載事項が加わったものになります。


インボイスの記載事項については後ほど詳しく解説します。

2.インボイス制度による主な変更点

インボイス制度の導入により、主に以下の点が変更されました。

  • インボイス(適格請求書)がないと仕入税額控除が適用されなくなる

  • インボイス(適格請求書)の発行は、適格請求書発行事業者のみ可能(免税事業者は発行不可)

  • インボイス(適格請求書)には交付義務と写しの保存義務が発生する

これらの変更点について、それぞれ詳しく見ていきましょう。

適格請求書(インボイス)がなければ仕入税額控除が適用できなくなる

買手側の課税事業者が仕入税額控除を適用するには売手からインボイス(適格請求書)を受け取り、それを保管する必要があります。インボイスがない取引については、原則として仕入税額控除はできません(ただし経過措置あり)。


なお消費税の申告で簡易課税制度を選択している場合は、買手側がインボイスを保存していなくても仕入税額控除が可能です。


また2029年9月30日までは、インボイスがない取引でも一定割合の仕入税額控除ができる経過措置が設けられています。

適格請求書(インボイス)を発行できるのは登録された事業者のみ

インボイス(適格請求書)を発行できるのは、登録番号を持つ「適格請求書発行事業者」のみです。


適格請求書発行事業者になるには、「適格請求書発行事業者の登録申請手続き」を行い、納税地を管轄する税務署長の承認が必要です。既に課税事業者であっても、この登録がなければインボイスは発行できません。


また免税事業者が適格請求書発行事業者に登録する場合、「課税事業者選択届出書」の提出が求められます。課税事業者になった場合は基準期間(前々年または前々事業年度)の売上金額に関わらず、必ず消費税の納税義務が発生します。

適格請求書(インボイス)の写しは保管が義務付けられる

適格請求書発行事業者はインボイス(適格請求書)を交付したら、法人・個人問わずその写しを保存する義務があります。


交付されたインボイスの写しは、交付日または提供日を含む課税期間の末日の翌日から2ヶ月を経過した日から7年間保存しなければなりません。加えて、その保管場所は「納税地またはその取引に係る事務所、事業所」に限定されます。


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3.適格請求書(インボイス)の記載事項・書き方

(参照:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/invoice_about.htm)


適格請求書として認められるには、以下の6つの項目が必要です。

  • ①請求先となる事業者の氏名または会社名

  • ②適格請求書発行事業者の名称および登録番号

  • ③取引年月日

  • ④取引内容(軽減税率対象品目である旨を含む)

  • ⑤税率ごとの合計対価の額(税抜きまたは税込み)、および適用税率

  • ⑥税率ごとの消費税額等

これらは区分記載請求書の項目に、「適格請求書発行事業者の氏名または名称および登録番号」「税率ごとの合計対価の額および適用税率」「税率ごとの消費税額等」が追加されたものです。

①請求先となる事業者の氏名または会社名

適格請求書を受け取る事業者の名前を記載します。

②適格請求書発行事業者の名称および登録番号

適格請求書には発行事業者である適格請求書発行事業者の名称と、登録番号を記載します。この登録番号は、適格請求書発行事業者として登録された事業者に割り当てられる固有の番号です。


既に法人番号を持つ事業者の場合、登録番号は「T + 法人番号」となります。一方個人事業主や法人格のない社団など、法人番号を持たない事業者には「T + 13桁の固有番号」が新たに発行されます。

③取引が行われた日付

取引年月日を記載します。これは、従来の区分記載請求書と同じです。

④取引の詳細(軽減税率対象品目の記載を含む)

取引の内容を記載します。これは区分記載請求書と同じです。軽減税率の対象品目である場合はその旨を明記しますが、「※」などの記号で示すことも可能です。

⑤税率ごとに区分した金額(税抜・税込の別を含む)とそれぞれの税率

標準税率(10%)と軽減税率(8%)ごとに、合計取引金額と適用税率を記載します。取引金額は税抜き、税込みのどちらでも差し支えありません。

⑥各税率に応じた消費税額

標準税率(10%)と軽減税率(8%)ごとに、合計した消費税額を記載します。インボイス制度では1つの適格請求書につき、税率ごとに1回のみ端数処理を行う必要があります。


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4.インボイス制度を導入することで得られるメリット

インボイス制度には、次のようなメリットがあります。

消費税の計算精度が向上する

これまで消費税率が一律だったのが10%と8%の二段階になったことで、請求書作成時に税率が混在して商品ごとに税率を区別して再計算する手間がありました。そこで商品ごとの消費税率や消費税額が詳しく記された「適格請求書」が発行されれば、消費税額の計算がより簡単かつ正確になります。


