30代には人生におけるさまざまなイベントがあり、ライフステージに大きな変化も生じることがあります。そんな30代というタイミングを節目として、転職活動を開始する人もいるでしょう。ITエンジニアとして働く人のなかにも、「30代から転職してキャリアアップしたい」「30代という年齢に合わせて自分らしい働き方を追求したい」といった、考えを持つ方もいるのではないでしょうか。
本記事では、30代からエンジニアが転職できるのか、転職事情や成功のポイントについて解説します。エンジニア未経験の方にも、30代から転職する方法を解説するので、ぜひ参考にしてください。
目次
1.30代エンジニアの転職事情
30代から転職活動を始めるケースは、決して珍しくありません。むしろ将来を考えると、より自分に合った環境を探すために転職という手段が有効になり得るでしょう。
以下では、30代エンジニアの転職事情について解説します。
30代から転職に成功した人の割合
厚生労働省職業安定局の「中途採用に係る現状等について」によると、30代から転職に成功した人の割合は、41.9%となっています。具体的には「転職を希望する者(転職希望者)に対する実際に転職を経験した者(転職就業者)の割合」が、30代(30~34歳 、35~39歳ともに)は41.9%という結果になりました。
転職入職率を見てみると、30~34歳が9.2%、35~39歳が8.2%です。20代前半が11.8%、20代後半が13.4%なので、比較すると30代になると転職する人は減少傾向にあります。一方で、40代になるとさらに転職入職者は減少するため、転職を考えているのなら30代で本格的に行動に移すことが検討されるでしょう。
(参照:https://www.mhlw.go.jp/content/12602000/000557900.pdf)
「エンジニア35歳定年説」の嘘と真実
「35歳定年説」とは、エンジニア業界で聞かれる言葉です。「エンジニアは35歳で限界がきてしまい、早々に定年を迎える」という、働く人の不安を体現した言葉になっています。「35歳定年説」が広がっているのには理由があり、1つが体力・気力の面です。
30歳を過ぎると体力と気力が低下するため、20代のようにバリバリと仕事をするのが難しくなることが原因だと考えられます。特にエンジニアは新しいことを常に学び、その時代のニーズに合わせて働く必要があるため、他の職業と比較して限界がくるタイミングが早いと言われます。
もう1つは仕事の役職・ポジションに関わることで、30歳を過ぎるとマネージャーなどの管理職に就くエンジニアも出てきます。そのため30代のタイミングでマネージャー職に就けなかった場合、将来に不安を覚えるエンジニアが増加し、上記の体力・気力面もあって仕事を続けるのが困難になるケースがあるのだと考えられるでしょう。
もちろん、30代を過ぎても現役でコーディングを行い、プログラマーとして活躍しているスペシャリストはいます。そのため30代にマネージャーなどの管理職に就けないからといって、悲壮感を感じる必要はないでしょう。
一方で、30代以降のことを考えると、ある程度マネジメントやリーダーの仕事は経験しておいた方が、後の選択肢を増やす結果になるため、積極的に挑戦することも重要です。
上記のような理由からエンジニアには「35歳定年説」が囁かれていますが、中身は根拠のない言葉だと言えます。40歳や50歳になってもエンジニアとして働いている人もいるため、過度に不安になることはないでしょう。
企業も30代を積極的に採用している
「中途採用に係る現状等について」の「中途採用の年齢別の採用方針」を参考にすると、「35歳未満」の転職希望者に関しては、約95%の企業が積極的に採用を考えていることが分かります。一方で、年齢が高まるごとにその積極的な動きは鈍化し、「35歳以上45歳未満」では「良い人材であれば採用したい」が最多の回答となり、45歳以上では「あまり採用は考えていない」が多くなります。
20代と30代でエンジニアに求められるものは変わる
20代と30代のエンジニアでは、企業から求められるものが変わります。一般的に20代の転職者はまだまだ経験が浅いため、バイタリティや仕事への意欲を重視したポテンシャル採用が行われやすいです。
一方で、30代のエンジニアには即戦力として働ける実践的なスキルが求められます。これまでの経歴のなかで培ってきた知識・技術に加えて、判断力や柔軟性などのスキルをトータルで確認されるケースが考えられます。
そのため30代でエンジニア転職を実践する際には、「即戦力としていかに自分の経験・スキルが役立つか」「即戦力として何ができるのか」を明確にし、面接などでアピールしていくことが重要です。
2.30代からエンジニア転職をするメリット
30代からエンジニア転職を行う場合、さまざまなメリットを得られる可能性があります。以下では、30代からエンジニア転職を実践する主なメリットを解説します。
キャリアアップにつながる
30代からの転職は、キャリアアップにつながる可能性がある点がメリットの1つです。新しい場所で働くことで、これまで経験できなかった業務を通して学びを得たり、職場環境や人間関係を活かして新たなスキルを獲得したりできるでしょう。
先の通り30代のエンジニアには、マネージャーやリーダーなどの役職で働く機会があります。しかし、職場によってはなかなか仕事が評価されず、キャリア形成が遅れてしまうケースも懸念されるでしょう。
