近年、多様な働き方が注目される中で、「契約社員」という働き方を選択する人が増えています。しかし、契約社員と正社員、あるいは派遣社員やフリーランスとの違いについて、漠然としたイメージしか持っていない方も少なくありません。
本記事では、契約社員の基本的な定義から、正社員や派遣社員、フリーランスとの具体的な違いについて、雇用期間、給与、福利厚生などの多岐にわたる側面から詳しく解説します。また、契約社員に向いている人の特徴や、契約社員から正社員を目指す方法についてもご紹介します。
自身のキャリアやライフスタイルに合った働き方を見つけるための一助となれば幸いです。
目次
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1.契約社員とは
契約社員とは、企業と期間を定めて労働契約を結ぶ従業員のことを指します。一般的には、数カ月から数年といった単位で契約期間が定められ、契約期間の満了とともに契約が終了するか、更新されるかが決まります。
正社員が無期雇用であるのに対し、契約社員は有期雇用であることが最大の特徴です。企業は特定のプロジェクト期間や繁忙期のみ人員を確保したい場合、あるいは正社員登用を前提とした試用期間として契約社員を採用することがあります。
契約社員として働きたい人にとっては、特定のスキルや経験を活かして柔軟な働き方を実現できる、あるいは未経験の業界や職種に挑戦する機会となる場合があります。ただし、契約期間があるため、雇用の安定性においては正社員と異なる側面があります。
2.契約社員と正社員の違い
契約社員と正社員にはいくつか大きな違いがあります。迷っている方は、違いを正確に理解して、慎重に判断するようにしましょう。
雇用期間
契約社員と正社員の最も大きな違いの一つは雇用期間の有無です。正社員は、企業と無期限の雇用契約を結びます。これは、特別な理由がない限り、定年までその企業で働き続けることができるということを意味します。
一方、契約社員は、企業と期間を定めて雇用契約を結びます。労働基準法第14条により、有期労働契約の期間は原則として3年が上限とされています(専門的な知識、技術または経験を有する者との労働契約や、60歳以上の労働者との労働契約については5年が上限)。
契約期間満了時には、契約が更新される場合とされない場合があります。2013年4月1日施行の改正労働契約法により、有期労働契約が5年を超えて反復更新された場合、労働者の申込みによって期間の定めのない労働契約(無期雇用契約)に転換できる「無期転換ルール」が導入されました。これにより、契約社員であっても一定の条件を満たせば、雇用の安定性が高まる可能性があります。
勤務時間・勤務日
勤務時間や勤務日についても、契約社員と正社員では異なる場合があります。正社員の場合、一般的に企業の就業規則に定められた所定労働時間(週40時間など)で勤務し、土日祝日が休日となるケースが多数です。これに対し、契約社員は、個別の労働契約によって勤務時間や勤務日が柔軟に設定されることがあります。
しかし、全ての契約社員が柔軟な働き方をしているわけではなく、正社員と同様の勤務体系で働く契約社員も少なくありません。労働基準法においては、契約形態にかかわらず、法定労働時間(原則として1日8時間、1週40時間)を超える労働や深夜労働、休日労働に対しては、割増賃金を支払う義務があります。
勤務地
勤務地に関しても、契約社員と正社員では違いが見られます。正社員の場合、企業の事業展開や人事異動の方針により、転勤の可能性があります。特に全国展開している企業や、複数の事業所を持つ企業では、定期的な転勤が当たり前というケースも存在します。
一方、契約社員の場合、多くは勤務地が限定される形で雇用契約が締結されます。特定の店舗やオフィス、プロジェクト現場など、限定された場所での勤務が前提となることが一般的です。これは、契約社員が特定の業務やプロジェクトのために採用されることが多いためです。ただし、企業の方針や契約内容によっては、契約社員でも転勤が発生する可能性はゼロではありません。
給与・賞与
給与や賞与の体系は、契約社員と正社員で大きく異なる点のひとつです。正社員の場合、多くは月給制であり、基本給に加えて各種手当が支給されることが一般的です。また、企業の業績や個人の評価に基づき、年2回の賞与(ボーナス)が支給されるケースが多数を占めます。
一方、契約社員の給与は、時給制や日給制、あるいは月給制と様々ですが、正社員と比較して基本給が低く設定されることや、賞与が支給されない、あるいは支給されても少額であるケースが少なくありません。これは、契約社員が短期的な戦力として位置づけられることが多いためと考えられます。
