クリエイティブディレクターとは広告制作の現場を統括する責任者です。広告制作にはさまざまな人たちが関係しますが、クリエイティブディレクターは彼らが能力を発揮できるよう配慮し、プロジェクトを円滑に進めていけるよう調整を行います。
また、クリエイティブディレクターにはクライアントとメンバーの橋渡しとしての役割もあります。クライアントからどのような広告やWebサイトなどを制作したいか聞き出し、関係者各位と共有します。また、メンバーの急な都合で進捗が遅れる際はクライアントに納期の変更をお願いすることもあります。
本記事では、クリエイティブディレクターについて概要やこの職に就くための方法、年収、やりがい、注意点などを解説します。
目次
1.クリエイティブディレクターとは
クリエイティブディレクターとは広告制作の現場における責任者です。
クリエイティブディレクターは主に広告制作会社でチームを統括する役割を担います。具体的には、クライアントからPRしたい商品やサービスの概要などをヒアリングし、どのような方法で広告宣伝を実施するのか検討します。
その後、コピーライターやアートディレクターなどの各専門家を集めてチームを編成し、広告物の制作を順調に進められるよう調整していきます。
クリエイティブディレクターの中にはデザイナーやコピーライターなどのクリエイター職から転身した人もいます。
クリエイティブディレクターとアートディレクターの違い
クリエイティブディレクターと混同されやすい職業として、アートディレクターがあります。
クリエイティブディレクターとアートディレクターは、監修する対象の範囲が異なります。クリエイティブディレクターは広告戦略からプロジェクト進行まで監修を行います。
つまり、広告制作における全体を監修する立場にあります。一方、アートディレクターは広告をビジュアル面に特化して監修します。作品を見た人が何を思うか想像を巡らせながらデザイナーやクリエイターなどの制作スタッフを統括し、ビジュアルを提案します。
クリエイティブディレクターはアートディレクターの上司としてのポジションにあたることも現場によってはあります。
クリエイティブディレクターとプロデューサーの違い
プロデューサーは制作全般の運営を管理する立場にあります。クリエイティブディレクターの上司にあたるポジションともいえます。
クリエイティブディレクターが現場監督であるならば、プロデューサーは全体の責任を負う総監督といえます。
プロデューサーはクライアントに売り込みを行ったり、予算の管理を担当したりします。
クリエイティブディレクターとWebディレクターの違い
本記事で説明しているようにクリエイティブディレクターとは広告制作の現場で企画や進行を担います。
一方、WebディレクターとはWebサイト制作においてプロジェクトを企画し、進行する人材のことです。Webディレクターの活動領域はWeb制作の現場で、ホームページの制作や記事の制作などが主な活動領域になります。
WebディレクターはWeb制作においてクライアントから要望を聞き、それを実現できるようにメンバーを選定し、スケジュールを調整します。メンバーが才能を発揮できるように、働きやすい環境を作るのも役目です。
2.クリエイティブディレクターの仕事内容
クリエイティブディレクターという言葉を聞いたことがあっても、どのような仕事をするのかイメージできない人もいるのではないでしょうか。
クリエイティブディレクターの主な仕事内容として、以下の4つが挙げられます。
ヒアリング
ヒアリング内容に基づいた企画・提案
人員配置・進捗管理
広告のディレクション
それぞれ確認していきましょう。
ヒアリング
クリエイティブディレクターはクライアントがいて成り立つ仕事です。クライアントにヒアリングを行い、どのような広告を望んでいるか把握します。
クライアントの中には明確なイメージを持っている人もいれば、漠然としたイメージしか持っていない人もいます。クリエイティブディレクターはクライアントが広告やWebサイトの理想とするイメージを言語化できるように話題を振ったり、クライアントの利益になるデザインを会話の内容を考慮しながら提案したりします。
ヒアリングをきちんと行わなければ、クライアントを満足させられる広告の制作は難しいでしょう。
ヒアリング内容に基づいた企画・提案
