所得税の確定申告には、「白色申告」と「青色申告」の2種類が存在します。これらは個人事業主やフリーランスとして活動する人が収入や経費を申告する際に選ぶ制度で、それぞれに特徴やメリット・デメリットがあります。開業時に「青色申告は手続きが複雑そうでハードルが高いから、簡単そうな白色申告を選ぼう」と考える方も多いかもしれません。その結果、特に深く検討せずに白色申告を選択するケースも珍しくないでしょう。
しかし両者の違いやそれぞれの制度が提供するメリット・デメリットをしっかりと理解せずに選択してしまうと、後々「青色申告にしておけばよかった」と後悔することにもつながりかねません。例えば青色申告には特有の節税効果や税務上の優遇措置があるため、こうしたメリットを見逃してしまう可能性があるのです。一方で白色申告にも手続きがシンプルで記帳の負担が軽いといった利点があるため、全ての人にとって青色申告が最善というわけでもありません。
そこで本記事では白色申告と青色申告の違いを明確にしながら、白色申告の特徴やその具体的なメリット・デメリットについて詳しく解説します。「自分にはどちらが適しているのか」「選択によってどのような影響があるのか」といった疑問を解消するための参考にしていただける内容となっています。
特にこれから事業を始めようとしている方やすでに白色申告を選択しているものの青色申告に切り替えたいと考えている方にとって役立つ情報を網羅しています。それぞれの制度の特性を理解し自分にとって最適な申告方法を選ぶためのヒントとして、ぜひ最後までご一読ください。
目次
1.白色申告とは?
白色申告は青色申告に比べて「申告に必要な経理作業が簡単で手間が少ない反面、節税の効果が限られている」申告方法です。一方青色申告は「白色申告よりも厳密な帳簿の作成が求められ簿記の知識が必要ですが、節税のメリットが多い」申告方法と言えます。
以前事業所得が300万円以下の場合、白色申告者には帳簿をつける義務がありませんでした。しかし税制改正により、すべての白色申告者に記帳と帳簿の保存が義務付けられました。
そのため「白色申告は帳簿不要で簡単」と考えていた人々にとっては、もうそのメリットはなくなっています。また「どの程度の所得から白色申告を選ぶべきか?」「青色申告に変更するのはいつか?」と迷っている方も多いですが、申告する所得には下限や上限はありません。
一般的には年間の所得が少ない場合は白色申告を選び、ある程度大きい収益を見込める場合は青色申告を選ぶことが多いとされています。
白色申告で経費として計上できる上限額
個人事業主が白色申告を行う場合には、経費として計上できる金額に制限はありません。
ただし金額自体に上限はないものの税務調査が行われると、経費の内容について細かく調査されることがあります。経費として認められるかどうかの判断基準は、「その支出が事業に関連しているかどうか」です。すべての支出が経費として認められるわけではないため、注意が必要です。
白色申告で経費に含められるものの一覧
白色申告で経費として計上できる項目は以下の通りです。
給料賃金:従業員・パート・アルバイト等に定期的に支払う給与
外注工費:外部に業務を委託した際に発生する費用 例:営業代行・清掃業務の外注費用など
減価償却費:減価償却資産にかかる経費 例:車両・建物・機械の減価償却費
貸倒金:回収不可能となった売掛金等の損失 例:取引先の倒産で未回収となった代金など
地代家賃:店舗・工場・倉庫などの賃貸料
利子割引料:事業資金の借入金にかかる利息
租税公課:事業に関連する税金(国や地方公共団体に支払う) 例:個人事業税・固定資産税・自動車税・印紙税など
荷造運賃:販売商品を発送する際の費用(梱包や配送にかかる費用) 例:ダンボール・ガムテープ・宅配便の料金など
水道光熱費:事務所や店舗での電気代・ガス代・水道料金等
旅費交通費:事業での移動費用(電車賃・バス代・タクシー代・宿泊費等)
通信費:電話料金・インターネット回線利用料・切手代等
