サラリーマンの場合通常は勤務先が税額計算を行って毎月の給与から税金が自動的に引かれるため、「自分がどんな税金をどれくらい支払っているのか分からない」という人も少なくないでしょう。しかし個人事業主になると、税金の計算から納税まで全て自分で行う必要があります。
そこでこの記事では個人事業主が支払うべき税金やその納税方法、さらに納税額を抑えるための節税対策について解説します。
目次
1.個人事業主が支払う主な税金の種類
個人事業主は、確定申告を通じて納税を行う必要があります。そのためには支払うべき税金の種類を理解し、それぞれの税額の計算方法を把握することが重要です。
事業の内容や業務形態によって異なりますが、個人事業主が納める以下の主な税金についてこの章で解説します。
所得税
復興特別所得税
住民税
国民健康保険料(税)
個人事業税
消費税
固定資産税
2.個人事業主の所得税について
まずは所得税の計算方法や支払時期について詳しく解説します。
所得税の算出方法
今回は所得が事業所得のみの方を例として解説します。
まず、1月1日から12月31日までの1年間に得た「総収入金額」を集計します。総収入金額には商品やサービスの売上、賃料収入などが含まれます。
次に、事業運営に伴い発生した「必要経費」を算出します。必要経費とは商品の仕入れ代金・パート・アルバイトの給与・交通費・通信費など、事業活動に関連して支払った費用を指します。
事業所得は、以下の計算式で求められます。
事業所得 = 総収入金額 – 必要経費 |
この計算で求めた事業所得が「総所得金額」となり、ここから「所得控除」を差し引きます。
所得控除とは所得税の計算時に一定額を控除できる制度で、現在15種類の控除があります。総所得金額から所得控除を差し引いたものが「課税所得金額」です。例えば、「生命保険料控除」が所得控除の一例です。所得控除については後ほど詳細を説明します。
事業所得から該当する控除額を差し引いた後の金額が課税所得金額となります。仮に課税所得金額が500万円の場合の所得税額は以下の通りです。
所得税額=5,000,000円×20%–427,500円=572,500円
さらに算出した所得税額から適用可能な「税額控除」を差し引くことで、最終的な納税額が決まります。
所得税の納付時期
所得税額が確定したら、次に行うのは納税手続きです。所得税の納付期限は、確定申告の期限である申告期間の最終日となります。
なお振替納税を利用する場合はあらかじめ登録した口座からの引き落としとなり、納付日は通常より約1カ月後になります。
過去にはコロナ禍の影響で納付期限の延長措置が実施されたこともありますが、原則として毎年3月15日前後が期限となっています。
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3.個人事業主の復興特別所得税について
個人事業主は、所得税に加えて復興特別所得税も納付する必要があります。この税は東日本大震災からの復興に必要な財源を確保するために設けられたもので2013年から2037年までの期間に所得税と一緒に申告し、納税を行います。
復興特別所得税の税率
復興特別所得税の税率は、その年の基準所得税額の2.1%に設定されています。基準所得税額とは計算された所得税額から税額控除を差し引いた、実際に支払うべき所得税の金額を指します。
また、基準所得税額は居住者や非居住者などの区分により異なります。
復興特別所得税の納付方法
復興特別所得税は所得税と一緒に納める必要があります。そのため所得税の確定申告で所得税額と復興特別所得税額を計算し、その合計金額を納付することになります。
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4.個人事業主の住民税について
住民税は所得に基づいて決まり、提出した確定申告書を元に計算される税金です。
毎年住民税の通知が届き、確定申告をしていれば特に追加の手続きなしで連絡が来ます。しかし確定申告をしていない場合は申告書を基に計算できないため、住民税の申告が必要です。
住民税は、主にゴミ処理や消防などの地方自治体が提供する公共サービスに使用されます。所得税との違いとして基礎控除額が最大43万円であること、所得金額によって税率が一定である点が挙げられます。
場合によっては、住民税の方が所得税よりも負担額が少ない場合もあります。
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5.個人事業主の国民健康保険料(税)について
個人事業主が支払う税金のひとつに、国民健康保険料(税)があります。日本では国民皆保険制度を採用しているため、すべての人が健康保険に加入しなければなりません。
一般的に個人事業主は国民健康保険に加入しますが、給与所得者(会社員など)は勤務先や健康保険組合が提供する健康保険に加入します。この場合健康保険料は勤務先と折半し、毎月の給与から天引きされます。