クリエイティブディレクターはヒアリング内容に基づき、企画・提案を行います。クライアントの要望を念頭に置きながら、広告やWebサイトの全体像を検討します。
この段階以降、デザイナーやコピーライターなどを選定してチームを結成し、広告戦略の策定を実施します。
クリエイティブディレクターの主な役割はクライアントのニーズに応じられるアイデアの提案です。クライアントが売り出したいサービスや商品を企画、立案の段階から立ち合い、ベストなPR方法を考案します。
また、商品やサービスを利益が最も出る方法でPRできるとは限りません。予算や可能な手段についても考慮する必要があります。ターゲット層にアピールするアイデアを条件を踏まえて提供しなければなりません。
人員配置・進捗管理
クリエイティブディレクターは企画や提案の承認後、現場監督者として人員配置、進捗管理を行います。
スタッフの配置、外部への開発依頼、進捗管理などもクリエイティブディレクターの役目です。
スタッフが能力を活かせるよう配慮したり、納期に間に合い、かつ関係者の負担にならないようスケジュールを管理したりするスキルも求められます。
広告のディレクション
プロジェクトの開始後、全体の方向性を調整したり、各種必要性を判断したりします。また、スケジュール調整も状況に合わせて随時行います。
クリエイティブディレクターは関係者のことを第一に考え、広告全体をディレクションするスキルが不可欠です。クライアントに大きな利益をもたらせるアプローチ方法を考慮しつつ、限られた時間と予算の中で大きなプロモーション効果を生み出せるように現場をリードします。
3.クリエイティブディレクターに求められるスキル
クリエイティブディレクターは現場のマネジメント的な立場にあたるため、求められるスキルも多岐にわたります。
クリエイティブディレクターに求められるスキルとして、以下の8つが挙げられます。
想像スキル
広告制作の知識
マーケティング分析スキル
プログラミングスキル
ヒアリングスキル
問題解決スキル
マネジメントスキル
トレンドへの感度・情報収集スキル
それぞれ確認していきましょう。
想像スキル
クリエイティブディレクターとして働く上で想像スキルや独創スキルは重要な要素です。
多くの人の心を掴む広告を制作するには、オリジナリティ溢れる斬新な発想や、他者に共感してもらえるアイデアが不可欠になります。
誰かの心を掴むアイデアが思い浮かぶようになるまでは時間がかかるものです。日頃から社会や他者に関心を向けたり、街の様子に目を凝らしたり、あるいはさまざまな広告に触れることで想像スキルを少しずつ高めていけます。
広告制作の知識
クリエイティブディレクターとして働く上で広告制作の知識は必須です。広告戦略全体をマネジメントする立場にあるため、広告制作についての知識がなければ勤まりません。
広告制作の順序やクライアント対応などに実際に携わり、広告制作現場でさまざまな経験を積んだ人でなければ難しい仕事といえます。
マーケティング分析スキル
広告制作では消費者の視点で検討したり、市場のニーズを把握したりすることが不可欠であるため、マーケティング分析スキルが求められます。
マーケットに対して効果を生み出す広告を制作するにはマーケティング課題の抽出を行い、マーケティング分析を行って課題の解決策を導き出さなければなりません。
マーケティング分析が十分でなければ、広告制作プロジェクトが失敗する恐れもあります。
プログラミング
クリエイティブディレクターはプログラミングスキルが役立つシーンも多々あります。
あらゆる領域でデジタル化が進む今、広告業界においてもWebサービスと連動したキャンペーンの重要性が増しています。プログラミングスキルがあれば、自身でイメージした通りにWebサービスの構築・提案を行えます。
クリエイティブディレクターがコーディングする機会は基本的にはありません。しかし、プログラミングの知識があればWebサービスを構築する際にIT関係の分野を担当するメンバーとのコミュニケーションがスムーズになったり、現在の状況を正確に理解できたりします。
ヒアリングスキル
クリエイティブディレクターはクライアントが思い描くキャンペーンをヒアリングし、そのコンセプトや表現方法を検討しなければなりません。ヒアリングスキルが欠けている場合、チームメンバーがどれだけ優秀であっても、クライアントが想定していたような仕上がりにはならないでしょう。