しかし、同一労働同一賃金の原則に基づき、2020年4月1日に施行された改正パートタイム・有期雇用労働法により、不合理な待遇差の解消が企業に求められるようになりました。これにより、契約社員であっても、正社員と同じ仕事内容であれば、給与や賞与において正社員と同等の待遇を受けるべきであるという考え方が浸透しつつあります。
昇進・昇給
昇進や昇給の機会についても、契約社員と正社員では違いがあります。正社員は、勤続年数や個人の業績、能力に応じて、役職が上がったり、給与が段階的に上がったりする「昇進・昇給」の機会が設けられていることが一般的です。企業の人事評価制度に基づき、定期的な見直しが行われます。
一方、契約社員の場合、昇進の機会は限定的であるか、ほとんどないケースが多数です。給与についても、契約更新時に見直しが行われることはありますが、正社員のような定期的な昇給は見込めないことが多いです。
ただし、企業によっては、契約社員から正社員への登用制度を設けている場合もあり、この制度を利用してキャリアアップを図ることも可能です。また、専門性の高いスキルを持つ契約社員の場合、そのスキルが評価され、契約更新時に給与交渉が行われることもあります。
諸手当・福利厚生
諸手当や福利厚生の面でも、契約社員と正社員には差が見られます。正社員は、通勤手当、住宅手当、家族手当、役職手当など、多岐にわたる手当が支給されることが一般的です。また、健康診断の全額補助、社員旅行、保養所の利用、財形貯蓄制度など、企業が提供する充実した福利厚生を利用できるケースが多いです。
これに対し、契約社員の場合、支給される手当が通勤手当に限定されたり、福利厚生の一部が利用できなかったりする場合があります。
しかし、2020年4月1日に施行された改正パートタイム・有期雇用労働法により、「同一労働同一賃金」の原則がより明確化され、不合理な待遇差の解消が義務付けられました。
これにより、同じ業務内容であれば、契約社員にも正社員と同等の手当や福利厚生が適用されるべきであるという考え方が広まっています。例えば、通勤手当や社員食堂の利用など、正社員と同じように利用できる福利厚生が増える傾向にあります。
休日・休暇
休日・休暇の取得に関しても、契約社員と正社員で違いが生じることがあります。正社員は、週休2日制(土日祝日休み)が一般的であり、年間休日も120日を超える企業が多いです。これに加えて、年次有給休暇、慶弔休暇、産前産後休暇、育児休暇、介護休暇など、様々な種類の休暇制度が整備されています。
一方、契約社員の場合、年次有給休暇については、労働基準法に基づき、勤務日数や勤続年数に応じて付与されます。これは、正社員と同様のルールが適用されます。
しかし、慶弔休暇や特別休暇など、企業独自の休暇制度については、契約内容によって適用されない場合や、日数に制限がある場合があります。ただし、育児介護休業法においては、雇用期間の定めのない労働者だけでなく、一定の要件を満たせば有期雇用労働者も育児休業や介護休業を取得できると定められています。
社会保険
社会保険の加入については、契約社員と正社員に大きな違いはありません。健康保険、厚生年金保険、雇用保険、労災保険といった社会保険は、雇用形態にかかわらず、一定の条件を満たせば加入義務があります。
具体的には、週の所定労働時間および月の所定労働日数が正社員の4分の3以上である場合に加え、この基準を満たさなくても週の所定労働時間が20時間以上など一定の要件を満たす場合にも、社会保険への加入が義務付けられます。これは、契約社員であっても正社員と同様の条件で適用されます。
労災保険については、雇用形態や勤務時間に関わらず、全ての労働者が適用対象となります。したがって、契約社員だからといって社会保険に加入できないということはなく、むしろ法的義務として加入が求められるケースがほとんどです。
退職金
退職金の支給の有無は、契約社員と正社員の大きな違いの一つです。正社員の場合、多くは勤続年数に応じて退職金が支給される制度が設けられています。これは、長期的な貢献への報奨として、企業の就業規則や退職金規程に基づいて支給されるものです。
一方、契約社員の場合、退職金制度がない企業がほとんどです。これは、契約社員が有期雇用であり、長期的な雇用を前提としていないためと考えられます。
