内定を得て、入社までもう一歩という人の中には、健康診断の結果によって入社できなくなるのではないかと不安を感じている人もいるのではないでしょうか。しかし、一部の業務を除いて、健康診断の結果が採否に影響することはありません。
転職時に健康診断書の提出が求められる主な理由として、企業は従業員を適切に管理したり、配置を検討したりする上で健康状態の把握が必要であるためです。つまり、入社することを前提に提出が求められているのです。
本記事では、転職時の健康診断について求められる理由、自己負担額の有無、必要な診断項目などについて解説します。
目次
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1.転職時に健康診断が求められる理由
企業が内定時に健康診断書の提出を求めてくるのは、「雇入れ時健康診断」を行うことが法律で義務付けられているからです。労働安全衛生規則第43条では、事業者に対し、常時使用する労働者に1年以内ごとに1回、医師による健康診断(定期健康診断)を実施する必要があると定められています。
また、一部の職種では職業適性の判断や労働者の安全の確保のために、健康診断を義務付けています。例えば、ドライバーは運転中に意識障害などの症状が発生すると重大な事故につながりますし、調理補助は特定の食べものにアレルギーがあれば危険な状態に陥るリスクがあります。
2.転職時の健康診断書の取得方法
転職時に健康診断書を取得する方法は以下の2つです。
健康診断を受ける | 医療機関で健康診断を受診します。健康診断の予約をする際に「雇入れ時の健康診断が必要」と伝えれば、必要な項目を全て検査してもらえます(一部の職業を除く)。
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前職で受けた健康診断の結果を提出する | 前職で健康診断を3カ月以内に受診している項目については、その結果を提出することもできます。雇入れ時健診と会社で実施する年1回の定期健康診断は検査の項目が同じであるためです。
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3.転職時の健康診断は内定取り消しになる?
内定が健康診断の結果を理由に取り消されることは通常ありません。
入社時に健康診断書の提出が求められるのは、労働安全衛生法で企業側が社員の健康管理を行うことが義務付けられているためです。
ただし、以下のような場合は健康診断の結果で内定が取り消される可能性があります。
高所の作業だが貧血がある
タクシーの運転業務だが意識障害がある
結核や特定の感染症が確認され、従業員や顧客に感染リスクがある
航空機で乗務するが足が悪く、動作が遅い
食品工場でアレルギーがある食材を扱う
本人や周囲に危険が及ぶ健康状態の場合は安全面から内定の取り消しがやむを得ないと判断されます。企業には従業員を守る義務があるためです。
ちなみに、エンジニアはデスクワークがメインであり、高所での作業や食物アレルギーを起こすような業務は一般的にないため、健康診断の結果が内定に影響することは他の職業と比べても少ないでしょう。
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4.転職時に必要な健康診断の項目
転職時に必要な健康診断の項目は法律で定められており、従う必要があります。転職時に健康診断の受診が必要な項目には以下のものがあります。
雇入れ時の健康診断(安衛則第43条) |
・既往歴及び業務歴の調査 ・自覚症状及び他覚症状の有無の検査 ・身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査 ・胸部エックス線検査 ・血圧の測定 ・貧血検査(血色素量及び赤血球数) ・肝機能検査(GOT、GPT、γ―GTP) ・血中脂質検査(LDLコレステロール,HDLコレステロー ル、血清トリグリセライド) ・血糖検査 ・尿検査(尿中の糖及び蛋白の有無の検査) ・心電図検査 |
5.転職時の健康診断は自己負担?
