一昔前であれば、限られた人にしか認知されていなかったフリーランスですが、平成の終わりから令和にかけてフリーランスは社会的にも主流な働き方の1つとなりました。とはいえ、フリーランスは正社員と違い、安定性に欠けるなどデメリットがあるのも事実です。
また、フリーランスとは高いスキルを活かし、独立して業務に従事する人を基本的に指します。スキルがない人はフリーランスとして稼ぐのが難しいといえます。
本記事では、フリーランスの概要を押さえた上で、フリーランスの仕事一覧、年収事情、フリーランスに関するよくある疑問などを見ていきましょう。
目次
1.フリーランスとは
フリーランスとは企業や公的機関など特定の団体には所属せず、自分で仕事を請け負う働き方のことです。例えば、デザイナーやライター、美容師などの間では一昔前からフリーランスという働き方は知られていました。近年では、コンサルタントやエンジニア、営業などもフリーランスという働き方を選びやすくなってきています。
フリーランスは経験やスキル、知識などを使って収入を得ている人たちであり、特定の分野において卓越した才能やスキルをもっている人が多くいます。
ただし、フリーランスには明確な定義はなく、必要な資格や実績もありません。誰もがフリーランスを名乗ることができます。また、会社員の中にも副業でフリーランスとして活躍している人がいます。
フリーランスには定められた労働時間や通勤義務がないことも多く、プライベートを大切にしながら働ける傾向にあります。
2.フリーランスとして働ける職種一覧
前述のように、フリーランスは昔から存在し、芸術家や美容師などの専門職の中には多くいました。しかし、ここ数年の間に多くの職業がフリーランスという働き方を選択できるようになったといえます。
フリーランスとして働ける仕事として、主に以下の仕事があります。
エンジニア系 | SE、Webエンジニア、プログラマー、ITコンサルタント、コーダー、データサイエンティスト |
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クリエイティブ系 | ライター、Webデザイナー、カメラマン、ゲームプランナー、漫画家、画家、ブロガー、小説家、動画編集者 |
接客・サービス系 | カウンセラー、インストラクター |
美容系 | 美容師、ネイリスト、メイクアップアーティスト、ファッションデザイナー |
SNS系 | ユーチューバー、インスタグラマー、ライバー |
マーケター・ビジネス系 | 営業、秘書、事務、コンサルタント、Webマーケター、広報 |
3.フリーランスの年収事情
フリーランス協会が公表している「フリーランス白書2024」によると、フリーランスの平均年収は以下のようになっています。
200万円未満:17.9%
200-400万円未満:26.8%
400-600万円未満:15.8%
600-800万円未満:11.4%
800-1000万円未満:6.8%
1000万円以上:9.7%
わからない・答えたくない:11.8%
出典:https://blog.freelance-jp.org/wp-content/uploads/2024/03/whitepaperFreelanceSurvey2024.pdf
平均年収が200万円未満と回答した人、200-400万円未満と回答した人を合わせると半数近くにおよび、フリーランスが稼ぐことの難易度の高さをうかがえます。
その一方、1000万円以上稼ぐフリーランスも1割近くいます。フリーランスはスキルがあれば年功序列に関係なく、収入は青天井といわれていますが、職種やスキルによっては年収1000万円も現実的です。
また、フリーランスエンジニアの年収を見てみましょう。
フリーランス求人・案件を取り扱っている「フリーランスボード」をみてみるとフリーランスエンジニアの月額平均単価は72.2万円で年収に換算すると866万円です。年収の水準では高水準に位置していることがわかります。
参考までに、国税庁の「令和5年分 民間給与実態統計調査」によると、令和5年における給与所得者の平均年収は460万円です。
4.フリーランスが仕事を見つける方法
会社員であれば上司から仕事を割り振られることがほとんどで、自分で仕事を探す必要はありません。一方、フリーランスは仕事を誰かに割り振ってもらえるわけではないため、自分で仕事を探し、仕事を生み出す必要があります。自分が動かなければ手持ち無沙汰になり、収入も発生しません。
フリーランスが仕事を見つける方法として、主に以下の5つが挙げられます。
クラウドソーシングサイトの活用
エージェントサービスの利用
企業に直接営業
知人や過去の取引先からの紹介
自身の宣伝活動
それぞれ確認していきましょう。
クラウドソーシングサイトの活用
クラウドワークスやランサーズなどクラウドソーシングサイトがあります。
