新たなビジネスを成功に導くためには、製品・サービスを受け入れてくれる市場を見つけることや市場に受け入れられる製品・サービスを生み出すことが大切です。そこで大切だと考えられている概念として、「PMF」が挙げられます。
PMFを理解することで、ビジネスの成功確率を上げることにつながるはずです。この記事ではPMFの概要や基本ステップ、達成度の測り方などを解説します。
特に以下の方には、この記事をご一読いただきたいです。
事業立ち上げ初期で市場検証を進めたい起業家
ユーザー課題とプロダクトのズレを見直したいPdM
PMF達成基準を整理したいスタートアップ支援者
目次
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1.PMF(プロダクトマーケットフィット)とは
PMF(Product Market Fit:プロダクトマーケットフィット)とは、製品・サービスが特定の市場に適合し、受け入れられている(欲しがる人が多数いる)状態を指す言葉です。
アメリカの著名投資家であるマーク・アンドリーセン氏によって広められた概念であり、PMFを達成することは企業の持続的な成長に欠かせないと考えられています。現在では、スタートアップフェーズの成功に欠かせない要素として認知されている概念です。
PMFの考え方によると、以下の2点がいずれも成立していることがスタートアップの成功には不可欠です。
製品・サービスが適切な市場に提供されている
市場に適切な製品・サービスが存在している
PMFの重要性
PMFは、スタートアップ期の経営資源が限られた時期において大切な考え方です。
事業を立ち上げたばかりのフェーズでは、資金や人材などの経営資源が潤沢にないケースが一般的でしょう。限られた経営資源を無駄にせず最大限の成果に結びつけるには、「どこに集中させるのか」を適切に判断することが求められます。
しかし多種多様な価値観が存在し幅広い製品・サービスが提供されるようになった現代では、需要を獲得できる市場を見つけることは容易ではありません。そのためPMFの考え方は多くの国で重視されるようになり、日本国内でも2022年に「スタートアップ育成5か年計画」が決定されたことで注目を集めるようになりました。
PMFのメリット
PMFを達成するメリットを簡単に整理すると、以下の通りです。
事業方針を決める助けになる
事業撤退の判断にも役立つ
PMFの考え方を取り入れられれば、新規事業を始めるにあたって合理的な計画を立てやすくなります。細分化が進んでいる現在の市場状況を考慮すると、PMFの考え方を取り入れるか否かはスタートアップ期の成功に大きな影響を及ぼすでしょう。
また、PMFの視点を持つことで新規事業のスタート時だけでなく、事業撤退の判断時にも大きな効果を期待できます。事業悪化を各種指標・数値から判断して適切なタイミングで撤退の意思決定をできれば、企業が負う損失は最小限に抑えられるはずです。
経営資源を有効活用するためには、PMFの視点が欠かせないと言えるでしょう。
2.PMFとPSFの違い
PMFと混同されやすく密接な関わりを持っている考え方として、「PSF」が挙げられます。PSF(Problem Solution Fit:プロブレムソリューションフィット)とは、想定顧客のニーズに合った製品・サービスを提供できている状態のことです。
PMF:自社の製品・サービスが特定の市場で受け入れられている状態
PSF:想定顧客の課題を自社製品・サービスが解決できる状態
製品が市場に受け入れられるためには、その製品が市場の顧客が持つ課題を解決できることが前提条件です。つまり、PSFはPMFの達成に欠かせない前提条件であり、PMFの初期段階であるとも整理できるでしょう。
3.PSFを達成するための基本ステップ
PMFを達成するためには、PSFの達成が前提条件です。そこでこの章ではまず、PSFを達成するための基本ステップを以下の3段階に整理して解説します。
解決すべき課題を調査する
製品・サービスのプロトタイプを作成する
製品・サービスの評価・検証を行う
①解決すべき課題を調査する
PSFを達成するにはまず、自社製品・サービスが解決すべき想定顧客の課題を調査します。
顧客のニーズが存在する市場を把握しなければ、どんなに優秀な製品・サービスでも受け入れられる可能性が低いでしょう。顧客ニーズを把握するための手法としては、アンケートがまず考えられます。近年ではSNSが広く普及しているため、アンケートを比較的用意に実施可能です。
また、既存顧客がいるのであれば直接インタビューをしてみる方法も考えられます。顧客の意見はビジネスにおいて大変重要であり、ニーズ調査は欠かせないステップです。
②製品・サービスのプロトタイプを作成する
市場調査を行ったら、収集した情報をもとに製品・サービスのプロトタイプ(試作品)を作成します。
プロトタイプを顧客に試してもらってフィードバックを受けることで、製品・サービスのブラッシュアップに活かすことが可能です。プロトタイプ作成時のポイントとしては、搭載する機能を厳選することが考えられます。
課題解決に必要な機能以外にも搭載してしまうと、製品・サービスに課題解決の力があるのか判断しにくくなるためです。また、現時点で作成するのはあくまでもプロトタイプであり、機能の充実にコストや時間をかけることは合理的とはいえません。
③製品・サービスの評価・検証を行う
製品・サービスのプロトタイプを作成したら、想定顧客に試してもらったうえで評価・検証を行います。
具体的には、以下のような点を評価・検証することが大切です。
顧客の課題解決はできるのか
使い勝手はどうか、違和感がないか
どれくらいの価格帯なら利用するか
特に、製品・サービスの利用開始から課題解決までがスムーズに進められたかどうか、丁寧に確認することが大切です。ここで顧客から高評価を得られたら、PSFを達成したと判断して今度はPMFの達成に向けたステップを開始します。
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4. PMFを達成するための基本ステップ
PSFを達成したら、次にPMFの達成に向けて行動します。ここでは、PMFを達成するための基本ステップを以下の4段階に整理して解説します。