一方、個人事業主は国民健康保険料を全額自己負担することになります。経費として計上することはできませんが、確定申告時に1年間に支払った国民健康保険料(税)の全額を社会保険料控除として所得から差し引くことができます。
次に、個人事業主の国民健康保険料(税)の税率と納税方法について確認していきましょう。
国民健康保険料(税)の税率
国民健康保険料(税)の税率は、住んでいる自治体によって異なります。
この保険料(税)は「前年1月から12月までの所得」「世帯の人数」「年齢」を基に計算されます。構成要素には医療分・後期高齢者支援金分・介護分(40~64歳の方のみ)が含まれ、それぞれが加入者の所得に応じた所得割と世帯内の全加入者が均等に負担する均等割で算出されます。
これらの合計金額が国民健康保険料(税)となります。
なお、所得割の税率や均等割の金額は毎年調整されます。具体的な税率についてはお住いの自治体のWebサイトで確認できるほか、シミュレーターを提供している自治体もあります。
国民健康保険料(税)の納付方法
国民健康保険料(税)の金額については、納付通知書が世帯主に送られます。通常は、納付通知書に記載された指示に従って納付を行う形です。
納税方法には金融機関の窓口・コンビニエンスストアでの現金支払い・口座振替などがありますが、どの方法を利用できるかは自治体によって異なります。
そのため、納付書に記載された指定の方法で納税することになります。
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6.個人事業主の個人事業税について
個人事業税については、まずご自身の事業が課税対象となるかどうかを事前に確認することが重要です。
課税対象か不明な場合は、事業所が所在する都道府県の税務署に問い合わせて確認しておくことをお勧めします。
個人事業税の算出方法
個人事業税を計算する際、所得税の課税所得金額そのままを使用するわけではありません。青色申告特別控除がある場合はその金額を加算し事業主控除額(290万円)を差し引いた後、税率を掛けて課税標準額を求めます。
青色申告と白色申告では事業専従者給与の控除額が異なる点にも注意が必要です。
税率は営んでいる事業の種類によって異なり、大きく3つのカテゴリに分けられます。以下にいくつかの業種と税率を紹介します。
第1種事業(37業種): 5%(例: 物品販売業や飲食業)
第2種事業(3業種): 4%(例: 水産業や畜産業)
第3種事業(30業種): 5%(例: 医業、税理士業などの士業)
では、例として飲食業を営む方の課税標準額が600万円の場合を計算してみましょう。
個人事業税=(6,000,000円–2,900,000円)×5%=155,000円 |
個人事業税が免除される業種
個人事業主で個人事業税が課税されない業種には、以下のようなものがあります。
農業・林業・畜産業・水産業など農林水産に関わる業種
作家・著述家・画家・漫画家・作曲家など芸術関連の業種
翻訳家・通訳家
芸能人、スポーツ選手 など
なおイラストレーターや著述家などの場合には請負契約による収入がある場合は「請負業」に該当し、個人事業税が課税されることがあります。
さらにYouTuber・ブロガー・ライバーなど近年新たに登場した業種や複数の兼業に対する課税については、最寄りの税務署に確認することをお勧めします。
個人事業税の納税義務
個人事業税を計算する際、年間の事業所得が290万円未満であれば個人事業税を支払う必要はありません。
個人事業税は賦課課税方式であるため、課税されない場合は納付書が送付されることはありません。
個人事業税の支払い時期
個人事業税の支払いは基本的に年に2回、8月と11月に行います。それぞれの月末までに、都道府県の税事務所から送られてくる納税通知書に基づいて納付します。
さらに所得税の修正申告(追加納税)を行った場合などには、新たに納税通知書が送付されその納期限に従って納付することになります。
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7.個人事業主の消費税について
消費税は、商品やサービスの消費に対して課される税金です。
個人事業主は自身が提供する商品やサービスの販売や役務提供時に、買い手から消費税を受け取るのが原則となっています。
課税事業者に該当する場合「売上時に受け取った消費税」から「仕入れや経費で支払った消費税」を差し引いた差額を、原則として翌年3月31日までに申告・納税しなければなりません。この仕入れや経費で支払った消費税のことを「仕入税額控除」と呼びます。
ただし仕入税額控除が適用されるのは、インボイス(適格請求書)の要件を満たす証拠書類が提出できる取引に限られます。たとえば仕入先や経費の支払先がインボイス発行事業者でない場合、その取引については仕入税額控除を行うことはできません。
消費税の計算式は次の通りです。
消費税=課税売上高(税抜き)×税率-課税仕入高(税抜き)×税率 |