大手企業が運営するクラウドソーシングサイトはさまざまな仕事を扱っている他、案件数が充実しています。
案件によっては面接や履歴書の提出が必要がないため、応募時の手軽さも特徴です。フリーランス初心者は、クラウドソーシングサイトを利用して仕事をまずは探すことをおすすめします。
エージェントサービスの利用
エージェントサービスを利用することで、自分のスキルや経歴、希望などにマッチした仕事を紹介してもらえます。自分で一か仕事を探す手間もなく、かつ採用の見込みがある求人を紹介してもらえるため内定に結び付きやすいです。
面接の練習や履歴書など応募書類の作成サポートを行っているエージェントもあります。仕事の受注の手伝いをしてもらいたい人、フリーランス初心者におすすめできます。
ただし、人によっては担当者とのやりとりや面談などが負担に感じることもあります。
企業に直接営業
求人を出していない企業の中にも優秀な人材がいれば仕事をお願いしたいと考えている企業、人手が不足している企業があります。
公式サイトの問い合わせフォームや、企業が運営するSNSのDMなどから連絡してみると、面接してもらえることもあります。また、すぐには返信がなかったとしても、人手が減ったタイミングで声がかかることもあるかもしれません。
企業に直接営業する際は自身の経歴や業績、志望理由などを分かりやすく記し、過去に取り組んだ仕事をまとめたポートフォリオを添付してください。
知人や過去の取引先からの紹介
フリーランス協会の「フリーランス白書 2024」によると、最も収入が得られる仕事獲得経路として「過去・現在の取引先」( 61.6%)が最も多く、「人脈」(58.9%)が続きました(複数回答)。フリーランスが仕事を獲得する方法は数多くありますが、知人や親しい人から仕事を得ているフリーランスが多いのが現状です。
なお、同調査では、フリーランスの平均年齢は40代が37.4%、50代が25.7%であることが明らかにされています。フリーランスの約6割が40代、50代で、企業でいうところベテラン社員、もしくは管理職に該当する年齢です。これまでの業務で得たスキルや知識だけではなく、人間関係を活かして働いているフリーランスの多さがうかがえます。
自身の宣伝活動
フリーランスは自分をブランディングし、SNSなどで発信を行うことで仕事を得られることもあります。経験や業績をSNSでPRしたり、その業界にとって有益な情報を発信したりすることで、企業の採用担当者から声がかかることもあります。
また、起業家や経営者の集まりに参加し、自分が行っている仕事をアピールし、機会があれば依頼してほしいと頼んでみるのも方法です。起業家や経営者の中にはホームページや動画で自社を宣伝したいと考えている人、相場よりも低価格で仕事を依頼したいと考えている人もいます。
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5.フリーランスはやめとけと言われる理由
フリーランスは会社員と比べて自由度が高く、自分で仕事を選べるなど数々の利点があるものの、フリーランスはやめとけという意見もあります。
フリーランスはやめとけと言われる理由として、以下の5つが挙げられます。
社会的信用が下がる
安定的な収入を得にくい
仕事以外の雑務が発生する
仕事とプライベートの境目があいまいになる
スキルアップしにくい
それぞれ確認していきましょう。
社会的信用が下がる
フリーランスは住宅ローンやクレジットカードの審査に通りにくいといわれています。安定した企業の社員や公務員であれば収入が少なくても安定性などから審査に受かることがある一方、フリーランスは収入が十分にあっても将来が不透明のため返済能力の不足とみなされることもあります。
さらに、フリーランスは賃貸物件を借りる際に支障が生じることもあります。家賃保証会社の中には、フリーランス特有の収入の不安定さを懸念する会社もあります。場合によっては、住む場所を見つけるのに時間がかかるかもしれません。
安定的な収入を得にくい
フリーランスは正社員のような安定性がありません。会社員のように定まった金額が給与として毎月支給されないだけでなく、クライアントの都合によって仕事が打ち切りになることもあります。数年後の収入だけでなく、来月の収入さえも予想できないフリーランスも珍しくありません。
住宅や自動車といった大きな買い物時の支払いや、子どもの進学費用の支払いについて予定を立てるのが難しくなりがちです。
仕事以外の雑務が発生する
フリーランス初心者の中にはおどろく人もいますが、フリーランスには仕事以外の雑務があります。その中でも、確定申告は重要であり、大きな負担を強いられます。会社員であれば経費を差し引いた所得の計算や税金の支払いは経理担当者が行ってくれますが、フリーランスはそれらを自分で行わなければなりません。確定申告に向けて、領収書の管理や帳簿付けを行う必要があります。