広告宣伝費:商品や事業の宣伝に使う費用 例:チラシ・カタログ・ウェブサイト広告費・販促物の作成費用等
接待交際費:取引先への接待等にかかる費用 例:飲食代・手土産代・お歳暮やお中元等の贈答品代など
損害保険料:事業に関連する火災保険や自動車保険等の保険料
修繕費:店舗・機械・自動車等の修理や修繕にかかる費用
消耗品費:1年未満使用または10万円未満で購入した備品等の購入費用 例:文房具・包装資材・ガソリン代等
福利厚生費:従業員のための健康診断や福利厚生費 例:健康診断費用・社会保険料・忘年会費用等 これは従業員を雇用していない場合は、原則として利用できません
雑費:少額で他の経費に該当しない事業費用
「勘定科目」とは、簿記の仕訳で使われるカテゴリーのことです。このように項目を整理しておくことで、誰が見ても内容が一目でわかりやすくなります。
上記の科目は白色申告における収支内訳書に記載される経費項目の一部です。自社の事業に必要な科目は、追加・設定することもできます。
青色申告との主な違い
白色申告と青色申告の違いを以下のようにまとめました。
白色申告 | 青色申告 | |
---|---|---|
帳簿の記録方法 | 単式簿記 | 青色申告特別控除65万円/55万円の場合は複式簿記(「借方」と「貸方」の両方を記録)※青色申告特別控除10万円の場合は単式簿記で可 |
確定申告時の提出書類 | 収支内訳書 | 青色申告決算書(貸借対照表・損益計算書)※青色申告特別控除10万円は損益計算書のみ |
必要な手続き | なし | 「所得税の青色申告承認申請書」を税務署に提出※1 |
特別控除額 | なし | 最大65万円・最大55万円・最大10万円の3種類 |
赤字の繰越 | 原則として不可 | 3年間繰越可能 |
貸倒引当金の経費繰入れ※2 | 個別のみ可能 | 個別、一括ともに可能 |
事業専従者への給与の経費計上※3 | 可能(ただし上限あり) | 可能 |
申請期限 | なし | 青色申告を開始しようとする年の3月15日までに提出、または新規開業の場合は業務開始から2ヶ月以内に提出 |
※1 「所得税の青色申告承認申請書」は青色申告を行う年の3月15日までに提出する必要があります。新規開業の場合、業務開始から2ヶ月以内に提出する必要があります。
※2 貸倒引当金は、貸倒損失に備えて事前に計上する予想額です。
※3 事業専従者は申告者と生計を共にする配偶者や15歳以上の親族で、年間6ヶ月以上その事業に従事している者です。
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2.白色申告が適している人
フリーランスや個人事業主として働く方の中には、確定申告で白色申告を選んだほうが適している場合もあります。具体的にどのようなケースが該当するのか、以下に挙げてみます。
年度の途中で退職後初めて確定申告を行う個人事業主の方
会社員は給与支給時に所得税に相当する金額を「源泉徴収」という形で、会社が給与からあらかじめ差し引いています。そして12月には「年末調整」という手続きが行われ、会社が社員に代わって正確な所得税を納めます。
所得税の計算方法は毎年見直しが行われ、「今年の計算式」は通常10月頃に発表されます。そのためそれまでは前年の計算式に基づいて所得税を計算し、給与から差し引いています。このように、実際の税額が確定するまでの間に徴収された金額は「仮預かり」の状態といえます。
12月になると「今年の計算式」を用いて正確な税額を計算し、「仮預かり額」と比較します。もし徴収額が多かった場合は差額が返金され、不足していた場合は差額が給与から差し引かれます。この手続きが「年末調整」です。
一方年度途中で退職した場合、会社はその後の年末調整を行わないため源泉徴収された「仮預かりの所得税」が未精算のままとなります。この状態を解消するためには「確定申告」が必要です。
確定申告では、在職中の給与収入や退職後の収入・支出を税務署に申告します。この際年末調整と同様の計算が行われ、会社員でも受けられる控除(例:配偶者控除・生命保険控除・個人年金控除・地震保険控除・扶養控除など)が適用されるため、結果的に払い過ぎていた所得税が還付されるケースが多くなります。