しかし、近年では、同一労働同一賃金の考え方が浸透しつつあり、契約社員であっても一定の条件を満たせば、退職金の対象となるケースも一部で出てきています。ただし、現時点では、退職金は正社員に特有の福利厚生と認識されているのが一般的です。
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3.契約社員と派遣社員の違い
契約社員と派遣社員は、どちらも企業で働くという点では共通していますが、雇用形態や契約関係において明確な違いがあります。
項目 | 契約社員 | 派遣社員 |
---|---|---|
雇用主 | 企業が雇用主 | 派遣元会社が雇用主 |
雇用契約 | 企業と有期労働契約を結ぶ | 派遣元会社と有期または無期労働契約を結ぶ |
雇用期間 | 契約期間ごと | 派遣契約に基づく期間 |
給与の支払い元 | 企業 | 派遣元会社 |
就業場所 | 雇用契約を結んだ企業 | 派遣先会社 |
業務の指示 | 雇用主(雇用契約した企業)から指示を受ける | 派遣先会社から指示を受ける |
上記の表からわかるように、契約社員は実際に働く企業と直接雇用契約を結びます。そのため、雇用主も給与支払い元も働く企業そのものとなります。業務の指示もその企業から直接受けます。
一方、派遣社員は派遣元となる会社と雇用契約を結びます。そして、この派遣元会社が別の企業(派遣先会社)に人材を派遣します。したがって雇用主と給与の支払い元は派遣元会社であり、実際の業務の指示は派遣先会社から受けることになります。
このように両者は「有期雇用」という点で共通するものの、雇用主が誰であるか誰と契約を結ぶのかという根本的な構造が異なります。自身のキャリアプランや求める働き方に応じて、どちらの形態が適しているかを検討することが重要です。
4.契約社員の雇用契約の締結先
契約社員の雇用契約の締結先は、基本的には勤務する企業です。これは正社員の場合と同様です。企業と労働者の間で直接、労働条件や契約期間などを定めた労働契約書を取り交わします。
この労働契約書には、業務内容、勤務場所、勤務時間、給与、契約期間、更新の有無などが明記されており、双方が合意することで雇用関係が成立します。
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5.契約社員に向いている人
契約社員という働き方は、個人のライフスタイルやキャリアプランによって、さまざまなメリットをもたらします。柔軟な働き方を求めている人、あるいは特定の目的のために期間を限定して働きたい人にとって、契約社員は魅力的な選択肢となるでしょう。
ここでは、どのような人が契約社員として働くことに向いているのか、具体的な状況を交えて解説します。
勤務時間、勤務日数を調整したい人
契約社員は、勤務時間や勤務日数を柔軟に調整したいと考えている人に向いています。正社員の場合、企業の定めるフルタイム勤務が基本ですが、契約社員は個別の労働契約によって、短時間勤務や特定の曜日のみの勤務など、多様な働き方が選択できる場合があります。
例えば、育児や介護と仕事を両立させたい人、学業や副業などと両立させたい人、あるいは特定の時期だけ集中して働きたい人などにとって、契約社員という働き方はメリットが大きいでしょう。
これにより、ライフスタイルや個人の都合に合わせた働き方を実現しやすくなります。ただし、全ての契約社員がこのような柔軟な働き方を選択できるわけではなく、企業の募集条件や契約内容によって異なりますので、事前にしっかりと確認することが重要です。
役職による仕事へのプレッシャーを受けたくない人
契約社員は、役職に伴う責任やプレッシャーを避けたいと考えている人にも向いていると言えるでしょう。正社員の場合、多くは昇進や昇給に伴い、管理職としての責任や目標達成へのプレッシャーが増していく傾向にあります。部下の育成や部門の業績への貢献など、業務範囲が広がり、精神的な負担が増すことも少なくありません。
一方、契約社員は特定の業務やプロジェクトに特化して働くことが多く、役職に就く機会が限られています。そのため、組織全体や部下の管理といった責任を負うことが少なく、自分の業務に集中したい人にとっては、働きやすい環境となるでしょう。自身のスキルや専門性を活かしつつ、過度なプレッシャーを感じずに働きたいという志向を持つ人には適した選択肢となり得ます。
生活環境を安定させたい人
契約社員は、特定の期間にわたって生活環境を安定させたい人にとっても魅力的な選択肢となり得ます。正社員のような無期雇用ではないものの、数カ月から数年といったまとまった期間で契約を結ぶため、その期間中は安定した収入を得ることができます。
