「新しいプロダクトを成功させたい」「DXを推進する役割を担いたい」とお考えであれば、ビジネスデザイナーに関する概要や考え方が役に立つ可能性があります。
特に、DXの成否が企業活動の持続可能性に直結する現代においては、ただ新しい仕組みを導入するだけでは不十分です。技術的な知見に加え、顧客体験の質を高める視点が求められます。
本記事では、ビジネスデザイナーとはどのような役割を担う職種なのか、ビジネスデザイナーのキャリア像を明確にしつつ、求められるスキルやキャリアの築き方についてお話しします。
目次
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1.ビジネスデザイナーの概要
はじめに、ビジネスデザイナーについての理解を深めていただくために、具体的にどのようなキャリアなのか分かりやすく解説します。
ビジネスデザイナーとは
ビジネスデザイナーは、2022年のIPA(情報処理推進機構)のPDF資料によると、「DXやデジタルビジネス(マーケティング含む)の企画・立案・推進等を担う人材」と定義されています。企業における事業戦略領域でのポジションや役割を担う職種であると言えるでしょう。
デザイナーと聞くとビジュアル的な関わりを持つ職種のイメージが強いかもしれません。しかし、ビジネスデザイナーは、本来の意味であるデザイナー=設計者として、ビジネスの視点とデザインの視点を統合し、顧客体験(UX)を意識しながら、新規事業の創出や既存事業の変革を推進する役割を担います。
ビジネスと開発、デザインといった異なる領域の専門家たちの間に立ち、プロジェクトを成功に導くハブとしての役割も非常に重要です。
ビジネスデザイナーに類似する職種
サービスデザイナー
上記はビジネスデザイナーに類似する職種の一例です。
サービスデザイナーは、顧客体験(UX)だけでなく、そのサービスを提供するための組織体制や業務プロセス、情報システムなど、顧客からは見えない部分も含めたサービス全体の仕組みをデザインする職種です。
UXデザイナーは、特定のプロダクトやサービスにおけるユーザー体験(UX)の設計を専門とする職種です。ユーザー調査や情報設計、ワイヤーフレーム作成、ユーザビリティテストなどを通じて、ユーザーが「使いやすい」「心地よい」と感じる体験をデザインします。
プロダクトマネージャーは、プロダクト開発における責任者です。市場の要求やビジネス目標に基づき、開発するプロダクトの仕様や優先順位を決定し、エンジニアやデザイナーと連携しながら開発プロジェクト全体を管理します。
ITコンサルタントは、企業の経営課題に対し、IT戦略の立案やシステムの導入支援を通じて解決策を提示する職種です。ビジネス課題を分析し、最適なITソリューションを提案するという点でビジネスデザイナーと共通する部分もあります。
どの職種もビジネスデザイナーの役割と類似する部分があり、企業や組織によっては横断的に業務を担当することがあるため、各職種の役割や違いを正しく理解しておくことが重要です。
ビジネスデザイナーの求人・年収・将来性
ビジネスデザイナーの求人については、経済産業省の職業情報提供サイト(jobtag)の「DXプロデューサー」の項目によると、有効求人倍率が0.93倍となっており、やや買い手の傾向にあると言えます。また、おおよそポジション的に近しい職種である「プロジェクトマネージャ(IT)」の項目では有効求人倍率が2.12倍であり、どちらの職種も平均年収は752.6万円です。
フリーランスボードの「DXのフリーランス案件・求人」では、2025年6月時点で約5400件、月額の報酬が80万から120万、年収に換算すると約900万から1500万前後がボリュームゾーンとなっています。年収については、個人のスキルや経験、所属する企業の規模によって大きく異なることに留意しておきましょう。
ビジネスデザイナーの将来性は非常に高いと言えるでしょう。AIの台頭や市場のグローバル化など、ビジネス環境の変化はますます激しくなっています。事業の成功確率を高めるキーパーソンとして、今後さらに重要なポジションになっていくことが予想されます。
ビジネスデザイナーにおすすめの資格
上記はいずれもIPA(情報処理推進機構)が実施する資格試験であり、技術分野での知識やスキルが評価され、実力の証明になる資格と言えます。これからビジネスデザイナーの役割を目指す方にもおすすめの試験でもあるため、実務経験を得るための土台として学んでみても良いでしょう。
また、ビジネスデザイナーになるために必須の資格は存在しません。実務経験やプロジェクト実績が最も重視される職種です。そのため、職種の名称で目指してキャリアを形成するというよりも、後述するビジネスデザイナーに求められるスキルに合わせて、実務で経験していくという姿勢でキャリアを組み立てていく必要があります。
2.ビジネスデザイナーに求められるスキル