このように税額をより正確に計算することで、適切な申告と納税につながることがインボイス制度導入の目的の一つです。

電子化によって業務の効率が改善される

電子インボイスは適格請求書をデジタルデータとしてやり取りする仕組みで、紙の請求書に加え電子形式での発行と受領を可能にします。これにより、請求書の印刷や郵送にかかる費用や手間を大幅に削減できます。


受領側にとっては紙の請求書からデータを再入力する手間が省け、自動でのデータ取り込みが容易になります。また請求書やその控えを電子的に保管できるため、物理的な保管場所の確保やファイリング作業が不要になります。


電子インボイスの世界標準規格である「Peppol(ペポル)」は、海外で広く利用されています。


Peppolネットワークに対応した会計ソフトを使えば、誰でもPeppolを利用できます。規格が統一されているため海外取引が容易になる点は、Peppolを利用した電子インボイスの大きなメリットと言えるでしょう。

5.インボイス制度導入に伴う懸念点

インボイス制度には、次のようなデメリットが考えられます。

仕入税額控除の範囲が縮小するおそれがある

免税事業者と取引のある課税事業者は、仕入税額控除が減り結果的に消費税の納税額が増える可能性があります。


仕入税額控除は、売上にかかる消費税から仕入れにかかる消費税を差し引いて計算されます。インボイス制度が始まる前は、免税事業者からの仕入れでも仕入税額控除が適用できました。


しかしインボイス制度導入後は、適格請求書の交付と保存が仕入税額控除の条件となります。そのため適格請求書を発行できない免税事業者からの仕入れについては、支払った消費税額を仕入税額控除の対象にできません。これは消費税額が増え、税負担が増加する可能性があることを意味します。


理想的には取引先の免税事業者に課税事業者になってもらうことですが、すべての取引先がそうなるのは現実的ではありません。


今後は売上税額の2割を消費税の納付税額とする「2割特例」のような経過措置を活用しながら、取引先のインボイス登録状況を確認したり既にインボイス登録済みの取引先を探したりするなどの対策が必要になるでしょう。

免税事業者は売上に影響を受ける可能性がある

免税事業者の場合、取引先との関係を維持するため課税事業者への転換を余儀なくされるケースが出てきます。インボイス(適格請求書)を発行できるのは課税事業者のみだからです。


インボイス発行事業者になると免税事業者はこれまで免除されていた消費税を納める義務が生じるため、納税額が増加する可能性があります。

6.適格請求書発行事業者になるための登録手順

適格請求書発行事業者として登録する際の手順を説明します。具体的な手続きとその内容を見ていきましょう。

登録用の申請書を準備する

まず、適格請求書発行事業者の登録申請書に必要事項を記入します。この申請書は国税庁のWebサイトからダウンロード可能です。申請書に以下の情報を記載またはチェックします。

  • 提出日

  • 所轄税務署

  • 申請者住所

  • 納税地

  • 事業者名

  • 代表者氏名

  • 法人番号

  • 事業者区分などの事業情報

  • マイナンバー(個人事業主の場合)

  • 上部(免税事業者の確認欄)

  • 下部(登録要件の確認欄)

所轄の税務署に申請書を提出する

登録申請書は、以下のいずれかの方法で税務署に提出します。

  • 管轄地域の税務署に直接持参する

  • 管轄地域のインボイス登録センターへ郵送する

  • e-Taxで申請する

e-Taxでの申請を除き本人確認書類の準備が必要です。本人確認書類として用意するものは以下の通りです。

  • マイナンバーカード

  • 通知カードなどの番号確認書類と、運転免許証などの身元確認書類のセット

  • 上記の本人確認書類の写し

e-Taxで申請する場合はe-Taxソフトにアクセスし、マイナンバーカードでログインします。利用者識別番号を取得したら、登録申請データを作成して送信しましょう。

税務署による審査・登録・情報公開が行われる

申請書類の提出後、税務署またはインボイス登録センターによる審査が行われます。承認されるとあなたは適格請求書発行事業者として登録簿に記録され、その後国税庁のインボイス制度適格請求書発行事業者公表サイトで情報が公開されます。