また、クリエイティブディレクターはチームメンバーに指示を出すだけでなく、意見や状況を聞く立場にもあります。相手の言葉を誤って理解した場合、食い違いが起きたり、トラブルにつながったりします。
問題解決スキル
クリエイティブディレクターはクライアントが抱える課題を解決するという意識を持って仕事をしなければなりません。クライアントが抱える問題を把握し、それを解決できるような企画を立てるスキルが必要です。
また、プロジェクトはスケジュール通りに円滑に進むとは限りません。メンバーの体調不良など不測の事態でスケジュールに遅れが生じることもあるでしょう。
あるいは、想像以上の費用が発生し、予算オーバーという事態に直面するケースもあります。クリエイティブディレクターにはこうした問題にも臨機応変に対応するスキルが求められます。
マネジメントスキル
プロジェクトがうまくいくかはクリエイティブディレクターのマネジメント力に左右されるといっても過言ではありません。
クリエイティブディレクターはプロジェクトが円滑に進むようにメンバーを配置したり、メンバーのモチベーションを維持できるように指揮を執ったりします。メンバーの管理を怠ると、プロジェクトがストップすることもあります。
また、プロジェクトは計画通りに進むものではないため状況に応じて調整したり、関係者に状況を説明し、納得してもらえるよう説明したりすることも求められます。
トレンドへの感度・情報収集スキル
何事においてもいえることですが、広告にもトレンドがあります。時代によって多くの人を惹くポイントや内容は異なります。また、時代のトレンドを汲み取ったものであれば、話題になる可能性も高いです。
クリエイティブディレクターは自分の好みの広告を制作すればよいわけではないため、市場や業界のトレンドを把握し、それを活かす力が求められます。インターネットや街で情報をキャッチしたり、デザイン関連のイベントやセミナーに参加して学んだりすることが求められます。
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4.クリエイティブディレクターになる方法
クリエイティブディレクターとして働くことを考えている人の中には、どうすればこの職に就けるのか悩んでいる人もいるはずです。
クリエイティブディレクターになる方法として、以下の3つが挙げられます。
大学で学ぶ
専門学校で学ぶ
資格を取得する
それぞれ確認していきましょう。
大学で学ぶ
クリエイティブディレクターになるには四年制大学に進学する必要は必ずしもないものの、大卒の資格があると評価されるシーンもあります。
クリエイティブディレクターを目指している人はグラフィックデザインを学べる学部学科がおすすめです。
専門学校で学ぶ
専門学校であれば大学よりも実践的な内容を短期間で学べます。
クリエイティブディレクターを目指している人にはデザインの基礎、デジタルマーケティング、AI生成系、プログラミングなどを学べるコースがおすすめです。
専門学校の中にはクリエイティブディレクターを多く輩出している学校もあります。
資格を取得する
クリエイティブディレクターとして働く上で資格は必須ではありません。しかし、業務に直結する資格を取得していれば、自身のスキルを客観的に証明できます。面接時に即戦力として働けることをアピールする材料にもなります。
クリエイティブディレクターの業務に役立つ資格には主に以下のものがあります。
・アドビ認定エキスパート(ACE)
アドビ認定エキスパート(ACE)はアドビ(Adobe)の製品ごとに行われる認定試験です。この資格を取得することでPhotoshopやIllustratorといったアドビのソフトウェアを使いこなせることを証明できます。
アドビ認定エキスパート(ACE)の詳細はこちらからご覧いただけます。
・Illustrator®クリエイター能力認定試験
Illustrator®クリエイター能力認定試験はサーティファイが運営する資格試験制度です。この資格があれば世界基準のグラフィックツールであるIllustrator®の活用能力を客観的に証明できます。
Illustrator®クリエイター能力認定試験の詳細はこちらからご覧いただけます。
・カラーコーディネーター検定試験®
カラーコーディネーター検定®は東京商工会議所が主催しており、色彩の知識を問う検定です。カラーコーディネーター検定はデザイン関係の職に従事している人が取得しています。クリエイティブディレクターはデザインを直接行う機会はありませんが、色彩の知識は成果物を評価するときに役立つでしょう。