ビジネスデザイナーは、ビジネス、テクノロジー、デザインという3つの領域を繋ぐ役割を担うため、非常に幅広く、かつ高度なスキルが必要です。その中でも、実務で特に重視される4つのスキルセットについて具体的に解説していきます。
課題発見・構想設計スキル
課題発見・構想設計スキルは、ビジネスデザイナーの最も中核となるスキルです。顧客自身も気づいていないような潜在的なニーズや、市場に存在する未解決の課題を的確に捉える能力が求められます。必要な情報を得るためには、顧客へのインタビューや行動観察、市場データ分析、競合調査などを通じて、物事の本質を見抜く洞察力が必須と言えるでしょう。
そして、発見した課題を解決するための新しい事業やサービスのアイデアを創出し、具体的なビジネスモデルとして設計する構想力も欠かせません。共感、問題定義、創造、プロトタイプ、テストなどのデザイン思考のフレームワークを実践し、チームでアイデアを発展させ、収益性や実現可能性を検証しながら、事業計画に落とし込んで実現に向けたスキルも重要となります。
課題発見・構想設計スキルを身につけるためには、まずユーザーリサーチやインタビューの実践経験を積むことが有効です。小規模なプロジェクトや社内施策でも構わないので、仮説検証とフィードバックを繰り返し、課題発見力と構想設計力を段階的に高められます。
技術理解・技術選定スキル
現代の新規事業は、AI、IoT、クラウド、ブロックチェーンといったデジタル技術と密接に関係しています。そのため、ビジネスデザイナーには、最新技術が「何であるか」だけでなく、「何ができるのか」を深く理解し、既存のノウハウと融合させながら商品やサービスに活かす力が求められます。
ビジネスデザイナー自身が技術的な実務を直接担うことは多くありませんが、エンジニアや開発パートナーとの円滑なコミュニケーションのためには、一定の技術知識が欠かせません。技術的な制約や可能性を正しく理解したうえで、現実的な企画を立案できることが重要です。
また、どのような技術をどのタイミングで導入すべきかを見極める判断力も、事業の成功を左右する重要なスキルと言えます。
技術理解・技術選定スキルを身につけるには、基礎的なITリテラシーを持ったうえで、テクノロジーに関するニュースや専門メディアを継続的にチェックすることが大切です。加えて、エンジニアとの共同プロジェクトや、技術職とのコミュニケーション機会を増やすことで、実務に即した理解を深めることができます。
マーケティング・ブランディングスキル
ビジネスデザイナーには、プロダクトを市場に届け、顧客に選ばれ続けるためのマーケティング戦略やブランディング戦略を構想する力も求められます。どれほど優れた商品やサービスを開発しても、その価値が適切に伝わらなければ、ビジネスとしての成功にはつながりません。
ターゲットは誰か、どのようなメッセージで価値を届けるか、どのチャネルを通じて接点を設けるかといった市場投入計画に深く関与するうえで、マーケティングの知識や実務経験は欠かせない要素です。また、サービス名やロゴ、トーン&マナーといったブランドアイデンティティの設計に携わるには、ブランディングに関する視点とスキルも必要となります。
マーケティング・ブランディングスキルを身につけるには、まず身近なプロジェクトでペルソナ設計や訴求軸の検討を行ってみるのが効果的です。あわせて、他社事例や広告・キャンペーンの分析を通じて、どのような表現が顧客の心を動かしているかを観察する習慣を持つことで、実践的な感覚を養うことができます。
マネジメント・コーチングスキル
ビジネスデザイナーが関わるプロジェクトは、デザイナー、エンジニア、マーケター、営業など、多様な専門性を持つメンバーで構成されます。そのため、異なるスキルや経験、ノウハウを持つチームを一つの目標に向かって束ね、プロジェクトを前進させるためのリーダーシップとマネジメントスキルが求められます。
さらに、チームメンバーの能力を最大限に引き出し、自律的に動ける組織を育てていくためには、コーチングの視点も欠かせません。時には経営層と現場の間に立ち、両者の意見を橋渡しするファシリテーターとしての役割を担う場面もあり、高度なコミュニケーション能力と人間力が求められます。
マネジメント・コーチングスキルを身につけるには、まず小規模なプロジェクトやチームでのリーダー経験を積みながら、メンバーの意見に耳を傾け、対話の質を高めることを意識するのが有効です。あわせて、1on1ミーティングやフィードバックの場を通じて信頼関係を築く練習を重ねることで、自然とコーチング力も育まれていきます。
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3.ビジネスデザイナーのなり方や目指し方の大まかな流れ
ビジネスデザイナーは、学歴や資格よりも実務経験とスキルの蓄積によってキャリアが築かれる職種です。直接その職に就くための明確な正解はありませんが、目指すうえで参考になる大まかな流れを紹介します。
自分なりのビジネスデザイナー像を描く
