個人事業主として事業を始める際に提出が必要な開業届ですが、普段はあまり目にしない書類のためどのように対応すべきか分からない方も多いかもしれません。
開業届は開業時に提出することが義務付けられており、さらに節税対策・法人用の銀行口座・クレジットカードの開設・融資の申請などにも関わってきます。
そこでこの記事では初めて開業届を提出する方に向けて、開業届の提出に必要なもの・手続きの流れ・注意点などを分かりやすく解説します。提出方法についても紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
1.開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)とは?
「開業届」とは正式には「個人事業の開業・廃業等届出書」といい、個人が事業を開始したことを税務署に届け出るための書類です。
会社員の場合には所得税は通常、毎月の給与から差し引かれます。しかし会社に属さず個人で事業を営む場合は、自分で所得税を計算し確定申告を行って納付しなければなりません。
開業届を提出することで、「個人事業主として所得税を納付します」という意思を税務署に伝えることになります。この届出をもとに税務署は事業主に確定申告に必要な情報を通知したり、申告や納税の状況を管理するようになります。
開業届の提出が必要な人とは?
通常手続きを行うのは本人であり、本人が税務署に開業届を提出することになります。
開業届の提出締切はいつ?
開業届は事業を開始した日(開業日)から1ヶ月以内に、事業所を管轄する税務署へ提出する必要があります。個人事業主の場合には開業日が明確でないこともありますが、特に決まったルールはなく本人が「事業を始めた」と認識する日が開業日となります。
そのため厳密に1ヶ月以内に提出することにこだわる必要はなく、事業を開始した年内に提出しましょう。
2.開業時に準備する書類と提出先
個人事業主として事業を始めた際には、事業開始から1ヶ月以内に所轄の税務署に開業届を提出する必要があります。さらに都道府県税事務所への事業開始等申告書の提出や、事業の種類によっては許認可を取得しそれに関する書類を提出することも求められます。
開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)
対象者:開業する個人事業主全員
提出期限:開業日から1ヶ月以内
提出先:税務署
「開業届(正式名称:個人事業の開業・廃業等届出書)」は、開業日から1ヶ月以内に提出しなければなりません。ただし、提出期限を過ぎても罰則はありません。
業種ごとに必要な届出や許認可
対象者:特定の事業を開業する個人事業主
提出期限:届出や許認可の種類により異なる
提出先:届出や許認可の種類により異なる
許認可は特定の事業を始める際に、行政機関から取得する必要がある許可を指します。
事業を始める前に法定の手続きを行わないと営業ができないだけでなく、業法違反として行政処分を受けたり法的責任を問われる可能性があります。営業許可に有効期限がある場合、更新時期を忘れないように注意しましょう。
許認可は、届出・登録・認可・許可・免許の5種類に分類されます。
届出:法令で定められた事業内容を行政機関に通知する手続きのことです。
事業内容が法に抵触せず定められた基準を満たしていれば、基本的に受理されます。対象となる事業としては、クリーニング業や深夜0時以降に営業を行う飲食店などが挙げられます。
登録:登録とは行政機関に書類を提出し、名簿に記載されることで事業の開始が認められる手続きです。
届出とは異なり、名簿に登録されるまでは事業を始めることができません。また登録には書類の提出や試験の合格など、登録に応じた条件を満たすことが求められます。登録が必要な主な業種には、ホテル業や旅行代理店業などがあります。
認可:認可とは事業者が申請した内容について、行政機関が一定の基準を満たしていると判断し承認する手続きのことです。
私立学校や警備業は必ず認可が必要ですが、保育園などは認可がなくても運営が可能です。ただし認可を取得することで、補助金や助成金を受けやすくなる場合があります。
許可:公共の安全や秩序を守るために原則として禁止されている行為を、行政機関の審査を経て認めてもらう手続きのことです。
許可が下りない限り、事業を開始することはできません。たとえば飲食店には営業許可が必要で従業員が接客でお酌や会話を提供する料亭やバーなどには風俗営業許可、薬局を運営するには薬局開設許可が求められます。
免許:免許とは特定の資格を有する人が業務を行うことを行政機関に申請し、その許可を受ける手続きのことです。
