セグメンテーションは、WEBマーケティングで注目度が増した現在のマーケティングにおいて、なくてはならない手法でしょう。
しかし、セグメンテーションという言葉は聞いたことがあっても、具体的な方法がわからない方もいます。そこで、セグメンテーションの概要や分類の方法、重要ポイント、活用事例まで解説します。
目次
閉じる
1.セグメンテーションとは
セグメンテーションは、日本語で「区分」や「分割」を意味するマーケティング用語です。マーケティング戦略では「市場細分化」する手法として使われます。
市場細分化とは、市場や顧客を「属性」や「行動」、「心理」などで細かく分けて、その中から自社が選ぶべき階層・グループを探るものです。市場そのものを細分化することから「マーケットセグメンテーション」とも呼ばれます。
2.セグメンテーションがマーケティングに必要な理由
セグメンテーションがマーケティングで使われる理由は以下の2つです。
顧客ニーズの多様化
1つは、顧客のニーズが多様化したことで市場全体に売り込めなくなったことです。近年は、商品に対して異なる価値観をもつようになり、すべての顧客に対してニーズを満たすことが難しくなっています。
そのため、企業はマーケティング戦略の中で、商品ごとにセグメントを選択して訴求や売り込みを行うのです。「商品ごとに売る集団を変える」とイメージすればわかりやすいでしょう。
集客効率を高めるため
もう1つの理由は、企業が集客効率を高めるための手段としているためです。通常、企業は広告で訴求して、商品の購入やサービスの利用につなげます。
しかし、テレビCMのように予算をかけて無差別に大量の人に訴求する広告は、費用対効果が悪く、無駄が大きいのも事実です。テレビCMがそれでも有効な理由は、多くの人間がテレビCMを見るために、単純な母数が大きいからといえます。現在はネット広告やSNSなど、さまざまな広告手法を総合的に運用する必要があるため、旧来のテレビ広告手法のやり方だけでは不十分です。
そこで、セグメンテーションを行い、市場細分化をすることで、改めて広告の集客効果を得やすくします。少ない費用や労力を集中的に投入するのです。そのため、ピンポイントで必要とする人に商品をアピールし、購買力を高めることができるでしょう。
セグメントの分類とターゲティングが的確なら、市場の不一致も起こりにくく、費用対効果の高い結果を得られます。
関連記事
ビジネスでのペルソナとは?【具体例付き】ターゲットとの違いや設定方法、メリットなどを解説
カスタマージャーニーとは?基礎から効果的なマップの作り方、作成時の注意点を解説
3.セグメンテーションで使われる分類例
セグメンテーションには、市場や顧客のセグメントを区分するための軸があります。特にフィリップ・コトラーの「STP分析」フレームワークでは、セグメントの分類に以下の変数がよく使われています。
地理的変数
地理的変数(ジオグラフィック変数)は、セグメンテーションを居住地や地域など地理的要素で分類するものです。地理的要素とは、場所を意味するだけでなく、気候やその土地の文化・宗教など地理に関連したものを含みます。
例えば、北海道や東北は冬が寒く、沖縄は1年中温かいため、防寒グッズや除雪機材は前者の地域で売るのが効果的です。都市・地方によって求められるものも異なりますし、地理的変数が具体的なほど市場のターゲットにマッチした戦略を取ることができます。
また、地理的変数をさらに人口規模や人口密度、年齢などの属性で区分した「人口動態変数」のセグメントで区分することもできます。
心理的変数
心理的変数(サイコグラフィック変数)は、顧客の心理的側面を価値観や趣味・嗜好、個人的な性格などの要素で分類したものです。
例えば、趣味がスポーツと読書、映画鑑賞では興味を持つジャンルや商品・サービスにも違いが出ます。また、健康やダイエットなどライフスタイルで特定の分野に関心を示す場合もあるでしょう。
その人の属性だけではわからない要素をセグメントとして市場細分化することで、顧客ニーズに直接的なアプローチが可能となるのです。
行動変数
行動変数(ビヘイビアル)は、行動の頻度や回数、利用水準、購入までの準備段階など、ユーザーの行動に関連することから分類します。
例えば、「ダイエットコーラを週に6日、コンビニで買って飲むヘビーユーザー」なら行動の頻度・回数に利用水準を加えた行動変数になります。
近年はWebマーケティングも積極的に行われており、ユーザーのアクションからWebサイトの閲覧回数や頻度、定期購入の有無、などもこの行動変数で分類が可能です。
そして、行動変数の分析は、ネットで情報を収集できる場合とリアルで郵送調査や店頭アンケートなどを取って調べる場合とがあります。
行動変数が有効な点は、単純にアクションを起こす顧客層を狙い撃ちして商品を売り込めることです。
それから商品・サービスの「ロイヤリティ」や「グレード」の底上げが可能です。商品には安くて低品質な通常版と高品質なハイグレード版などがあり、どちらを買うかは顧客に選択が委ねられます。そこで、行動変数の利用水準次第では、現在よりも高価・高品質な商品に切り替えさせる「アップセル」を狙えるのです。
関連記事
STP分析とは?マーケテイングへの活用方法や企業の活用具体例、やり方など紹介
3C分析とは?基礎からメリット・デメリット、やり方、事例までわかりやすく解説