特に年度途中(6月以降)に退職してフリーランスや個人事業主になった場合には、初回の確定申告では白色申告を選ぶ方が適していることがあります。白色申告は手続きが簡単で、青色申告のように特別控除を活用するための複雑な帳簿付けや書類作成の手間が不要です。
ただし、退職後の収入が非常に多額である場合には例外となる可能性があります。退職後の収入が会社員時代の給与を少し上回る程度であれば、白色申告でも十分といえるでしょう。
このような背景から、初めて確定申告を行う方には白色申告をおすすめできる場合があります。
経理業務に自信がなく、シンプルな手続きが望ましい方
青色申告を選ぶと、帳簿の作成や提出書類がかなり本格的なものになります。会計ソフトを使用する場合でもこれらのソフトは「ある程度の経理知識を持っている人」を前提に設計されているため、全く知識がないと扱うのが難しくなります。
そのため青色申告を行うには、基本的な経理の知識を習得することが求められます。経理作業に不安がある場合は、白色申告の方が適しているかもしれません
経理が苦手な方には、白色申告を選ぶ方がスムーズに申告手続きを進めやすいでしょう。
事業が赤字となってしまった方
フリーランスをしていると、予期しないアクシデントに遭遇することがあります。例えば病気で仕事ができなくなったり、不況の影響で仕事がほとんど取れなかったりすることです。
このような状況に陥ると、年間収支が赤字になる場合があります。赤字の場合には青色申告をしていても特別控除の効果はなく、手間が増えるだけです。
青色申告を続けている場合でも赤字の繰越は可能ですが、それは「翌年に収入があれば」の話です。収入の見込みが立たない場合は「青色申告の取りやめ申請」を行い、白色申告に戻すこともできます。白色申告に戻すことで面倒な経理作業から解放され、事務処理が楽になります。
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3.白色申告の主なメリット
この章では白色申告の主なメリットについて解説します。
青色申告に比べて簡単で手続きがシンプル
白色申告では帳簿の記帳が求められますが複雑な帳簿をつける必要はなく、簡易な記帳方法で済みます。確定申告も、収支内訳書に売上や経費などを記入するだけのシンプルな手続きで済みます。
青色申告では特別控除を最大65万円または55万円受けるために、「複式簿記」で帳簿をつけることが求められます。一方最大10万円の控除を利用する場合は、貸借対照表の提出が不要であり簡易な帳簿で対応可能です。
複式簿記とは、1つの取引を「お金の動き」と「その原因」の両面から記録する方法です。単式簿記と異なり、「借方」と「貸方」を使用して記録します。
たとえば、「消耗品費が3,000円増えた」と同時に「現金が3,000円減少した」という取引内容を双方の視点で表す形式です。確定申告の際には収益や費用の合計を記載した「損益計算書」と、資産・負債・純資産の状況を示す「貸借対照表」の提出が必要です。
複式簿記を採用する場合には基本的な簿記知識が求められるため、日常の経理作業や申告書類の作成には一定の手間がかかることが考えられます。
特定の申告書類の提出が不要
青色申告を行いたい場合には開業から2カ月以内に申請をしなければならないため場合によってはその年の確定申告で青色申告を利用できず、翌年からの適用となることがあります。
一方白色申告は青色申告のように事前に税務署への申請が不要で、申告の時期に関係なく申告を行うことができます。
4.白色申告の主なデメリット
白色申告の欠点は、青色申告にあるような特別控除や税金軽減の優遇措置が受けられない点です。確定申告では年間の総所得から経費や控除を差し引いた後の金額に基づいて税額が決定されるため、控除額が多いほど節税効果が高くなります。
この章で改めて解説します。