免許がなければ、事業を行うことは認められません。例えば美容師や看護師といった職種は、業務に必要な免許を取得することが求められます。
本人確認書類
税務署に開業届を提出する際には、なりすまし防止のために本人確認書類での確認が行われます。運転免許証・パスポート・マイナンバーカードなどを準備しておきましょう。
開業届を郵送する場合は、「本人確認書類(写)添付台紙」に確認書類のコピーを添付して送付します。この台紙は国税庁のWebサイトからダウンロードできます。
マイナンバー
マイナンバーカードまたはマイナンバーが確認できる書類も必要です。本人確認書類と同様に、開業届を税務署に持参する場合には窓口で担当者に提示します。郵送の場合は、その写しを添付しましょう。
なおマイナンバーカードを持参すれば、本人確認とマイナンバーの確認が一度に行えるため必要書類を1枚で済ませることができます。
印鑑
以前の開業届には押印欄がありましたがその欄は廃止され、開業届に印鑑を押す必要はなくなりました。
ただし開業届に誤りがあった場合は、二重線で訂正し修正印を押すことになります。税務署に直接提出する際には、万が一に備えて印鑑を持参しておくと安心です。
3.開業届と一緒に提出する書類
開業時には、開業届に加えて提出しておいたほうが良い書類もあります。何度も税務署に行ったり郵送したりするのは手間がかかるため、必要な書類や提出が求められる状況を事前に確認しておくことが重要です。
所得税の青色申告承認申請書(青色申告承認申請書)
開業届と一緒に提出しておくと良い書類の一つは、「所得税の青色申告承認申請書(以下、青色申告承認申請書)」です。青色申告承認申請書は、確定申告で青色申告をするために必要な書類です。
この申請書を提出すると最大65万円の青色申告特別控除をはじめ、さまざまな節税メリットを享受できる青色申告を行うことができます。
青色申告を希望する年の3月15日までに(その年の1月16日以降に開業した場合は開業日から2ヶ月以内に)青色申告承認申請書を提出しないと、その年は青色申告を利用できなくなります。忘れずに、開業届と一緒に提出するようにしましょう。
青色事業専従者給与に関する届出書
他に開業届と一緒に提出しておくと便利な書類の一つは、「青色事業専従者給与に関する届出書」です。
青色申告をしている個人事業主が一定の条件を満たす場合、家族に支払った給与を経費として計上できる「青色事業専従者給与」の特例を利用することができます。この特例を受けるためには、「所得税の青色申告承認申請書」と一緒に「青色事業専従者給与に関する届出書」も提出する必要があるため、忘れずに提出しておきましょう。
給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書
また開業届と一緒に提出することが推奨される書類の一つは、「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」です。
この書類は従業員を雇用する際に税務署に提出するもので、提出することで従業員の給与から源泉徴収した所得税に関する納付書が送付されるようになります。ただし開業届の「給与等の支払の状況」欄に記入している場合は、従業員を雇う際でもこの届出書を提出する必要がなくなるのでその点も確認しておきましょう。
適格請求書発行事業者の登録申請書
そして開業届と一緒に提出しておくと良い書類として「適格請求書発行事業者の登録申請書」もあります。
この申請書はインボイス制度(適格請求書等保存方式)に対応し、適格請求書を発行できる事業者として登録するために必要です。ただし開業時にこの申請書を提出して適格請求書発行事業者になると、開業初年度から消費税の申告・納付義務が発生するため提出前に十分に検討することをお勧めします。
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
開業届と一緒に提出しておくと良い書類の一つは他に「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」もあります。この書類は雇用している従業員が10名未満で、源泉所得税の納期の特例を利用したい場合に必要です。
通常従業員の給与から源泉徴収した所得税は、支払った月の翌月10日までに税務署へ納付しなければなりません。しかし常時雇用する従業員が10名未満の場合、申請書を提出することで源泉所得税の納付を年に2回に分けることができます。
この制度を利用すると毎月の納付が不要になり手間を減らすことができるため、従業員数が10名未満の場合は提出しておくと良いでしょう。
事業開始等申告書
「事業開始等申告書」も開業届と一緒に提出しておくと良い書類の一つです。
