「クライアントから領収書を求められたけれど、正しい記載方法がわからない」
「確定申告の際に使用する領収書は、どう保存すればよい?」
フリーランスとして活動を始めると、領収書の取り扱いに関して不安を感じることが多いかもしれません。特に税務処理や確定申告の際に必要となる領収書は、適切に管理しておかないと後々困ることになりかねません。
領収書は税務上非常に重要な書類ですが、その取り扱いにはいくつか注意すべきポイントがあります。例えば、領収書を発行する場合には記載すべき内容が決まっており、適切に記載しないと税務署から指摘を受ける可能性もあります。
また近年では電子領収書の利用が増えてきています。電子領収書を使う際には、従来の紙の領収書とは異なる管理方法が必要です。例えば電子領収書を保存するためのデジタル形式や保管方法、税務署に提出する際の注意点についても理解しておく必要があります。
そこでこの記事では領収書の取り扱い方や管理方法を詳しく解説し、フリーランスとしての会計処理に関する不安を解消できるようにサポートします。
領収書の正しい取り扱いをマスターすることは、フリーランスとして安定した事業運営を行うための重要なステップです。しっかりと管理し、確定申告に備えて万全の準備を整えましょう。
目次
1.領収書とは?
領収書は取引における金銭の受け渡しを証明するための証拠書類であり、代金の受取人が発行します。発行者にとっては代金を受け取った証明となり、受領者にとっては確実に支払ったことが証明されます。この記録により、二重請求や過剰支払いを防ぐ役割を果たします。
「領収証」という呼び方もありますが、意味は同じです。必要な情報が記載され金銭のやりとりが確認できる書類であれば、レシートも領収書と同様に扱うことができます。
2.フリーランスは領収書の保管が必要
経費とは、事業を進めるうえで必要となる費用のことを指します。たとえばライターが執筆のために購入した参考書籍・有料Web記事・取引先との打ち合わせにかかる交通費などがこれに該当します。
確定申告を行う際には、年間の収入をもとに必要経費や控除額を差し引いて所得を算出します。この所得に応じて納税額が決定するため、経費を正確に管理していないと適切な確定申告ができなくなります。
そのため「フリーランスになったら、必ず領収書を受け取るようにするべき」と言われるのです。
3.フリーランスが経費で落とせる領収書の範囲
例えば以下のものがフリーランスの際に経費で落とせる領収書の例となります。
開業準備費
開業に関連する費用で例えばウェブサイト制作や広告費など
租税公課
個人事業税
事業用資産に係る固定資産税
自動車税
登録免許税
印紙税 などの税金
水道光熱費:事務所で使用する以下のものなど
水道代
電気代
ガス代
灯油代
旅費交通費
事業活動に必要な交通費:出張時に利用したコインパーキング代など。
通信費:事業用で使用する以下のものなど
郵便代
電話代
インターネット料金
広告宣伝費
商品やサービスの広告宣伝に関連する支出
接待交際費
取引先への接待や贈答品の費用(プライベートのものは除く)
消耗品費
文房具
伝票
名刺
作業用デスク
10万円未満のパソコン など
修繕費
建物・設備・機械などの修理にかかる費用
減価償却費
建物・車両・コピー機・オフィス家具・機械などを耐用年数に従って経費として計上する部分
外注工賃
業務を外部に委託し、その対価として支払った金額
地代家賃
事務所や作業場などの賃貸料や使用料
福利厚生費
従業員の社会保険料(健康保険・厚生年金・雇用保険など)や法定外福利(食事補助・慶弔金・健康診断・社員旅行など)
雑費:事業に関連する以下の雑多な支出
引越し費用
書籍代
クリーニング代
年会費
銀行の振込手数料 など
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4.フリーランスが領収書を受け取る際の宛名はどうするべき?