青色申告特別控除(最大65万円)が適用されない
青色申告では必要な書類を提出することで最大65万円の青色申告特別控除を受けることができますが、白色申告ではこの控除を受けることはできません。
青色事業専従者給与制度が利用できない
青色申告では配偶者や親族に支払った「青色事業専従者給与」を必要経費として所得から差し引くことができますが、白色申告では「事業専従者給与」として控除できる金額に制限があります。
赤字の繰越や繰戻しができない(一部条件下で可能)
赤字(純損失)とは事業所得・不動産所得・譲渡所得・山林所得の4種類の所得において、損益通算を行ってもなお控除しきれない金額が該当します。
青色申告を選択している場合には、赤字分を翌年以降の最大3年間にわたって繰り越すことが可能です。繰戻しとは過去の黒字分と当年の赤字を相殺する仕組みのことで、青色申告に限り利用できる制度です。
一方、白色申告では原則として赤字の繰越しや繰戻しは認められていません。ただし災害(例:新型コロナウイルス感染症など)による影響と判断された場合には、これらの制度が適用される場合があります。
特に開業時に赤字が出ることが予想される事業では、赤字を繰り越せない白色申告を選ぶことは大きなデメリットとなるでしょう。
貸倒引当金を設定することができない(一部例外あり)
貸倒引当金は、以下の2種類に分類されます。
個別貸倒引当金
一括貸倒引当金
個別貸倒引当金については、白色申告者でも不動産所得・事業所得・山林所得を得る事業を営んでいる場合に計上することが可能です。一方一括貸倒引当金は青色申告者だけが利用できる制度であり、白色申告では適用されません。
少額減価償却資産特例を適用できない
青色申告を行う場合には特定の条件を満たすことで、取得価額30万円未満の減価償却資産を購入した年度の経費として全額計上できる特例を受けることができます。しかし、白色申告ではこの特例を適用することはできません。
5.白色申告の方法:まずは書類作成の方法を選択
まず、白色申告に必要な書類(収支内訳書と確定申告書)をどの方法で作成するかを決めましょう。作成方法は主に以下の3つの選択肢があります。
確定申告書作成コーナーを利用
確定申告ソフトを使用
手書きで作成
また税理士などの専門家に依頼する方法もありますが白色申告の場合は自身で作成する方が多いため、ここではその方法については触れていません。
確定申告書作成コーナーを利用して作成
国税庁のWebサイトには「確定申告書等作成コーナー」というページがあり、必要な情報を入力するだけで白色申告の確定申告書を簡単に作成できます。確定申告書作成コーナーのメリットは以下の通りです。
画面の指示に従って入力するだけで、簡単に申告書が作成できる
納税額が自動で計算される
収支計算がシンプルで経費が少ない方に最適
作成した確定申告書は印刷して税務署に直接持参する他、インターネット経由で税務署に送信するe-Taxや郵送で提出することも可能です。
提出方法に制限はありませんが、移動時間や郵送費を削減するためにインターネットでの提出をおすすめします。e-Taxはメンテナンス時間を除き、24時間いつでも提出できるのも大きなメリットです。
確定申告用のソフトやアプリを使用して作成
確定申告ソフトは申告書のフォーマットに合わせて必要な情報を入力することで、申告に必要なデータを自動的に作成できるツールです。
簿記や会計の専門知識がなくても使いやすいように設計されているため、フリーランスや副業をしているサラリーマンなどの白色申告に適しています。確定申告ソフトのメリットは以下の通りです。
直感的で簡単に申告書を作成・提出できる
クレジットカードや銀行口座との連携が可能で、仕訳作業がスムーズに行える
多くのソフトはスマートフォンでも利用できる
手書きで書類を作成
手書きで確定申告書を作成する方法です。白色申告の場合も、紙の申告書を使って手書きで申告することができます。申告書の入手方法は様々ですが最も手軽なのは、国税庁の公式サイトから申告書の様式をダウンロードし印刷する方法です。