「事業開始等申告書」は、個人事業を開始したことを都道府県に通知するために必要な書類です。自治体によってはこの書類の名称が異なります。
提出先は通常都道府県税事務所ですが、市区町村への提出が求められる場合もあります。また提出期限は自治体によって異なるため、例えば東京都では事業開始から15日以内に提出する必要があります。
申告書の書式・提出期限・提出先などについては、開業を予定している自治体の公式Webサイトで確認してください。
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4.開業届を提出する手段
開業届の提出先は、納税地を管轄する税務署です。提出方法は窓口で直接提出・郵送で提出・e-Taxを利用して提出する主に3つの方法があります。
税務署の窓口で手続きする
税務署の窓口の受付時間は基本的に平日の8:30~17:00で、土曜日・日曜日・祝日は閉庁日です。受付時間外の場合は、税務署の時間外収受箱に開業届を投函して提出できます。
e-Taxの利用率の利用拡大が期待されるため、国税手続きの見直しの一環として令和7年1月より国税庁による申告書等の控えへの収受日付印の押印が廃止されます。そのため書面申告の際は、正本(提出用)のみを提出するとよいでしょう。控えは必要に応じて自身で作成・保管し、提出年月日を記録・管理することになります。
窓口で申告書等を提出した場合、希望者には、内容変更や提出の事実を確認する「リーフレット」を交付します。このリーフレットには、申告書を受け付けた日付や税務署名が記載されます。
郵送提出の場合も、切手を貼った返信用封筒を同封すれば、同様のリーフレットが返送されます。
提出に必要なものは次の通りです。
個人事業の開業・廃業等届出書
マイナンバーカード
なおマイナンバーカードを持っていない場合は本人確認書類(免許証等)の写しに加えて、以下のいずれかの書類を持参してください。
マイナンバー通知カードの写し
マイナンバー記載のある住民票の写し
マイナンバー記載のある住民票記載事項証明書
郵送を利用して提出する
郵送での提出も可能です。郵送提出の場合も切手を貼った返信用封筒を同封すれば、同様のリーフレットを返送されます。
e-Taxまたはスマートフォンを使ったオンライン提出
e-Taxを利用している場合、オンラインでの提出も可能です。e-Taxシステムはメンテナンス時間を除き、24時間ご利用いただけます。
e-Taxで提出した場合には、メッセージボックスに届く「データを受け付けました」という内容のメール文書が証拠となります。このメール文書を印刷して保管してください。
5.開業届を提出することで得られるメリット
開業届を提出すると、青色申告を利用できるようになります。さらに補助金申請時に必要な書類として添付できたり、小規模企業共済に加入したりすることができるなど事業主にとって多くのメリットがあります。
屋号名義で事業用口座を作成可能
開業届を提出すれば事業資金と個人資金を明確に分けるために、屋号を名義にした専用の口座を開設することができます。
事業資金と個人資金を明確に分けるためには、屋号を名義にした専用の銀行口座を開設することが非常に有効です。この専用口座を利用することで事業の収支管理がより簡単になり、会計処理の効率が向上します。
たとえば取引先からの売上金の入金や仕入れ先への支払いをこの事業用口座で行うことで、事業関連の取引と個人のプライベートな取引が混ざることを防ぎ経理作業の負担を軽減することができます。
また屋号が口座名義に記載されていることで、取引先がその取引を事業関連として認識しやすくなり経理処理の際に混乱が生じるリスクを減らすことができます。特に事業規模が大きくなるほど取引が増え、正確な経理記録が必要になるためこのような事業専用口座を持つことは取引先との信頼関係を構築する上でも大切です。
さらに事業用口座を利用することで、金融機関からの入出金記録がそのまま事業の記録として活用できるため、帳簿作成や確定申告の際にも役立ちます。
補助金申請の際に活用できる
補助金申請時に必要な事業の実態を証明する書類として、開業届を利用することができます。
小規模企業共済への加入が可能になる
個人事業主は引退時に自分自身で退職金を準備する必要があります。そのために利用できるのが、小規模企業共済です。加入手続きを行う際には、開業届が必要となります。
仕事を証明する書類として使える
働いていることを証明するために活用できます。例えば、保育園への申し込みや賃貸物件への入居時などに利用することができます。
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6.開業届を提出する前に知っておきたいデメリット