厚生労働省は以下のような人をフリーランスと定義しています。
実店舗を持たず、従業員を雇用していない自営業者や一人社長で、自らの経験や知識、スキルを活かして収入を得ている人
そのためこの記事でもこのような雇用契約以外の形態で働く人をフリーランスとみなし、考察を進めていきます。ここでは、まず領収書を受け取った場合について見ていきましょう。
領収書に宛名が記載されていない場合の影響とは?
例えばフリーランスとして働く人が領収書を受け取った際に、宛名が記載されていないケースがあります。
スーパーやタクシーの領収書などで、宛名が空欄になっているものを目にすることがあるでしょう。これらは不特定多数の相手と取引を行う場合に限り、消費税のインボイス制度に基づき特定の業種にのみ認められている形式です。
しかしこの特定業種に該当しない領収書で宛名が記載されていない場合、税務調査などで他人の領収書であると疑われるリスクがあります。そのため領収書を受け取った際は発行日・宛名・金額・但し書き・発行者名などが正しく記載されているかを必ず確認するようにしましょう。
5.フリーランスは確定申告時に領収書を提出する必要があるのか?
取引の際に交付される他の書類によって、領収書の必要性は変わります。例えば請求書が適切に作成されその請求額を銀行振り込みで支払った場合には、銀行の振込明細書を支払いの証拠として利用できるため領収書がなくても問題ない場合があります。
そのためすべてのケースで領収書が必要というわけではありませんが、現金で支払った場合などには必ず領収書を受け取るようにしましょう。
確定申告では領収書の提出義務はない
確定申告とはフリーランスとしての1年間の収入や経費をまとめ、所得税を計算して税務署に申告する手続きです。個人の場合対象となるのは1月1日から12月31日までの1年間です。
確定申告においては、領収書そのものを提出することは求められません。代わりに領収書を基に計算した結果を反映した確定申告書とその添付書類を提出します。個人の場合、添付書類には「青色申告決算書」や「収支内訳書」などが含まれます。
しかし、受け取った領収書は保管しておく義務があります。個人も領収書は原則として7年間保管しなければならないため、税務署から照会があった際に提示できるようにしておきましょう。
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6.フリーランスが領収書を保管する際の工夫
領収書を受け取った際には一定期間保管する義務があります。通常、紙で受け取った領収書はそのまま紙として保管します。感熱紙タイプの領収書については文字が薄くならないように、直射日光や高温を避けた場所に保管するなどの注意が必要です。
さまざまな保管方法
紙の領収書を保管する方法にはいくつかありますが、簡単でよく利用される保管方法をいくつか紹介します。
ノートに貼り付けて保管
領収書やレシートをノートやスクラップブックに整理して順番に貼っていく方法は、手軽で視覚的にも管理しやすく後から見返す際にも便利な方法です。特にフリーランスの方々が経費の証拠として領収書を整理する際に、この方法を活用していることが多いです。
ノートに領収書を貼り付けていくことで取引内容・日付・金額などが一目で分かりやすくなり、確定申告時に必要な証拠を簡単に確認できるというメリットがあります。
しかし、この方法を採用する際に注意すべき点もいくつかあります。
その中でも感熱紙を使った領収書に関しては特に気をつけましょう。感熱紙は熱や摩擦に反応して印刷されるため、長期間保存する際には適切な取り扱いが求められます。感熱紙の領収書は通常の紙よりも劣化しやすく、時間が経つと文字が消えてしまうことがあります。これを防ぐためには、領収書をスクラップブックに貼る際に使用する糊にも注意が必要です。
領収書をスクラップブックに整理する方法は便利ではありますが、感熱紙を取り扱う際には十分な配慮が必要です。安全で長期的に保管できるような工夫をして確定申告の際に役立つ資料として、領収書を整備していきましょう。
封筒にまとめて分類