特に、短期的な目標達成のために資金を貯めたい、一時的に特定の地域で働きたい、あるいは転職活動中に一時的な収入源を確保したいといった場合に有効です。
また、特定のプロジェクトや期間限定の仕事を探している人にとっては、契約社員として専門性を活かし、特定の期間に集中して働くことで、自身のスキルアップやキャリア形成に繋げることも可能です。ただし、契約期間が満了すれば更新されない可能性もあるため、次のキャリアプランを事前に検討しておくことが重要です。
6.契約社員から正社員になるには
契約社員から正社員を目指す方法はいくつかあります。主な方法は、正社員登用制度の活用と、有期労働契約の無期転換ルールの利用です。
正社員登用制度があるかどうかを確認
正社員登用制度は、契約社員として一定期間勤務した後、企業の定める基準を満たせば正社員として雇用される制度です。この制度がある企業では、契約社員の段階で、正社員登用を視野に入れたキャリアプランを立てることができます。登用基準は企業によって異なりますが、多くの場合、勤務成績、業務への貢献度、筆記試験や面接などが評価の対象となります。
正社員登用制度を利用して正社員を目指す場合は、日々の業務に真摯に取り組み、積極的にスキルアップを図ることが重要です。また、登用制度の有無や条件は、企業の求人情報や採用面接時に確認しておきましょう。
有期労働契約が5年を超えたら無期労働契約への転換が可能
2013年4月1日に施行された改正労働契約法により導入された「無期転換ルール」は、契約社員が正社員化を目指す上で重要な制度です。このルールでは、同じ企業との間で有期労働契約が通算5年を超えて更新された場合、労働者からの申し込みにより、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換できると定められています。これにより、契約期間の更新を心配することなく、安定して働き続けることが可能になります。
ただし、この無期労働契約は、必ずしも正社員としての雇用を意味するわけではありません。多くの場合、無期契約の契約社員となり、給与や待遇はそれまでの契約内容に準じます。しかし、雇用の安定性が高まることで、正社員へのキャリアアップの足がかりとなる可能性もあります。
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7.契約社員とフリーランスは似ているが違う
契約社員とフリーランスは、どちらも企業に属さない働き方という点で似ていると感じられるかもしれませんが、両者には明確な違いがあります。
契約社員は、特定の企業と「有期雇用契約」を結び、企業の指揮命令下で労働を提供します。労働時間や勤務地など、企業の定めたルールに従って働くことが求められ、給与も企業から支払われます。社会保険の加入対象となることも多く、労働基準法などの労働法規によって保護されます。
一方、フリーランスは、企業と「業務委託契約」や「請負契約」などを結び、特定の業務を独立した事業者として請け負います。企業との間に雇用関係はなく、自身の裁量で仕事の進め方や時間配分を決定できます。報酬は成果物や業務の遂行に対して支払われることが一般的で、社会保険は個人で加入する必要があります。
また、労働基準法などの保護対象外となるため、全ての責任を自分で負うことになります。
つまり、契約社員は「企業に雇われる労働者」であるのに対し、フリーランスは「独立した事業者」であるという点が決定的な違いです。
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8.まとめ
契約社員は、企業と期間を定めて雇用契約を結ぶ働き方であり、正社員とは雇用期間、勤務時間、給与、諸手当、昇進・昇給、退職金など、様々な点で違いがあります。しかし、勤務時間や日数の調整がしやすい点、役職によるプレッシャーが少ない点、一定期間の生活安定が見込める点など、契約社員ならではのメリットもあります。
契約社員から正社員への道を目指す場合は、企業の正社員登用制度の有無を確認したり、有期労働契約の無期転換ルールを活用したりすることが考えられます。また、契約社員とフリーランスは混同されやすいですが、雇用契約の有無や労働者としての保護の有無において、明確に異なる働き方です。自身のキャリアプランやライフスタイルに合わせて、最適な働き方を選択することが重要です。
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