そういった場合には転職を行い、より自分のスキルや経験を活かせる企業でキャリアアップを目指すことにメリットがあるでしょう。
収入が上がる可能性がある
30代からの転職では、収入が上がる可能性がある点もメリットです。これまでの経歴や保有しているスキル次第では、転職先から高く評価されることに期待できます。「ぜひ自社で働いてほしい」と思ってもらえれば、高待遇で迎えられるケースもあるでしょう。
今よりも基本給がアップしたり、ボーナスの金額が上がったりすることで、大幅に年収が高まることもあります。特に市場価値の高いスキルを持っているエンジニアは、転職をきっかけに大幅な収入アップを狙いやすいです。
今ならAIやビッグデータに関する知識・技術を持つエンジニアは、多くの企業から高待遇で迎えられやすいです。転職に備えてニーズの高いスキルを学び、自身の転職市場における価値を高めることも重要です。
過去の経歴を活かして即戦力として働ける
30代からのエンジニア転職では、即戦力で働ける可能性が高いです。先の解説通り20代のエンジニアと違い、30代には即戦力としての期待を持って採用が行われます。そのため転職後すぐに自分のスキルを発揮し、職場に貢献できる機会に恵まれやすいでしょう。
エンジニアの仕事に誇りを持っている人や、業務に対するモチベーションが高い人にとって、即戦力で働ける点は大きなメリットになり得ます。もちろん、新しい職場に慣れるためにある程度の準備期間や研修は必要になりますが、短期間で新しい職場に貢献できる可能性は高いでしょう。
また、転職によって新しい職場やプロジェクトに参画することで、エンジニアとしてさらなるスキルアップにつなげることも可能です。人間関係も一新されるため、新たな出会いのなかで刺激を受けて、モチベーションがアップすることもあるでしょう。
3.30代エンジニアが転職を成功させる方法
30代エンジニアが転職を成功させるには、いくつかのポイントがあります。
以下では、30代エンジニアが転職を成功させるポイントや方法について解説します。
転職先にアピールできる取り組みを積極的に行う
30代エンジニアの転職時には、どれだけ外部にアピールできるものを持っているかが重要となります。現在の職場で担当してきた業務経験だけでなく、仕事以外で取り組んできたことを積極的に話すことで、採用担当者の興味を引きやすくなるでしょう。
例えば個人でWebサイトやアプリなどの成果物を完成させ、エンジニアとしてのポートフォリオを充実させる取り組みが考えられます。その他、GitHubのコミット履歴や技術関係の記事を公開して、自分の持つ知識・技術を客観的に紹介するのも1つの方法です。
どれだけ豊富な知識と高い技術があっても、外部に理解してもらえなければ転職を有利に運ぶことはできません。転職時にアピールできる要素を複数確保し、状況に応じてさまざまな方法で自己PRにつなげられるように備えるのも、30代エンジニアの転職を成功させるポイントです。
最新ニュースやトレンドをチェックする
エンジニア業務に関するニュースやトレンドをチェックし、最新事情に通じておくことも転職時には重要となります。エンジニア業界のトレンドは移ろいやすく、最新だと思っていた知識・技術がすぐ時代遅れの知識・技術になることもあります。
そのためエンジニアとして転職活動を行うのなら、最新情報をこまめに確認し、自分の知識・技術をアップデートする習慣を身につけると良いでしょう。
知識・技術のアップデートを怠っていると、転職時に良い印象を与えられなくなる可能性があります。「新しいことに挑戦する意欲が低い」と評価されると、転職の成功率も低下するでしょう。
過去の実績や経験も大切ですが、それだけにすがっていると、将来のキャリア形成に悪影響が出る可能性もあります。常に挑戦しているエンジニアであること、新しい知識・技術を学ぶ気持ちがあることをアピールし、転職後も成長の余地があると採用担当者に思ってもらうのが成功の秘訣です。
エンジニア向けの転職サービス・エージェントを活用する
30代の転職成功のカギは、エンジニア向けの転職サービス・エージェントが握っています。エンジニア向けの案件・求人を紹介しているサービスやエージェントに登録することは、転職活動における基本だと言えるでしょう。
エンジニア向けの転職サービス・エージェントにもさまざまな種類があり、それぞれに特徴や魅力、独自のシステムが備わっています。自分に合った転職サービス・エージェントを見つけることが重要なので、まずは積極的に登録して最適な転職環境を整えるのがおすすめです。
正社員や派遣向けのものだけでなく、フリーランスエンジニア向けのサービス・エージェントを使うのもポイントです。30代からフリーランスエンジニアに転身することも検討できるため、選択肢を増やすためにも登録するサービス・エージェントの幅は積極的に広げていくと良いでしょう。
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4.30代エンジニアが転職時に注意すべきポイント
30代エンジニアが転職をする際には、注意すべき点もあります。以下では、30代エンジニアが転職時に注意すべき点・失敗しない方法をいくつか紹介します。
転職の理由・目標は明確にする
30代からエンジニア転職を実践する場合、まず転職の理由と目標を明確にしましょう。目的と目標が不明瞭なままだと、最適な転職先を選ぶのが難しくなります。仮に転職に成功しても、目的・目標がないと職場に不満が出やすくなり、再び転職を考える結果になる可能性があるでしょう。