なお、2024年2月時点での消費税率は以下の通りです。
標準税率:国税7.8%、地方税2.2%、合計10%
軽減税率:国税6.24%、地方税1.76%、合計8%
消費税の納税が免除される場合も
消費税の納税が免除される場合もあります。例えば前々年の課税対象となる売上高が1,000万円以下であれば、基本的にその年の消費税納税が免除されます。
開業から1~2年目の事業主には前々年の売上実績がないため、消費税の納税義務が発生するのは原則として開業から3年目以降となります。
ただし前々年の課税売上高が1,000万円以下であっても、その翌年(前年)の1月1日から6月30日までの特定期間において課税売上高などが1,000万円を超えた場合、その年から消費税の納税が必要となり課税事業者となります。
課税期間ごとに受け取った消費税額よりも支払った消費税額が多い場合、消費税の還付を受けることができることもあります。
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8.個人事業主の固定資産税について
個人事業主が固定資産を所有している場合、固定資産税の納税義務が発生します。
固定資産税とは土地や建物、特定の設備などの固定資産を所有している際に課される税金です。固定資産の評価額に基づいて算出された税額を、資産が所在する市区町村に納める必要があります。また、固定資産税は確定申告の際に必要経費として計上することが可能です。
次に、固定資産税の税率や納税方法について詳しく見ていきましょう。
固定資産税の税率
固定資産税は資産が所在する自治体が定めた固定資産税評価額(課税標準額)に、一定の税率を掛けて算出されます。税率は自治体によって異なる場合がありますが、標準税率は1.4%です。
また住宅用地の特例による課税標準額の軽減措置や、新築住宅に適用される減額措置など一定の条件を満たす場合には税負担が軽減される制度もあります。
固定資産税の納付方法
固定資産税の納付は、自治体から送付される納付書に基づいて行います。支払い方法は自治体によって異なりますが、一般的には年4回の分割払いまたは一括払いを選択できる場合が多いです。
9.節税のための経費の見直しポイント
個人事業主やフリーランスの節税対策は、まず最初に事業に関連する経費や支出を見直すことから始めることが重要です。
経費として計上できる支出を確認する
事業を運営する際に発生する費用は、基本的にすべて経費として計上できます。例えば、以下のような支出が経費として認められます。
旅費交通費: 電車賃・バス代・タクシー代など
広告宣伝費: チラシ作成費用・求人広告費用・オンライン広告費用など
消耗品費: 事務用品の購入費・1年未満または10万円(税込)未満のパソコン購入費など
接待交際費: 取引先との食事代な
水道光熱費: オフィスや店舗の水道料金・電気代・ガス代など
通信費: 業務用携帯電話料金・切手代・インターネットプロバイダー料金など
地代家賃: オフィスや事務所の賃料など
租税公課: 固定資産税・自動車税など
給料賃金: 従業員に支払う給与など
福利厚生費: 従業員の通勤手当など
また自宅を事務所として利用している場合は、家賃・水道光熱費・固定電話代・携帯電話代・インターネット料金・固定資産税なども、仕事に使った分に関して「家事按分」をすることで経費として計上することが可能です。
経費計上が可能な税金を把握する
個人事業主が支払った税金で、事業に関連するものは経費として計上できます。
ここには国や地方自治体に納める「租税」や公共団体への会費、罰金などを含む「租税公課」が該当します。ただし住民税・所得税・相続税など、個人に対して課せられる税金は経費として認められません。
以下は、経費として計上できる税金とできない税金の分類です。
経費に計上できる税金
個人事業税
消費税
固定資産税
自動車税
登録免許税
印紙税 など
経費に計上できない税金
所得税・復興所得税
住民税
相続税
国民健康保険料
国民年金保険料
交通規則違反などの罰金
税金の過少申告や無申告に対する加算税
税金の支払い遅延に対する延滞税 など
短期前払費用の特例を活用する
ソフトウェアの使用料やインターネット回線の料金などでは通常、サービスを受けることを前提に半年分や1年分の料金を前払いすることがあります。これらの費用はサービス提供期間に対応する費用として計上するのが基本的なルールであり、その年度の費用として直接計上することはできません。
ただし以下の6つの条件をすべて満たす場合、その費用は「短期前払費用」として扱われ例外的に当期の費用として計上することが認められています。
年払いに関する記載がある契約書が存在する
継続的なサービスが提供される
実際に料金が支払われている
支払った日から1年以内にサービスを受ける
支払い方法および経理方法が同じで継続する
商品の仕入れや製造など、売上に関連する費用ではない