フリーランスの中には仕事は好きでも経理作業などを苦手とする人も多くいます。収入が多ければ税理士に頼むことも可能ですが、多くのフリーランスが確定申告ソフトを活用して自分で行っています。
仕事とプライベートの境目があいまいになる
フリーランス初心者、あるいは単価が低い仕事に従事しているフリーランスは、生計を立てるために多くの時間を労働に充てなければなりません。
フリーランスには定まった労働時間がなく魅力的にも見えますが、労働時間がないからこそ過重労働になるリスクもあります。会社員のように勤務時間や残業時間に上限がないため、フリーランスは厳しい状況に追い込まれるケースもあります。
スキルが未熟だと低単価の案件しか受注できず、時給にすると1000円以下になることもあります。1000円以下の時給だと生活費を得るために必要な労働時間は長くなります。
スキルアップしにくい
フリーランスはスキルアップしないといわれることがあります。このような指摘が度々されるのは、フリーランスは仕事を自分で自由に選べることにも関係しています。
フリーランスが苦手な仕事を避けられることは利点でもありますが、仕事の幅が広がらないゆえの問題点ともみなせます。苦手な仕事をこなすことでそれが得意になる機会も、さまざまな仕事に従事してこそ得られるものも得られないことがあります。
好きな仕事にのみ従事して生活できれば問題ないものの、社会の変化の中でそれだけでは限界が訪れることもあります。社会や業界から取り残されたと思った頃は手遅れになっているかもしれません。
6.フリーランスについてよくある質問
フリーランスへの転身を考えている人、フリーランス初心者の中には、疑問を抱えている人もいます。
ここでは、フリーランスについてよくある以下の4つの質問に回答します。
フリーランスは増えすぎといわれていますが飽和状態ですか?
フリーランスは厚生年金をもらえますか?
フリーランス未経験者は在宅で稼げますか?
なんのスキルもない人がフリーランスになれますか?
それぞれ確認していきましょう。
フリーランスは増えすぎといわれていますが飽和状態ですか?
フリーランスは働き方の多様化やコロナ禍におけるリモートワークの普及などによって増えました。しかし、すべての職業においてフリーランスが飽和状態ということはありません。職業によっては現時点で人手が足りていたとしても、全職業において飽和状態ということはないです。
むしろ、企業は正社員を雇用するよりもフリーランスに業務を委託した方が人件費を抑えられるため、経済不況の日本ではフリーランスを求める企業はますます増えるとも考えられます。
フリーランスは厚生年金をもらえますか?
フリーランスは会社員などが加入する厚生年金には加入できないため、厚生年金は受給できません。会社員は国民年金と厚生年金に加入できますが、フリーランスは国民年金のみの加入となります。フリーランスを選択すると将来受け取れる年金が会社員よりも少なくなる可能性が高いです。
将来のために貯蓄をしっかりと行ったり、iDeCoやNISAなどを活用したりして、老後資金を自身で形成する必要があります。
フリーランス未経験者は在宅で稼げますか?
フリーランスは自身のスキルを活かして、収入を得る働き方です。フリーランスとしての経験の有無は問われませんが、何かしらのスキルを持っている必要があります。
また、フリーランスといっても在宅で働ける職業とそうでない職業があります。例えば、ITエンジニア、Webデザイナーなどは完全在宅の求人も多々あります。一方、美容師やコンサルタントは店舗やお客様のもとに出向く必要があります。
なんのスキルもない人がフリーランスになれますか?
クラウドソーシングサイトにはスキルがない人を対象にした簡単なライティングなどの案件もあります。しかし、こうした仕事は報酬が低いため、それだけで生活していくのは難しいでしょう。
フリーランスとして稼げるスキルが現時点でない人は、まずはスキルを高めることをおすすめします。自分が興味をもっている分野の勉強をしたり、資格を取得したり、会社員やアルバイトなどで経験を積んだりしてください。
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7.まとめ
近年、フリーランスという働き方に憧れを抱いている人が年齢を問わずいます。しかし、フリーランスにはよい面だけでなく、注意しておくべき面もあることを忘れてはいけません。
フリーランス初心者は雑務の想定外の大変さに疲弊したり、仕事を思うように受注できず収入が途絶えたりする危険もあります。
また、ベテランフリーランスであっても安定した暮らしを営めるわけではありません。社会的信頼や安定収入などは得がたいのが現状です。
フリーランスとして長く稼ぎたい人はスキルを高め、質の高い仕事をするよう心掛けてください。
本記事が皆様にとって少しでもお役に立てますと幸いです。