領収書などの書類がそれほど多くない場合には月ごとや費目ごとに専用の封筒を用意して、その中に整理して保管する方法はシンプルでありながら効率的な管理方法の一つです。この方法は特に領収書やレシートの量が少ない、もしくは毎月の取引が限られている場合に適しています。
封筒に整理しておくことで必要な時にすぐに取り出すことができ、非常に使い勝手が良いという利点があります。封筒を使用して整理する際にはいくつかのポイントに気をつけることで、さらに効率的に管理できるようになります。
まず封筒のサイズですが、少し大きめのものを選ぶと便利です。領収書やレシートは長さや幅が少し大きいものもありますので余裕を持ったサイズを選ぶことで、折り曲げることなくきれいに収めることができます。また封筒があまり小さすぎると途中で領収書を無理に押し込む必要が出てきたり、破れてしまうこともあるためある程度の余裕を持ったサイズを選ぶことが大切です。
さらに封筒には月ごともしくは費目ごとにラベルを付けておくと、後から必要な領収書を探す際に非常に便利です。例えば「2024年1月」・「交通費」・「接待費」といったようにカテゴリごとに分けておけば、確定申告の準備や税務処理の際に必要な領収書を素早く見つけることができます。また封筒の中には簡単なメモを入れておくと、なぜその費用が発生したのか誰と会ったのかなどの補足情報を後から確認できるので便利です。
封筒を使用した方法は収納スペースが限られている場合や、紙での保管が基本的に問題ない場合に適しています。ただし領収書やレシートは年月を重ねることで劣化しやすいため、封筒に保管する際も直射日光や湿気の少ない場所に保管することを心がけましょう。また紙での保管だけでなく定期的にスキャンしてデジタルデータとして保存しておくと、万が一紛失してしまった場合にも安心です。
このように封筒を利用した領収書の整理方法は、非常にシンプルで手軽に始められる方法であり必要な書類をすぐに取り出すことができるため確定申告の際にも便利です。領収書やレシートが少ない場合でも効率的に整理しておくことは非常に重要ですので、ぜひ試してみてください。
クリアファイルなどを活用して整理
最近では領収書専用のクリアファイルも販売されているため、インデックスを使ってファイルで管理する方法もおすすめです。月別・科目別・取引先別など自分が整理しやすく、探しやすい方法で分類することを心がけましょう。
また電子取引で領収書を受け取った場合でも、保存期間は変わりませんが電子帳簿保存法に従って領収書データを適切に保存する必要があります。電子帳簿保存法については後ほど詳しく解説します。
7.フリーランスが領収書を作成する際に必要なアイテム
フリーランスであっても、取引先によっては領収書の発行が求められることがあります。領収書を発行する際には、以下の項目を準備しておきましょう。
領収書のフォーマット
領収書は手書きでもExcelで作成しても問題ありません。
インターネットでは無料で提供されているさまざまなExcelテンプレートがありますので、使いやすいものをダウンロードして活用しましょう。また市販の領収書を使用する場合、控えが残る複写式のものが便利です。
インボイス制度が導入されると売主側がインボイス登録事業者の場合、インボイスの控えの保存が求められます。手書きやExcelで作成する領収書にもインボイスの要件を満たす項目を記載する必要があるため、使用するテンプレートがインボイスの要件に合致しているかを確認しておきましょう。
インボイス制度については後ほどもう少し追加で解説します。
収入印紙
契約書や領収書など決済取引に関わる文書は「課税文書」と呼ばれ、これらの文書には税金が課されます。この税金は「印紙税」として知られ、収入印紙を貼ることで納税が行われます。収入印紙は普通切手のような形状をしており、コンビニや郵便局で購入することができます。
領収書の金額が税抜きで5万円以上の場合、その金額に応じた収入印紙を貼る必要があります。収入印紙の代金は領収書を発行する側が負担します。一般的に印紙税における「記載金額」は消費税を含む金額ですが領収書の場合で消費税額などを明確に区別して記載しているケースや税込み価格および税抜き価格が明記されているケースには、消費税を除いた金額が「記載金額」となります。