重要なのは5番目の条件で「今年は年払いだったが、来年から月払いに変更する」といった場合、特例は適用されません。
この特例を活用すると当期の経費として計上できる額が増え、結果として課税対象となる所得金額を抑えることができます。
減価償却の特例を適用する
減価償却とは購入した固定資産の費用を、税法に基づく耐用年数にわたって分割して経費として計上する会計処理の方法です。この方法により、複数年にわたる節税効果が得られます。
減価償却資産には所得税法において特例が設けられており、購入価格が10万円以上20万円未満の資産については3年間で均等に償却することができます。この方法では耐用年数に関わらず均等償却が適用されるため、1年あたりの償却額が増え、それに伴い大きな節税効果を得ることが可能です。
また中小企業者向けには一定の条件を満たすことによって、10万円以上30万円未満の資産を一括で経費として処理できる「少額減価償却資産の特例」があります。この特例を黒字の年にうまく活用すると対象となる固定資産の費用を一度に経費計上でき、かなりの節税効果が期待できます。
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10.節税のための控除の見直しポイント
控除には、「所得控除」と「税額控除」の2種類があります。
これらの控除が多く適用されるほど、課税対象となる金額は減少します。そのため経費と同様に、所得控除や税額控除を漏れなく適用することが重要です。所得税額は、以下の計算式を使って求めることができます。
課税所得金額 = 所得の総額 - 必要経費 - 所得控除 所得税額 = 課税所得金額 × 税率 - 税額控除額 |
の計算式に基づき、年間の総所得から必要経費と所得控除を差し引いた額が「課税所得金額」となります。その後課税所得金額に税率を掛けて、税額控除額を差し引いた金額が最終的な「所得税額」となります。
つまり税額控除額が多ければ多いほど、節税効果が大きくなることがわかります。
控除を見直すことで節税につながるため、見直しのポイントをしっかりと確認することが重要です。
所得控除の種類を理解する
所得控除は、課税対象となる所得から一定額を差し引くことができる仕組みで、これにより納税額を軽減することが可能です。所得控除が適用される代表的なケースは以下の通りです。
社会保険料控除:健康保険・国民年金・国民年金基金・介護保険・労働保険などの保険料全額
小規模企業共済等掛金控除:小規模企業共済やiDeCoなどに支払った掛金全額
生命保険料控除:生命保険・介護医療保険・個人年金などの掛金
地震保険料控除:地震保険料などの損害保険に支払った額
基礎控除:所得が2,400万円以下の人は48万円・2,400万円超2,450万円以下は32万円・2,450万円超2,500万円以下は16万円・2,500万円超は控除なし
ひとり親控除:未婚または配偶者が亡くなっていることが確認されている場合、特定の条件を満たすと35万円の控除が受けられます
寡婦控除:夫と離婚または死別し婚姻していない場合で一定条件を満たすと27万円の控除
障害者控除:本人または扶養親族に障害者がいる場合、障害者控除は27万円・特別障害者は40万円・同居特別障害者は75万円
勤労学生控除:勤労学生と認められる場合、27万円の控除
配偶者(特別)控除:配偶者と共に生活している場合、所得に応じて控除を受けられる
扶養控除:扶養親族がいる場合、38万円~63万円の控除が適用されます
雑損控除:災害や盗難、横領などで損失が発生した場合の控除
医療費控除・セルフメディケーション税制:年間の医療費が10万円(所得200万円未満は5%)以上、または特定の医薬品を1万2,000円以上購入した場合
寄附金控除:国や市町村・認定NPO法人などへの寄付。ふるさと納税も対象
これらの控除を適切に活用することで、課税対象額を減らし、税負担を軽減できます。
税額控除の適用条件を確認する
税額控除とは課税所得金額を基に計算された所得税額から、一定の金額を差し引く仕組みです。
税額控除の特長は控除額がそのまま所得税額から差し引かれるため、所得控除よりも節税効果が大きい点です。以下は代表的な税額控除の例です。
配当控除:株式投資等で配当金を受け取った人
住宅借入金等特別控除(特定増改築等):住宅を新築または取得した人・増改築を行った人など
政党等寄附金特別控除:政党や政治資金団体に寄付をした人。寄附金控除(所得控除)とこの寄附金特別控除(税額控除)から有利なほうを選んで適用できます。
医療費控除を活用する
医療費控除は1年間(1月1日~12月31日)に自己または同じ生計の配偶者・親族のために支払った医療費が一定額を超えた場合、その超過分を所得控除として申告できる制度です。医療費控除の対象となる医療費の要件は以下の通りです。
納税者が自己または生計を共にする配偶者・親族のために支払った医療費であること
その年の1月1日から12月31日までに実際に支払った医療費であること(未払い分は支払った年の控除対象)