・DTPエキスパート
DTPエキスパートは誌面のレイアウト、カラープロセス、印刷工程などDTPに関連する知識を証明する試験になります。なお、DTPとはパソコンを使って広告や冊子などの印刷物を制作することです。クリエイティブディレクターとして紙媒体で活躍したい人はDTPも押さえておくことをおすすめします。
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5.クリエイティブディレクターの年収事情
クリエイティブディレクターとして働く上で、自身の生活に直結する年収は気になるところでしょう。
クリエイティブディレクターの年収事情として、以下の2つの観点から解説します。
正社員
フリーランス
それぞれ確認していきましょう。
正社員
クリエイティブディレクターとして正社員で働いた場合、400万円台後半から500万円前後の年収を期待できます。
クリエイティブディレクターは広告制作に携わるメンバーを統括する立場にあるため、年収はやや高めとなっています。
ただし、企業の規模や携わるプロジェクトなどによって年収は大きく変わってきます。高い年収を希望する人は大企業や有名企業を目指すことをおすすめします。給与水準が高く、福利厚生が充実している傾向にあります。
フリーランス
クリエイティブディレクターの働き方は正社員だけではありません。フリーランスとして活躍しているクリエイティブディレクターもいます。
フリーランスのクリエイティブディレクターの月額単価は約65〜75万円です。年収に換算するとおおよそ780〜900万円です。
ただし、実務経験や個々が有しているスキル、労働時間によって異なるためあくまでも参考として捉えてください。月額90万円以上の案件も存在するため、実力があり、仕事をうまくこなしていけば1000万円以上の年収も見込めます。
6.クリエイティブディレクターのやりがい
クリエイティブディレクターは企画段階から納品まで一貫してプロジェクトに関わります。プロジェクトの誕生から完成まで見届けられるため、大きな達成感を抱けます。自分が携わった広告を街中や公共機関で目にした際には誇らしい気持ちになるはずです。
また、クリエイティブディレクターはアイデアを多くの人に届けられます。自分のアイデアによってクライアントが利益を出せたときやクライアントに感謝されたときに充足感を得られるでしょう。
さらに、クリエイティブディレクターは最先端の領域で働けます。新しい技術や最新のトレンドにふれられるため、世の中の変化や自分の成長を常に感じられます。
7.クリエイティブディレクターとして働く際の注意点
クリエイティブディレクターとして働いていると、クライアントとクリエイターの板挟みになることは珍しくありません。両者の間で食い違いが起こった場合はお互いが納得できる着地点を見つけることが求められます。場合によっては、仲介的な立場にあるクリエイティブディレクターに負担がかかることもあります。
クリエイティブディレクターは想像スキルや広告の知識だけでなく、あらゆる立場にある人たちと関係を構築し、コミュニケーションをとるスキルが求められます。こうしたスキルがなければ、この仕事を長く続けることは難しいかもしれません。
また、クリエイティブディレクターはプロジェクトによってはハードワークを余儀なくされます。納期に間に合わせるために徹夜で仕事をしたり、休日に仕事をしたりする機会もあるでしょう。定時で帰宅することを前提とする人、プライベート優先で残業が難しい人は思うような働き方ができず困惑する可能性があります。
8.まとめ
クリエイティブディレクターは広告制作を統括する立場にある人のことです。クライアントの意向を汲み取った広告をスムーズに制作する上で欠かせません。
クリエイティブディレクターは広告に関する知識やスキルだけでなく、さまざまな能力が求められます。人と関わる機会も多いためコミュニケーションスキルや対人スキルが必須である他、想像スキルや問題解決スキルも必要です。
クリエイティブディレクターを目指している人は大学や専門学校、あるいは参考書を活用して独学で学ぶだけでなく、さまざまなスキルを培うことが求められます。
本記事が皆様にとって少しでもお役に立てますと幸いです。