公開される内容は以下の通りです。

  • 適格請求書発行事業者の氏名または名称および登録番号

  • 登録年月日

  • 法人(人格のない社団等を除く)の場合は、本店または主たる事務所の所在地

  • 特定国外事業者以外の国外事業者の場合は国内における資産の譲渡等に係る事務所・事業所・その他これらに準ずるものの所在地

登録完了の通知を受け取る

登録手続きが完了すると、その旨の通知が届きますので確認しましょう。管轄の税務署へ直接提出した場合や郵送でインボイス登録センターへ書類を送付した場合は、所轄税務署から登録番号と登録完了の通知が送付されます。


なおe-Taxで申請した場合は、登録済みのメールアドレス宛に登録通知データを確認するためのメールが届きます。

7.インボイス対応時に注意すべきポイント

適格請求書(インボイス)への対応には、多くの注意すべき点があります。見落としがちなポイントについて解説しましょう。

保存期間や保存形式を正しく理解する

適格請求書(インボイス)は、発行側も受領側も一定期間の保存が義務付けられています。これは通常の請求書と同じで、課税期間末日の翌々月申告期限から7年間の保存が必要です。


またインボイスを含む請求書は電子データでの保存も認められています。その際は、電子帳簿保存法の規定に従って適切に管理しましょう。

交付義務が免除されるケースを確認しておく

適格請求書(インボイス)は一部の取引で交付が免除されており、そうした取引ではインボイスがなくても仕入税額控除を受けられます。

適格請求書(インボイス)の交付義務が免除される場面

以下の取引は適格請求書の発行が不要であり、インボイスがなくても仕入税額控除の対象となります。

  • 公共交通機関による旅客運送:鉄道・バス・船舶などによる3万円未満の運賃

  • 自動販売機・自動サービス機での取引:3万円未満で、機械が代金受領から商品提供までを完結させるもの(コインパーキングや自動券売機のように商品の譲渡を伴わないものは除く)

  • 郵便サービス:郵便切手を対価としてポストに投函された郵便物

  • 卸売市場での生鮮食料品販売:出荷者から委託を受けた事業者が卸売として行う場合のみ

  • 農林水産物の委託販売:生産者が農業協同組合・漁業協同組合・森林組合などに委託し、生産者を特定しない無条件委託・共同計算方式で行う販売のみ。

これらの取引では、適格請求書が発行されなくても仕入税額控除を適用できます。

適格請求書(インボイス)を発行するには登録が必要

これまでの請求書は、誰でも自由に発行できます。しかし適格請求書(インボイス)を発行できるのは、事前に登録を済ませた課税事業者、すなわち適格請求書発行事業者のみです。


適格請求書発行事業者として登録した場合は取引先から求められたら、必ず適格請求書を発行しなければなりません。

仕入税額控除を受けるには適格請求書(インボイス)が必要

仕入税額控除とは課税事業者が消費税を納める際、仕入先に支払った消費税分を差し引ける制度です。


2023年9月までは仕入先からの請求書形式にかかわらず、実際に支払った消費税が仕入税額控除の対象でした。しかし適格請求書等保存方式(インボイス制度)開始後は、原則として適格請求書に記載された消費税のみが控除対象となります(経過措置あり)。そのため、適格請求書とそれ以外の請求書は区別して処理する必要があるでしょう。


ただし簡易課税制度を選んでいる事業者は、みなし仕入率で消費税の納税額を計算します。この場合そもそも仕入税額控除を利用しないため、適格請求書の有無が納税額に影響することはありません。


簡易課税制度は売上にかかる消費税額から事業内容に応じた一定割合(40~90%)を「みなし仕入率」として控除できる制度です。利用できるのは、以下の条件を満たす課税事業者です。

  • 「消費税簡易課税制度選択届出書」を課税期間の前日までに提出している

  • 年間の課税売上高が5,000万円以下

登録事業者以外の適格請求書(インボイス)は経過措置が適用される

インボイス制度が始まると、原則として適格請求書発行事業者以外の免税事業者などから発行された請求書では仕入税額控除ができません。しかし制度開始から6年間は、免税事業者からの課税仕入れに対して経過措置が設けられています。


具体的には2023/10/1〜2026/9/30は仕入れ額の80%が控除可能で、2026/10/1〜2029/9/30は50%が控除可能です。この経過措置を利用するには、以下の要件を満たす必要があります。