4.セグメンテーションで重要なこと
ここでは、セグメンテーションで重要なポイントを押さえます。
4Rの原則
1つ目は、「4Rの原則」と呼ばれるものです。4Rの原則とは、Rを頭文字に持つ4つの評価指標のことです。
Rank(優先度)
Realistic(有効性)
Reach(到達可能性)
Response(測定可能性)
なぜ評価指標が必要になるかといえば、「STP分析」の手順としてセグメントに分けた後、細分化したセグメント選びが行われるためです。4Rの原則はその際の選定基準となるのです。
下記に、4Rの原則をそれぞれ詳しく説明します。
Rank(優先度)
「Rank」は、自社の戦略に合わせて、分類したセグメントに順序付けを行うことです。
例えば、中高年向けの商品を扱っている会社では、心理や行動よりも顧客の属性で分類したセグメントの優先度が高くなります。自社の戦略目標に応じた優先度から選りすぐったセグメントが決まるのです。
Realistic(有効性)
「Realistic」は、そのセグメントが有効かどうかで決める指標のことです。ここでの「有効」とは、市場規模のことです。市場規模が有効ならそのセグメントを候補にします。
商品やサービスを売り出しても、そのセグメントの市場規模が十分でなければ、売上につながりません。そのため、事前に市場規模が有効か測定して、そのセグメントを選ぶべきかを検証する基準となるのです。
Reach(到達可能性)
「Reach」は、商品やサービス、それを売り込むための広告が、顧客に届くかを基準とした指標です。
例えば、日本の商品は輸出しないと海外には届けることができません。コンビニのない田舎に、コンビニ商品をアピールしても顧客は手に取る機会がないのです。物理的に到達できなければ、そのセグメントは有効ではなくなります。Reachが低い(ない)と判断できます。
また、テレビCMで宣伝する場合、普段からテレビを見ない人やSNSしかやらない人には広告が届きにくくなります。しかし、テレビCMの配信を予定している場合は、テレビ視聴の回数や頻度、SNS利用で分類した行動変数のセグメントを使用します。Reachがないとビジネスとして成立しないため、特定のセグメントを除外する判断基準にもなるのです。
Response(測定可能性)
「Response」は、商品を売り出した後に、そのセグメントに対して効果測定ができるかを確認する指標です。
Responseは必須の指標ではありませんが、セグメンテーションをする場合は得られた結果を通じて検証します。その際に、そのセグメントの検証が難しいと、Responseがない(=測定可能性がない)となります。
なぜ検証が大事かといえば、セグメントに分けたことが有効だったのか、どのくらいの効果を得られたのか、戦略的に確認する作業が必要となるためです。
あえて「Response」を必須とする場合は、Webマーケティングのデータを解析することが前提です。本来、リアルで効果測定をすることは難しさを伴います。Web技術ならメルマガの反応(開封率)やアクセス、直帰率、ブランド認知度、コンバージョン率などの数値を解析することで、効果測定しやすいのです。
1つの測定事例としてLINEビジネス経由でLINEユーザー(特定のセグメント)にメルマガを送り、その開封率やアクションでサービス利用の促進やリピーターの獲得を目指す方法があります。企業向けに効果測定ができる仕組みを採用しているため、具体的な結果を数値で知ることができます。
ここでLINEビジネスを例に挙げたのは、SNS重視のマーケティングで機能的にメルマガとセグメントが同時に行えるからです。ここで得られた数字が高ければ、そのセグメントに送るメルマガの効果が高かったといえます。
もちろん、LINEビジネス以外にも、Meta(旧Facebook)などが開封率の効果測定を始めとして、同じようなマーケティングデータサービスを提供しています。データ解析自体は、特定のサービスを使わなくても業務ツールがあれば可能なため、自社の顧客にメルマガを送って同じような分析が可能です。
MAツールの活用
2つ目は、セグメンテーションにMAツールを活用することです。MAツールとは、「マーケティング・オートメーション」(Marketing Automation)の頭文字を略したツールの総称を指します。マーケティング施策の自動化や効率化を促す機能が特徴です。
一般的に「SFA(営業支援)ツール」と連携して営業部署などが使うツールの1つです。しかし、セグメンテーションにも使えるため、開発やマーケティング戦略の中核を担う部署や経営者、個人にも積極的に使われます。
例えば、営業が集めた顧客アクセスのデータやメルマガの開封率、問い合わせへのコンバージョン率などを自社の新たな商品のセグメントとして活用するなどが可能です。
しかし、手動で大量のデータを分析して、多数のセグメントを作成することは労力も時間もかかります。すでに蓄積してある大量の顧客情報や行動を分析し、セグメント化することにより、短い時間で自社にあった効果的な分類を行うことが可能となるのです。
ただし、MAツールにはサービスを提供している会社やその製品によって機能や性能に差があります。ツール選びは自社に必要なものを性能比較して選びましょう。
関連記事
マーケティング検定とは?受験方法や試験の難易度、学習方法について解説!