開業届を提出する際に注意すべき重要なポイントがあります。これらのポイントについて詳しく説明します。
失業保険を受給できなくなる場合がある
個人事業主は、基本的に雇用保険の加入資格を持つことができません。したがって万が一収入が途絶える状況になったとしても、基本的に雇用保険の失業給付を受けることはできません。
また会社員として勤務していた方が自営業者として独立する場合、条件によっては失業給付を受けられない場合があります。こうした状況を回避するためにも、自分が失業給付を受けられる条件や手続きについてしっかりと確認しておくことが重要です。
最寄りのハローワークでは、受給資格や必要な手続きに関する相談を受け付けています。不明点がある場合や事業開始後の対応について悩んでいる場合には、ハローワークにて具体的な状況を説明した上でアドバイスを受けることをおすすめします。
収入増加で扶養から外れる可能性がある
扶養に入っている場合でも、開業届を提出することは可能です。開業届を提出したことによってすぐに扶養から外れるわけではありませんが、その後、所得が増えて扶養に関する基準を超えると、最終的には扶養から外れる可能性が出てきます。
扶養から外れる基準は税法などで定められた所得額に基づいており、収入が増えた場合にその基準に達してしまうことがあります。
扶養控除や配偶者控除を受けるためには、所得税の課税対象となる所得額が一定の基準を超えていないことが前提です。配偶者や扶養家族の収入バランスにより、申告する際に扶養から外れるかどうかの判断が必要になる場合もあります。
特に個人事業主としての収入が増えることで税金に与える影響が出るため、収入が増加した場合の税負担を考慮することが重要といえます。
開業届の提出期限は事業開始後1カ月以内
開業届には提出期限が設定されています。事業を開始した日から1カ月以内に、管轄の税務署に提出する必要があります。確定申告を行う際には事業を開始した事実が反映されるため、開業届を事前に提出しておくことが推奨されます。
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7.開業届を提出しない方が良い場合は?提出しないとどう影響する?
開業届を提出しなくても罰則はなく、税務署から提出を求められることも通常はありません。とはいえ個人事業を始める場合において、開業届を提出しない方が良いということはなく開業届の提出は推奨されます。
所得税法では事業所得・不動産所得・山林所得を生じる事業を始めた場合、その事業を開始した日から1ヶ月以内に開業届を提出することが義務付けられています。罰則がないからと言って開業届を提出しなくて良いということにはならないので、その点を理解しておきましょう。
副業で開業届を提出する必要はあるのか?
会社員が副業をしている場合で収入がそれほど多くない場合には、基本的には開業届を提出する必要はありません。しかし事業と認められる規模で継続的に行っている場合は、開業届を提出した方が良いでしょう。
なお本業で開業届を提出する人と、副業で開業届を提出する人では書き方や提出先に違いはありません。
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8.開業届の記入方法
開業届には、項目ごとに記入の際のポイントや注意すべき点があります。
作成する際には、これらを参考にして進めると良いでしょう。
提出先・提出日
宛先と提出日を記入する欄には、納税地を管轄する税務署の名称と提出日を記入します。開業届を作成した日と実際に提出する日が異なる場合は、記入日を間違えないよう注意が必要です。
納税地
「納税地」には、税金を納める場所の住所と電話番号を記入します。通常は自宅の住所を「住所地」として記入しますが、事業を営んでいる店舗や事務所が別の場所にある場合は「事務所等」を選ぶことも可能です。また、「居住地」は例えば海外に住んでいるが日本で活動している場合などに該当します。
上記以外の住所地・事業所等
「上記以外の住所地・事業所等」には自宅以外でオフィスや店舗、事業所がある場合、その住所と電話番号を記入します。ただし納税地を事業所の住所に設定した場合、この欄には自宅の住所を記入することになります。
氏名・生年月日・個人番号
「氏名」「生年月日」「個人番号」には、本人の名前・生まれた日付・マイナンバーをそれぞれ記入してください。
職業・屋号
「職業」欄には、具体的な職業名を記入します。職業名に関して特に決まった書き方はありませんが、第三者が理解できる形で記載すれば問題はありません。ただし、業種によっては個人事業税の有無や税率が異なります。