  • 免税事業者などが適格請求書と同等の内容を記載した請求書を発行し、それを保存すること

  • この特例を利用する課税仕入れであることを明確に記載した帳簿を保存すること


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8.課税事業者として押さえておきたいポイント

課税事業者の方がインボイス制度に関して押さえておくべき実務上のポイントを説明します。

  • 仕入税額控除の適用条件を満たしているか確認する

  • 請求書がない取引の取り扱いを確認する

  • 社内の経費精算のルールを定める

  • 仕入税額控除が適用されない取引を把握する

仕入税額控除の対象となる取引かをチェックする

仕入税額控除の適用を受けるためには、以下の3つの要件のいずれかを満たす取引である必要があります。

  • 売手が発行するインボイス、または簡易インボイスがあること

  • 買手が作成する仕入明細書などがあること

  • 卸売市場で委託を受けて行われる卸売業務の取引であること

請求書が存在しない取引の処理方法を確認する

インボイス制度のもとでは、仕入税額控除を適用するためにインボイス(適格請求書)が必須です。このインボイスは通常の請求書だけでなく、特定の事業者に認められる簡易インボイスでも対応可能です。


簡易インボイスは小売業や飲食業など、不特定多数の顧客にサービスを提供する事業者が記載事項を簡略化した形で発行できる書類を指します。


また適格請求書発行事業者には「相手方からインボイスの発行を求められた場合に、これに応じる義務がある」と定められています。したがって買い手・売り手どちらの立場でも、取引先と請求書の発行方法について事前に確認し合っておくとスムーズでしょう。

社内での経費精算ルールを整備する

インボイス制度の導入は、社内の経費精算業務に影響を与える可能性があります。例えば法人カードを使った場合必ず領収書を保管して、取引内容に応じた仕訳が必要になります。


これにより経理担当者の負担が増えることも考えられるため、業務が円滑に進むよう事前に体制を整備しておくことが重要です。

控除対象外となる取引を把握しておく

免税事業者との取引では仕入税額控除ができません(ただし、一定割合を控除できる経過措置はあります)。もし仕入税額控除が適用できない取引が多い場合、インボイス制度の開始前後で自社の収益に影響が出る可能性があります。


経過措置期間中は影響が少ないと予想されますが、長期的な視点でのシミュレーションが不可欠です。


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9.免税事業者がインボイス制度への対応で行うべき準備

インボイス(適格請求書)を発行できるのは課税事業者のみであるため、免税事業者はまず適格請求書発行事業者になるか否かを決める必要があります。


適格請求書発行事業者になることを選んだ場合は、「適格請求書発行事業者の登録申請書」を管轄の税務署長へ提出してください。その後の手続きは、課税事業者と同じです。


通常免税事業者が課税事業者になるには「消費税課税事業者選択届出書」の提出が必要ですが、2023年10月1日から2029年9月30日までの間に登録を受ける場合は、この提出は不要です。


また課税事業者になった後に消費税の申告で簡易課税制度を利用したい場合は、別途「消費税簡易課税制度選択届出書」を管轄の税務署長に提出する必要があります。

10.一部業種では「簡易インボイス(特定簡易請求書)」の発行が可能

小売業・飲食店・写真業・旅行業・タクシー業・駐車場業など、不特定多数の顧客に商品販売やサービス提供を行う事業者は適格請求書の代わりに「適格簡易請求書」の発行が認められています。


この適格簡易請求書(別名:簡易インボイス)は、通常の適格請求書よりも記載内容が簡略化されています。


必要な情報が記載されていればレシートや領収書も適格簡易請求書として認められ、手書きのものでも問題ありません。

11.インボイス対応で受領側(買い手)が確認すべき点

インボイスを受け取る際に押さえておきたいポイントは、主に以下の点です。

  • インボイスの要件を満たす記載があるか確認する

  • 消費税の計算式が正しいか確認する

  • 一定期間の保存義務がある

  • 誤りや不備がある場合には、修正を依頼する

それぞれの詳細について解説します。

受け取った請求書が適格請求書(インボイス)の要件を満たしているかチェック

仕入税額控除を受けるためには、受け取った書類がインボイスの要件を満たしているか確認することが重要です。要件を満たさない場合インボイスとして認められず、結果的に消費税の負担が増えてしまいます。


確認すべき主なポイントは次の通りです。

  • 記載要件がすべて正確に記載されているか

  • 登録番号が正しいか

登録番号は国税庁の適格請求書発行事業者公表サイトで確認できますが、手動での照会はかなりの負担となるでしょう。

内容の再計算を行う必要がある

インボイス制度では従来の区分記載請求書と異なっており税率ごとの消費税額等の端数処理は「1つのインボイスにつき、税率ごとに1回のみ」と定められています。端数処理の方法が正しいか確認しましょう。