また印紙税は書面での取引に対して課されるものであり、領収書をメールやFAXで送る電子取引の場合には金額に関係なく収入印紙は不要です。
印章(スタンプ)
収入印紙を領収書に貼付した後、消印処理(領収書と印紙をまたいで押印すること)が求められます。この際に使用する印章は契約時に使ったものに限らず、シャチハタなどの印鑑でも問題ありません。
送付用封筒
領収書を入れる封筒のサイズに特に決まりはありませんが、長形3号が一般的に使用されています。郵送時だけでなく、取引先担当者に直接手渡す際も、封筒に入れる方が礼儀正しいとされています。
領収書在中スタンプ
封筒には「領収書在中」のスタンプを押すことが一般的です。スタンプがない場合は、手書きでも問題ありません。封筒の中身が領収書であることが一目でわかれば、相手先で受け取った際に、担当者に迅速に回してもらいやすくなります。
郵送用の切手
領収書を郵送する際には、適切な切手を準備する必要があります。なお領収書は「信書」に該当するため、宅配便やメール便での送付はできないことに注意してください。
8.領収書発行時に記載するべき項目
領収書を発行する際には必要な情報を正確に、漏れなく記入することが求められます。この章ではフリーランスが領収書を発行する際に記載すべき項目について、詳しく説明します。
発行日
代金を受け取った日付を、年月日で記入します。西暦でも和暦でも構いませんが「2024年4月1日」や「令和6年4月1日」のように、年号や西暦を正確に記載するようにしましょう。
宛名(受取人名)
領収書を受け取る相手(支払者)の氏名や会社名は、正式な名称で記入します。株式会社や一般社団法人などの名称も「(株)」「(一社)」といった略称ではなく、正式な表記を使用しましょう。インボイスとして領収書を作成する場合は、特に正式名称を記載することが求められます。
金額
実際に受け取った金額を記入します。商品やサービスの代金の場合は、税込み金額が記載されます。金額は最も重要な項目であり、記載ミスを防ぐために慎重に記入することが求められます。また改ざんを防止するためには、金額を記入する際に以下のような方法を使用することが推奨されます。
領収書における金額の正しい記載方法
金額の先頭に「¥(円マーク)」や「金」を付ける
3桁ごとに「,(カンマ)」で区切る
金額の末尾に「-」「※」「也」などを加える
但し書き
但し書きは、受け取った金額がどのような取引に対する代金であるかを明確に記載する部分です。インボイス制度に基づく領収書では、具体的な商品やサービス名を記載することが求められます。語尾は「として」が一般的です。
また複数の商品やサービスが含まれている場合には、その中で高額なものを記載することが推奨されます。インボイス制度の領収書では、取引内容を具体的に記載することが重要です。
発行者情報
領収書を発行する側として自分の氏名や屋号、住所を記載する必要があります。記載方法は手書きでも印刷・ゴム印など、いずれでも問題ありません。
押印
領収書に印鑑を押さなくても、法的には問題はありません。印鑑が押されていなくても不備とみなされることはありませんが、偽造防止のために通常は発行者の印鑑を押すことが一般的です。場合によっては、取引先から押印を求められることもあります。
9.フリーランスのための領収書の受け取り方法
フリーランスは確定申告の際に経費として計上するために、領収書を受け取ることが必要な場合があります。事業に関連する支出が発生した際は、以下の5つの方法で領収書を入手しましょう。
店舗で領収書を発行してもらう
レシートを代わりに使用する
クレジットカードの明細書を代用する
電子データとして領収書を受け取る
領収書が発行されなかった場合
それぞれの方法について詳しく説明します。
店舗で領収書をその場で発行してもらう
最も基本的な方法は、店頭で領収書を発行してもらうことです。会計時に領収書の発行を依頼し、宛名には「氏名(または屋号+氏名)」と「但し書き」を記入してもらいましょう。
場合によっては宛名を「上様」として良いか確認されることがありますが、税務調査時に不正が疑われる原因となることがあるため必ず正確な氏名や屋号を記載してもらうようにしましょう。