まず最初に行うべきは、自分自身のキャリアを棚卸しすることです。これまでに携わったプロダクトマネジメント、サービス企画、コンサルティング、UXデザインなどの経験を振り返り、自身の強みや保有するスキルセットを客観的に把握します。
そのうえで、「どのような領域のビジネスデザイナーを目指したいのか」といった目標像を明確に描くことが重要です。特に、現在の職場において新しいプロダクト開発で活躍したい場合には、上司や経営層へのアピール材料にもなります。
さらに、スキルセットとあわせて業界的な知見が活かせる分野を見定めることも有効です。たとえば「金融業界のDXを推進するビジネスデザイナー」「ヘルスケア領域で新規事業を立ち上げるビジネスデザイナー」など、自身の興味や強みを活かせる方向性を定めることで、今後学ぶべき内容や積むべき経験がより具体的に見えてくるはずです。
スキルと経験を積み上げて専門性を磨く
自分なりのビジネスデザイナー像が明確になったら、次はそれを実現するために、不足しているスキルや経験を計画的に補っていく段階に入ります。現職の企業内で新規事業開発プロジェクトやDX関連部署への異動を希望したり、自ら手を挙げて関わったりすることは、最も実践的な方法です。
特にDXの推進においては、日本企業の多くが変化に慎重な傾向があるため、従来の考え方にとらわれず、新しい価値観を持ち込む働きかけも重要と言えます。状況と立場によっては自分自身で経験を積める場所を作るという強い意識も必要となるでしょう。
現職での経験獲得が難しい場合は、転職や副業を通じて関連分野の実務に携わったり、社会人向けの研修やスクールでデザイン思考やUXデザインを学んだりする方法も有効です。重要なのは、小さなプロジェクトでも構わないので、ビジネスとデザインを自らつなぐ経験を少しずつ積み重ねていくこと、得意とするスキルを中心に専門性を高めていくことと言えるでしょう。
キャリア機会を見極め、ポジションを得る
ビジネスデザイナーとして一定の専門性やスキル、経験が蓄積できたら、本格的にキャリアやポジションを探し始める段階に入ります。現職であれば、上司や経営層に働きかけて新たなポジションを構築してもらう、あるいは転職活動を検討することも選択肢のひとつです。
求人情報を確認する際は、単に「ビジネスデザイナー」という職種名だけでなく、企業が求める具体的な役割や業務内容を注意深く読み取ることが重要です。また、「DX」など関連性の高いキーワードを軸に情報収集を行うのも有効です。
気になる求人が見つかったら、自分自身が描くビジネスデザイナー像と、その企業が求める人材像が一致しているかを慎重に見極めましょう。
エージェントサービスを利用するのもおすすめ
ビジネスデザイナーのように、ある程度ポジションの高い役職や専門的な立場への転職では、個人での活動だけでは実現が難しい場合もあります。そのため、IT・Web業界やハイクラス層に強みを持つ転職エージェントを活用するのは、非常に有効な手段と言えるでしょう。
また、ビジネスデザイナーのような専門性の高い職種は、一般には公開されていない「非公開求人」として扱われることも想定されます。エージェントに登録することで、自分のスキルや経験にマッチした非公開求人を紹介してもらえる可能性も期待できるでしょう。
さらに、キャリアアドバイザーから客観的なフィードバックを受けたり、職務経歴書の添削や面接対策の支援を受けたりすることで、転職活動をより有利に進めることができます。
フリーランスとして独立を目指す場合にも、専門のエージェントサービスを利用すると案件獲得しやすくなります。
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4.まとめ
本記事では、ビジネスデザイナーという職種の概要から求められるスキル、そしてキャリアを築くための具体的なステップについてご紹介しました。
ビジネスデザイナーは、ビジネスの成功と優れた顧客体験を両立させるために、経営・デザイン・テクノロジーの領域を横断して活躍する、現代のビジネスにおいて欠かせない存在です。キャリアの実現は容易ではありませんが、専門性を磨き、実務経験を積みながら、新たなプロダクト創出に関われるやりがいの大きい職種と言えるでしょう。
プロダクトやサービスの価値を本質から設計したい方、ビジネスとクリエイティブの架け橋として活躍したい方にとって、ビジネスデザイナーという選択肢は、その情熱を最大限に活かすための有力なキャリアパスとなります。
今後のビジネス環境は、変化のスピードと複雑さがさらに増していくことが予想されます。だからこそ、自らの視点で課題を発見し、価値を設計していけるビジネスデザイナーの役割は、より一層重要になっていくはずです。ぜひ、自分の強みや関心を軸に、理想のキャリアを思い描いてみてください。
最後までお読みいただきありがとうございました。
本記事が皆様にとって少しでもお役に立てますと幸いです。
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