さらにインボイスに記載された税区分ごとの消費税額や請求合計金額が合っているか、必ず検算してください。数字に誤りがあると、そのインボイスは無効と見なされます。

発行側と同様に保存期間を守る必要がある

受け取ったインボイスも、売り手と同様に一定期間の保存義務があります。保存期間は、課税期間の末日の翌日から2ヶ月が経過した日より7年間です。


もしインボイスを電子データで受け取った場合は、電子帳簿保存法に従って保存する必要があります。法改正により原則として電子データで受領した書類は、電子データのまま保存することが義務付けられました。電子帳簿保存法に則った適切な保存と管理が求められます。

誤記や漏れがあれば発行者に修正依頼をすること

受け取ったインボイスに誤りや不備があれば、発行者へ修正や再交付を依頼しましょう。


ただし買い手自身がインボイスを修正し、その修正内容を売り手に確認してもらった上で保存した場合でもインボイスとして認められます。その際は、「売り手に確認した旨と日付」を明確に記載することが重要です。


また修正前のインボイスが誤って正しいものとして扱われないよう、修正箇所を明記するか適切に管理してください。

12.まとめ

インボイス制度の開始により、多くの事業者で適格請求書の交付や保存の機会が増えるでしょう。記載事項が増えたり、保存方法にも注意点があったりするため、正確な取り扱い方を把握しておくことが重要です。


また、適格請求書の発行には事業者登録手続きが必要です。インボイス制度は既に始まっていますので、登録を検討している場合は速やかに対応を進めることをおすすめします。


本記事が皆様にとって少しでもお役に立てますと幸いです。


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この記事の監修者

笠間 慎

大学卒業後、人材紹介会社にコンサルタントとして従事。フリーランスとして独立。その後、フリーランス案件サイト「フリーランススタート」の立ち上げに編集長兼ライターとして参画し、月間30万人が利用する人気メディアへと成長させる。 2024年より、フリーランスボード編集長に就任。自身の経験を元に、フリーランスの活躍を支援する情報を発信している。

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目次

1.適格請求書(インボイス)は登録事業者だけが発行できる証憑書類

インボイス制度の目的と背景

仕入税額控除について

インボイス制度導入の背景

適格請求書(インボイス)と区分記載請求書の違い

2.インボイス制度による主な変更点

適格請求書(インボイス)がなければ仕入税額控除が適用できなくなる

適格請求書(インボイス)を発行できるのは登録された事業者のみ

適格請求書(インボイス)の写しは保管が義務付けられる

3.適格請求書(インボイス)の記載事項・書き方

①請求先となる事業者の氏名または会社名

②適格請求書発行事業者の名称および登録番号

③取引が行われた日付

④取引の詳細(軽減税率対象品目の記載を含む)

⑤税率ごとに区分した金額(税抜・税込の別を含む)とそれぞれの税率

⑥各税率に応じた消費税額

4.インボイス制度を導入することで得られるメリット

消費税の計算精度が向上する

電子化によって業務の効率が改善される

5.インボイス制度導入に伴う懸念点

仕入税額控除の範囲が縮小するおそれがある

免税事業者は売上に影響を受ける可能性がある

6.適格請求書発行事業者になるための登録手順

登録用の申請書を準備する

所轄の税務署に申請書を提出する

税務署による審査・登録・情報公開が行われる

登録完了の通知を受け取る

7.インボイス対応時に注意すべきポイント

保存期間や保存形式を正しく理解する

交付義務が免除されるケースを確認しておく

適格請求書(インボイス)の交付義務が免除される場面

適格請求書(インボイス)を発行するには登録が必要

仕入税額控除を受けるには適格請求書(インボイス)が必要

登録事業者以外の適格請求書(インボイス)は経過措置が適用される

8.課税事業者として押さえておきたいポイント

仕入税額控除の対象となる取引かをチェックする

請求書が存在しない取引の処理方法を確認する

社内での経費精算ルールを整備する

控除対象外となる取引を把握しておく

9.免税事業者がインボイス制度への対応で行うべき準備

10.一部業種では「簡易インボイス(特定簡易請求書)」の発行が可能

11.インボイス対応で受領側(買い手)が確認すべき点

受け取った請求書が適格請求書(インボイス)の要件を満たしているかチェック

内容の再計算を行う必要がある

発行側と同様に保存期間を守る必要がある

誤記や漏れがあれば発行者に修正依頼をすること

12.まとめ