確定申告書の主な入手方法は以下の通りです。
税務署で直接受け取る
税務署に取り寄せを依頼する
確定申告期間中に設置される申告相談会場で受け取る
自宅やコンビニでプリントアウトする
手書きで申告書を作成する場合には計算や記載ミスをしやすいため、初心者にはあまりおすすめできません。しかし、以下のようなメリットもあります。
申告期間中であれば、税務署に持ち込んで相談しながら作成できる
時間はかかるが、確定申告を終えた達成感を得られる
パソコン操作が苦手な方や、税務署の担当者と慎重に申告を進めたい方に適している
また作成内容について不明点があれば申告書を税務署に持参して直接相談することもできますし、電話で国税局の相談センターを利用することも可能です。
6.白色申告書類を作成するための基本的なステップ
白色申告の目的は、確定申告書と収支内訳書を作成して提出することです。白色申告のプロセスは、以下の4つのステップで構成されています。
記帳作業
決算作業
確定申告書と収支内訳書の作成
控除証明書などの必要書類の準備
これらの各ステップについて詳しく解説していきます。
帳簿の記録作業を行う
日々の取引を効率よく記帳することで、確定申告に関わる負担を大きく減らすことができます。作業を簡素化するためには、記帳の頻度を減らすことが重要です。
もし毎日入金や売上が発生している場合、その日の取引をまとめて記帳することで効率よく作業できます。例えば同じ種類の取引については、毎日1回まとめて記帳するのが良い方法です。
また記帳が終わった会計帳簿や証拠書類は、二重計上を避けるために記帳済みであることが分かるようにマークをつけたり整理して保管したりしましょう。
事業内容に応じて必要な項目をきちんと記帳していれば複式簿記のルールを使うことなく、単式簿記で白色申告の記帳を行うことができます。
記帳に必要な主な項目は次の通りです。
入金に関する詳細(現金売上、掛売上など)
出金に関する詳細(仕入れや経費など)
取引先
取引年月日 など
決算処理を進める
次に、白色申告における重要な作業として決算があります。記帳が日常的な業務であるのに対し、決算は年度末に一度行う作業です。決算の作業には、以下のものが含まれます。
棚卸表の作成(棚卸商品などがある場合)
減価償却費の計算(減価償却資産がある場合)
棚卸の際には原則として12月31日を基準に在庫を評価しますが、年度内の業務最終日など売上や仕入が発生しない時点で行うことも可能です。
減価償却費については1年分をまとめて計算することもできますが、毎月の計上を選ぶこともできます。減価償却を申告しないまま確定申告を行うと、後で修正手続きが必要となるため注意が必要です。
また年度の途中で使用を開始した減価償却資産については、その使用月数分を償却額として算出します。計算式は次の通りです。
当期償却額 = 取得価額 × 耐用年数に応じた償却率 × 使用した月数 / 12 |
また棚卸表や固定資産台帳などの決算に必要な書類は、法定帳簿や任意帳簿を作成する際の基礎となり申告対象年度の翌年3月15日から5年間の保存が求められます。
収支内訳書と確定申告書を作成する
白色申告における収支内訳書と確定申告書の作成手順について見ていきましょう。
収支内訳書の具体的な記入方法
白色申告には、事業の売上や経費をまとめた収支内訳書が必要です。収支内訳書には一般用・農業所得用・不動産所得用などの種類がありますが、ここでは一般用を使った説明をします。
収支内訳書は国税庁のWebサイトからダウンロードでき、また税務署などでも入手可能です。書式は定期的に更新されるため、最新のものを利用しましょう。
収支内訳書には記帳した帳簿や決算で行った棚卸、減価償却費などの結果を反映させます。効率的に収支内訳書を作成するためには、内訳項目から記入を始めると良いです。まずは該当する項目に記入し、最後に損益計算書をまとめる方法がおすすめです。
収支内訳書に記入し所得金額の根拠を明確にし、1年間の事業内容を整理できます。