控除額(上限200万円)は、以下の式で算出されます。
(実際に支払った医療費の合計額-保険金などで補填される金額)-10万円(※) |
(※)総所得金額が200万円未満の場合は「総所得金額の5%」として計算。
保険金などで補填される金額の例は以下の通りです。
生命保険の入院給付金
健康保険の高額療養費・家族療養費・出産育児一時金など
※補填額が対象医療費を超えても、他の医療費からは差し引きません。
セルフメディケーション税制(医療費控除の特例)
平成29年~令和8年の間に一定の健康診査や予防接種を受けた場合に特定一般用医薬品等の購入費が年間12,000円を超えると、その超過額(上限88,000円)を控除できます。この制度は通常の医療費控除とどちらかを選択して適用可能です。
小規模企業共済へ加入する
小規模企業共済は中小企業基盤整備機構が提供する、個人事業主や中小企業向けの積立型退職金制度です。
掛金は全額が控除対象となり加入後は掛金の調整も可能で、受け取り方法は一括または分割から選べます。受け取る際には一括払いの場合は退職所得控除を受けられ、退職金として有利な課税が適用されます。
分割払いには退職所得控除がありませんが一括の場合は2分の1課税が適用されます。さらに低金利の貸付も利用できるため、個人事業主にとっては多くのメリットがある制度と言えます。
iDeCoを活用する
iDeCo(個人型確定拠出年金)は厚生年金や国民年金とは別に、老後の資金を積み立てるための私的年金制度です。加入者は掛金額に応じて、所得税と住民税の控除を受けることができます。
特に課税所得が高い人ほど、控除額も大きくなります。年金の受け取り時には小規模共済と同じように、退職所得控除が適用されます。
倒産防止共済を活用する
掛金は全額、個人事業の必要経費として計上できます。月々5,000円から20万円まで5,000円単位で自由に掛金を選ぶことができ、12ヵ月以上の納付があれば解約時に掛金総額の一部が返還されます。
ふるさと納税を利用する
故郷の自治体や復興支援に貢献したい自治体など任意で選んだ先に寄付をすることで、寄付額の一部が税金の控除や還付対象となる制度です。
特産品が返礼品として送られてくることでもよく知られています。寄付を行った年には所得税から還付され、翌年には住民税から控除が適用されます。
控除の上限額は所得や家族構成に応じて異なりますが、控除の対象となるのは2,000円を超える部分で上限内での寄付に対して税優遇が受けられます。
青色申告を選択する
個人事業主の確定申告には、青色申告と白色申告の2種類があります。
青色申告を選択するには、まず「所得税の青色申告承認申請書」を所轄の税務署に提出する必要があります。申請が認められれば、青色申告を行うことができます。
「青色申告は帳簿をつける必要があって面倒だ」と感じる方も少なくないといわれていますが実際には難しくなく、しっかりと手続きをすれば問題なく申告できます。
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11.個人事業主の税金のシミュレーション・早見表
この章では個人事業主の税金のシミュレーションをしてみましょう。
例えば、以下は年間収入が400万円である個人事業主の各税金の金額と手取り額のシミュレーションです。
項目 | 金額(数値は概算) | 備考 |
---|---|---|
収入(年間) | 400万円 | |
国民年金保険料 | 20万円 | |
健康保険料 | 40万円 | 東京都世田谷区の保険料にて概算を計算 詳細な計算方法は下部に記載 |
所得税(復興特別所得税含む) | 13万円 | 課税所得:400-65-48-20-40=227万円 65万円:青色申告特別控除 48万円:所得税の基礎控除 20万円:年金保険料 40万円:健康保険料
※97,500円は所得税の控除額 |
住民税 | 24万円 | 課税所得:400-65-43-20-40=232万円 65万円:青色申告特別控除 43万円:所得税の基礎控除 20万円:年金保険料 40万円:健康保険料
|
個人事業税 | 5.5万円 | (400-290)×5%=5.5万円
税額は5%と仮定 |
差引手取額 | 297.5万円 |
年間の収入別に応じた個人事業主の税金のシミュレーション・早見表はこちらから確認いただけます。
12.まとめ
これまで個人事業主が支払う税金の種類やその計算方法、さらに税額を減らすための節税対策、税金のシミュレーションについて解説してきました。
所得税や住民税は所得を基に計算されるため、所得を減らすことで節税効果を得られます。しかし、所得を減らすことを目的に無駄な経費を使うのは資金繰りに悪影響を与えるため、避けるべきです。
ここで紹介した節税方法以外にも多くの方法がありますが最適な節税対策は事業の内容や状況に応じて異なりますので、十分な注意が必要です。
本記事が皆様にとって少しでもお役に立てますと幸いです。