レシートを領収書の代わりとして利用する
領収書をもらい忘れた場合、レシートを代わりに使うことができます。金額・取引内容・発行日など、領収書と同じ情報が記載されたレシートであれば会計上の証拠書類として有効です。
税務調査にもレシートを提出すれば問題ありません。また、レシートの裏面に具体的な用途や勘定科目を記入しておくと、会計処理がよりスムーズに進みます。
クレジットカードの利用明細を活用する
通常クレジットカードで支払いを行うと、利用明細書が発行されます。この明細書がレシートと同様の情報(取引金額や内容など)を含んでいれば、領収書の代替として使用できます。
もし領収書やレシートが手元にない場合でも、クレジットカードの利用明細書に必要な情報が記載されているか確認し適切に保管しておきましょう。
電子形式で領収書を受け取る
購入先によっては、電子領収書を提供する場合があります。例えばオンラインショップでの電子領収書がこれに該当します。
従来は受け取った電子領収書を紙に印刷して保存することが認められていましたが、令和6年(2024年)1月からは電子帳簿保存法に基づき「電子取引データ保存」が義務化されるため、電子データとしてそのまま保存する必要があります。
この義務化に備えて、今から電子データの管理を習慣化することをお勧めします。電子帳簿保存法については後ほど詳しく解説します。
10.フリーランスが発行する領収書とインボイス制度の関係
2023年10月1日から導入されたインボイス制度により、領収書の記載方法や取り扱いが変更されました。
フリーランスが発行する領収書も2023年9月までのものとは異なり、インボイス制度の影響を受けています。インボイス制度とフリーランスが発行する領収書の関係をしっかり理解し、適切な領収書を発行できるようにしましょう。
インボイス制度により領収書が「適格簡易請求書」として機能する
インボイス制度の導入により、領収書は「適格簡易請求書」として利用されるようになりました。
この制度では一定の記載要件を満たした適格請求書が発行されている場合にのみ、その取引が仕入税額控除の対象となります。したがって、適格請求書を発行できるかどうかが重要になります。
不特定多数の人に対して販売などを行う業種では、領収書が適格請求書として認められることがあります。このような領収書は「適格簡易請求書」と呼ばれます。
適格請求書発行事業者として登録したフリーランスは、適格請求書(または適格簡易請求書)として認められる領収書を発行する必要があります。
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11.フリーランスが発行する領収書と電子帳簿保存法の関係
領収書を発行する際には、電子帳簿保存法との関連についても理解しておくことが重要です。
電子帳簿保存法をわかりやすく解説
電子帳簿保存法(通称「電帳法」)は、国税に関連する帳簿や書類を電子的に保存することを認める法律です。この法律は1998年7月に初めて制定され、時代の変化に合わせて何度も改正されています。
電子帳簿保存法の適用対象には領収書も含まれます。最新の改正は2022年に行われ、2023年12月31日までは猶予期間が設けられています。この改正により、電子的に取引されたデータはすべて電子的に保存することが義務付けられました。
以前はそのデータを紙に印刷して保存することが許可されていましたが、今後はその方法が認められなくなります。
電子形式で発行した領収書は電子形式での保存が必須
電子形式で発行された領収書は、同じく電子形式で保存しなければなりません。紙で発行された領収書についてもスキャナーやカメラを使ってデジタル化し、電子的に保存することが可能です。
また電子帳簿保存法は領収書だけでなく、その他の書類にも適用されます。この法律には書類の保存に際してタイムスタンプの付与や検索機能の要件など、いくつかの規定が含まれています。
12.フリーランスが領収書を発行する際の注意事項
フリーランスが領収書を発行する際には、いくつか気を付けるべきポイントがあります。この章では、領収書発行時に注意すべき3つの重要な点を説明します。