確定申告書の記入手順(手書きの場合)
確定申告書には「申告書A」と「申告書B」がありましたが、これらが統合され「確定申告書」として一本化されました。確定申告書の第一表は、以下のように記入します。
住所、氏名、個人番号などの基本情報を記入します。印鑑は不要です。
収支内訳書から収入合計額を転記します。
必要経費を差し引いた所得金額を収支内訳書から転記し、合計を記入します。
支払った社会保険料・生命保険料・扶養控除などを証明書をもとに記入します。
所得金額から控除額を差し引いた後の課税対象所得を計算し、所得税額を求めます。復興特別所得税を加算します。
配偶者控除などの適用を受ける場合に、配偶者の所得金額を記入します。
延納の届出が必要な場合は、記入します。
還付請求を行う場合には、税金の受取口座情報を記入します。
確定申告書には必要な情報を漏れなく記入し、正確な申告を行うことが求められます。
控除証明書などの必要書類を揃える
確定申告書に必要な添付書類について、申告者本人確認書類と申告内容に基づく書類が求められます。本人確認書類は、申告者が持っているマイナンバーカードの有無により異なります。
マイナンバーカードがある人:マイナンバーカード・表と裏の両面のコピーが必要
マイナンバーカードがない人
番号確認書類:変更なしの通知カードか変更なしの通知カードが必要
身元確認書類:運転免許証・公的医療保険の被保険者証・パスポートなどがいずれか必要
また白色申告に必要な主な添付書類は、次の通りです。
項目 | 必要書類 | 備考 |
---|---|---|
事業・営業等 | 収支内訳書 | 二面とも提出 |
所得控除 | 社会保険料控除証明書 | 申告時期に合わせて送付されます |
小規模企業共済等掛金控除 | 支払った掛金の証明書 | iDeCoの支払証明等 |
生命保険料控除・地震保険料控除 | 支払額を証明するもの | 申告時期に合わせて送付されます |
医療費控除 | 医療費控除の明細書 | 医療費の内訳を自分で記入 |
医療費のお知らせ | 原本提出 | |
セルフメディケーション税制による医療費控除 | セルフメディケーション税制の明細書 | セルフメディケーション税制の明細書 |
寄付金控除 | 寄附金の受領証 | ふるさと納税や政治献金など |
税額控除 | 住宅ローン控除の計算明細書 | 適用対象や時期によって必要書類が異なります |
電子申告(e-Tax)の場合
e-Taxを利用した電子申告の場合には多くの所得控除や税額控除について、書類を省略することができます。これらの書類は保管することが条件となり、必要に応じて税務署からの提出を求められる場合があります。
郵送または窓口提出の場合
郵送や窓口持参で申告書を提出する場合は、添付書類を整理するための台紙を利用すると便利です。
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まとめ
白色申告の手続きは基本的にすべての取引を正確に記録し、それをもとに収支計算書や確定申告書を作成することで完了します。この記録作業は、所得税の計算や納税額を正しく導き出すための重要なステップです。
そのため入出金・売上・仕入が発生したタイミングで、確実に記帳を行うことが求められます。これを怠ると後から取引内容を正確に把握することが難しくなり、申告作業に支障をきたす可能性があります。
正確な記帳を行うためには、取引ごとの請求書や領収書といった証拠書類を適切に保管しておくことが非常に重要です。これらの書類は取引の正当性を証明するために必要不可欠であり、税務署から確認を求められた際にも重要な役割を果たします。特に金額や取引日が明記されている書類は、記録の正確性を高めるために欠かせないものです。
日々の取引を確実に記帳することは、事業の現状把握にもつながります。正確な記帳と書類の保管は白色申告において単なる手続き以上の価値を持ち、事業運営にも役立つ重要な要素であるといえるでしょう。
本記事が皆様にとって少しでもお役に立てますと幸いです。