個人事業税が課税されるのは、地方税法などで定められた業種(法定業種)に該当する個人事業です。法定業種は70種類あり、第1~3業種に分類されそれぞれ異なる税率(3~5%)が適用されます。
具体的な業種や税率については、各都道府県の公式サイトで確認することができます。さらに職業名の横に「屋号」を記載したい場合は、屋号欄に記入します。屋号を使用しない場合は、何も記載する必要はありません。
届出の区分
「届出の区分」欄には、事業を新たに開始する場合は「開業」にチェックを入れます。事業を引き継いだ場合は、引き継いだ事業の住所と氏名を記入します。
所得の種類
「所得の種類」欄には、「不動産所得」「山林所得」「事業(農業)所得」の中から該当するものにチェックを入れます。個人事業主として開業する場合、通常は「事業所得」を選択します。副業として事業を始める場合も、同様に「事業所得」を選びます。
開業・廃業等日
「開業・廃業日等」欄には、開業日を記入します。
開業日については柔軟に設定できます。例えば店舗がオープンする日を開業日として記載するのが一般的ですが、実際に店舗を開店する前の準備段階から事業を始めたと考えて開業日とすることも可能です。
ただし開業届は事業開始から1カ月以内に提出しなければならないため、提出日から逆算して1か月以内の日付を記入することが望ましいです。
また青色申告を希望する場合には開業日から2か月以内(1月15日までに開業した場合は3月15日まで)に「所得税の青色申告承認申請書」を提出する必要があります。そのためもし開業日が申請期限を過ぎる日付だと、その年は青色申告ができません。開業日と申請期限を踏まえて記入することが重要です。
事業所等を新増設、移転、廃止した場合/廃業の事由が法人の設立に伴うものである場合
「事業所等を新たに設置、移転、廃止した場合/廃業の理由が法人設立に関連する場合」の欄には、開業の場合、いずれも記入する必要はありません。
開業に伴う届出書の提出の有無
「開業に伴う届出書の提出の有無」欄は、開業届とともに「所得税の青色申告承認申請書」を提出する場合に上段の「有」にチェックを入れます。また開業した年から課税事業者(消費税の申告・納付義務がある事業者)となるために「課税事業者選択届出書」を一緒に提出する場合は、下段の「有」にチェックを入れます。
なおインボイス制度に対応して適格請求書発行事業者となるために「適格請求書発行事業者の登録申請書」を提出することで、課税事業者選択届出書を提出せずに課税事業者となることができます。
事業の概要
「事業の概要」欄には、これから始める事業の内容を記入します。職業欄で記載した内容をさらに詳しく説明する部分です。
例えば職業欄が飲食業であれば「居酒屋の経営」・Webデザイナーであれば「WebサイトのデザインおよびWeb広告の作成」・システムエンジニアであれば「システムの設計・プログラミング・保守対応」といった具合に、事業の内容を具体的に記載しましょう。
給与等の支払い状況
開業時に従業員を雇用する場合は、その人数や給与の支払い方法(月給、日給など)を記入します。家族が事業に関与する場合は「専従者」、家族以外の従業員を雇う場合は「使用人」の欄に記入します。
給与の支払い方法については「日給」・「月給」・「月給+ボーナス」など、具体的な支払い形態を記載しましょう。また従業員を雇う場合、原則として源泉徴収が必要となるため「税額の有無」の欄に「有」と記入します。
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9.開業届の控えが必要になる場面
開業届の控えは、個人事業主として事業を始めたことを証明するために利用できます。この控えが必要となる主な手続きは以下の通りです。
事業用の銀行口座開設
事業用クレジットカードの申し込み
金融機関からの融資申請
一部の給付金・補助金・助成金の申請
小規模企業共済への加入
特に「小規模企業共済への加入」では通常は確定申告書の控えが必要ですが、開業したばかりで確定申告書がない場合には開業届の控えを代わりに使用することができます。
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10.まとめ
開業届を提出する際に必要な書類や、関連する重要書類について解説しました。開業届を提出することで青色申告による大きな節税効果を享受したり、屋号で事業用の銀行口座を開設したりといったメリットがあります。
さらに、開業届の控えは融資を受ける際やキャッシュレス決済の導入時などで求められることがあります。
急な時に慌てることがないよう、早めに開業届を提出して控えをしっかりと保管しておきましょう。
本記事が皆様にとって少しでもお役に立てますと幸いです。