短期間で転職を繰り返すと、「すぐに辞めてしまう人」というイメージができてしまい、採用してくれる企業が限られてくるケースもあります。自分が何を目的に転職するのか、どのような目標を達成するために動くのかを決めてから、転職活動に移ることが大切です。
失敗を引きずらずに気持ちを切り替える
ITエンジニアの需要は高く、多くの企業が採用を考えていますが、簡単に転職活動が終わるとは限りません。ときには複数の面接に落ちたり、書類選考で弾かれたりするケースもあるでしょう。
その度に落ち込んでいると、時間が無駄に過ぎてしまいます。30代という時間を有効利用するためにも、転職活動の失敗は引きずらず、気持ちを切り替えて次を考えるマインドを持つこともポイントです。転職活動が上手くいかないと、自分を否定されている気持ちになり、落ち込むこともあるでしょう。
しかし、転職に失敗した背景には理由があるため、そこを分析することで次の転職活動の成功率を高められます。落ち込むよりも次の成功に向かって、前向きに行動することを心掛けるのが転職時のコツです。
日常生活とのバランスを考慮する
30代から転職活動を行う場合、日常生活とのバランスを取ることも大切です。転職活動に時間を割きすぎてプライベートが疎かになると、ストレスが溜まったりエンジニアの勉強する習慣が乱れたりする懸念があります。
また、家族を養っている場合には、転職活動によって家計に影響が出るケースもあり得ます。事前に転職をすることを話して了承を得てから、実際に活動を始めるようにしましょう。
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5.30代から未経験でエンジニアに転職できる?
30代未経験から、エンジニア職で働くことも考えられます。以下では、30代未経験からエンジニアに転職できるのか解説します。
未経験の30代でもエンジニア転職は可能
結論から言えば、30代未経験でもエンジニアへの転職は可能です。実際に異業種からエンジニアに転職し、その後も活躍しているケースはあります。そのため30代になってからでも、きちんと準備をすればエンジニア職への転職は叶えられるでしょう。
しかし、当然ながらエンジニア経験のある人材と比較されると、未経験者は採用されにくいのが現状です。その事実を受け止めたうえで、転職を成功させるために何をすべきなのか考えることが重要となります。
未経験からエンジニアに転職するための流れ
未経験からエンジニアに転職する際には、一般的に以下の流れが考えられます。
IT業界や各種エンジニア職の情報を集める
転職したいエンジニア職を決める
実践的なエンジニアスキルの習得を始める
成果物を作ってアウトプットしていく
転職サービス・エージェントに登録する
未経験の場合、上記の流れでエンジニアへの転職を目指すことになるでしょう。特に「どんなエンジニア職に就きたいのか」「実践的なスキルをどのように学ぶべきなのか」といった点については、早めに決めて行動に移していくことがポイントです。
未経験からエンジニアスキルを学ぶ方法
未経験者がエンジニアスキルを一から学ぶには、プログラミングスクールやWebサービスを活用する方法がおすすめです。プログラミングスクールでは自身のレベルに合わせて、基礎から応用まで幅広いスキルを身につけられます。
プログラミングスクールのなかには、「教育訓練給付金対象」となっているケースがあります。給付金認定を受けている講座を受けると、受講料の最大70%が給付されます。
制度には「一般教育訓練給付金」「特定一般教育訓練給付金」「専門実践教育訓練給付金」といった種類があり、それぞれに上限となる給付金が変わります。
その他、Webサービスや書籍を活用して、独学で学ぶ方法もあります。モチベーションの維持や勉強時間の確保など課題はありますが、自分のペースで学びたい場合には独学の方がやりやすいこともあるでしょう。
また、実際にエンジニアの仕事を請け負いながら、実践形式でスキルアップをしていく方法も考えられます。「ランサーズ」や「クラウドワークス」のようなクラウドソーシングのなかには、未経験でも対応できる案件・求人があります。未経験のエンジニア向けの案件・求人を探し、自分ができる範囲の仕事を経験していくことで、エンジニアスキルの向上につなげられるでしょう。
まずはエンジニアの勉強をしつつ、副業で簡単な案件・求人で経験を積むこともおすすめです。
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6.まとめ
30代からエンジニア転職を始めるのは、決して遅くはありません。IT人材の不足が課題となっている現状において、30代は即戦力として期待できる有望な人材となります。
新しい職場でより高いスキルを求められる業務に挑戦することで、キャリアアップにつなげられるのも転職のメリットです。将来のキャリアパスを実現するための一歩として、この機会に30代からの転職事情や成功のポイントについてチェックしてみてはいかがでしょうか。
30代から転職を考えるのなら、フリーランスのエンジニアとして働くことも選択肢になります。フリーランスのエンジニア向けの案件・求人は多く、働き方やスキル次第では高収入も期待できます。
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