金額が5万円以上の場合は収入印紙を貼付
領収書は印紙税法における第17号文書「金銭または有価証券の受取書」に該当し、印紙税が課されます。これには領収書やレシートのほか、金銭の受け取りを証明するために「代済」などの記載がある請求書や納品書も含まれます。
領収書に収入印紙が必要となるのは、受取金額が税抜きで5万円以上の場合です。また収入印紙を貼付した際には、必ず消印処理(領収書と印紙をまたいで印を押すこと)が必要です。
なお領収書が電子データで発行される場合は、金額に関わらず収入印紙の貼付は不要です。
クレジットカード払いの場合は領収書発行が不要
クレジットカードで支払いを受けた場合、領収書の発行は不要です。これはクレジットカードでの支払いでは取引先から直接お金を受け取るのではなく、カード会社を通じて支払いを受けるためです。
そのため取引先から領収書の発行を求められても、発行する義務はありません。しかし取引先が領収書を求める場合には、クレジットカードでの支払いを受けた旨を明記するようにしましょう。
領収書は基本的に再発行しない
原則として、領収書の再発行は行いません。取引先から再発行を依頼された場合でも、応じる義務はありません。
領収書は金銭のやりとりが完了したことを証明する書類です。もし取引ごとに複数枚の領収書を発行してしまうと、経費の二重計上などの不正行為を助長してしまうリスクがあります。たとえば「領収書を紛失した」と言われて再発行しても、実際には紛失していなくて取引先が架空の経費計上に使う可能性もあるからです。
トラブルを避けるためには、領収書に「再発行はできません」と明記しておくことが推奨されます。それでも再発行を受け入れなければならない場合は、「再発行であること」を明確に記載するようにしましょう。
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13.フリーランスが領収書を受領する際の注意事項
領収書を受け取る際に、宛名を自分の名前にするべきか屋号にするべきかは重要なポイントです。また領収書には一定の保管期間が義務付けられており、そのため適切に保管して紛失しないように注意することが求められます。
以下では、領収書の宛名や保管方法について詳しく説明します。
宛名を正確に記載してもらう
フリーランスが領収書を受け取る際、取引の正確性を保つためにも宛名は自分の名前や屋号を記載してもらうことが重要です。
屋号を持っている場合領収書に屋号を記載してもらうことで、後から領収書を確認した際にその取引が業務用であることが明確になり経費処理がスムーズに行えます。屋号がない場合は、自分の名前を宛名として書いてもらうようにしましょう。
「上様」と記載することも法的には問題ありませんが後々の確認が難しくなる可能性があるため、できる限り具体的な宛名を使うことをおすすめします。
領収書が発行されない場合は出金伝票を活用
金銭を支払ったにも関わらず、領収書を受け取れなかったり領収書の発行をお願いしづらかったりする場面があります。例えば自動販売機の利用・バス代などの交通費・取引先へのご祝儀や香典や見舞金などが該当します。
このような場合には、領収書の代わりに出金伝票を作成することが推奨されます。出金伝票には支払日・支払先の名称・勘定科目・内容・金額などの詳細を記載します。
またインボイス制度では業務内容によってインボイスの発行が難しい場合があり、特定の取引においては交付義務が免除されます。例えば、3万円未満の公共交通機関の運賃や自動販売機での購入などが該当します。
14.まとめ
フリーランスは柔軟で自由な働き方が魅力ですが、お金の管理も自分で行う必要があります。
領収書の発行や受領は、専門的でないことから難しく感じることもあるかもしれません。特にクライアントから急に領収書を求められたり、確定申告が近づいたりするとストレスを感じるフリーランスの方も多いのではないでしょうか。
しかし領収書の取り扱い方を理解すれば、簡単に管理できる便利な書類です。会計ソフトやアプリをうまく活用し、会計作業を効率化して不安を減らしていきましょう。
本記事が皆様にとって少しでもお役に立てますと幸いです。