MVPを構築する
市場を分析する
評価・検証を行う
改善を繰り返す
①MVPを構築する
PMF達成に向けた第一歩としては、MVPの構築が挙げられます。
MVPは「(Minimum Viable Product:ミニマムバイアブルプロダクト」の略であり、顧客の課題を解決するための最小限の機能を備えた製品のことです。MVPを顧客に提供して反応を確認することで、事業の方向性が間違っていないかを確認します。
MVPの構築にあたっては、顧客が製品について具体的にイメージできるように、資料もあわせて作ることが大切です。
②市場を分析する
MVPの構築と同時に市場の分析を行うことも大切です。
市場を細分化して以下のような観点で自社の製品・サービスがフィットすると考えられる市場を探し出します。
有効な市場規模
市場の成長性
顧客の優先順位
到達可能性(ターゲットに製品が到達する可能性)
競合の状況
マーケティング施策の効果測定のしやすさ
上記は、「6R」と呼ばれるターゲティングのフレームワークです。どの市場で戦うべきか判断できれば、PMFの達成に大きく近づけるでしょう。
③評価・検証を行う
MVPを構築したら、実際に顧客の反応を見るために市場へテスト的に提供します。
ターゲット層より直接フィードバックを受け、製品・サービスの改善点を確認していくことが大切です。近年ではアンケートやWeb解析などによって大量のデータを得やすくなっていますが、できるだけ顧客の実際の声をインタビューすることをおすすめします。
インターネットにて集計したデータでは定量的な評価しか集まらず、定性的な評価を確認しにくいためです。アンケートであれば定性的な評価も集められますが、適切な設問の作成が難しい面があります。
製品に対する顧客からの率直な意見や感想を集めることで、改善に役立てる姿勢が重要です。
④改善を繰り返す
MVPに対する顧客の声や反響を確認したら、改善を繰り返していきます。
「市場への提供→評価→改善→市場への提供」のサイクルを繰り返すことで、PMFの達成に近付いていきます。市場へ提供して評価を集める際には、前回と同じ方法を採用して比較できるようにすることが大切です。
市場に提供してデータを集めたら、前回と比較して改善しているか、つまりプロダクトが正しい方向に改善されているのか確認することが大切です。手を加えた結果前回よりも数値が悪化したようであれば、元のバージョンに戻すことも検討しなくてはいけません。
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5.PMFの測り方は?達成度を測る指標を紹介
PMF達成を目指すにあたっては、達成度を確認して方向性が間違っていないかチェックしながら進めることが大切です。そこでこの章では、PMF達成度を測る指標として以下の5つを紹介します。
PMFsurvey
リテンションカーブ
NPS
エンゲージメントデータ
口コミ
PMFsurvey
PMFsurveyは、有名起業家のショーン・エリス氏が考案した、PMFの達成度を測るために用いられる調査方法です。
製品を試した顧客に対し、製品が使えなくなった場合の感想を以下の4つの選択肢から選んでもらいます。
非常に残念
やや残念
残念ではない
非該当、既に商品を使用していない
回答を集計し、全体の40%超が「非常に残念」を選択している場合にPMFを達成していると判断できます。
リテンションカーブ
リテンションカーブは、製品・サービスのリテンション率(定着率、継続率)を時系列でグラフにし、「どのくらい顧客に利用され続けているか」を視覚化する手法です。
グラフのカーブが時間経過とともに横ばいになっている(上昇するケースもある)場合、PMFを達成していると考えられます。一方でカーブが横ばいにならず下降を続けている場合、製品・サービスが市場に受け入れられていないと判断しなくてはいけません。
NPS®
NPS®(ネットプロモータースコア)は、顧客ロイヤリティを確認するための指標として有名です。
「製品を友人・知人にどの程度すすめたいと思いますか?」との質問に対して、「0~10」の11段階で回答してもらいます。数字が大きくなるほど評価が高くなり、以下の通りに整理するのが基本です。
9~10:推奨者
7~8:中立者
0~6:批判者
そして推奨者の割合から批判者の数値を引いた値を「NPS®スコア」とし、評価に活用します。NPS®スコアの信頼性を確保するには、400以上のサンプルが推奨されています。
ちなみにNPS®は、ベイン・アンド・カンパニーのフレッド・ライクヘルド氏をはじめとするチームが考案した指標であり、登録商標されています。
エンゲージメントデータ
エンゲージメントデータは、製品・サービスを顧客がどの程度利用しているのかを示すデータのことです。
エンゲージメントデータには、以下のような指標が挙げられます。
成約率
申込数
購買数
利用率
ユーザー数
継続率
継続期間
自社の製品・サービスが市場にどの程度受け入れられているのか確認する際に役立つデータであり、分析したうえで製品・サービスの改善に役立てます。
口コミ
自社製品・サービスの市場における評価を確認するためには、口コミの調査も有効です。
製品・サービスに対して顧客が抱いているニーズや、顧客が抱えている課題などを把握することに役立ちます。顧客の生の声は、製品・サービスを改善するために非常に有益です。自社の公式サイトやSNSに寄せられたコメントをチェックし、顧客満足度やロイヤリティを確認してみましょう。
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6.まとめ
PMFとは、製品・サービスが市場に受け入れられて継続的に利用されている状態を指す言葉です。PMFを達成するための行動をとることで、経営資源を無駄にせず最大限活かすことにつながります。
特にスタートアップフェーズの企業であれば、PMFの考え方は非常に重要だと考えられるでしょう。PMFや前段階のPSFに達するための流れや指標の計測方法を理解し、事業を成功に導いてください。
本記事が皆様にとって少しでもお役に立てますと幸いです。
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