5.セグメンテーションを活用した事例
ここからは、セグメンテーションを活用したSTP分析のマーケティングによる成功事例を紹介します。
【行動変数の事例】Panasonicモバイルパソコンの「レッツノート」
まずは、Panasonicが従来のスペック開発競争を打ち破って外回りにアプローチしたモバイルパソコン「レッツノート」の事例があります。
セグメントを法人営業の外回りに焦点を合わせて細分化することで、パソコンの薄さや外の気候でも使える性能などが営業職のユーザーに受け入れられたのです。この場合、主に行動変数を中心にしたセグメントで成功しています。
【心理的変数の事例】ユニクロのカジュアル・ベーシック
次に、ファッションの新たな市場細分化を導入したユニクロの事例です。ファッション分野では、セグメントが小さく細分化されすぎている傾向があり、それをシンプルスタンダードに変えて、カジュアル・ベーシックなどの4指標にまでユニクロは簡略化しています。
その結果、ユニクロが自社で提供するファッションを大まかな分類で捉え直して製品を売り込むことに成功します。ユニクロのファッションを現在あるセグメントに押し込めるのではなく、セグメントを全体で捉え直したのです。
特に、心理的変数を拡大し、自社の生産体制や流通まで踏まえた戦略に合わせたことが成功につながっています。
【人口動態変数の事例】ハーゲンダッツの高級アイスクリーム市場
最後は、ハーゲンダッツの高級感を主軸にしたアイスクリーム市場を作り出した事例です。日本ではこの会社の高級アイスクリームの戦略イメージがすでに浸透しています。
大人向けの年齢層にアプローチするセグメントにマーケティング施策を変更し、パッケージや品質、値段を見直したことが成功の大きな理由です。
使用したのは人口動態の変数で、そこに購入者の行動変数(コンビニ購入や購入頻度、SNS活用)など、複数の軸で検討されているのも特徴です。
6.セグメンテーションのよくある質問
ここでは、セグメンテーションのよくある質問について回答します。
セグメンテーションやターゲティング、ポジショニングとの違いは?
セグメンテーションとターゲティングは、同じマーケティング分野の中で使われる用語です。しかし、使われ方やその意味は異なります。
まず、セグメンテーションは、自社が市場や顧客を一定のセグメントに分類することです。次に、ターゲティングは、自社がどの顧客層やセグメントに対して売り込むのかを決めます。
つまり、セグメンテーションの後に行われるのがターゲティングです。ターゲティングの後は、ポジショニングを行い、企業の市場における立ち位置を決め他社と差別化します。
ポジショニングでよく使われるのは、2つの軸を重ねたグラフを作り、そこに自社と他社の製品を比べる方法です。これら3つをあわせて「STP分析」と呼びます。
セグメンテーションのやり方は?
セグメンテーションは、次の流れで行われます。まず企画作成後、データの分析を行ってセグメントに分類します。このとき、効率化のためにMAツールを導入するのも1つの方法です。
分類後は、自社の優先度や有効性など「4Rの原則」を踏まえて、自社にあったセグメントをマーケティング戦略に取り入れます。販売方法や流通経路などさまざまな事情が企業にはあるため、「この分野(商品)はこのセグメントにいれるべき」と決めつけず、自社独自の強みを活かせるセグメントを探して選びましょう。
7.まとめ
今回は、マーケティングで欠かせないセグメンテーションの分類や重要なポイント、成功事例などについて解説しました。セグメンテーションは、事象や顧客を分類して商品やサービスの売り込み先やターゲットを効果的に導き出すプロセスの1つです。
過去にも多くの成功事例が知られており、セグメンテーションが企業の大きな躍進を後押しにつながったケースもあります。分類に必要な変数の違いや「4Rの原則」、MAツールの導入などを検討しつつ、成功事例を参考にセグメンテーションを実施しましょう。
本記事が皆様にとって少しでもお役に立てますと幸いです。
「フリーランスボード」は、数多くのフリーランスエージェントが掲載するITフリーランスエンジニア・ITフリーランス向けの案件・求人を一括検索できるサイトです。
開発環境、職種、単価、稼働形態、稼働日数など様々な条件から、あなたに最適なフリーランス案件・求人を簡単に見つけることができます。
単価アップを目指す方や、自分の得意なスキルを活かせる案件に参画したい方は、ぜひ「フリーランスボード」をご利用ください。
自身に最適なフリーランスエージェントを探したい方はこちらよりご確認いただけます。