転職時の健康診断の費用は企業が負担する場合と個人が負担する場合があります。どちらが負担するかは企業によって異なるため一概にはいえません。ただし、採用選考の途中で健康診断を受ける場合は本人が費用を負担し、内定した後の場合は企業が費用を負担することが多い傾向にあります。
本人が健康診断の費用を負担する場合、7,000~15,000円になります。健康診断は健康保険の適用外であるため金額は一律ではありません。
なお、入社後に1年ごとに受ける健康診断の費用は企業負担になります。労働安全衛生法において健康診断の実施は事業者の義務とされていますので、費用は企業側が負担することになります。
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6.健康診断の受診時期と間に合わないときの対処法
転職時の健康診断の受診時期は内定後~入社前が目安になります。健康診断を受けてから診断書が手元に届くまで時間を要することもあるため、企業から健康診断の受診を指示されたら可能な限り早急に動きましょう。
各種事情やクリニック・病院の予約状況などが理由となり、健康診断書の提出が期限までに間に合わないようであれば、企業に速やかに相談してください。その後、企業の指示に従います。
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7.健康診断書の他に健康に関する告知書が求められることもある
企業によっては健康診断の検査項目に併せて、健康に関する告知書の提出を求めてくることがあります。
健康診断の検査項目は法律で定められているものの、健康に関する告知書は法律で定められていません。企業は労働者に告知書を求めることが法的に認められていますが、労働者側の回答は任意です。
とはいえ、告知書の提出を求められた場合、お互いの信頼関係や自身の働きやすい環境を確保するためにも正直に回答することをおすすめします。企業は配置を検討する際に告知書の内容も参考資料の1つにするため、自分にとって働きやすい配置になる可能性が高いためです。また、持病などによって通院が必要な場合、事前にその旨を伝えておくと通院しやすくなります。
8.転職時の健康診断に関するよくある質問
転職時には健康診断書の提出が求められますが、健康診断書について疑問に思うことや不安に思うこともあるでしょう。そこで、転職時の健康診断に関するよくある質問に回答します。
転職時の健康診断に関するよくある質問として、以下の4つが挙げられます。
転職時の健康診断はどこで受けますか?
転職時の健康診断の結果は前の会社のものでもよいですか?
エンジニアとして働きたいのですが糖尿病を抱えていると選考で不利になりますか?
SEに転職するのですが、健康診断で鬱病はバレませんか?
それぞれ確認していきましょう。
転職時の健康診断はどこで受けますか?
転職時の健康診断は企業から指定された医療機関がある場合を除き、自分で検診先を探します。行きつけの病院・クリニック、自宅最寄りの病院・クリニックに問い合わせてみてください。
転職時の健康診断の結果は前の会社のものでもよいですか?
前職で健康診断を3カ月以内に受診している場合に限っては可能なこともあります。3か月以内に健康診断を受けた項目はその結果を提出しても問題ありません。
ただし、提出する定期健康診断書に省略した項目があれば、前職で健康診断を受けた時期によらず再度検査が必要です。
エンジニアとして働きたいのですが糖尿病を抱えていると選考で不利になりますか?
エンジニアとして、健康診断で糖尿病が発覚しても選考で不利になったり、内定が取り消されたりすることは基本的にありません。糖尿病の症状が業務において本人や周囲に危険をもたらすとは考えにくいためです。
ただし、糖尿病を抱えている場合は自身の症状や状態を会社に伝えておくとよいです。糖尿病には喉が渇いたり、疲れやすかったりという症状があります。こまめな水分補給を許可してもらう、休憩時間を確保してもらうなど配慮してもらえるように交渉が必要です。
SEに転職するのですが、健康診断で鬱病はバレませんか?
転職時の健康診断では鬱病を含む精神疾患を直接診断する項目はありません。そのため鬱病が健康診断書から発覚することは考えられません。ただし、健康診断の際に問診票で「現在治療中の病気」「過去の病歴」を記載する欄で自己申告した場合は会社側に伝わることもあります。
転職時の健康診断では自己申告しない限り、鬱病であることが会社に伝わることはありません。しかし、鬱病による症状が心配な人は自ら伝えておくことをおすすめします。
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9.まとめ
転職時における健康診断書の提出は法律で定められているため、正社員として就職する場合は健康診断は避けて通れません。会社から健康診断書の提出を求められたら、健康診断の予約をできる限り早く行うようにしてください。
健康診断の結果によって選考に影響したり、内定が取り消されたりすることは基本的にありません。特に、エンジニアや事務職などの場合は持病が業務における安全性に大きく影響することは少ないため、健康診断の結果による内定取り消しを心配することはないでしょう。
転職時の健康診断の結果を自身でも確認し、将来のためにも健康管理をしっかり行うようにしてください。
本記事が皆様にとって少しでもお役に立てますと幸いです。
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